【PAM01】では、モビリティ・マネジメント(MM)の理論的基盤(社会的ジレンマ、態度と行動のギャップ、合理的行動理論・計画的行動理論・規範活性化理論、ナッジ理論との異同)を整理した。本レポート【PAM02】は、その理論的基盤の上に、実際にMMがどのような手法として設計・実装されているかを、手法ごとに詳細に検証する。理論を「なぜMMが効くと考えられるのか」という説明原理として理解した上で、本レポートでは「実際にどう設計すれば効果が期待できるのか」という実務的な設計原理に焦点を当てる。
MMの実務的な設計原理を扱う入門書としては、藤井聡・谷口綾子による『モビリティ・マネジメント入門―「人と社会」を中心に据えた新しい交通戦略』が代表的な文献として位置づけられる[7]。同書は、モビリティ・マネジメントを「過度に自動車に頼る状態から多様な交通手段を適度に利用する状態へと少しずつ変えていく一連の取り組み」と定義し、「車に頼らない社会をつくる」といった非現実的な理想論とは一線を画す、実務志向の性格を持つことが特徴とされる[7]。また、単発の「ノーマイカーデー」のような取り組みとMMを明確に区別しており、この区別は、本レポートで扱う「イベント型MM」がなぜ持続的な行動変容という点で限界を持つかを理解する上でも参考になる[7]。京都大学藤井研究室が公開する文献アーカイブには、こうしたMM関連の学会発表・論文が体系的に蓄積されており、本レポートで参照する複数の実証研究も、この蓄積の一部として位置づけられる[5]。
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※ラジオの読み間違い 竜ヶ崎市(誤:りゅうけさきし、正:りゅうがさきし)、勘所(誤:かんしょ、正:かんどころ)
目次
MM技術体系の全体像:3つの対象類型
MMの実務における技術体系は、対象とする主体の違いに応じて、大きく3つの類型に大別される。第一に、地域住民全般の全般的な行動変容を狙いとする「居住地MM」である。第二に、通勤交通および業務交通の行動変容を狙いとする「職場MM」である。第三に、児童の長期的な行動変容と、その保護者の短期的な行動変容の両方を狙いとする「学校MM」である[1][2]。この3類型による整理は、筑波大学大学院教授(現職)の谷口綾子による講演「モビリティ・マネジメントのココロ」で示されたものであり、藤井聡とともにMM研究を牽引してきた谷口の実務的な知見を反映した分類である[1][2]。谷口は土木工学科交通工学講座で高速道路渋滞シミュレーションの研究から出発し、都市環境工学科交通計画講座でMM研究に転じ、建設コンサルタントでの6年間の実務経験を経て、日本学術振興会特別研究員、東京工業大学、筑波大学、カールスタッド大学(スウェーデン)客員研究員という経歴を持つ[9]。
本レポートは、この3類型(居住地MM・職場MM・学校MM)を横軸に、【PAM01】で示した手法の時間構造(単発型・継続型)を縦軸に据えて、TFP、ワンショットTFP、転入者対象MM、職場・学校単位MM、イベント型MMという主要手法それぞれの設計原理を検証する。
TFPの設計原理
手続きの基本構造
【PAM01】で述べた通り、TFP(トラベル・フィードバック・プログラム)は、対象者本人の交通行動記録(ダイアリー調査)に基づき、個別化されたアドヴァイスやフィードバックを提供する手法である[10]。その基本的な手続きは、(1)対象者に一定期間の交通行動日誌を記録してもらう調査段階、(2)そのデータを分析し、対象者個人の交通行動の特性・自動車依存の程度・代替可能な公共交通の選択肢を抽出する分析段階、(3)分析結果に基づいた個別のアドヴァイスを対象者本人にフィードバックする介入段階、という3段階から構成される。この3段階構造こそが、画一的な広報活動とTFPとを分かつ核心的な設計原理である。
転換意向別アドヴァイス型と個別アドヴァイス型
藤井らの2003年の研究による分類に従えば、TFPは(1)転換意向別アドヴァイス型、(2)個別アドヴァイス型、という2つの型に大別される[10]。転換意向別アドヴァイス型は、対象者が公共交通への転換にどの程度の意向を持っているかに応じて、提供するアドヴァイスの内容・強度を変える設計である。例えば、既に転換に前向きな層には具体的な行動プランを、無関心層には基本的な動機づけ情報を、というように、対象者の意向の段階に応じてメッセージを最適化する。個別アドヴァイス型は、対象者本人の交通行動の実態(自宅・職場の位置、日々の移動パターン)そのものに基づいて、個別のアドヴァイスを構築する設計であり、対象者の意向の段階よりも、行動データの個別性を重視する点で、前者とアプローチを異にする。実務上は、この2つの型を組み合わせ、まず対象者の意向段階を把握した上で、行動データに基づく個別アドヴァイスを重ねるという、複合的な設計が取られることも多い。
手続き簡略化という設計上の判断
