本レポートは、公共交通利用促進策シリーズ【PA02】において「レベル1施策の一事例群」として簡略に扱ったモビリティ・マネジメント(以下、MM)を、独立したシリーズ(PAMシリーズ)として理論・事例・課題の3軸から詳細に検証する第一弾である。PAMシリーズは、【PAM01】理論の骨格、【PAM02】手法別の設計原理、【PAM03】国内事例の詳細検証、【PAM04】海外事例の詳細検証、【PAM05】効果検証・測定手法の課題、【PAM06】制度的・実施体制上の課題と限界、という6本構成で計画されている。
本レポートの目的は、MMを「なんとなく知っている利用促進策の一種」という理解から、「体系立てて説明できる理論的枠組みを持つ交通政策」という理解へ引き上げることにある。とりわけ、MMが単なる広報・啓発活動ではなく、社会心理学の理論的基盤に立脚した「コミュニケーション施策」として体系化されてきた経緯を明確にすることを重視する。この理論的基盤の理解は、後続の【PAM02】(手法別の設計原理)、【PAM05】(効果検証の課題)を読み解く上での土台となる。
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目次
モビリティ・マネジメントの定義
定義の骨子
MMは、「自動車利用者の過度な依存や不適切な利用を抑制し、公共交通機関、自転車、徒歩など、環境負荷の低い移動手段への転換を促すための、コミュニケーションを基軸とした活動」と定義される[1]。この定義の核心は、道路整備や鉄道新設といった物理的なインフラ整備(供給側対策)でも、運賃改定や課金制度といった経済的インセンティブでもなく、コミュニケーションという非物理的な手段によって、個々の交通利用者の意識と選択(需要側)に働きかける点にある[1]。MMの活動は一過性の広報キャンペーンではなく、継続的な対話と評価を通じて、社会全体として持続可能な移動文化を醸成することを目標とする[1]。
この定義は、MMを提唱した藤井聡(京都大学、当時東京工業大学)による一連の論考の中で確立されてきた。藤井は2004年の論考において、強制的なTDM(交通需要マネジメント)施策を導入する際には、その施策を人々が「自発的に」受け入れようとする意識に着目したコミュニケーション施策が不可欠であると指摘し、これがMMの理論的な出発点の一つとなっている[2]。さらに2005年の論考では、MMを「大規模かつ個別的なコミュニケーション型交通需要マネジメント施策」と定義し、渋滞対策として期待されてきたTDMが必ずしも期待通りの効果を上げてこなかった背景には、(1)強制的施策の合意形成の困難さ、(2)人々の自発的な行動変容の欠如、という2つの問題が存在すると整理した上で、後者の課題に応えるための新しいタイプのTDM施策としてMMを位置づけている[3]。
定義の変遷と日本における展開
MMという概念そのものは、日本では1999年頃から取り組みが始められた比較的新しい交通政策の考え方とされる[4]。1990年代の日本では、TDMとして交通施設・システム整備や課金施策などの交通運用改善施策が中心に実施されてきたが、2000年代後半以降、一人ひとりの意識に働きかけ、コミュニケーションを重視するMMが、交通渋滞対策や公共交通利用促進施策として展開されるようになった[5]。近年では交通やまちづくりにおける様々な問題への適用のほか、ITやIoTの高度化、新型コロナウイルス感染拡大による公共交通利用の減少からの需要回復、都市政策と交通政策との連携によるまちづくりなど、応用範囲が広がっている。2024年1月に発生した能登半島地震における交通マネジメントにも、MMの手法が活用された[5]。
2006年には、国の交通政策特別委員会が「環境時代に求められる『ソフトな交通政策』」と題する提言報告書をとりまとめ、TDMとMMを合わせて「ソフトな交通政策」と位置づけた上で、その推進体制の整備を提言した。同報告書は、事業所に対してCSR(企業の社会的責任)の一環として自動車通勤等利用調整計画を導入すべきこと、国はそれを円滑に進めるための専門家を育成する「MMコーディネータ」制度(仮称)を創設すべきことを提言している[6]。この提言は、国土交通省、経済産業省、環境省、都道府県、主な産業界等に配付されており、MMが単なる研究者の理論提案の段階を超え、国の政策として位置づけられる契機となった。
TDMとMMの関係:経済学的枠組みと心理学的枠組み
TDMの全体像における位置づけ
TDM(Transportation Demand Management、交通需要マネジメント)とは、交通需要の決定プロセスに働きかけて、交通需要の時空間分布を変更する施策の総称である[7]。渋滞、大気汚染、温暖化、エネルギー対策として、交通施設の整備・維持管理の負荷軽減、道路や公共交通などの有効利用、交通戦略実現のための資金調達(プライシング)、そしてライフスタイルの変更、という複数の目的を持つ[7]。東京大学の原田昇が整理する都市圏交通戦略の枠組みでは、TDM・MM・アクティビティマネジメントは、道路や鉄道の新設といった交通網の整備・運用や都市構造の変更と並ぶ、都市交通戦略のパッケージの一部として位置づけられている[7]。この枠組みの中で、TSM(既存施設の有効利用)、ロードプライシング(制度提案を要する)、立地誘導マネジメントといった諸手法とともに、MMは「転居促進」等とも関連づけられる需要側の一手法として整理される[7]。
MMとTDMの理論的背景の違い
MMとTDMの関係については、国の交通政策特別委員会の提言報告書が明快な整理を与えている。同報告書によれば、MMは広義に捉えればTDMとほぼ同じ施策を包含する概念であるが、TDMは経済学、MMは心理学の理論と概念を背景にした言い方であり、そのような背景の違いが視点や強調点の相違に現れているとされる[6]。欧州における一般的な使用例では、両者は内容的にほぼ同義に用いられているが、日本の同提言では、自発的な行動変容に焦点を置く新たな取り組みを強調するために、あえて「MM」という言い方を採用したと説明されている[6]。
