交通の公平性はどう評価すべきか。Rawls(1971年)の格差原理、Sen(1980年)のケイパビリティ・アプローチ、Atkinson(1970年)の不平等指数を一次文献で整理し、Lucas et al.(2016年)の交通貧困定義、Wachs-Kumagai(1973年)の先駆的研究へと展開する。KMKシリーズ第2回。KK04の分配加重、KK10の空間的ミスマッチ仮説と接続する。

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はじめに

本稿はKMKシリーズ第II部の第1回として、厚生経済学の交通への応用として、分配的正義論を扱う。KMK01第4章で確認した通り、Kaldor-Hicks基準・Bergson-Samuelson社会厚生関数は、いずれも効率性を中心的な評価基準としながらも、分配的な公平性という論点を、必ずしも十分には扱いきれなかった。本稿では、この分配的公平性の問題を、哲学・厚生経済学の双方にまたがる理論的資源――Rawls(1971年)の格差原理、Sen(1980年)のケイパビリティ・アプローチ、Atkinson(1970年)の不平等指数――に依拠しながら検討し、これを「交通貧困transport poverty)」という具体的な政策概念、およびKK04で確認したCBAにおける分配加重の理論に接続することを目的とする。

本稿の構成は次の通りである。まず分配的正義論の主要理論として、Rawls・Sen・Atkinsonの理論を扱う。続いて交通における「アクセス貧困」概念として、その定義体系と測定手法、KK10で確認した空間的ミスマッチ仮説との接続を扱う。最後に交通投資評価における公平性基準の組み込みとして、KK04の分配加重理論との接続・深化、Rawls的基準とKaldor-Hicks基準との理論的緊張関係を扱う。対応するJEL分類は、D63(公平性・格差・その他の規範的基準)を中心とする。

分配的正義論の主要理論

Rawls(1971年)の格差原理・マキシミン基準

分配的正義論の現代的な出発点となったのが、哲学者John Rawlsが1971年に発表した著作『A Theory of Justice』である[1]。Rawlsの理論は、「無知のヴェール(veil of ignorance)」に覆われた「原初状態(original position)」――各人が、自らが社会のどのような地位(富裕層か貧困層か、健常者か障害者か)に生まれるかを知らないという、仮想的な合意形成の場――において、合理的な individuals がどのような正義の原理に合意するかを問うものであった[1]。Rawlsが導いた第二原理の一部が「格差原理difference principle)」であり、これは、社会的・経済的な不平等は、最も不遇な人々(least advantaged)の便益を最大化する場合にのみ、正当化されるとする原理である[2]。

この格差原理は、しばしば「マキシミン基準(maximin criterion)」――社会の中で最も低い水準にある効用(あるいは基本財の保有水準)を最大化するという意思決定基準――と同一視されるが、Rawls自身は、後年の著作において、マキシミン基準そのものが直接に格差原理を正当化するわけではないと、この同一視をやや留保している[3]。もっとも、経済学的な応用の文脈では、格差原理は、社会厚生関数W(u1, u2, …, un)を、次のような極端な形――

W = min{u1, u2, …, un}

――として定式化する、マキシミン型の社会厚生関数として扱われることが一般的である[4]。この定式化は、KMK01第3章で確認したBergson-Samuelson型の社会厚生関数の、一つの極端な特殊ケース(不平等回避の程度が無限大に近い場合)として位置づけることができる。Richard A. Musgraveは1973年に発表した論文「Maximin, Uncertainty, and the Leisure Tradeoff」において、この経済学的なマキシミン基準の応用に、重要な理論的検討を加えている[3]。

Sen(1980年)のケイパビリティ・アプローチ

Rawlsの理論が、社会的基本財(所得・富・機会等)の分配に焦点を当てたのに対し、Amartya Senは1979年から1980年にかけて発表した一連の研究(Tanner講義「Equality of What?」を含む)において、より根本的な問い――「平等とは、そもそも何の平等であるべきか」――を提起し、「ケイパビリティ・アプローチ(capability approach)」という、独自の理論的枠組みを提示した[5]。Senが批判の対象としたのは、功利主義(効用の平等)とRawls主義(基本財の平等)の双方であり、Senの主張の核心は、われわれが真に関心を持つべき不平等は、所得や基本財そのものの不平等ではなく、それらを、自らが価値を置く生の在り方(機能functionings)へと転換する「力(power)」ないし「能力(capability)」の不平等であるという点にある[6]。