【PAM01】で触れた通り、従来のTFPは1週間分のダイアリーデータの記録を要する、比較的手間のかかる手続きであった[11]。この手続きの重さは、対象者の協力を得ることの難しさ、および大規模な対象者への展開の困難さという、2つの実務上の制約を生む。この制約に対応するため、1週間分のダイアリーデータに基づくアドヴァイス提示という手続きを、1日分のダイアリーデータに簡略化する設計変更の効果が検証されており、大阪市西淀川区の住民を対象とした心理学的実験(N=103)の結果、1日間に短縮した場合でも、平日の自動車利用削減効果が有意に確認されたと報告されている[11]。この知見は、TFPの設計において、「精度の高い個別化」と「実施コストの低さ」のトレードオフが存在し、対象者数・予算規模に応じて、このトレードオフの最適な落としどころを選択するという設計判断が求められることを示している。
ワンショットTFPの設計原理
簡略化の徹底とその意義
ワンショットTFPは、前述の手続き簡略化の発想をさらに徹底し、複数回にわたる調査・フィードバックのプロセスを、単発の情報提供・アドヴァイスにまで圧縮した手法である。ダイアリー調査そのものを省略し、対象者の属性情報(居住地、勤務先、家族構成等)から推定される交通行動パターンに基づいて、簡略化された個別アドヴァイスを一度だけ提供する、という設計が典型的である。この設計は、TFPが本来持つ「個別化」という中核的な価値を薄めるトレードオフを伴うが、その代わりに、大規模な対象者への一斉展開を可能にするという利点を持つ。
効果の程度と適用場面
ワンショットTFPは、完全な個別化を伴うTFPと比較すれば、行動変容の効果の大きさ・持続性において劣ると予想されるが、実施コストの低さから、地域限定型MM(自治体が一定地域の全世帯を対象に実施するMM)において、現実的な選択肢として広く採用されてきた。【PAM01】で示した「広さ」と「深さ」のトレードオフに照らせば、ワンショットTFPは「広さ」を優先した設計であり、限られた予算の中で対象者数を最大化したい場合に選択される手法として位置づけられる。
転入者対象MM(居住地MMの一類型)の設計原理
なぜ転入直後が行動変容の好機とされるのか
転入者対象MMは、居住地MMの一類型として位置づけられ、住居を新たに変更した直後の住民を対象に実施される。この手法が理論的に重視される背景には、人間の行動、とりわけ通勤・通学のような反復的な移動行動が、一度確立されると習慣化し、意識的な検討を経ずに自動的に選択されるようになる、という心理学的な知見がある。転居という生活環境の根本的な変化は、この既存の習慣を強制的に解体し、対象者が改めて交通手段を意識的に選択せざるを得ない状態を作り出す。この「習慣が一時的に解体される」タイミングを捉えて情報提供を行うことで、通常であれば習慣として自動車を選択し続けたであろう人々に対しても、公共交通という選択肢を検討の俎上に載せることが可能になる、というのが転入者対象MMの基本的な設計思想である。
高崎市・龍ケ崎市における効果分析
転入者対象MMの効果を検証した代表的な研究として、島田絹子・谷口綾子・藤井聡による2008年の研究「高崎市および龍ケ崎市における転入者対象モビリティ・マネジメントの効果分析」が挙げられる[3]。この研究は、群馬県高崎市と茨城県龍ケ崎市という、性格の異なる2つの地方都市における転入者対象MMの効果を比較検証したものであり、【PA02】で確認した龍ケ崎市の事例(バス利用が最大8倍に増加)とも関連する研究蓄積の一部をなす。転入者対象MMが自治体の窓口業務(転入届の受理等)のタイミングと連動して実施される場合、追加的な対象者の把握コストがほぼゼロで済むという実務上の利点も持ち、この点は【PAM06】で扱う実施体制上の課題(予算・人員の制約)への一つの解決策としても位置づけられる。
居住地選択への応用
転入者対象MMのさらに先進的な展開として、谷口綾子・浅見知秀・藤井聡・石田東生による「公共交通指向型居住地選択に向けた説得的コミュニケーションの効果分析」という研究が存在する[4]。これは、転入後の交通行動を変えるのではなく、転入そのもの(住居選択)の段階に遡って、公共交通指向型のライフスタイルを選択するよう促す、より上流の段階への介入を試みたものである。この発想は、【PA04】【PA06】で扱ってきた「交通を地域課題解決の手段として位置づける」レベル3的な発想と、理論的に接続する。すなわち、居住地選択という都市構造そのものに関わる意思決定に、MMのコミュニケーション手法を応用するという展開は、MMがレベル1(交通単独の利用促進)を超えて、都市計画・地域経営の文脈へと拡張されうる可能性を示している。
職場MM・学校MMの設計原理
職場MM:通勤・業務交通への働きかけ
職場MMは、通勤交通および業務交通の行動変容を狙いとする手法である[1][2]。組織単位で実施することの利点は、(1)対象者への到達が組織の既存のコミュニケーション経路(社内報、朝礼、イントラネット等)を通じて効率的に行えること、(2)同僚同士の同調圧力・相互観察が働きやすく、個人単位の働きかけよりも行動変容が促進されやすいこと、(3)企業側にとってもCSR(企業の社会的責任)や働き方改革の文脈で取り組む動機付けが存在すること、の3点に整理できる。国の交通政策特別委員会の提言報告書が、事業所に対してCSRの一環として自動車通勤等利用調整計画を導入すべきと提言していたことは、この職場MMの制度的な位置づけを裏付けている[6]。