この整理は、本シリーズの理解にとって重要な意味を持つ。すなわち、経済学的な枠組みに立つTDM施策(道路課金、駐車場料金の変更、公共交通運賃の割引等)が、人々の行動の「費用構造」を変えることで行動変容を促そうとするのに対し、MMは費用構造を変えずに、人々の「意識」に働きかけることで、既存の選択肢の中からより望ましい行動を自発的に選び取ってもらうことを狙う、という理論的立場の違いである。この違いは、後述する社会的ジレンマの解消方略における「構造的方略」と「心理的方略」という区分と対応している。
国の政策展開:ESTモデル事業による普及
MMが研究者の理論提案の段階を超えて全国的に普及する上で、重要な役割を果たしたのが、国土交通省環境行動計画モデル事業、通称「ESTモデル事業」である。EST(環境的に持続可能な交通、Environmentally Sustainable Transport)は、公共交通機関の利用を促進し自家用自動車に過度に依存しないなど、環境的に持続可能な交通の実現をめざす先導的な地域を募集し、LRTの整備やバスの活性化等の公共交通機関の利用促進、自転車利用環境の整備、交通流の円滑化対策等の分野における支援策を集中的に講じる事業として位置づけられた[18]。国土交通省は、2004年度に11地域、2005年度に10地域、2006年度に6地域を「ESTモデル地域」として選定し、選定年度の翌年から各3年間にわたりESTモデル事業を実施した[17]。2004年度に選定された11地域には、札幌市、仙台市、柏市・流山市、三郷市・八潮市、富山市、三重県、豊田市、京都府、奈良県、神戸市、松山市が含まれ、2005年度には八戸市、神奈川県、秦野市、新潟市、石川県、大阪市、豊中市、兵庫県、広島市、福山市が、2006年度には荒川区、上越市、静岡市、和泉市、神戸市、松江市が選定されている[17]。
これらのESTモデル地域の中には、本シリーズの【PA02】および今後の【PAM03】で扱う福山都市圏・松江都市圏のMM事例が含まれており、国の予算的支援を受けた先導的地域における取り組みの蓄積が、MMの手法論の精緻化と全国への普及の双方を後押ししてきたことが分かる。福山都市圏における「BEST運動」は、EST交通環境大賞においても優秀賞を受賞しており、CO2削減と渋滞緩和を目指す継続的な取り組みとして評価されている[17]。国土交通省はまた、MMの基本的な考え方や各地での取り組み事例を紹介するパンフレットを作成・公表しており、地域公共交通活性化再生法の運用とも関連づけながら、MMを公共交通政策の一手法として制度的に位置づけている[16]。
MMの理論的基盤:社会的ジレンマ
社会的ジレンマとは何か
MMの理論的な出発点は、社会心理学における「社会的ジレンマ」という概念にある。社会的ジレンマとは、公益と私益とが対立する状況を指す社会心理学の概念であり、環境問題や景観の劣化、渋滞、都市の無秩序な開発といった様々な社会問題は、いずれも一人ひとりの「得をしよう、楽をしよう」という自己中心的な意識によって引き起こされる、という理解に立脚している[8]。例えば、一人ひとりが自動車を利用して「楽」をしたいと考えることが積み重なった結果として、大量のCO2が排出されたり、道路が渋滞したりするという現象が生じる[8]。個々の主体にとって合理的な選択(自動車の利用)が、集合的には非合理な結果(渋滞、環境負荷)を生み出すという構造は、ゲーム理論における「囚人のジレンマ」と同型の問題として、社会的ジレンマ研究において広く分析されてきた。
この構造は、生態学者ギャレット・ハーディンが1968年に提示した「コモンズの悲劇」(共有地の悲劇)という古典的な概念とも重なる。共有の牧草地において、各牧夫が自らの利益を最大化しようとして家畜を増やし続けると、牧草地全体が荒廃し、結果として全員が損失を被るという寓話は、道路という共有インフラを、各運転者が自らの移動の便益を最大化しようとして利用し続けた結果、渋滞という形で共有資源(道路の走行容量)が枯渇する構造と、理論的に同型である。渋滞問題における「フリーライダー問題」(他の人が公共交通に切り替えてくれれば、自分は自動車を使い続けても渋滞は緩和されるので、自分は行動を変えるインセンティブを持たないという構造)も、この社会的ジレンマの一形態として理解できる。MMが個別的なコミュニケーションを重視するのは、このフリーライダー的な構造の中で、「自分一人が変わっても意味がない」という認識を、「自分の行動には集合的な帰結に対する責任がある」という規範活性化理論的な認識へと転換させる必要があるためである。
この社会的ジレンマを解消するための方略には、大きく分けて2種類が存在するとされる。第一は「構造的方略」であり、施設・システムを改善する物理的施策や、法的規制を伴う施策がこれに含まれる。第二は「心理的方略」であり、啓発キャンペーンや教育、コミュニケーションといった、人々の意識に働きかける施策がこれに含まれる[8]。MMは、この心理的方略に分類される交通政策として位置づけられる。社会的ジレンマの解消方略に関する研究の蓄積は、構造的な規制や誘導だけでなく、一人ひとりが自らの行動を振り返り、利他的に行動することを支援する心理的方略の重要性を示してきたとされ、MMはこの知見を交通分野に応用した施策体系である[8]。
構造的方略との補完関係
ここで強調すべきは、MMが構造的方略(道路整備、公共交通のサービス改善、運賃制度の変更等)を否定するものではなく、むしろそれを補完する関係にあるという点である。MMの提唱者である藤井聡自身が指摘するように、システム改善(構造的方略)を行った際には、その潜在的な有効性を最大限に引き出すために、適切なコミュニケーション施策(心理的方略)を併用することが極めて重要である[4]。すなわち、新しいバス路線を新設しても、その存在や利便性が沿線住民に十分に認知され、実際に「使ってみよう」という心理的なハードルが下がらなければ、投資した構造的方略の効果は十分に発揮されない。この「構造的方略の効果を心理的方略が引き出す」という補完関係の理解は、【PA03】で確認した宇都宮ライトラインのような大規模インフラ投資と、MMのような低コストのソフト施策との関係を理論的に位置づける上でも重要な視点となる。
態度と行動のギャップという問題
なぜ「知っている」だけでは行動が変わらないのか
