【スライド】PAM03 Mobility_Management_Strategic_Blueprint

【ラジオ】PAM03_紙一枚で渋滞を消す心理学

【PAM01】MMの理論的基盤を、【PAM02】で手法別の設計原理を整理した。本レポート【PAM03】は、これらの理論的枠組みを踏まえ、国内のMM事例を詳細に検証する。検証は二段階で構成される。第一段階では、【PA02】で簡略に扱った既存6事例(宇治市、龍ケ崎市、筑波大学、京都市、北海道、福山市)を、【PAM01】【PAM02】で確立した理論的枠組み(MM技術体系の3類型、5つの勘所、TPEという持続の条件等)に照らして再検証する。第二段階では、【PA02】で未収録の新規事例として、兵庫県川西市および愛知県豊橋市の取り組みを追加検証する。

※この文書は AI Claude、スライド資料、音声解説 は Gemini により生成されており誤りを含む恐れがあります。

目次

既存6事例の理論的再検証

【PA02】におけるこれら6事例の紹介は、主として定量的な効果指標(利用者数の増減、経済効果額等)を並列的に示すものであった。本レポートではこれを一歩進め、各事例が【PAM01】【PAM02】で確立した理論的枠組みのどの要素に該当するかを明示的に分析する。この再検証の意義は、単に「効果があった」という結果の確認にとどまらず、「なぜその効果が生じたと理論的に説明できるか」という因果的な理解を深める点にある。下表は、【PA02】で扱った6事例を、【PAM02】で示したMM技術体系の3類型(居住地MM職場MM学校MM)、および手法類型(TFPワンショットTFP・イベント型等)に基づいて再分類したものである。

事例 MM技術体系上の類型 手法類型 コミュニケーション形態
宇治市 職場MM(商工会議所経由) ワンショットTFP 郵送配布型
龍ケ崎市・高崎市 居住地MM(転入者対象) 転入者対象MM 窓口連動型
筑波大学 組織限定型(大学構成員対象) 個別アドヴァイス法 対人接触型
都市 居住地MM(地域紙活用) 事実情報提供法 郵送配布型
北海道TFP 居住地MM(広域) TFP(継続型) 全戸訪問型に近い
福山市 居住地MM(イベント型) イベント型MM 対人接触型

宇治市:ワンショットTFPの原型としての再評価

【PA02】で確認した宇治市の事例(駅利用+39%、渋滞-30%、増収年2,000万円)は、【PAM02】で詳述した2005年の宇治地域における商工会議所経由のワンショットTFPと同一の取り組みである。この再検証を通じて明らかになるのは、宇治市の事例が示す高い効果(駅利用+39%等)が、単なる情報提供の結果ではなく、アンケートという形式を通じた「通勤を考え直すきっかけ作り」という、【PAM02】で指摘した心理的な介入設計の効果を反映している可能性である。すなわち、宇治市の効果の大きさを評価する際には、配布された情報の質だけでなく、アンケートという参加型の手続きそのものが持つ、規範活性化理論的な効果を合わせて考慮する必要がある。

龍ケ崎市・高崎市:転入者対象MMの実証研究としての位置づけ

【PA02】で確認した龍ケ崎市の事例(バス利用最大8倍)は、【PAM02】で紹介した島田絹子・谷口綾子藤井聡(2008)の研究「高崎市および龍ケ崎市における転入者対象モビリティ・マネジメントの効果分析」の対象事例そのものである。この事例を再検証する意義は、龍ケ崎市が「民間のバス事業者が公共交通サービスを提供」する地域であり、転入者対象MMが、既存の交通インフラの利用率を、追加投資なしに引き上げる効果を持ちうることを示す点にある。バス利用が最大8倍という効果の大きさは、【PAM02】で指摘した「転居による習慣の一時的解体」という理論的メカニズムが、実際に強い効果を持つことを示唆する実証例として位置づけられる。

この研究が高崎市と龍ケ崎市という、性格の異なる2つの地方都市を比較対象として選んでいる点も、理論的に重要である。高崎市は群馬県内でも比較的都市機能集積した地方中核都市であるのに対し、龍ケ崎市は茨城県南部の、より小規模な自治体である。この2都市間で転入者対象MMの効果に相違が見られるとすれば、その相違は、都市規模・既存の公共交通サービス水準といった構造的要因が、心理的方略としてのMMの効果をどの程度規定するかを示す手がかりとなる。すなわち、いくら個別化されたアドヴァイスを提供しても、そもそも利用可能な公共交通サービスの水準が著しく低い地域では、MMが引き出せる行動変容の余地そのものが限られる、という【PAM01】で述べた「構造的方略心理的方略の補完関係」の裏返しの含意が、この2都市比較から読み取れる可能性がある。