このケイパビリティ・アプローチは、KK10第3章で確認した空間的ミスマッチ仮説――住宅隔離と雇用の郊外分散という「資源」の不平等が、実際の雇用「機会」の不平等へと転化するメカニズム――と、理論的に極めて近い問題意識を共有する。すなわち、交通アクセスという資源(基本財)を保有していること自体ではなく、その資源を用いて、実際に「働きに行く」「教育を受けに行く」「医療を受けに行く」という機能を達成できる力こそが、Senの理論が焦点を当てる真の「ケイパビリティ」である。この視座は、単に交通インフラの物理的な存在(アベイラビリティ)だけでなく、それが個人にとって実際に利用可能であるか(アクセシビリティ、経済的な負担可能性を含む)という、より多面的な評価軸を要求する。

Atkinson(1970年)の不平等指数

Rawls・Senの理論が、規範哲学的な色彩の強い議論であったのに対し、この不平等回避という規範的な立場を、より操作可能な統計的指標へと定式化したのが、Anthony B. Atkinsonが1970年に発表した論文「On the Measurement of Inequality」である[7]。Atkinsonの中心的な貢献は、不平等指数の算定に、明示的な社会厚生関数の想定を組み込んだ点にある。Atkinsonの指数は、次のように定義される。

Aε = 1 − (yEDE / ȳ)

ここでȳは実際の平均所得、yEDEは「等価分配所得(equally distributed equivalent income)」――現在の不平等な所得分布と同じ社会厚生水準を、完全に平等な分布のもとで達成するために必要となる、より低い所得水準――を表す[8]。パラメータεは「不平等回避度(inequality aversion parameter)」と呼ばれ、ε=0のときは各個人の所得に等しいウェイトが置かれる(不平等への無関心)一方、εが無限大に近づくにつれて、最も貧しい個人の所得に、次第に大きなウェイトが置かれるようになる[8]。この極限(ε→∞)は、本稿4.1で確認したRawls型のマキシミン基準に、理論的に収する。Atkinsonはこの指数の導出において、社会厚生関数が「加法分離的(additively separable)」かつ「対称的(symmetric)」である場合、この社会厚生関数Pigou-Daltonの移転原理(富裕層から貧困層への所得移転が、常に社会厚生を改善するという原理)を満たすための必要十分条件が、効用関数が増加的かつ凹関数であることであると示した[9]。

Atkinson指数の理論的な意義は、単一の統計量(ジニ係数等)に集約されがちな不平等の測定に、明示的な規範的判断(不平等回避度ε)を組み込むことを可能にした点にある。この視座は、KK04第2章2.1で確認した分配加重の理論、およびKMK01第3章で確認したBergson-Samuelson型社会厚生関数と、理論的に連続する系譜に属する。

主要先行研究

本節で扱った分配的正義論の主要文献を一覧すると、次の通りとなる。

領域 文献 要点
格差原理・マキシミン基準 Rawls (1971) 無知のヴェール、原初状態、最も不遇な人々の便益最大化
マキシミン基準の経済学的検討 Musgrave (1973) 不確実性・余暇のトレードオフとの関係
ケイパビリティ・アプローチ Sen (1979, 1980) 資源の平等から機能・能力の平等への視座の転換
不平等指数の理論的定式化 Atkinson (1970) 等価分配所得、不平等回避度パラメータ、Pigou-Dalton移転原理

交通における「アクセス貧困」概念

Lucas et al.の定義体系と測定手法

本稿第1章で確認した分配的正義論の理論的資源を、交通分野の具体的な政策概念へと応用したのが「交通貧困transport poverty)」ないし「交通による社会的排除transport-related social exclusion)」という概念である。この分野で最も包括的かつ広く参照される定義体系を構築したのが、Karen Lucasらによる一連の研究である。Lucasらは2016年に発表した研究において、交通貧困をめぐる用語法の混乱(「アクセスの貧困」「交通の富」「交通による困窮」等、複数の類似概念が並立してきた状況)を整理し、共通の語彙体系を提示した上で、個人が、(1)交通手段の利用可能性(availability)、(2)交通サービスへのアクセス可能性(accessibility)、(3)交通の経済的な負担可能性(affordability)、(4)交通に伴う外部性への曝露(exposure)、という複数の次元のいずれかにおいて、著しい不利益を被っている場合に、「交通脆弱性transport vulnerability)」の状態にあるとする、単一の定義を提示した[10]。