職場MMの設計における実務上の論点として、対象者(従業員)が自らの意思で通勤手段を選択している場合と、会社の通勤手当制度・駐車場の有無といった構造的要因によって事実上選択が制約されている場合とで、MMが有効に機能する範囲が異なる点が挙げられる。後者の場合、心理的方略であるMMだけでは行動変容を引き出すことが難しく、通勤手当制度の見直しや駐車場政策といった構造的方略との組み合わせが不可欠になる。この点は、【PAM01】で整理した「構造的方略と心理的方略の補完関係」が、職場MMという具体的な文脈においてどのように現れるかを示す好例である。
学校MM:児童と保護者への二段階の働きかけ
学校MMは、児童の長期的な行動変容と、その保護者の短期的な行動変容という、2つの異なる時間軸を持つ目標を同時に狙う点に特徴がある[1][2]。児童期における交通行動・環境意識の形成は、成人後の交通行動パターンに長期的な影響を与えると考えられており、学校MMは、児童に対する交通安全教育・環境教育を通じて、将来にわたる望ましい交通行動の素地を形成することを狙う。同時に、送迎という形で子どもの通学に日常的に関わる保護者に対しては、より短期的な行動変容(自動車での送迎から徒歩・公共交通への転換等)を促すことが期待される。この二段階構造は、単一の対象者・単一の時間軸を想定する他の手法類型と比較して、より複雑な設計を要する。
学校MMのもう一つの特徴は、児童という対象者を通じて、間接的に家庭全体(保護者、場合によっては祖父母世代)の交通行動・環境意識に働きかけられる可能性を持つ点である。児童が学校で学んだ内容を家庭に持ち帰り、家族との会話の中で発信することで、学校MMが直接の対象としていない家族構成員にまで、副次的な波及効果が及ぶことが期待される。この波及効果の存在は、学校MMの費用対効果を評価する際に、直接の対象者(児童・保護者)だけでなく、より広い波及範囲を考慮する必要があることを示唆しており、この論点は【PAM05】の効果測定手法の検証において改めて取り上げる。
個人レベルの行動変容と集計レベルの政策目標の区別
MMの設計原理を検討する上で見落とされがちなのが、「個人レベルの行動変容」と「集計レベルの政策目標」という、2つの異なる次元の区別である。大阪府箕面市がとりまとめたMM取り組み方策資料は、この点を明確に指摘している。同資料によれば、MMの目標は、一部の人たちだけの意識や行動が変わることにあるのではなく、交通量や渋滞長、あるいは公共交通の利用者数といった集計的な値が変化し、都市や交通の諸問題の解決に資することにある[12]。この指摘は、個々の対象者に対する丁寧な個別アドヴァイスの提供(TFP的なアプローチ)と、都市全体・地域全体の交通量を有意に変化させるという政策目標との間に、規模の隔たりが存在することを示唆している。
この規模の隔たりゆえに、MMの取り組みは大規模かつ多面的なものとなる必要がある一方、実務上は財源にも人的資源にも制約が存在するという、根本的なジレンマに直面する[12]。すなわち、TFPのような高度に個別化された手法は、個人レベルでは高い効果を示しうるが、限られた予算・人員のもとでは対象者数を十分に確保できず、都市全体の交通量という集計レベルの指標に有意な変化をもたらすには至らないという構造的な限界を抱える。この「個人レベルの効果の大きさ」と「集計レベルでの政策的インパクト」との間のギャップは、手法選択における実務上最も重要な判断基準の一つであり、本レポートが示した「広さ」と「深さ」のトレードオフ(【PAM01】参照)を、政策評価の水準においてさらに具体化したものと言える。
宇治市におけるワンショットTFPの具体的手続き
ワンショットTFPの具体的な実施手続きを示す事例として、京都府宇治地域における2005年の取り組みが参考になる。宇治地域は3つの鉄道路線が整備され、各駅周辺に大規模な事業所が立地する一方、自家用自動車通勤者が多く朝夕の道路混雑が生じていた地域である[13]。この地域では、商工会議所に参加する企業に協力を依頼し、全従業員に対してワンショットTFPを実施した。具体的には、京都府や宇治市等からなる協議会が、自動車以外の通勤を呼びかける冊子と地域の公共交通マップを、アンケート票とともに配布するという手続きが取られた[13]。
この事例で注目すべきは、アンケートの目的が、同封した冊子やマップの感想を尋ねることでそれらに実際に目を通してもらうことを促し、自動車以外の具体的な通勤方法を自由記述させる点にあり、これは厳密な効果測定のための「調査」というよりも、対象者に「通勤を考え直すきっかけ作り」をしてもらうことそのものを主目的としたものであったとされる[13]。この設計思想は、ワンショットTFPが完全なTFPと比べて測定精度を犠牲にする一方、アンケートという形式そのものを、対象者の内省を促す心理的な介入手段として活用するという、独自の設計上の工夫を示している。すなわち、アンケートは単なるデータ収集の手段ではなく、それ自体が「回答者に自分の交通行動を振り返らせる」というMMの心理的方略の一部として機能している。この設計思想は、【PAM01】で述べた規範活性化理論における「結果認知」の喚起を、調査票という形式を通じて実現する巧妙な手法と理解できる。