筑波大学:組織限定型MMにおける同調圧力の活用

【PA02】で確認した筑波大学の事例(バス利用率2倍)は、【PAM02】で示した「組織単位で実施することの利点」(既存の伝達経路の活用、同調圧力の活用)が、大学という組織においてどのように機能したかを示す事例として再評価できる。筑波大学の循環バスを対象とした車内マナー啓発コミュニケーションの効果検証も、谷口綾子らによって行われており、この大学キャンパスという閉じた空間が、MMの実験的検証の場として研究上も重視されてきたことがうかがえる[1]

京都市・北海道・福山市:地域紙・広域TFP・イベント型の再評価

都市の新聞を活用したMM(年間経済効果1.26億円)は、【PAM02】の「事実情報提供法」の典型例として位置づけられる。北海道のTFP(CO2-16.3%)は、【PAM02】で示したTFPの継続型・広域展開の事例であり、道内の広域を対象としながら継続的な効果検証(CO2削減率)を伴っている点で、【PAM01】で示した「態度と行動のギャップ」を実際の環境指標の変化として捉えた、比較的まれな事例である。福山市のノーマイカーデー(2,000人参加)は、【PAM02】で述べたイベント型MMの典型例であり、単発の参加者数は把握できるものの、その後の行動の持続性については、本シリーズの【PAM05】で改めて検証が必要な論点として残る。

新規事例1:川西市における長期継続的MM(2002年〜)

展開の経緯

兵庫県川西市は、2002年度(平成14年度)から2003年度(平成15年度)にかけて、代表的なMM施策であるTFPを市内でパイロット的に実施した[2]。この取り組みは土木学会発行の「モビリティマネジメントの手引き」でも紹介されている[2]。続いて2005年(平成17年)には、全国に広がりつつあったワークショップ形式・買い物キットを使用するMMを、清和台地区において日本で初めて実施した[2]。その後、この取り組みは清和台地区、日生ニュータウン地区、グリーンハイツ地区、大和地区へと展開された[2]

2006年度(平成18年度)からは、当時大阪大学大学院(現・愛媛大学大学院)の松村暢彦教授の総合プロデュースにより、モビリティ・マネジメント教育(学校MM)が継続的に実施されるようになった[2]。この学校MMは、「相手の気持ちになって自分は何ができるか考え行動する」「ふるさと川西市を愛して公共交通まちづくりについて考え行動する」といった内容で構成されており、国土交通省が2007年3月に発行した資料においても、学校教育がMMの実施の場として最も根源的かつ大きな効果が期待される施策と明記されていることを踏まえた取り組みとされる[2]

計画への制度的位置づけ

川西市のMMの展開において特筆すべきは、単発の施策にとどまらず、市の上位計画に明記されることで、継続的な実施が制度的に担保された点である。第5次川西市総合計画、川西市都市計画マスタープランにMMの推進が明記され、さらに平成26年度(2014年度)には川西市公共交通基本計画(通称「かわにし交通ピースプラン」)が策定され、MMが重要な政策の柱として改めて位置づけられた[2]。この制度化のプロセスは、【PAM02】で示した「TPE(技術・プラットフォーム・エビデンス)」のうち、「プラットフォーム」(組織的な基盤)の構築が、実際に上位計画への明記という具体的な形で実現された事例として理解できる。

効果とJCOMMマネジメント賞の受賞

学校MM教育を推進する中で、児童の保護者が地域における交通まちづくりの核となり、その輪が保護者を中心に広がっていった結果、減少を続けていた地域のバス利用者数が増加に転じ、平成27年度(2015年度)には平成24年度(2012年度)と比較して約1.45倍、年間30万人を超える実績を記録した[2]。この実績が評価され、平成28年度(2016年度)、川西市は日本モビリティマネジメント会議(JCOMM)においてマネジメント賞を受賞した[2]

JCOMM実行委員会の講評では、平成14年度から継続的に改善を重ねながら取り組まれてきたこと、都市計画マスタープランにMM教育の推進が明記されていること、かわにし交通ピースプランという上位関連計画を踏まえた教育MMの取り組みや地域公共交通協議会といった独自の推進体制が、長年にわたる地域主体の活動として展開されてきたことが評価されている[2]。特に、「大都市ではないことを逆手に取り、きめ細やかなマネジメントを展開してきた」という評価は、【PAM02】で示した「予算・人員の制約の中で現実的に実施しやすい施策から順次実施する」という箕面市の資料が示す実務的な知恵が、川西市において具体的な成功として結実したことを示している[2]

理論的意義:継続性・制度化のモデルケース

川西市の事例が本シリーズにとって重要な理由は、単一の手法の効果を示す事例ではなく、TFPパイロット(2002年)→ワークショップ型MM(2005年)→学校MM(2006年〜)→計画への制度的位置づけ(2014年)→表彰(2016年)という、14年以上にわたる手法の進化と制度化のプロセス全体を示す事例である点にある。この長期的な展開は、【PAM01】で述べたMMの理論的基盤(個別化されたコミュニケーションの重要性)と、【PAM02】で述べた実務的な成功条件(TPE、担当者の熱意、タイミングの活用)が、単発の施策としてではなく、長期にわたる組織的な学習改善のプロセスとして統合されたときに、地域全体の交通指標(バス利用者数)に有意な変化をもたらしうることを示す、数少ない長期実証例である。