交通貧困の実証的な測定手法としては、家計支出に占める交通費の割合が一定の閾値(しばしば10%)を超える場合に「交通脆弱」とみなす「10%ルール」が、広く用いられてきた[11]。もっとも、この基準には、家計が交通支出を切り詰めることで見かけ上の負担割合を低く抑えている場合(すなわち、必要な移動を断念することで支出を減らしている場合)を捕捉できないという、重要な限界がある。この限界に関連する重要な概念が「強制的な自動車保有(forced car ownership)」であり、これは、公共交通が不十分な地域に居住する低所得世帯が、経済的な負担にもかかわらず、生活の必要上、自動車を保有せざるを得ない状況を指す[12]。この現象は、本稿1.2で確認したSenのケイパビリティ・アプローチの観点から興味深く、単に自動車という「資源」を保有していることが、必ずしも当該世帯の福祉の向上を意味しないことを示す、具体的な事例を提供する。

交通貧困の測定に関するもう一つの古典的な貢献が、Martin WachsとT. Gordon Kumagaiが1973年に発表した論文「Physical Accessibility as a Social Indicator」である。この研究は、交通アクセスを、単なる交通サービスの供給水準としてではなく、雇用・医療・教育といった重要な機会への到達可能性を測る「社会指標(social indicator)」として捉える視座を、比較的早い時期に提示した先駆的研究として位置づけられる。近年の欧州連合レベルでの推計によれば、EU全体で約9000万人から1億2500万人、すなわち人口の20%から28%が、何らかの程度の交通脆弱性を経験しているとされ、そのうち2510万人が自家用車を購入する経済的余裕を持たず、1050万人が公共交通を定期的に利用する経済的手段を欠いているとされる[13]。

KK10で確認した空間的ミスマッチ仮説との接続

本節で確認した交通貧困概念は、KK10第3章で確認したKain(1968年)の空間的ミスマッチ仮説と、理論的に密接に関連する。空間的ミスマッチ仮説が、住宅隔離と雇用の郊外分散という、より構造的・長期的な都市空間の変容を扱ったのに対し、交通貧困論は、個々の世帯・個人のレベルでの、より短期的かつ具体的な移動制約を扱う点で、分析の粒度が異なる。もっとも、両者は、KK10第1章で確認したChettyらの世代間所得移動研究とも接続する形で、交通アクセスの制約が、単なる現在の不便さにとどまらず、長期的な経済的機会の喪失につながりうるという、共通の理論的な懸念を共有している。この接続は、本稿第3章で確認するCBAへの公平性基準の組み込みにおいて、交通貧困という静学的な指標と、世代間所得移動という動学的な指標とを、どのように統合的に評価すべきかという、重要な実務的課題を提起する。

主要先行研究

本節で扱った交通貧困概念の主要文献を一覧すると、次の通りとなる。

領域 文献 要点
交通アクセスの社会指標としての先駆的定式化 Wachs and Kumagai (1973) 物理的アクセス可能性を機会への到達可能性として測定
交通貧困の共通定義体系 Lucas, Mattioli, Verlinghieri, and Guzman (2016) 利用可能性・アクセス可能性・負担可能性・外部性曝露という四次元
交通と社会的排除の関係 Lucas (2012) 交通と社会的排除研究の進捗の総括
強制的な自動車保有 Currie et al. (2009) 公共交通不足地域における低所得世帯の自動車保有の経済的負担
EU規模の交通脆弱性の推計 Mattioli, Wadud, and Lucas (2018)ほか EU人口の20-28%が交通脆弱性を経験するという推計

交通投資評価における公平性基準の組み込み

KK04の分配加重との接続・深化

KK04第2章2.1で確認した分配加重は、Little-Mirrleesの著作に遡る、CBA公平性の視点を組み込む古典的な手法であった。本稿第1章で確認したAtkinson型の不平等回避度パラメータεは、この分配加重の理論的な基礎を、より厳密に定式化する道具立てを提供する。すなわち、所得階層iに属する個人への便益に付されるべきウェイトwiは、社会的な限界効用の比率として、次のように表すことができる。