イベント型・地域限定型MMの設計原理
イベント型MMは、比較的低コストで実施できる一方、効果の持続性に課題があるとされる手法である。単発のキャンペーンやイベント(公共交通の無料乗車デー、ノーマイカーデー等)を通じて、対象者に公共交通を「一度体験してもらう」ことを主眼とする。この設計の理論的な根拠は、実際に体験することで、公共交通に対する誤った先入観(不便、複雑、遅い等)を払拭し、その後の自発的な利用につながる可能性があるという期待にある。ただし、この期待が実証的にどこまで裏付けられるかについては、【PAM05】で扱う効果検証の課題(近江鉄道のイベント収支に関する分析事例等)において、批判的に検討する必要がある。
コミュニケーション形態の設計選択:全戸訪問型・郵送配布型・対人接触型
地域限定型MMを実施する際、対象世帯とのコミュニケーション形態には、複数の選択肢が存在する。第一に、調査員が各世帯を訪問し、対面で説明・資料配布・アンケート回収を行う全戸訪問型である。この形態は、対象者との信頼関係を構築しやすく、質問への即時対応が可能である一方、実施に要する人件費・時間コストが大きい。第二に、郵送または配布によって資料を届け、返信用封筒等でアンケートを回収する郵送配布型である。この形態はコストを抑えられる一方、対面型と比べて回収率・対象者の真剣な取り組み度合いが低下する傾向があるとされる。第三に、イベント会場や交通結節点(駅前等)での対人接触を通じて実施する対人接触型である。この形態は、既に外出している人々を対象とするため、公共交通への一定の親和性を持つ層にアプローチしやすい反面、自動車利用への依存度が高く外出頻度の低い層には届きにくいという偏りを持つ。
この3つの形態の選択は、【PAM01】で述べた「個別化の程度」と「実施コスト」のトレードオフの、コミュニケーション経路における具体的な現れである。全戸訪問型は個別化の程度が最も高く、対人接触型・郵送配布型はその逆順に個別化の程度が下がる。この設計選択は、【PAM05】で扱う効果測定における選択バイアスの問題(訪問に協力する世帯自体が、そもそも公共交通に関心の高い層に偏っている可能性)とも密接に関連しており、コミュニケーション形態の選択そのものが、測定される効果の見かけ上の大きさに影響を与えうる点に留意が必要である。
MM成功のための実務的設計原則
5つの勘所
谷口綾子の講演「モビリティ・マネジメントのココロ」では、MMの実務設計における「5つの勘所」が提示されている。すなわち、(1)動機付け(なぜ自動車利用を控えるべきかを理解してもらう)、(2)公共交通情報、(3)行動プラン、(4)公共交通へのポジティブなイメージ形成、(5)イメージ戦略、の5つである[1][2]。この5つのうち特に重要とされるのが(1)(2)(3)であり、なかでも(2)公共交通情報と(3)行動プランは、従来紙ベースで提供されることが多く、実施に手間がかかっていたとされる[1][2]。この2つの勘所を、デジタル技術・MaaSアプリがどのように支援しうるかについては、後述する。
動機付け情報の設計にあたっては、渋滞による経済損失、CO2排出量、健康への影響、自動車の維持費、都市空間の専有、交通事故リスク、そして幼少期の自動車利用が将来の傲慢性に及ぼす影響など、多様な切り口が存在するとされる[1][2]。重要なのは、どの動機付け情報に心を動かされるかは人によって異なるため、MMにおいてはターゲットを明確に絞り込むことが不可欠であるという指摘である[1][2]。市民全員を対象に画一的な動機付けを行うことは実務上困難であり、この点は【PAM01】で述べた「個別化」の理論的要請と、実務上の知見が一致する箇所である。
5つの勘所と心理学理論との対応関係
この5つの勘所は、実務家の経験則として提示されたものであるが、【PAM01】で整理した心理学理論と対応づけて理解することで、その理論的な妥当性を確認することができる。(1)動機付けは、規範活性化理論における「結果認知」(自分の行動がもたらす結果を認識すること)に対応する。単に「公共交通に乗りましょう」と呼びかけるのではなく、自動車利用がもたらす渋滞・環境負荷・健康影響といった結果を具体的に認識させることが、行動変容の前提条件となる。(2)公共交通情報と(3)行動プランは、計画的行動理論における「知覚行動制御」を高める働きかけに対応する。時刻表や経路情報、具体的な乗り換え方法を提供することは、対象者が「自分にもできそうだ」という制御感を持つことを助け、行動意図を実際の行動へと転換させる。(4)公共交通へのポジティブなイメージ形成と(5)イメージ戦略は、合理的行動理論における「態度」の形成に対応する。すなわち、公共交通という選択肢そのものに対する感情的な評価を、否定的なものから肯定的なものへと転換させる働きかけである。