MMの心理学的な基盤を理解する上で欠かせないのが、「態度」と「行動」のギャップという問題である。人は、環境に配慮すべきだ、公共交通を利用すべきだ、といった態度(意識・信念)を持っていても、それが必ずしも実際の行動(自動車を控えて公共交通を利用する)に結びつくとは限らない。単に「公共交通機関の環境負荷が低い」という事実情報を一方的に伝えるだけの広報活動では、この態度と行動のギャップを埋めることは難しいとされる。MMが「大規模かつ個別的なコミュニケーション」という手法を強調する背景には、この態度と行動のギャップを埋めるためには、一方向的な情報提供ではなく、対象者一人ひとりの状況に応じた双方向的なコミュニケーションが必要である、という理論的な認識がある[3]。
この態度と行動のギャップという現象そのものは、MM研究に固有の発見ではなく、環境配慮行動全般を扱う社会心理学の一連の研究群において、繰り返し確認されてきた基本的な知見である。認知的不協和理論(Festinger, 1957)によれば、人々は自らの認知要素間の不協和な状況を積極的に回避し、態度と行動が一貫するよう動機づけられているとされる[13]。しかし現実には、態度が肯定的であっても、それに見合う行動が取られない場面は数多く観察されており、この不一致をどう説明し、どう埋めるかが、環境配慮行動研究およびMM研究に共通する中心的な課題となってきた。
合理的行動理論と計画的行動理論
態度と行動の関係を説明する理論的枠組みの出発点として、フィッシュバインとエイゼンによる合理的行動理論(Theory of Reasoned Action)が挙げられる[13][14]。同理論は、行動に対して最も大きな影響を与えるのは「意図」であるとし、実際に出現する行動は行動意図によって予測され、行動意図は「態度」(その状況下で行動を行うことについての評価)と「主観的規範」(その状況下で周囲からどのような期待がかかっていると認識するか)という2つの要因によって決定されると主張する[13]。すなわち、単に「公共交通は環境に良い」という態度を持つだけでは行動は決まらず、「自分の周囲は公共交通の利用をどう見ているか」という主観的規範が、行動意図を左右する重要な要因として組み込まれている。
エイゼンはその後、この合理的行動理論を拡張し、計画的行動理論(Theory of Planned Behavior, TPB)を提示した[15]。TPBでは、態度・主観的規範に加えて、「知覚行動制御」(Perceived Behavioral Control、その行動をどれだけ自分でコントロールできると感じているか)という第三の要因が行動意図に加えられている[15]。個人の行動に対する統制力は、完全に意志の制御下にある行動から、完全に意志の制御下にない行動まで連続体として捉えられ、人間の大部分の行動はこの両極の間のどこかに位置するとされる[15]。交通行動に当てはめれば、「公共交通に乗り換えたいと思っていても、時刻表が複雑でどう乗ればよいか分からない」といった知覚された制御の低さが、行動意図はあっても実際の行動化を妨げる要因になりうる。この知見は、MMが個別アドヴァイス法において、単に「公共交通を使いましょう」と呼びかけるのではなく、対象者の自宅・職場に即した具体的な乗り方の情報を提供することの理論的な妥当性を裏付けている。知覚行動制御を高める情報提供こそが、行動意図を実際の行動に転換させる鍵となるためである。
規範活性化理論
環境配慮行動やMMが対象とする「利他的行動」を説明するもう一つの重要な理論が、シュワルツによる規範活性化理論(Norm Activation Theory, Schwartz, 1970; 1977)である[15]。同理論は、人々が特定の行動がもたらす結果の重要性を認知し、その行動を起こす責任が自らに帰属すると思うことで、行動の義務感(個人的規範)が活性化され、これによって利他的な行動が生じるという、利他的行動の心理的プロセスを説明するモデルである[15]。交通行動に当てはめれば、「自分が自動車を使い続けることが渋滞や環境負荷にどれだけ影響しているか」という結果認知と、「その結果に対して自分にも責任がある」という責任帰属の両方が働いたとき、初めて公共交通への転換という利他的な行動が動機づけられる、という説明になる。TFPが対象者本人の交通行動データをフィードバックする手法を取るのは、この結果認知と責任帰属を、対象者自身のデータを通じて具体的に喚起する狙いがあると理解することができる。
MMの手法設計における理論の統合的活用
以上に見たように、MMの手法設計は、認知的不協和理論、合理的行動理論、計画的行動理論、規範活性化理論という、環境配慮行動研究において蓄積されてきた複数の心理学理論の知見を、交通行動という具体的な文脈に応用しながら統合的に組み込んだものと理解できる[13][14][15]。これらの理論はいずれも、態度と行動の間に単純な因果関係を想定するのではなく、主観的規範・知覚行動制御・責任帰属といった媒介変数を通じて、態度が行動へと転換される複雑な心理的プロセスを描いている。MMが「大規模かつ個別的なコミュニケーション」を標榜する背景には、これらの媒介変数の多くが、対象者ごとに異なる個別的な状況(周囲の目、行動のしやすさ、当事者意識の有無)に依存するため、画一的な広報ではこれらに働きかけることが難しい、という理論的な理解がある。
MMの手法類型の見取り図
情報提供の形態による分類
藤井の2004年の論考の付録に示された整理によれば、特定路線の利用促進を目指すMMでは、その路線のサービス水準や具体的な利用方法についての情報を提供する「事実情報提供法」あるいは「アドヴァイス法」が用いられる[2]。具体的な情報を提供する際には、対象者の自宅や交通行動に対応した具体的な情報を提供する方がより効果的であるとされ、これは職場や自宅の場所に対応した時刻表を提示するといった「個別アドヴァイス法」として類型化される[2]。この個別化の思想は、MMの手法設計全体を貫く基本原則であり、後述するTFPにおいても中核をなす。
対象範囲による分類:地域限定型と非限定型