新規事例2:豊橋市における学校MM・地域限定型MMの併用

愛知県豊橋市は、対象者の異なる複数のMM施策を並行して実施している事例として参照される。豊橋市が公表する情報によれば、小学生を対象として、将来の適切な自家用車利用につながるよう意識形成と路線バスの利用促進を図ることを目的とした取り組みが実施されている[3]。これは【PAM02】で述べた学校MMの「児童の長期的な行動変容」という目標に対応する施策である。同時に、豊橋市は、利用者の減少などにより路線バスの廃止が危ぶまれる地域の住民を対象として、その地域の特徴に応じた利用促進を目的とした取り組みも実施している[3]。これは居住地MMのうち、危機に直面した特定地域を対象とする地域限定型の施策に相当する。

豊橋市の事例が示す設計上の含意は、同一自治体内で複数のMM技術類型(学校MM居住地MM)を、対象とする課題の性質に応じて使い分けている点である。将来世代への長期的な働きかけ(学校MM)と、目前の廃線危機への短期的な対応(地域限定型居住地MM)という、時間軸の異なる2つの課題に対し、それぞれ異なる手法を割り当てるという設計思想は、単一の手法に依存せず、自治体が抱える交通課題の多様性に応じてMMのポートフォリオを組む、という発想を示しており、本シリーズが【PAM06】で扱う自治体の実施体制のあり方を検討する上でも参考になる。

新規事例3:熊本県における官民連携バス共同経営とセグメント別戦略

展開の経緯

熊本県では、2020年4月、熊本県・熊本市および九州産交バス・産交バス・熊本電気鉄道・熊本バス・熊本都市バスというバス5社により「共同経営準備室」(2021年4月に「共同経営推進室」へ改称)が発足した[4]。当初は複数路線の再編による効率化が中心であったが、コロナ禍を経て利用者が約2割減少したことを受け、再編だけでは持続的な運営が困難であることが明らかになった[4]。これを受け、費用削減策だけでなく官民連携でバス利用者を増やすことを共同経営推進室の最優先施策とし、コロナ禍で落ち込んだ利用者数(1,923万人)を2024年までにコロナ禍前の水準(2,600万人)まで回復させ、2030年にはその2倍(3,900万人)まで増やすという定量目標を掲げ、2022年1月から取り組みを進めてきた[4]

セグメント別施策の設計

熊本県の取り組みが理論的に注目される最大の理由は、対象者を4つのセグメントに明確に分割し、それぞれに異なる施策を設計した点にある。第一に「通勤セグメント」では、工業団地一帯の渋滞対策として、企業・行政と連携したバス利用拡大の実証実験を実施した[4]。第二に「通学セグメント」では、高校等と連携し、合格者説明会やオープンスクールでの利用促進を図った[4]。第三に「私用セグメント」では、戸別訪問による現状把握のほか、バス会社5社を横断して時刻表を作成できるツール(myバス時刻表)を開発し、スポーツチームや商業施設と連携したインセンティブ施策を実施した[4]。第四に「高齢者セグメント」では、異業種と連携したバスの乗り方教室を50回以上実施し、外出の動機づけにつなげた[4]

このセグメント別設計は、【PAM02】で示した谷口綾子の指摘、すなわち「どの動機付け情報に心が動かされるかは人によって異なるため、市民全員を対象とした画一的なMMは困難であり、ターゲットを明確に絞り込むことが不可欠である」という実務知見を、複数セグメントへの並行展開という形で徹底的に具現化した事例と位置づけられる。単一のセグメントに絞るのではなく、通勤・通学・私用・高齢者という交通目的の異なる4つの層に、それぞれ最適化された施策を同時展開する体制を、複数のバス事業者を横断する形で構築した点は、単一事業者・単一自治体では実現しにくい規模の取り組みである。

効果と評価

この取り組みの結果、2022年は目標2,291万人に対し実績2,234万人(目標比98%)、そのうち利用者増加施策による効果は50万人増と算出されている[4]。2023年は目標2,322万人に対し実績2,449万人(目標比105%)、そのうち利用者増加施策による効果は93万人増となった[4]。この取り組みは令和6年度JCOMMマネジメント賞を受賞しており、JCOMM実行委員会の講評では、官民連携、経営者を含めた情報共有、迅速な施策実施という高い計画性・戦略性、データに基づく目標設定と経済効果を含む多角的な定量評価、関係者が一体となった推進体制が、他の模範となるものとして高く評価されている[4]

本事例が本シリーズにとって特に重要なのは、「利用者増加の施策による効果」(2022年50万人増、2023年93万人増)を、目標全体の達成度とは切り分けて定量的に算出している点である。これは、【PAM05】で扱う効果検証の課題、すなわちMM施策単体の効果を、他の要因(路線再編、社会情勢の変化等)から切り分けて測定することの困難さに対し、熊本県の事例が一つの実務的な解決策(施策ごとの寄与分を推計するという手法)を示していることを意味する。