このように、実務家によって経験的に見出された5つの勘所が、【PAM01】で示した学術的な心理学理論と整合的に対応づけられることは、MMという実務が理論から独立した経験知の集積ではなく、理論と実務の往復を通じて洗練されてきた分野であることを示している。この理論と実務の対応関係の明確化は、【PAM06】で扱うMM実施者の育成・専門人材の不足という課題を考える上でも、実務家教育のカリキュラム設計に応用しうる知見である。
6つの成功条件
同講演では、MMの成功のための6つの条件として、丁重さ、わかりやすさ、個別性、二面性、具体性、そして最も重要な要素としての「適切な担当者」が挙げられている[1][2]。「二面性」とは、公共交通のメリットだけでなく、自動車利用のデメリットも合わせて提示するという、説得的コミュニケーションにおける基本原則を指すと解釈できる。「適切な担当者」が最重要視される点は、MMが技術的な手法である以上に、対象者との信頼関係を築くコミュニケーション行為であることを示唆している。
MM検討の実務手順
MMの検討手順は、(1)目標設定、(2)対象の検討、(3)チーム編成等の実施体制の整備、(4)わかりやすい名前をつける等のブランディング、(5)具体的な手法の選定、という順序で進められるとされる[1][2]。MMが直面する最大の障害として、関係者の理解が得られないこと、単年度で終わってしまうこと、予算が続かないことが挙げられており、これらを防ぐためには効果測定・検証が必要であるとされる[1][2]。また、動機付けが可能かどうかを事前に十分に吟味し、動機付けが困難と判断される場合には、MM以外の手法(構造的方略等)を用いるべきであるという指摘もなされている[1][2]。この指摘は、MMが万能の解決策ではなく、適用可能な条件を持つ手法であるという、健全な限界の自覚を示している。
成功のための3つのコツと持続の条件
より実務的な次元では、MMを成功させるための3つのコツとして、(1)交通の問題を心から解決したいと願うこと(業績や名誉、金銭的な利益のためにMMに関わるべきではないこと)、(2)何らかの料金政策の変更や路線変更のタイミングを見計らってMMを組み合わせること、(3)被験者の立場に立って考え、ツール作成やデザインにおいて「品格」を忘れないこと、が挙げられている[1][2]。第2のコツ(タイミングを計ること)は、前述の転入者対象MMが転居のタイミングを捉えることと同じ設計原理であり、構造的方略(料金政策、路線変更)の変更点に心理的方略(MM)を重ねることで、相乗効果を狙うという発想である。
また、MMを長期にわたって持続させるためには、TPE(技術・プラットフォーム・エビデンス)の3要素が重要であるとされる[1][2]。確固たる技術によって市民の行動変容を実現し、それを実証してエビデンスとして確認することで、関係者の意識や行動が変わっていく。このプロセスを継続的に回していくためのプラットフォーム(組織的な基盤)を築くことが、MMの効果を持続させる鍵とされる[1][2]。この指摘は、【PAM06】で扱う実施体制・予算の継続性という制度的課題と直接つながる論点である。
デジタル化・MaaSとの融合
MaaS×MMの理論的親和性
近年のMM実務における重要な潮流が、MaaS(Mobility as a Service)アプリとの連携である。前述の「5つの勘所」のうち、(2)公共交通情報と(3)行動プランは、従来紙ベースで提供されており手間がかかっていたが、MaaSはこの2つの勘所を支援する強力なツールとなるポテンシャルを持つとされる[1][2]。すなわち、MaaSアプリが提供するリアルタイムの経路検索・運行情報は、TFPが個別アドヴァイスとして紙媒体で提供してきた情報を、より低コストかつ動的な形で代替しうる。日本におけるMaaSの捉え方として、単にアプリで移動手段の選択や予約決済のハードルを下げれば人々が公共交通を使うようになるという楽観的な見方があるが、MaaSにインフラや制度の整備だけでなく、コミュニケーションを重視するMMを組み合わせることで、より強力に行動変容を促せる可能性が指摘されている[2]。
小山市における段階的展開:アナログMaaSからデジタルMaaSへ
栃木県小山市は、MaaSとMMの融合を段階的に進めた事例として参照される。小山市は、公共交通利用促進プロジェクトの3本柱として、(1)タブロイド紙「Bloom」を市内全戸に配布(「小山に生きる、おーバスが生きる」というキャッチコピーでライフスタイルやスポットを発信)、(2)低価格・市内全線乗り放題・長期間有効・紙製という特徴を持つ新しいアナログバス定期券「noroca」の導入、(3)積極的な新路線・増便(2019年4月に渡良瀬ライン運行開始、2020年4月に病院へのバス増便・初の早朝夜間便運行、商業施設シャトルバスの路線バス化・初の高頻度運行(3本/時))、を実施した[8]。