MMの手法は、情報提供の形態による分類のほかに、対象とする地理的・組織的範囲によっても分類することができる。第一は、特定の地域(住宅地、駅勢圏等)の住民全体を対象とする地域限定型であり、行政や交通事業者が主導し、地域内の全戸配布・全戸訪問といった形式で実施されることが多い。第二は、特定の属性を持つ人々(転入者、新入社員、新入生等)を対象とする属性限定型であり、対象者を絞り込むことで、限られた予算・人員の中でより濃密な個別対応を行うことが可能になる。第三は、組織単位(企業、学校、大学等)を対象とする組織限定型であり、組織内のネットワークや同調圧力を活用できる点に特徴がある。これらの対象範囲の選択は、【PAM02】で詳述するように、利用可能な予算・人員、期待する効果の性質(広く薄く効かせるか、狭く深く効かせるか)に応じて使い分けられる。
実施の時間構造による分類:単発型と継続型
さらに、MMの手法は実施の時間構造によっても分類できる。単発型(ワンショット型)は、一度の情報提供・イベント実施で完結する手法であり、実施コストが低い一方、効果の持続性に課題があるとされる。継続型は、複数回にわたる調査・フィードバック・フォローアップを伴う手法であり、TFPに代表される。継続型は行動変容の定着可能性が高いと期待される一方、対象者・実施者双方の負担が大きく、大規模な展開には制約が伴う。この単発型と継続型のトレードオフは、【PAM05】で扱う効果の持続性・リバウンド問題と直接関連する論点である。
主要な手法の一覧
本シリーズの【PAM02】で手法ごとの設計原理を詳述する前提として、ここではMMの主要な手法類型を概観する。第一に、TFP(トラベル・フィードバック・プログラム)であり、対象者本人の交通行動の記録(ダイアリー調査)に基づいて、個別化されたアドヴァイスやフィードバックを提供する手法である。第二に、ワンショットTFPであり、通常のTFPが複数回にわたる調査・フィードバックのプロセスを要するのに対し、手続きを簡略化し、単発の情報提供やアドヴァイスにとどめる手法である。第三に、転入者対象MMであり、住居や職場を新たに変更した直後の住民を対象に、その転入・転居のタイミングを捉えて情報提供を行う手法である。第四に、職場・学校単位のMMであり、企業や学校といった組織単位で、集団的な行動変容を促す手法である。第五に、イベント型・ワンショット型のMMであり、比較的低コストで実施できる一方、効果の持続性には限界があるとされる手法である。
下表は、これらの主要手法を、対象範囲・時間構造・情報提供の個別化の程度という3つの軸で概観したものである。詳細な設計原理、対象者の選定理由、効果の程度と限界については、【PAM02】で個別に詳述する。
| 手法 | 対象範囲 | 時間構造 | 個別化の程度 |
|---|---|---|---|
| TFP | 地域限定型が多い | 継続型(複数回) | 高(個人の行動データに基づく) |
| ワンショットTFP | 地域限定型が多い | 単発型 | 中(簡略化された個別情報) |
| 転入者対象MM | 属性限定型 | 単発〜短期継続 | 中〜高 |
| 職場・学校単位MM | 組織限定型 | 継続型が多い | 中(組織単位の集団的働きかけ) |
| イベント型MM | 地域限定型・非限定型 | 単発型 | 低(画一的な情報提供が中心) |
TFPの理論的中核性
TFPの定義と手続き
MMの諸手法の中でも、TFP(Travel Feedback Program、トラベル・フィードバック・プログラム)は、心理学的方略としてのMMの理論的な中核を成す手法として位置づけられる。藤井らの2003年の研究は、TDMの心理的方略としてのTFPの定義を明確化し、コミュニケーション方法の違いによる手法の相違を整理した上で、既存のTFP事例を(1)転換意向別アドヴァイス型、(2)個別アドヴァイス型、という2つの型に分類している[9]。この分類は、対象者の交通手段転換に対する意向の程度に応じてアドヴァイスの内容を変える方式と、対象者の交通行動の実態そのものに基づいて個別のアドヴァイスを構築する方式という、2つの異なるアプローチを整理したものである。
従来のTFPは、対象者に1週間分の交通行動日誌(ダイアリーデータ)を記録してもらい、そのデータに基づいて個別化されたアドヴァイスを提示するという、比較的手間のかかる手続きを取ってきた[10]。この手続きの重さは、TFPの実務上の大きな制約となっており、大規模な対象者への展開を難しくする要因ともなってきた。この課題に対応するため、2003年の別の研究では、1週間分のダイアリーデータに基づくアドヴァイス提示という手続きを、1日分のダイアリーデータに簡略化した場合の効果が検証されている。大阪市西淀川区の住民を被験者とした心理学的実験(N=103)の結果、1日間に短縮した場合でも、平日の自動車利用削減効果が有意に確認されたと報告されている[10]。この知見は、TFPの実務適用における「精度」と「実施コスト」のトレードオフを考える上で重要な示唆を持ち、【PAM02】および【PAM05】で改めて詳しく取り上げる。
TFPが体現する理論的原則
TFPという手法名に含まれる「フィードバック」という語は、MMの理論的基盤を象徴的に表している。すなわち、対象者に一方的に情報を「与える」のではなく、対象者自身の行動データを可視化し、それを対象者本人に「フィードバック(還元)」することで、対象者自身の気づきと自発的な行動変容を促す、という設計思想である。この設計思想は、前述した「態度と行動のギャップ」を埋めるための心理学的な工夫であり、単なる広報・啓発とMMとを分かつ本質的な違いをなしている。
MMの位置づけの歴史的展開
1990年代のTDMから2000年代のMMへ
日本における交通政策の展開を振り返ると、1990年代はTDMとして交通施設・システム整備や課金施策などの交通運用改善施策が中心であった[5]。この時期のTDMは、主として経済学的・工学的なアプローチに立脚しており、道路容量の調整、駐車場政策、信号制御の最適化といった、システムそのものを操作する施策が中心であった。これに対し、2000年代に入ると、一人ひとりの意識に働きかけ、コミュニケーションを重視するMMが、交通渋滞対策や公共交通利用促進施策として本格的に展開されるようになった[5]。この転換の背景には、構造的方略(システム改善)だけでは、渋滞や環境負荷の問題を十分に解消できないという実務上の限界の認識と、社会心理学における社会的ジレンマ研究の知見の蓄積という、2つの要因があったと考えられる。