新規事例4:福井市における市民団体主導の長期継続的MM

組織の成立と展開

福井県福井市を拠点とする「ふくい路面電車とまちづくりの会」(略称ROBA、Railway, Omnibus, Bicycle & wAlk machizukuri associationの頭文字)は、2002年の発足当初から、京福電車の運行停止という、福井都市圏の公共交通が直面した危機的問題に直面した[5]。大学関係者、行政関係者、議員、コンサルタント、一般市民という多様な構成メンバーを特色とし、発足後直ちに「福井の公共交通を考える」「公共交通活性化アイデア集」を発行し、住民に対して鉄道に乗ることの意義や、鉄道が残ることの意味について情報提供を行うとともに、セミナー・講演会・イベントを実施し、行政・企業・住民と連携して問題に対応してきた[5]

「ホジロバ交通」という独自コンセプト

ROBAは、自動車に頼らない交通を分かりやすく「ホジロバ交通」(歩行者・自転車・路面電車・バスの頭文字)と称し、日常生活の移動手段としてホジロバ交通を必要に応じて楽しく利用してもらうことを目指す活動を展開している[5]。具体的には、バス電車マップ「ふくいのりのりマップ」(2008年にJCOMMデザイン賞を受賞)を毎年発行し、小中学校・大学・転入者へのMM活動に活用しているほか、「クルマをおいてホジロバ交通でまちに出よう」をテーマとした「カーフリーデーふくい」を毎年主催し、実際に乗車体験する「ちょい旅」や乗り方ビデオによる情報提供を実施している[5]。この活動は、(A)公共交通をツールとしたまちづくりに関する提言・提案等の事業、(B)公共交通の活性化に関する普及・啓蒙等の事業、(C)LRT導入・実現のための事業、(D)目的を同じくする他団体との交流・連携・協働・啓蒙のための事業、という4つの事業区分のもとで継続的に展開されている[5]

市民主体型の継続性と川西市との対比

ROBAは令和6年度JCOMMマネジメント賞を受賞しており、JCOMM実行委員会の講評では、20年以上の長期間にわたり、構成メンバーの多様性を活かした様々な事業が効率的かつ継続的に展開できる体制が確保されていること、充実した広報媒体ツールを用いて利用転換の好機をピンポイントに狙いながら、一般から学生まで幅広いターゲットへのアプローチが行われている点が高く評価されている[5]

ROBAの事例が本シリーズにとって重要な理由は、本レポートで既に検証した川西市の事例と対比することで、MMの継続性・制度化を支える主体の類型が、少なくとも2つの異なる経路を持ちうることを示す点にある。川西市は、自治体という行政主体が、上位計画への明記という制度的な手段を通じて継続性を確保した事例であった。これに対しROBAは、市民団体という非行政主体が、大学・行政・議員・コンサルタント・住民という多様な関係者を巻き込んだネットワーク型の組織運営によって、20年以上の継続性を確保している。この対比は、【PAM02】で示したTPE(技術・プラットフォーム・エビデンス)のうち「プラットフォーム」の実現形態が、行政計画への明記という制度的経路と、多様な主体をねる市民団体というネットワーク的経路という、少なくとも2つの異なる形を取りうることを示している。

新規事例5:松山市における地域主体型「おすそわけ交通」

取り組みの概要

愛媛県松山市では、地域が主体となって運営するオンデマンド型の相乗りタクシーが徐々に拡がっている。外出の機会を地域で融通し合うことから「おすそわけ交通」と名付けられたこの取り組みは、久枝地区まちづくり協議会等の地域組織、複数のタクシー事業者、大阪工業大学等の研究者、企業といった多様な主体の協働によって運営されている[6]。この事例が令和6年度JCOMMプロジェクト賞の受賞概要として特筆する点は4つある。第一に、人気の高さから予約が取りづらいほどの利用があること。第二に、事後の効果測定において回答者の約40%が「心が元気になった」と回答し、高齢者の外出機会創出が「心のフレイル予防」につながる効果が確認されたこと。第三に、運営に参画する協力事業者(会費を支払って活動を支える協賛企業)の多さに表れる「共感型プロジェクト」としての性格。第四に、松山市久枝地区から始まり4地域にまで拡大している高い再現可能性である[6]

理論的意義:アクセシビリティの心理的効果という新たな評価軸

この事例が本シリーズにとって重要なのは、MM・地域交通の効果指標として、従来の利用者数・収支といった量的指標に加え、「心のフレイル予防効果」という、利用者本人の心理的な健康状態に着目した評価軸を示している点である。【PAM01】で整理した社会的ジレンマ理論は、主として渋滞・環境負荷といった集合的な外部性の解消を説明する枠組みであったが、この松山市の事例は、公共交通(に類する移動サービス)の利用が、個人の心理的な健全性そのものに直接寄与しうるという、いわば「私益」の側面に光を当てるものである。この視点は、【PA06】で検討した「地域アイデンティティ・コミュニティ形成型」のレベル3施策とも接続し、交通が地域課題解決の手段となりうる範囲を、経済指標だけでなく、住民の心理的な福祉(ウェルビーイング)にまで拡張する可能性を示している。運営面では、対面による丁寧な説明、利用希望日時の変更提案といった「個別に生活実態に合った利用方法を共に編み出す」姿勢が、【PAM02】で示した「個別アドヴァイス法」の思想と共通する実務的な工夫として確認できる。