このプロジェクトの効果として、タブロイド紙は18万部が配布され、定期券所有者は3.3倍に、「おーバス」利用者は74万人(10%増)に達し、クレームは10分の1に激減、若者利用者は8.4倍に増加したと報告されている[8]。さらに小山市は、norocaの保有者に対してタクシー初乗りチケットを無制限に配布する「アナログMaaS」の取り組みも実施しており、これによりタクシー売上が2.06倍、利用回数が1.8倍に増加し、バス利用回数も合わせて増加したとされる[8]。小山市はこのアナログMaaSの基盤を築いた上で、2021年10月からスマートフォンでnorocaサービスを利用できる「デジタルMaaS」への移行を計画しており、画面を見せるだけでnorocaとして利用可能になるほか、プッシュ通知によるコミュニケーションも可能になるとされる[8]。この段階的な展開(まず紙媒体・アナログの基盤を作り、その後デジタル化する)は、デジタルデバイド(高齢者等のデジタル機器利用の困難)への配慮という観点からも、実務上の重要な設計判断として参照に値する。
手法選択の判断枠組み
本レポートで検証した各手法(TFP、ワンショットTFP、転入者対象MM、職場MM、学校MM、イベント型MM)は、対象範囲・時間構造・個別化の程度という3軸に加え、実施主体が利用可能な「タイミング」(転居、料金改定、路線変更等の構造的方略の変更点)をどれだけ活用できるかによって、選択されるべき手法が異なる。下表は、この手法選択の判断枠組みを整理したものである。
| 状況 | 推奨される手法 | 理由 |
|---|---|---|
| 予算・人員が限られる大規模対象 | ワンショットTFP、イベント型MM | 実施コストを抑えつつ広範囲をカバーできる |
| 転居・入学等のタイミングを捉えられる | 転入者対象MM、学校MM | 習慣が一時的に解体されるタイミングを活用できる |
| 組織的な伝達経路が利用できる | 職場MM、学校MM | 既存のコミュニケーション経路・同調圧力を活用できる |
| 深い行動変容と持続性を狙う | TFP(継続型) | 個人の行動データに基づく精緻なアドヴァイスが可能 |
| デジタルインフラが整備されている | MaaS連携型MM | 情報提供・行動プランのコストを大幅に削減できる |
各レポートへの接続
本レポートで検証した手法別の設計原理は、【PAM03】(国内事例)・【PAM04】(海外事例)における個別事例の再検証において、各事例がどの手法類型・どの設計原則に該当するかを判定する分析枠組みとして機能する。また、本レポートで示した「MMの検討手順」における効果測定・検証の必要性、および「TPE」(技術・プラットフォーム・エビデンス)という持続の条件は、【PAM05】(効果検証・測定手法の課題)および【PAM06】(制度的・実施体制上の課題)で、より深く掘り下げて検証する対象となる。とりわけ、小山市の事例で示された具体的な効果指標(定期券所有者3.3倍、利用者10%増等)が、どのような測定方法によって得られたものであり、その測定方法にどのような限界があるかは、【PAM05】における批判的検証の重要な素材となる。
参考資料一覧
- 谷口綾子「モビリティ・マネジメントのココロ」講演資料、一般財団法人運輸総合研究所第76回運輸政策セミナー(2021年8月31日) https://www.jttri.or.jp/semi76-04.pdf
- 一般財団法人運輸総合研究所「モビリティ・マネジメント×MaaS:最強タッグで人々の行動が変わる」第76回運輸政策セミナー開催報告 https://www.jttri.or.jp/events/2021/semi210831.html
- 島田絹子・谷口綾子・藤井聡(2008)「高崎市および龍ケ崎市における転入者対象モビリティ・マネジメントの効果分析」(準備稿) https://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/
- 谷口綾子・浅見知秀・藤井聡・石田東生「公共交通指向型居住地選択に向けた説得的コミュニケーションの効果分析」土木計画学研究発表会・講演集 https://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/
- 京都大学都市社会工学専攻藤井研究室 文献アーカイブ https://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/archives/literature-type/学会発表/
- 交通政策特別委員会(2006)「環境時代に求められる『ソフトな交通政策』~交通行動の変化により持続可能な都市交通へ~」提言報告書 https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R487attached.pdf
- 藤井聡・谷口綾子『モビリティ・マネジメント入門―「人と社会」を中心に据えた新しい交通戦略』学芸出版社 https://www.amazon.co.jp/dp/476152426X
- 淺見知秀(小山市都市整備部技監)「地方都市の公共交通利用促進戦略-アナログMaaSとモビリティ・マネジメント-」講演資料、一般財団法人運輸総合研究所第76回運輸政策セミナー(2021年8月31日) https://www.jttri.or.jp/semi76-06.pdf
- 谷口綾子 researchmap プロフィール https://researchmap.jp/A.Taniguchi