MMの推進体制と担い手
MMの実務展開において、藤井聡を中心とする研究者グループ(藤井聡・谷口綾子・松村暢彦ら)は、理論研究と実務支援の両面で中心的な役割を果たしてきた。藤井らが編著した『モビリティをマネジメントする コミュニケーションによる交通戦略』は、道路混雑の緩和に成功した福山都市圏や松江都市圏のMM事例を含む実務書として、日本のMM実務の標準的な参照点の一つとなっている[11]。同書は、MMの適用範囲が交通渋滞の解消にとどまらず、中心市街地活性化、放置駐輪対策、街路景観の改善、防災行動の誘発(土砂災害避難のリスク・コミュニケーション等)にまで広がっていることを示しており、MMという方法論が交通分野を超えた汎用性を持つことを裏付けている[11]。この汎用性は、本シリーズが【PA04】【PA06】で扱ってきた「交通を地域課題解決の手段として位置づける」というレベル3的な発想とも通底するものであり、【PAM06】で改めて接続を検討する。
MMとTDM・その他施策との境界
境界の曖昧さとその整理の意義
MMとTDMの境界は、前述の通り理論的背景(心理学 vs 経済学)によって整理されるが、実務上はこの境界が必ずしも明確でない場合がある。例えば、公共交通の運賃を一時的に割り引くキャンペーンは、経済的インセンティブという点ではTDM的な性格を持つが、その目的が「一度利用してもらうことで習慣的な利用行動への転換を促す」という心理的な効果を狙ったものであれば、MM的な性格も併せ持つ。このように、実際の施策は理論的な純粋型としてのMMとTDMの中間に位置することが多く、この境界の曖昧さは、MMの効果を測定する際の方法論的な課題(どこまでがMMの効果で、どこからが経済的インセンティブの効果か)にもつながる。この論点は【PAM05】で詳述する。
MMとハード整備・地域活性化施策との関係
本シリーズがこれまで検証してきたレベル1〜3の枠組みに照らすと、MMは典型的にはレベル1(交通単独の利用促進)に位置づけられる施策である。しかし、【PA04】【PA06】で示したように、交通を地域課題解決の手段として位置づけるレベル3の発想が広がる中で、MMの手法(個別化されたコミュニケーション、フィードバックの活用)そのものが、レベル2・3の文脈でも応用されうる可能性がある。たとえば、【PA06】で提案した「アクセシビリティ・タイムウィンドウ適合」のような施策は、MMが培ってきた「対象者の生活実態に即した個別的な情報提供」という手法論を、地域課題解決の文脈に応用したものと位置づけることができる。この接続については、【PAM06】で改めて検討する。
MMと行動経済学的アプローチとの異同
ナッジ理論の骨子
MMの理論的位置づけをより明確にするため、近年広く普及した行動経済学の「ナッジ」理論との異同を整理しておく価値がある。ナッジ理論は、シカゴ大学のリチャード・セイラーと法学者キャス・サンスティーンが2008年に著書『Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness』で提示した概念であり、経済的インセンティブの大きな変化や、罰則・ルールによる行動の強制ではなく、行動科学の知見に基づいた小さな工夫によって、人々の意思決定に影響を与え、望ましい行動変容を促す手法として定義される[19]。ナッジの中核をなすのは「リバタリアン・パターナリズム」という概念であり、個人の選択の自由を保ちながら(リバタリアン)、本人にとってより良い選択を後押しする(パターナリズム)という、一見相反する2つの立場を組み合わせた思想である[20]。セイラーはこの功績により2017年にノーベル経済学賞を受賞している[21]。ナッジの具体的手法は、NUDGESという頭字語で整理されることがあり、インセンティブの明示、選択結果の対応関係の理解しやすさ、望ましい選択をデフォルトに設定すること、フィードバックの提供、エラーの発生を前提とした設計、複雑な選択肢の体系化、という6つの原則から構成される[22]。
MMとナッジの共通点
MMとナッジは、いくつかの重要な点で理論的な共通性を持つ。第一に、両者とも「強制」や「規制」ではなく、対象者の自発的な選択を尊重しながら、望ましい方向への行動変容を促そうとする点である。MMが「自発的な行動変容」を強調するのは、まさにナッジが標榜する「選択の自由を保ったままの誘導」という思想と軌を一にしている。第二に、両者とも「フィードバック」を重視する点である。ナッジの原則の一つである「Give feedback」は、選択結果に対して適宜フィードバックを与えることの重要性を説くが[22]、これはTFPが対象者本人の交通行動データを可視化してフィードバックするという設計思想と、方法論的に重なり合う。
MMとナッジの相違点
他方で、両者には看過できない相違点も存在する。第一に、理論的な出自の違いである。ナッジは行動経済学(人間の意思決定における非合理性・認知バイアスの研究)に由来する一方、MMは社会心理学(社会的ジレンマ、態度と行動の関係)に由来する。ナッジが主として「認知バイアスを利用した選択アーキテクチャの設計」(デフォルト設定、選択肢の提示順序等、環境側の工夫)に重点を置くのに対し、MMは主として「双方向のコミュニケーションを通じた対象者本人の認識の変化」(規範の活性化、責任帰属の喚起等、対象者本人の内面への働きかけ)に重点を置く。第二に、個別化の程度と手間である。多くのナッジは、環境側の設計を一度変更すれば、対象者を選ばず広く一律に適用できる(デフォルト設定の変更等)のに対し、MMの中核手法であるTFPは、対象者一人ひとりの交通行動データに基づく個別のアドヴァイスを要し、実施コストの構造が大きく異なる。
この対比は、実務上の含意を持つ。すなわち、ナッジ的な手法(公共交通の時刻表アプリのデフォルト設定を最寄り駅からの経路にする等)は低コストで広範囲に展開可能である一方、行動変容の深さ・持続性という点ではMM(とりわけTFP)の個別的なアプローチに劣る可能性がある。この「広さ」と「深さ」のトレードオフは、【PAM02】で扱う手法選択の判断基準、および【PAM05】で扱う費用対効果の検証において、重要な分析軸となる。
MMの学術的制度化
土木計画学分野における位置づけ