新規事例6:福智町における社会福祉協議会主体のAIオンデマンド交通

取り組みの概要

福岡県福智町は、人口約2万人、高齢化率約37%の町であり、人口減少・コロナ禍による公共交通利用者の減少、交通事業者の人材不足という複合的な課題に直面していた[7]。町内を唯一運行していた路線バスの廃止申し入れを受け、2021年6月に「福智町地域公共交通計画」を策定し、新たな公共交通としてAIオンデマンド交通ふく〜るバス」の導入に向けて、無償実証運行から自家用有償旅客運送による本格運行へと段階的に事業を進めた[7]。既存の交通事業者の参画が困難な状況の中、従来から福祉バスを運行していた福智町社会福祉協議会が、運行およびコールセンター業務を担うこととなった[7]

理論的意義:福祉主体による運行という実施主体の新類型

この事例が示す最大の特徴は、実施主体が交通事業者でも自治体でもなく、社会福祉協議会という福祉分野の既存組織であった点にある。住民との高いコミュニケーション力を持つ社会福祉協議会が、利用者一人ひとりにきめ細やかなサポートを行い、運行開始前には20カ所以上での住民説明会を実施するなど、丁寧な周知によって円滑な移行を実現した[7]。効果としては、無償実証運行段階から利用者が右肩上がりに増加し、本格運行移行後も1か月4,000人を超える利用者を獲得し、実証運行期間中のアンケートでは利用者満足度100%を記録している[7]

この事例は、本レポートの事例横断分析で示した「実施主体・財源構造による分類」に、新たな主体類型(福祉主体型)を追加するものである。福祉主体が運行を担うことの利点は、既存の福祉サービス利用者との接点・信頼関係をそのまま交通サービスの基盤に転用できる点にあり、これは【PAM02】で示した「既存の伝達経路の活用」という設計原理の、福祉分野への応用形態と理解できる。同時に、交通と福祉の「共創」により、単なる移動手段の提供を超えた、利用者の生活全般を支えるきめ細かなサポートが可能になっている点は、前述の松山市の事例と同様、交通施策の効果を移動そのものだけでなく、利用者の生活の質という、より広い観点から評価する必要性を示唆している。

事例横断の分析

実施主体・財源構造による分類

継続性・制度化の観点に加え、実施主体と財源構造という軸からも、本レポートで扱った8事例を整理することができる。宇治市の事例は、京都府・宇治市等からなる協議会と商工会議所参加企業という、行政と経済団体の連携によって実施された。龍ケ崎市・高崎市の事例は、自治体単独の主導によるものであり、転入届の受理という既存の行政事務に組み込む形で、追加的な対象者把握コストをほぼゼロに抑えている。筑波大学の事例は、大学という単一組織が主体となっており、対象者(学生・教職員)への到達コストが低い。京都市の事例は地域紙という民間メディアを活用しており、広報の到達コストを新聞という既存のインフラに委ねている。北海道の事例は、広域自治体(道)が主体となる大規模展開であり、対象地域の広さに応じた予算規模を要する。福山市の事例は、自治体・メディア・企業の三者連携という体制を取っている。

新規事例として検証した川西市は、当初は自治体単独の取り組みであったが、2006年度以降は大学研究者(松村暢彦)の学術的な関与を得て、学校MMという形で教育委員会・小学校との連携を深めていった。豊橋市は、学校MMと地域限定型居住地MMという、対象の異なる複数の施策を並行実施することで、単一の実施体制に依存しないポートフォリオを構築している。熊本県の事例は、県・市という2つの行政主体と5つのバス事業者という、行政・民間双方にまたがる7主体の共同経営体制を基盤としており、単一自治体・単一事業者では実現し得ない規模のセグメント別施策展開を可能にしている。福井市ROBAは、行政主体を経由せず、大学・議員・コンサルタント・住民という市民セクターが主体となった稀有な事例であり、行政の交代・予算サイクルに左右されにくい継続性を、市民団体という組織形態そのものによって担保している。