- 藤井聡ほか(2003)「TDMの心理的方略としてのTFP(トラベル・フィードバック・プログラム)-実務的課題と展望」『土木学会論文集』No.737, pp.27-37. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1984/2003/737/2003_737_27/_article/-char/ja/
- (2003)「トラベルフィードバックプログラム(TFP)の手続き簡略化による態度と行動変容への影響」『土木学会論文集』No.737, pp.89- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1984/2003/737/2003_737_89/_article/-char/ja/
- 箕面市「モビリティ・マネジメント(MM)の取り組み方策について」(2009年2月16日資料) https://www.city.minoh.lg.jp/koutuu/katu/2kai/documents/4-1.pdf
- Wikipedia「モビリティ・マネジメント」(宇治地域におけるワンショットTFPの実施手続きに関する記述) https://ja.wikipedia.org/wiki/モビリティ・マネジメント
年表
- 2003年:藤井聡らがTFP(トラベル・フィードバック・プログラム)の定義・分類、手続き簡略化の効果検証を発表[10][11]
- 2005年:京都府宇治地域で商工会議所参加企業を対象にワンショットTFPを実施[13]
- 2006年:交通政策特別委員会がCSRとしての職場MM(自動車通勤等利用調整計画)を提言[6]
- 2008年:島田絹子・谷口綾子・藤井聡が高崎市・龍ケ崎市における転入者対象MMの効果分析を発表[3]
- 2009年2月:大阪府箕面市がMM取り組み方策資料をとりまとめ、個人レベルと集計レベルの目標区分、財源・人的資源の制約を明記[12]
- 2019年4月:栃木県小山市で渡良瀬ライン運行開始(公共交通利用促進プロジェクトの一環)[8]
- 2020年4月:小山市で病院への増便・早朝夜間便運行、商業施設シャトルバスの高頻度路線バス化[8]
- 2021年8月:運輸総合研究所が「モビリティ・マネジメント×MaaS」セミナーを開催、谷口綾子・牧村和彦・淺見知秀が講演[1][2][8]
- 2021年10月:小山市でスマートフォンによるnorocaサービス(デジタルMaaS)の開始を計画[8]
用語集
- 居住地MM: 地域住民全般の全般的な行動変容を狙いとするMMの類型。転入者対象MMもこの一類型に含まれる。
- 職場MM: 通勤交通・業務交通の行動変容を狙いとするMMの類型。組織の伝達経路・同調圧力を活用できる。
- 学校MM: 児童の長期的な行動変容と保護者の短期的な行動変容という2つの時間軸を同時に狙うMMの類型。
- 転換意向別アドヴァイス型: TFPの類型の一つ。対象者の公共交通転換への意向段階に応じてアドヴァイス内容を変える設計。
- 個別アドヴァイス型: TFPの類型の一つ。対象者本人の交通行動データに基づいて個別のアドヴァイスを構築する設計。
- ワンショットTFP: TFPの手続きを単発の情報提供にまで簡略化した手法。「広さ」を優先し「深さ」を犠牲にする設計。
- MMの5つの勘所: 動機付け、公共交通情報、行動プラン、公共交通へのポジティブなイメージ形成、イメージ戦略。谷口綾子による整理。
- MMの6つの成功条件: 丁重さ、わかりやすさ、個別性、二面性、具体性、適切な担当者。谷口綾子による整理。
- TPE(技術・プラットフォーム・エビデンス): MMを長期的に持続させるために必要とされる3要素。谷口綾子による整理。
- MaaS, Mobility as a Service: 複数の交通手段の検索・予約・決済等を一元的に提供するサービス。MMの情報提供・行動プラン支援と親和性が高いとされる。
- アナログMaaS: デジタル技術に依らず、紙媒体の定期券・タクシーチケット等を通じて、MaaS的な複数交通手段の統合利用を実現する取り組み。小山市の事例で用いられた概念。
- 谷口綾子, Ayako Taniguchi: 筑波大学大学院システム情報工学研究科教授。藤井聡とともにMM研究を牽引してきた研究者。
- JCOMM, 日本モビリティ・マネジメント会議: MM担当者(コンサルタント・行政職員・研究者)が集う実務・学術の交流の場。
- 個人レベルの行動変容と集計レベルの政策目標: MMの効果を評価する際の2つの異なる次元。個々の対象者への効果と、都市全体の交通量等の集計指標への効果は、規模の隔たりを持つ。箕面市のMM取り組み方策資料が指摘。
- 全戸訪問型: 地域限定型MMのコミュニケーション形態の一つ。調査員が各世帯を訪問し対面で実施。個別化の程度が最も高いがコストも大きい。
- 郵送配布型: 地域限定型MMのコミュニケーション形態の一つ。資料を郵送・配布しアンケート等で回収。コストは低いが回収率・真剣度が低下する傾向。
- 対人接触型: 地域限定型MMのコミュニケーション形態の一つ。駅前等の交通結節点で実施。既に外出している層に偏る傾向を持つ。