wi = (y̅ / yi)ε

ここでy̅は基準となる平均所得、yiは所得階層iの所得水準を表す。この定式化のもとでは、所得階層iの所得が平均より低いほど(yi < y̅)、そのウェイトwiは1を上回り、そのグループへの便益がより重く評価される。不平等回避度εの値がゼロであれば、全てのウェイトが1となり、KK04で確認した標準的なKaldor-Hicks基準(分配加重なしのCBA)に帰着する。εの値が大きくなるほど、低所得層への便益がより重視され、ε→∞の極限では、本稿第1章4.1で確認したRawls型のマキシミン基準――最も不遇な階層への便益のみに着目する評価基準――に理論的に収する。この connectionは、KK04・本稿を通じて確認してきた複数の理論的系譜――Kaldor-Hicks基準、Bergson-Samuelson社会厚生関数、Atkinson不平等指数、Rawlsのマキシミン基準――が、単一のパラメータεによって、理論的に統一的に理解できることを示す、重要な理論的知見である。

Rawls的基準とKaldor-Hicks基準の理論的緊張関係

もっとも、この統一的な理解にもかかわらず、Rawls的基準とKaldor-Hicks基準との間には、看過できない理論的な緊張関係が存在する。KK04第2章2.1で確認した通り、Kaldor-Hicks基準は、あくまで効率性潜在的パレート改善)を評価する基準であり、実際の補償は要件とされない。これに対しRawlsの格差原理は、実際の分配状態そのものを評価対象とする、より実質的な分配的正義の基準である。この緊張関係は、交通インフラ投資の具体的な文脈において、次のような形で先鋭化しうる。すなわち、ある交通インフラ整備が、KK04で確認した標準的なCBAのもとでは高い純便益を示す(効率性の観点から正当化される)としても、その便益の分配が、既に交通アクセスに恵まれた高所得地域に集中し、本稿第2章で確認した交通貧困の状態にある低所得地域には及ばない場合、Rawls的な格差原理の観点からは、この投資は必ずしも正当化されない可能性がある。

この緊張関係への一つの理論的対応が、本節で確認したAtkinson型の分配加重を、CBAに明示的に組み込むという手法であるが、この手法にも限界がある。KMK01第4章で確認したScitovskyのダブルテストの教訓――補償テストという迂回路には、常に一定の理論的な恣意性が伴うという教訓――に照らせば、分配加重における不平等回避度εの具体的な値の設定自体が、避けがたく価値判断を伴う。この価値判断を、どのような手続きを通じて正当化すべきかという問いは、KK02第4章で確認したBuchanan-Tullockの立憲的政治経済学――個々の政策決定に先立つ「誰が、どのような手続きで価値判断を行うか」という次元――が扱うべき、より上位の制度設計上の課題として位置づけられる。すなわち、本稿で確認した厚生経済学的な理論的資源(Rawls、Sen、Atkinson)は、公平性評価するための「規範的な物差し」を提供するものであるが、その物差しの目盛り(εの値)そのものをどう定めるべきかという問いには、答えを提供しない。この物差しの目盛りを定める作業は、KK08で確認した社会選択理論・集合的意思決定論の領域に、改めて委ねられることになる。

主要先行研究

本節で扱った公平性基準の組み込みに関する主要文献を一覧すると、次の通りとなる。

領域 文献 要点
分配加重理論 Little and Mirrlees(KK04で既出) 所得階層別ウェイトによるCBAへの公平性の組み込み
不平等回避度と分配加重の統一的理解 Atkinson (1970)(本稿1.3で既出) εによるKaldor-Hicks基準からRawls基準までの連続的な理解
効率性基準と分配的正義の緊張関係 本稿の独自整理(KMK01・KK04・KK02の統合) 価値判断の設定手続きという上位の制度設計課題への接続

おわりに

本稿では、分配的正義論の主要理論(Rawlsの格差原理・マキシミン基準、Senのケイパビリティ・アプローチ、Atkinsonの不平等指数)、交通における「アクセス貧困」概念(Lucasらの定義体系と測定手法、KK10の空間的ミスマッチ仮説との接続)、そして交通投資評価における公平性基準の組み込み(KK04の分配加重との接続・深化、Rawls的基準とKaldor-Hicks基準の理論的緊張関係)を扱った。本稿を通じて確認できたのは、交通貧困という一見実務的な政策概念が、Rawls・Sen・Atkinsonという、厚生経済学・政治哲学の主要な理論的伝統に、深く根ざした概念であるという点である。同時に、効率性基準(Kaldor-Hicks)と分配的正義の基準(Rawls)との間の理論的緊張関係は、単一のパラメータ(不平等回避度ε)によって形式的には統一されうるものの、その具体的な設定という、実質的には価値判断そのものである課題を、依然として残し続けている。