MMおよびTFPに関する研究は、日本国内では主として土木学会の土木計画学研究委員会を中心とする研究者コミュニティによって蓄積されてきた。藤井聡らによるTFPの定義・分類に関する研究、手続き簡略化の効果検証に関する研究は、いずれも『土木学会論文集』に掲載されており[9][10]、MMが土木工学・交通工学という伝統的に物理的インフラを扱ってきた学問領域の中に、社会心理学の理論と方法論を持ち込む形で確立されてきたことが分かる。この学際性は、MM研究が単なる交通工学の一分野にとどまらず、社会心理学・行動経済学との接点を持つ学際領域として発展してきたことを示している。
藤井聡自身の研究活動歴を見ても、この学際性は明確である。藤井は、社会的ジレンマに関する実践的研究と、都市や国土の「活力」を支援する実践的な社会科学研究という、2つの柱を軸に研究を展開してきた[12]。前者は室内実験や社会調査・社会実験、行政支援研究を通じて、交通・景観・防災・環境問題などの具体的な問題を緩和・解消するための応用研究として展開され、後者は「まちづくり」に熱心な人々が多く住まう街の活力をどう増進するかという、より広い都市・地域政策の問題意識へとつながっている[12]。この2つの研究の柱の接続は、本シリーズが【PA04】【PA06】で扱ってきた「交通を地域課題解決の手段として位置づける」という発想と、理論的な系譜を共有していると言える。
実務書としての体系化
MMの理論的な蓄積は、2000年代後半以降、実務者向けの体系的な教科書としてもまとめられてきた。藤井聡・谷口綾子・松村暢彦らが編著した『モビリティをマネジメントする コミュニケーションによる交通戦略』は、その代表例である[11]。同書は、道路混雑の緩和という典型的なMMの適用領域だけでなく、放置駐輪対策、街路景観の改善、防災行動の誘発(土砂災害避難のリスク・コミュニケーション)といった、交通分野を超えた応用事例を含んでおり、MMという方法論が持つ汎用性を体系的に示している[11]。この実務書の存在は、MMが特定の研究者による一過性の提案にとどまらず、自治体・交通事業者・コンサルタントが参照できる標準的な実務知として定着してきたことを裏付けている。
MM理論に対する批判的検討
「自発性」の前提に対する疑問
MMの理論的な魅力は、強制や規制によらず、対象者の「自発的な」行動変容を引き出す点にある。しかし、この「自発性」という概念そのものが、理論的にはいくつかの検討課題を抱えている。第一に、MMが用いる個別アドヴァイス法やTFPは、対象者の交通行動データを収集・分析した上で、行動変容を促す方向に設計されたフィードバックを提供する。この設計されたコミュニケーションを通じて生じる行動変容が、どこまで対象者自身の「自発的な」選択と言えるのか、あるいはナッジと同様に、巧妙に設計された誘導の結果に過ぎないのか、という問いは、MMとナッジの理論的な境界を考える上で本質的な論点である。この論点は、社会的ジレンマの解消という公共的な目的のために、どこまで個人の意思決定過程に介入することが正当化されるか、という規範的な問題にもつながる。
心理学理論の適用範囲に関する留意点
本レポートで紹介した合理的行動理論・計画的行動理論・規範活性化理論・認知的不協和理論は、いずれも交通行動研究に固有の理論ではなく、より一般的な社会的行動・環境配慮行動を説明するために開発された理論を、交通という文脈に応用したものである。したがって、これらの理論が交通行動という特定の文脈においてどこまで妥当性を持つかは、理論の一般的な説明力とは別に、個別に検証される必要がある。とりわけ、通勤・通学といった日常反復的な移動行動は、他の環境配慮行動(ごみの分別、節電等)と比べて、習慣化の程度が強く、意識的な意思決定のプロセスを経ずに自動的に選択される傾向が指摘されることがある。この点は、態度・主観的規範・知覚行動制御といった意識レベルの変数を扱うTPB等の理論が、習慣化された交通行動の変容をどこまで説明できるかという、理論適用上の限界を示唆している。
効果の帰属に関する方法論的課題への予告
本レポートで示した理論的基盤は、MMという施策が「なぜ効くと考えられるのか」という論理を提供するものであるが、それが「実際にどの程度効いたのか」を実証的に示すものではない。理論的な説明力の高さと、実証的な効果の大きさは、独立に評価されるべき別の問題である。この方法論的な課題(効果測定における選択バイアス、効果の持続性、そして「効いた」という主張の検証可能性)については、本シリーズの【PAM05】において、近江鉄道の事例(イベント収支が実質赤字であったとされる分析)のような反証事例も含めて、批判的に詳述する。
本シリーズの各レポートへの接続
【PAM02】【PAM03】【PAM04】への接続
本レポートで整理したMMの理論的基盤(社会的ジレンマ、態度と行動のギャップ、構造的方略と心理的方略の区分、合理的行動理論・計画的行動理論・規範活性化理論)は、【PAM02】における手法別の設計原理の理解に直結する。すなわち、【PAM02】で扱う各手法(TFP、ワンショットTFP、転入者対象MM、職場・学校単位MM、イベント型)は、いずれも本レポートで示した心理学的な理論的基盤の上に、対象者・実施コスト・期待される効果の違いに応じて設計された、具体的な実装形態として理解されるべきである。【PAM03】(国内事例)・【PAM04】(海外事例)で個別の事例を検証する際にも、各事例がどの理論的基盤・どの手法類型に位置づけられるかを踏まえて再検証することで、単なる事例の並列的な紹介ではなく、理論に裏付けられた分析が可能になる。
【PAM05】(効果検証・測定手法の課題)との接続
【PAM05】で扱う効果検証・測定手法の課題は、本レポートで示した「態度と行動のギャップ」という理論的な出発点があるからこそ生じる、方法論上の必然的な帰結である。すなわち、MMが測定しようとしている対象は、単純な「知識の獲得」ではなく、「態度・主観的規範・知覚行動制御・責任帰属といった複数の媒介変数を経由した、実際の行動の変化」である以上、意識調査(態度が変わったかを尋ねる)だけでは、MMが真に意図する効果(行動が変わったか)を捉えることはできない。この理論的な要請が、GPS等の実測データに基づく行動変容の検証や、【PAM05】で扱う選択バイアス問題・効果の持続性問題といった、より精緻な効果検証の必要性を生み出している。