ログ
良い資料が見つかりました。谷口綾子氏の講演資料から、MM技術体系(居住地MM・職場MM・学校MM)と実務的な設計原則(5つの勘所、6つの条件)、小山市の具体的な数値事例を確認できました。これらを軸に【PAM02】を執筆します。Let’s verify citation integrity and character count:Now let’s expand a few more sections to increase depth. Let’s add detail on the “動機付け情報” content and add a section on international comparison groundwork for PAM04:Now let’s add a new subsection under イベント型MM discussing MMの対人コミュニケーション形態(全戸訪問型 vs 郵送・配布型), which adds depth grounded in known MM practice:Let’s check current length and integrity:Confirmed the h3 heading was lost. Let me restore it:Final check:All good — structure intact, all 11 references cited. Let’s present the final file:【PAM02】(手法別の設計原理)を作成しました。約13,150字、参考資料11件、全14章・18節。
構成の骨格は、谷口綾子氏(筑波大学教授)の実務講演資料から得た「MM技術体系=居住地MM・職場MM・学校MMの3類型」を横軸に据え、各手法をこの体系に位置づける形にしました。
主な内容:
- TFP/ワンショットTFP:転換意向別アドヴァイス型と個別アドヴァイス型の違い、手続き簡略化のトレードオフ
- 転入者対象MM:「なぜ転入直後が好機か」を習慣解体理論で説明し、高崎市・龍ケ崎市の実証研究(島田・谷口・藤井 2008)、さらに居住地選択そのものへの応用研究(谷口ら)まで接続
- 職場MM・学校MM:組織経路・同調圧力の活用、学校MMの「児童=長期/保護者=短期」という二段階構造
- 実務的設計原則:5つの勘所(動機付け・情報・行動プラン・イメージ形成・戦略)、6つの成功条件、TPE(技術・プラットフォーム・エビデンス)という持続の条件 — これらをPAM01の心理学理論と対応づけて理論的に裏付けました
- MaaSとの融合:小山市の実例を具体的数値付きで検証(定期券所有者3.3倍、バス利用者10%増、アナログMaaSでタクシー売上2.06倍等)。「アナログ→デジタル」という段階的移行の設計判断も明記
【PAM01】(約21,500字)と合わせて、シリーズ全体で理論と実務設計の両輪が揃いました。
続けて【PAM03】(国内事例の詳細検証、新規事例を追加)に進みますか。それとも【PAM02】をさらに掘り下げますか。
Now let’s add the new references [12] and [13] and update timeline/glossary:Now let’s add timeline and glossary entries:Now let’s do a final integrity and length check:All citations valid, 15,141 characters. Let’s present the updated file:【PAM02】を約15,150字まで拡充しました(参考資料13件)。今回追加した2点は、実務上かなり重要な論点です。
- 「個人レベルの行動変容」と「集計レベルの政策目標」の区別(箕面市資料) MMを検討する上で見落とされがちな、根本的なジレンマを明示しました。TFPのような個別化の程度が高い手法は個人レベルでは効果が大きい一方、限られた予算・人員では対象者数を確保できず、都市全体の交通量という集計指標には有意な変化をもたらせない、という構造的な限界です。これは【PAM01】の「広さ/深さ」トレードオフを、政策評価の次元でさらに具体化したものです。
- 宇治市ワンショットTFPの具体的手続き(2005年、商工会議所連携) アンケートの真の目的が「厳密な効果測定」ではなく「通勤を考え直すきっかけ作り」だったという点を明記しました。つまり調査票そのものが、規範活性化理論でいう「結果認知」を喚起するための心理的な介入手段として機能している、という設計上の巧妙さを指摘しています。
加えて、コミュニケーション形態(全戸訪問型・郵送配布型・対人接触型)の使い分けと、それぞれが持つ選択バイアスのリスクも整理し、用語集に追加しました。
これで【PAM01】(約21,500字)+【PAM02】(約15,150字)が揃いました。次は【PAM03】(国内事例の詳細検証、新規事例を追加)に進みますか、それとも【PAM02】をもう一段階掘り下げますか。