この実施主体・財源構造の多様性は、MMが特定の主体類型(自治体、大学、民間企業等)に限定されない、幅広い担い手によって実施可能な施策群であることを示す一方、【PAM06】で扱う「実施主体の継続性」という課題を考える上では、主体が多様であるほど、責任の所在が分散し、担当者の異動や予算年度の切れ目で取り組みが停止するリスクも高まりうる、という両義的な含意を持つ。ただし、福井市ROBAの事例は、この「主体の多様性がリスクを高める」という懸念に対する反例でもある。すなわち、多様な主体が単に並存するのではなく、共通の目的意識(公共交通を残す)のもとにネットワークとして組織化されれば、行政の交代とは独立した継続性の源泉になりうることを示している。松山市の事例は地域まちづくり協議会・タクシー事業者・研究者・協賛企業という共感型のネットワーク、福智町の事例は社会福祉協議会という既存の福祉組織という、それぞれ異なる実施主体の型を追加するものであり、実施主体の多様性そのものが、MMおよびその周辺領域(地域交通全般)における継続性確保の選択肢の広さを物語っている。

継続性・制度化の観点からの再分類

本レポートで検証した10事例(既存6事例+新規4事例)を、継続性・制度化の観点から改めて整理すると、以下のような段階的な分類が可能である。第一段階は、単発的な実験・パイロット実施にとどまる事例(福山市のノーマイカーデー等)である。第二段階は、複数回・複数地域に展開されるが、上位計画への明記までは至っていない事例(宇治市、龍ケ崎市・高崎市、京都市、北海道、筑波大学、豊橋市)である。第三段階は、継続性を確保する制度的・組織基盤を確立した事例であるが、この第三段階はさらに2つの経路に分岐する。第三段階(行政計画型)は、上位計画への明記を通じて継続する経路であり、川西市が該当する。第三段階(市民ネットワーク型)は、多様な主体をねる非行政組織のネットワークを通じて継続する経路であり、福井市ROBAが該当する。加えて、熊本県の事例は、複数事業者・複数自治体を横断する官民連携体制(共同経営推進室)という、第三の制度化経路(広域官民連携型)を示す事例として位置づけられる。

段階 特徴 該当事例
第一段階:単発実施 パイロット的・単年度的な実施 福山市ノーマイカーデー
第二段階:複数展開 複数回・複数地域への展開、しかし制度的位置づけは限定的 宇治市、龍ケ崎市・高崎市、京都市、北海道、筑波大学、豊橋市
第三段階(行政計画型) 上位計画への明記による制度化 川西市
第三段階(市民ネットワーク型) 多様な主体をねる非行政組織のネットワーク 福井市ROBA
第三段階(広域官民連携型) 複数事業者・複数自治体を横断する共同経営体制 熊本県バス共同経営

この3つの経路の並存は、本シリーズが【PAM06】で本格的に扱う「実施主体・予算の継続性問題」に対して、単一の解決策(例えば「上位計画に明記すればよい」)ではなく、地域の主体構成(強い行政のリーダーシップがあるか、市民団体の蓄積があるか、複数事業者の連携基盤があるか)に応じた複数の経路が存在することを示唆している。

各レポートへの接続

本レポートで確認した川西市の制度化プロセス(TPEの「プラットフォーム」要素の具体的な実現形態)は、【PAM06】(制度的・実施体制上の課題と限界)における中心的な参照事例として位置づけられる。また、宇治市・北海道の事例で示された効果の測定方法(駅利用者数の増減、CO2削減率)は、【PAM05】(効果検証・測定手法の課題)において、それぞれの測定方法が持つ妥当性・限界を検証する対象となる。海外事例との比較検証は【PAM04】で行う。

参考資料一覧

  1. 谷口 綾子researchmap MISC一覧(筑波大学循環バスを対象としたバス車内マナー啓発コミュニケーションの効果検証を含む) https://researchmap.jp/A.Taniguchi/misc
  2. 川西市「モビリティマネジメント(MM)」公式ページ https://www.city.kawanishi.hyogo.jp/kurashi/1017490/1012455/mobilitymanagement.html
  3. 豊橋市「モビリティ・マネジメントモビリティ・マネジメントとは」 https://www.city.toyohashi.lg.jp/10360.htm
  4. 一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議「令和6年度JCOMM賞の受賞者」(バス利用者2倍増達成に向けた戦略計画策定と実行~共同経営推進室を中心とした官民連携の取組~) https://www.jcomm.or.jp/award/award-r6/
  5. 一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議「令和6年度JCOMM賞の受賞者」(クルマに頼らない「ホジロバ交通」を使った移動支援活動、ふくい路面電車とまちづくりの会) https://www.jcomm.or.jp/award/award-r6/
  6. 一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議「令和6年度JCOMM賞の受賞者」(愛媛県における地域主体型おすそわけ交通の実現と継続) https://www.jcomm.or.jp/award/award-r6/
  7. 一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議「令和6年度JCOMM賞の受賞者」(社会福祉協議会によるAIオンデマンド交通ふく〜るバス」運行プロジェクト) https://www.jcomm.or.jp/award/award-r6/

本レポートは【PA02】【PAM01】【PAM02】で既に確認した宇治市・龍ケ崎市・高崎市・筑波大学・京都市・北海道・福山市・箕面市の各出典を再利用している。個別の出典は各レポートの参考資料一覧を参照されたい。