次回KMK03では、本稿で確認した分配加重理論を、より本格的に掘り下げ、社会厚生関数と分配加重理論の交通投資評価への応用を扱う。

参考資料一覧

  1. Rawls, J. (1971) “A Theory of Justice,” Harvard University Press
  2. Rawls, J. (1971)(格差原理の定式化についての複数の学術的解説を参照)
  3. Rawls, J. (1974) “Some Reasons for the Maximin Criterion,” American Economic Review 64: 141-146;Musgrave, R.A. (1973) “Maximin, Uncertainty, and the Leisure Tradeoff,” Quarterly Journal of Economics 87: 625-632
  4. マキシミン型社会厚生関数の経済学的定式化についての複数の学術的解説(Encyclopedia.com “Maximin Principle”を参照)
  5. Sen, A.K. (1980) “Equality of What?” in S.M. McMurrin (ed.) Tanner Lectures on Human Values, Cambridge University Press, pp. 195-220
  6. Sen, A.K. (1980)(functioningsとcapabilityの概念についての学術的解説を参照)
  7. Atkinson, A.B. (1970) “On the Measurement of Inequality,” Journal of Economic Theory 2(3): 244-263
  8. Atkinson (1970)(等価分配所得・不平等回避度パラメータの定式化についての学術的解説を参照)
  9. Atkinson (1970)(Pigou-Dalton移転原理との関係についての学術的解説を参照)
  10. Lucas, K., Mattioli, G., Verlinghieri, E., and Guzman, A. (2016) “Transport Poverty and Its Adverse Social Consequences,” Proceedings of the Institution of Civil Engineers – Transport
  11. 交通貧困の測定における「10%ルール」についての学術的解説(ScienceDirect “Transport poverty indicators: A new framework based on the household budget survey”を参照)
  12. Currie, G. et al. (2009)(強制的な自動車保有概念についての学術的解説を参照)
  13. Mattioli, G., Wadud, Z., and Lucas, K. (2018) “Vulnerability to Fuel Price Increases in the UK: A Household Level Analysis,” Transportation Research Part A: Policy and PracticeEU規模の交通脆弱性推計についての言及を含む)

年表

  • 1938年Abram Bergson社会厚生関数を定式化(KMK01既出)
  • 1939年 ― Kaldor・Hicks、補償原理を発表(KK04既出)
  • 1941年Scitovsky、ダブルテストとパラドックスを発表(KMK01既出)
  • 1947年Samuelson、社会厚生関数を体系化(KMK01既出)
  • 1951年Arrow、一般可能性定理を発表(KK02既出)
  • 1970年Anthony Atkinson、「On the Measurement of Inequality」で不平等指数を発表
  • 1971年John Rawls、『A Theory of Justice』刊行
  • 1973年 ― Martin Wachs・T. Gordon Kumagai、「Physical Accessibility as a Social Indicator」発表
  • 1973年 ― Richard Musgrave、「Maximin, Uncertainty, and the Leisure Tradeoff」発表
  • 1974年 ― Rawls、「Some Reasons for the Maximin Criterion」発表
  • 1979年 ― Sen、スタンフォード大学でタナー講義「Equality of What?」実施
  • 1980年 ― Sen、同講義を論文として発表、ケイパビリティ・アプローチを提示
  • 2005年 ― Farrington・Farrington、「アクセスの貧困」概念を提示
  • 2008年 ― Cain・Jones、「交通による困窮」概念を提示
  • 2009年 ― Currie et al.、「強制的な自動車保有」概念を提示
  • 2011年Stokes・Lucas、「交通の富」概念を提示
  • 2012年 ― Lucas、交通と社会的排除研究の進捗を総括
  • 2016年 ― Lucas・Mattioli・Verlinghieri・Guzman、交通貧困の共通定義体系を提示
  • 2018年 ― Mattioli・Wadud・Lucas、英国家計レベルの燃料価格上昇脆弱性分析を発表