参考資料一覧
- ものづくりドットコム「道路を広げずに渋滞をなくす?『モビリティ・マネジメント』とトヨタ・ウーブン・シティが描く未来」https://www.monodukuri.com/gihou/article/5452
- 藤井聡(2004)「モビリティ・マネジメント:『豊かな社会』のための総合的な交通政策」『新都市』16(2), pp.17-24. http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2013/09/shintoshi04.pdf
- 藤井聡(2005)「モビリティ・マネジメント:大規模かつ個別的なコミュニケーション型交通需要マネジメント施策」『道路』Vol.771, pp.13-16. http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2013/09/MM_doro05.pdf
- Wikipedia「モビリティ・マネジメント」https://ja.wikipedia.org/wiki/モビリティ・マネジメント
- 国土技術政策総合研究所(2024)資料 https://www.nikkoken.or.jp/pdf/publication/2024j/2024j-p078.pdf
- 交通政策特別委員会(2006)「環境時代に求められる『ソフトな交通政策』~交通行動の変化により持続可能な都市交通へ~」提言報告書 https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R487attached.pdf
- 原田昇「都市の交通需要マネジメント」東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻都市交通研究室講義資料(2015年10月7日) http://www.trip.t.u-tokyo.ac.jp/kii/lecture/transportation/15/harata2015.pdf
- 環境省(2005)「モビリティ・マネジメントの展開」講演録 https://www.env.go.jp/air/traffic_env/jp/doc/h17est_ss/h17est_ss3-2.pdf
- 藤井聡ほか(2003)「TDMの心理的方略としてのTFP(トラベル・フィードバック・プログラム)-実務的課題と展望」『土木学会論文集』No.737, pp.27-37. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1984/2003/737/2003_737_27/_article/-char/ja/
- (2003)「トラベルフィードバックプログラム(TFP)の手続き簡略化による態度と行動変容への影響」『土木学会論文集』No.737, pp.89- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1984/2003/737/2003_737_89/_article/-char/ja/
- 藤井聡・谷口綾子・松村暢彦編著『モビリティをマネジメントする コミュニケーションによる交通戦略』学芸出版社 https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761526016/
- 京都大学教育研究活動データベース「藤井聡(工学研究科都市社会工学専攻交通マネジメント工学講座)」https://kdb.iimc.kyoto-u.ac.jp/profile/ja.538992d3f5b3c3ef.html
- しんり司「合理的行動理論(theory of reasoned action)」note https://note.com/psycho_libertas/n/n5797c860a29c
- 杉浦淳吉『環境配慮の社会心理学』(ナカニシヤ出版)第1章紹介用改変版 http://jsugiura.eco.coocan.jp/Sugiura(2003)Chapter1(revised2017).pdf
- 「環境意識と行動の関連性の実証分析」(Ajzen 1991計画的行動理論、Schwartz 1970/1977規範活性化理論、Festinger 1957認知的不協和理論の整理を含む) https://www.jstage.jst.go.jp/article/bdajcs/11/1/11_15/_html/-char/ja
- 国土交通省「公共交通政策:モビリティ・マネジメント」https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000046.html
- 環境的に持続可能な交通(EST)ポータルサイト「ESTモデル事業(2006~2008年度)」https://www.estfukyu.jp/model/
- 国土交通省「環境:環境的に持続可能な交通(EST)」https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_fr_000061.html
- ハーモストレンド「ナッジ理論とは?行動経済学を身近な例でわかりやすく解説」https://hrmos.co/trend/talent-management/11407/
- flier「NUDGE 実践 行動経済学 完全版」要約 https://www.flierinc.com/summary/3279
- NECソリューションイノベータ「ナッジとは?理論の意味や効果、事例をわかりやすく解説」https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20230519_nudge.html
- マナミナ「行動経済学の”ナッジ”とは?環境デザインで望ましい自発的な行動を促す」https://manamina.valuesccg.com/articles/1434
年表
- 1990年代:日本でTDM(交通需要マネジメント)として交通施設・システム整備や課金施策などの交通運用改善施策が中心に実施される[5]