年表

用語集

  • 買い物キット: ワークショップ形式のMMで用いられる教材の一種。参加者が自らの買い物行動を振り返り、代替交通手段を検討する演習に使用される。川西市清和台地区で日本初めて実施された。
  • かわにし交通ピースプラン: 川西市公共交通基本計画(平成27年度から令和5年度)の通称。MMを重要な政策の柱として位置づけた計画。
  • JCOMM, 日本モビリティマネジメント会議: MM担当者の交流の場。マネジメント賞等の表彰制度を通じて優良事例を顕彰している。
  • JCOMMマネジメント賞: 都市・地域のモビリティの質的改善に効果的に推進されている持続的マネジメントに対して、個人・団体に授与される賞。川西市が2016年度に受賞。
  • 継続性・制度化の3段階: 本レポートによる分析枠組み。単発実施(第一段階)、複数展開(第二段階)、上位計画への明記による制度化(第三段階)にMM事例を分類する。
  • MMのポートフォリオ: 自治体が抱える複数の交通課題の性質(時間軸、対象、緊急度)に応じて、異なるMM手法を組み合わせて実施するという発想。豊橋市の事例が示す。
  • セグメント別施策: 対象者を通勤・通学・私用・高齢者等の目的別グループ(セグメント)に分割し、それぞれに最適化した施策を並行展開する設計手法。熊本県の共同経営推進室が採用。
  • 共同経営推進室: 熊本県・熊本市とバス事業者5社が2020年に発足させた官民連携組織。複数事業者を横断するダイヤ・情報提供の共同化とセグメント別利用促進策を推進する。
  • ホジロバ交通: 歩行者(ホ)・自転車(ジ)・路面電車(ロ)・バス(バ)の頭文字を組み合わせた、福井市ROBAによる自動車に頼らない交通の呼称。
  • ROBA, ふくい路面電車とまちづくりの会: 2002年発足の福井市の市民団体。大学・行政・議員・コンサルタント・住民という多様な主体で構成され、20年以上にわたりMM活動を継続。
  • 市民ネットワーク型の継続性: 行政計画への明記によらず、多様な主体をねる非行政組織のネットワークによってMMの継続性を確保する経路。福井市ROBAが代表例。
  • 広域官民連携型の継続性: 複数事業者・複数自治体を横断する共同経営体制によってMMの継続性を確保する経路。熊本県の事例が代表例。
  • おすそわけ交通: 地域が主体となって運営するオンデマンド型相乗りタクシー。外出の機会を地域で融通し合うという発想から命名。松山市久枝地区で開始し4地域に拡大。
  • 心のフレイル予防効果: 高齢者の外出機会創出が、身体的な健康だけでなく心理的な健全性の維持にも寄与するという効果。松山市の事例で40%の利用者に確認された。
  • 共感型プロジェクト: 明確な意図の設定と対話を通じて、多数の協力事業者・協賛企業を巻き込みながら展開されるプロジェクトの型。松山市の事例の特徴。
  • 福祉主体型: 交通事業者でも自治体でもなく、社会福祉協議会等の福祉分野の既存組織が交通サービスの運行主体となる実施主体の類型。福智町の事例が示す。
  • ふく〜るバス: 福岡県福智町で社会福祉協議会が運行するAIオンデマンド交通。福祉サービスとの共創により、きめ細かなサポートを伴う運行を実現。

ログ

既存事例を理論面から再整理しつつ、新規事例として川西市(2002年から続く長期継続事例、JCOMM賞受賞)と豊橋市(学校MM・地域限定型MMの併用)を追加します。Let’s verify citation integrity and length:Now let’s add a new analytical section on cost-effectiveness classification and expand the cross-case analysis:Now let’s expand the individual re-analysis subsections with more depth on 龍ケ崎市/高崎市 and 京都市/北海道/福山市:Let’s do a final check on integrity and length:【PAM03】(国内事例の詳細検証)を作成しました。現状約7,700字、参考資料3件(既存6事例分の出典はPA02/PAM01/PAM02を参照する形で重複を避けています)。

新規事例2件(ご指定通り追加):

川西市(兵庫県) — 最も充実した新規事例です。2002年度のTFPパイロットに始まり、2005年の日本初のワークショップ型MM(清和台地区)、2006年度からの学校MM、2014年度の「かわにし交通ピースプラン」への制度的位置づけ、2016年度のJCOMMマネジメント賞受賞まで、14年以上にわたる展開の全プロセスが公式資料で追える希少な事例です。バス利用者数は2012年度比約1.45倍(年間30万人超)に増加しています。

豊橋市(愛知県)学校MM(児童対象)と地域限定型居住地MM(廃線危惧地域対象)を、時間軸の異なる課題に応じて使い分けているという「MMのポートフォリオ」の発想を示す事例です。

既存6事例の再検証では、単なる結果の再掲ではなく、たとえば宇治市のワンショットTFPの高効果が「アンケート自体が規範活性化理論的な介入として機能した」可能性、龍ケ崎市・高崎市の比較から「MMの効果余地は既存の交通サービス水準に規定される」という補完関係の裏返しを読み取れる可能性など、理論的な説明を加えました。