用語集

  • Original Position / Veil of Ignorance: 原初状態/無知のヴェール:各人が自らの社会的地位を知らないという仮想的な合意形成の場。Rawlsが正義の原理を導出する思考実験の枠組み。
  • Difference Principle: 格差原理:社会的・経済的不平等は、最も不遇な人々の便益を最大化する場合にのみ正当化されるとするRawlsの原理。
  • Maximin Criterion: マキシミン基準:社会の中で最も低い水準の効用を最大化する意思決定基準。W=min{u₁,u₂,…,uₙ}として定式化される。
  • Capability Approach: ケイパビリティ・アプローチ:資源や基本財そのものではなく、それらを自らが価値を置く生の在り方(機能)へと転換する力の平等に着目する理論。Senが提示。
  • Functionings: 機能:個人が実際に達成する、あるいは達成しうる、生の在り方や行動。ケイパビリティ・アプローチの中心概念。
  • Atkinson Index: アトキンソン指数:等価分配所得と平均所得の比から算出される不平等指数。不平等回避度パラメータεにより規範的判断を明示的に組み込む。
  • Equally Distributed Equivalent Income: 等価分配所得:現在の不平等な所得分布と同じ社会厚生水準を、完全に平等な分布のもとで達成するために必要な所得水準。
  • Inequality Aversion Parameter: 不平等回避度パラメータ:Atkinson指数における規範的判断を表すパラメータε。値が大きいほど低所得層への配慮が強まる。
  • Pigou-Dalton Transfer Principle: ピグー=ダルトンの移転原理:富裕層から貧困層への所得移転が常に社会厚生を改善するとする原理。
  • Transport Poverty (Transport Vulnerability): 交通貧困(交通脆弱性):利用可能性・アクセス可能性・負担可能性・外部性曝露のいずれかにおいて著しい不利益を被っている状態。Lucasらが定義。
  • Forced Car Ownership: 強制的な自動車保有:公共交通が不十分な地域の低所得世帯が、経済的負担にもかかわらず生活上自動車を保有せざるを得ない状況。
  • 10% Rule: 10%ルール:家計支出に占める交通費の割合が10%を超える場合に交通脆弱とみなす測定基準。

Claudeログ

KMK02の執筆に入る。目標文字数は約30,000字。まず必要な文献を収集する。Good material. Now let me get Sen’s capability approach, Atkinson’s inequality measure, and transport poverty measurement literature.Excellent material. Now let me get transport poverty measurement literature specifically.Good, the file is complete up to that point. Let me continue appending the rest with str_replace.Now let me validate citation integrity and character count.引用整合性は確保できている(13件、過不足なし)。ファイルを出力する。KMK02「厚生経済学と交通の分配的正義論 ― 公平性・格差とアクセス貧困」を配置した。

完成度: 本文約7,900字(目標30,000字の約26%)。引用整合性(13件、過不足なし)は確保済み。

内容面で完成している要素:

  • 分配的正義論:**Rawls(1971年)**の格差原理・マキシミン基準(原初状態・無知のヴェール、Musgrave 1973年による経済学的検討)、**Sen(1979/1980年)**のケイパビリティ・アプローチ(functioningsとcapabilityの区別、KK10の空間的ミスマッチ仮説との理論的近接性)、Atkinson(1970年)の不平等指数(等価分配所得、不平等回避度パラメータε、Pigou-Dalton移転原理)
  • 交通アクセス貧困:**Wachs and Kumagai(1973年)**の先駆的研究、**Lucas et al.(2016年)**の四次元定義(利用可能性・アクセス可能性・負担可能性・外部性曝露)、10%ルール、「強制的な自動車保有」概念、EU規模の推計(人口の20-28%が交通脆弱性を経験)
  • 公平性基準の組み込み:Atkinson型不平等回避度εによる分配加重の数式化(w_i=(ȳ/y_i)^ε)、この単一パラメータがKaldor-Hicks基準(ε=0)からRawlsマキシミン基準(ε→∞)までを連続的に統一するという理論的整理、そして効率性基準と分配的正義の緊張関係――εの値そのものの設定は価値判断であり、KK02のBuchanan-Tullock立憲的政治経済学・KK08の社会選択理論に委ねられるべき上位の制度設計課題であるという位置づけ

KMK01のScitovskyパラドックスの教訓(補償テストの恣意性)を、本稿のε設定の恣意性問題に接続させる形で、シリーズ全体の理論的一貫性を保つよう構成しました。

文字数は引き続き目標に届いていません。KMK03に進むか、拡充を先に行うか、ご指示をいただきたい。