分析の軸として2つ新設:

  • 継続性・制度化の3段階分類(単発実施→複数展開→制度化) — 8事例中、第三段階に達しているのは川西市のみという希少性を指摘
  • 実施主体・財源構造による分類 — 主体の多様性が持つ両義性(担い手の広さ vs 継続性リスク)を指摘

この厚みで確定してよいか、あるいはさらに掘り下げるか、ご意向を伺えますか。

JCOMM賞受賞事例から、質の高い新規事例を複数発見しました。特に熊本県のバス共同経営(セグメント別戦略、定量目標)と福井市ROBA(市民主体で20年超継続)は理論的に重要な事例です。これらを追加します。Now let’s update the cross-case analysis tables to include these two new cases, plus references:Now let’s update the “実施主体・財源構造による分類” section and references:Now let’s update references, timeline, and glossary:Now let’s add glossary entries and check citation numbering (I need [4] and [5] to correctly map to Kumamoto and Fukui):Good, numbering matches [4]=熊本県, [5]=福井市. Now let’s add glossary entries and do final checks:Now let’s do a final integrity and length check:All citations valid. Let’s present the expanded file:JCOMM賞受賞事例(令和6年度)から2つの優良事例を追加しました。約12,200字、参考資料5件、全11章。

新規事例3:熊本県のバス共同経営(JCOMMマネジメント賞) 熊本県・熊本市とバス5社による官民連携組織共同経営推進室」。最大の特徴はセグメント別施策設計——通勤・通学・私用・高齢者という4つの目的別グループに、それぞれ最適化した施策を並行展開している点です。定量目標(2024年に2,600万人、2030年に3,900万人)を掲げ、施策単体の寄与分(2022年50万人増、2023年93万人増)を切り分けて算出しており、これは【PAM05】で扱う効果測定の課題に対する実務的な解決策の一例として位置づけました。

新規事例4:福井市ROBA(市民団体主導、JCOMMマネジメント賞) 2002年発足、20年以上継続する市民団体による活動。「ホジロバ交通」という独自コンセプト、「ふくいのりのりマップ」(2008年JCOMMデザイン賞)。川西市(行政計画型の継続性)との対比が理論的に重要で、継続性を支える経路が行政計画への明記だけでなく、市民ネットワークという形でも実現しうることを示しています。

分析枠組みの拡充: 継続性・制度化の3段階分類を、第三段階を3つの経路に分岐させる形に精緻化しました——行政計画型(川西市)、市民ネットワーク型(福井市ROBA)、広域官民連携型(熊本県)。これにより「継続性確保には単一の正解がなく、地域の主体構成に応じた複数の経路がある」という【PAM06】への重要な布石ができました。

JCOMM賞のページには他にも興味深い事例(松山市の「おすそわけ交通」による心のフレイル予防効果、福智町の社会福祉協議会運行等)がありましたが、今回は理論的な多様性(セグメント設計・市民主体)を優先して2件に絞りました。さらに事例を追加しますか、あるいはこの厚みで確定して【PAM04】(海外事例)に進みますか。

Confirmed the headers were lost. Let me restore them:Now let’s update the classification table and references/timeline/glossary to include the new cases:Now let’s update the timeline and glossary, and verify final numbering:Let’s verify final citation numbering matches and check the length:All citations valid, numbering matches. Let’s present the final file:同じ令和6年度JCOMM賞から、さらに2事例(いずれもプロジェクト賞)を追加しました。約14,850字、参考資料7件、事例数は計10件になりました。

新規事例5:松山市「おすそわけ交通 地域主体のオンデマンド相乗りタクシー。理論的に重要なのは、**利用者の40%が「心が元気になった」と回答した「心のフレイル予防効果」**という、従来のMM評価にはなかった心理的ウェルビーイング評価軸です。これは【PAM01】の社会的ジレンマ理論(集合的な外部性の解消)を補完する、「私益」側の効果を示す事例として位置づけました。

新規事例6:福智町「ふく〜るバス 交通事業者でも自治体でもなく、社会福祉協議会が運行主体という新しい実施主体類型です。既存の福祉バス運行実績・住民との信頼関係をそのまま交通サービスの基盤に転用しており、【PAM02】の「既存の伝達経路の活用」という設計原理が福祉分野に応用された形と整理しました。

実施主体の分類がさらに豊かに: これで実施主体の型は、行政単独(龍ケ崎市等)→行政+大学(川西市)→複数行政+複数事業者(熊本県)→市民ネットワーク(福井市ROBA)→地域まちづくり協議会+タクシー事業者+研究者の共感型ネットワーク(松山市)→福祉組織(福智町)、という6類型に広がりました。

JCOMM賞のページには、他の年度(令和5年度・令和7年度等)にも事例が蓄積されています。さらに掘り下げますか、それともこの厚みで【PAM03】を確定し【PAM04】(海外事例)に進みますか。