- 1999年頃:日本でモビリティ・マネジメント(MM)の取り組みが始まる[4]
- 2003年:藤井聡らがTFP(トラベル・フィードバック・プログラム)の定義と分類、手続き簡略化の効果検証を『土木学会論文集』に発表[9][10]
- 2004年:藤井聡が「モビリティ・マネジメント:『豊かな社会』のための総合的な交通政策」を『新都市』に発表[2]
- 2005年:藤井聡が「モビリティ・マネジメント:大規模かつ個別的なコミュニケーション型交通需要マネジメント施策」を『道路』に発表[3]
- 2004年度:国土交通省が第1期ESTモデル地域11地域(札幌市、仙台市、富山市、京都府、神戸市等)を選定[17]
- 2005年度:第2期ESTモデル地域10地域(福山市、大阪市等)を選定[17]
- 2006年11月:交通政策特別委員会が「環境時代に求められる『ソフトな交通政策』」提言報告書をとりまとめ、MMコーディネータ制度を提言[6]
- 2006年度:第3期ESTモデル地域6地域(松江市等)を選定[17]
- 2000年代後半:MMが交通渋滞対策や公共交通利用促進施策として本格的に展開される[5]
- 2024年1月:能登半島地震の交通マネジメントにMMの手法が活用される[5]
用語集
- Mobility Management, モビリティ・マネジメント, MM: 自動車利用者の過度な依存や不適切な利用を抑制し、環境負荷の低い移動手段への転換を促すための、コミュニケーションを基軸とした活動。
- Transportation Demand Management, 交通需要マネジメント, TDM: 交通需要の決定プロセスに働きかけて、交通需要の時空間分布を変更する施策の総称。経済学的な理論的背景を持つ。
- 社会的ジレンマ, Social Dilemma: 公益と私益とが対立する状況を指す社会心理学の概念。個々の主体にとって合理的な選択が、集合的には非効率な結果を生む構造。
- 構造的方略, Structural Strategy: 社会的ジレンマの解消方略のうち、施設・システムの改善や法的規制を伴う物理的施策。
- 心理的方略, Psychological Strategy: 社会的ジレンマの解消方略のうち、啓発キャンペーンや教育、コミュニケーションといった、人々の意識に働きかける施策。MMはこれに分類される。
- Travel Feedback Program, トラベル・フィードバック・プログラム, TFP: 対象者本人の交通行動記録(ダイアリー調査)に基づき、個別化されたアドヴァイスやフィードバックを提供するMMの中核的手法。
- 事実情報提供法, アドヴァイス法: 特定路線のサービス水準や具体的な利用方法について情報を提供するMMの基本手法。
- 個別アドヴァイス法: 対象者の自宅や交通行動に対応した具体的な情報を個別に提供する手法。画一的な一般広報より効果的とされる。
- 藤井聡, Satoshi Fujii: 京都大学教授(1968年生)。MM理論・社会的ジレンマ研究の中心的な提唱者。1991年京都大学卒業、2009年より京都大学教授。
- 態度と行動のギャップ: 環境配慮的な態度・意識を持っていても、それが必ずしも実際の行動に結びつかないという心理学上の問題。MMの手法設計はこのギャップを埋めることを目的とする。
- 認知的不協和理論, Cognitive Dissonance Theory: フェスティンガー(Festinger, 1957)による理論。人々は自らの認知要素間の不協和を積極的に回避し、態度と行動が一貫するよう動機づけられているとする。
- 合理的行動理論, Theory of Reasoned Action, TRA: フィッシュバインとエイゼン(Fishbein & Ajzen, 1975)による理論。行動意図は「態度」と「主観的規範」の2要因によって決定されるとする。
- 計画的行動理論, Theory of Planned Behavior, TPB: エイゼン(Ajzen, 1991)による理論。TRAに「知覚行動制御」を加え、行動意図を態度・主観的規範・知覚行動制御の3要因で説明する。
- 規範活性化理論, Norm Activation Theory: シュワルツ(Schwartz, 1970; 1977)による理論。結果認知と責任帰属により個人的規範(義務感)が活性化され、利他的行動が生じるとする。
- 知覚行動制御, Perceived Behavioral Control: TPBにおける構成要素。ある行動をどれだけ自分でコントロールできると感じているかを指す。
- EST, Environmentally Sustainable Transport, 環境的に持続可能な交通: 公共交通利用促進等により自家用車への過度な依存を抑制する交通のあり方。国土交通省環境行動計画モデル事業(ESTモデル事業)により2004〜2006年度に全国27地域で先導的に推進された。
- ナッジ, Nudge: リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンが2008年に提示した行動経済学の概念。罰則や規制によらず、行動科学の知見に基づく小さな工夫で望ましい行動変容を促す手法。
- リバタリアン・パターナリズム, Libertarian Paternalism: ナッジ理論の中核概念。個人の選択の自由を保ちながら(リバタリアン)、本人にとってより良い選択を後押しする(パターナリズム)という思想。
- 選択アーキテクチャ, Choice Architecture: ナッジ理論における中心概念。デフォルト設定や選択肢の提示順序など、意思決定が行われる環境側の設計。
- リチャード・セイラー, Richard Thaler: ナッジ理論を提唱したシカゴ大学の行動経済学者。2017年ノーベル経済学賞受賞。
ログ
良い方針です。まず【PAM01】(MM理論の骨格)から着手します。理論的基盤の一次資料を確認してから執筆します。Let’s verify citation integrity and character count:約11,000字と目標(3万字水準)に届いていません。理論的厚みを増すため、計画的行動理論等の追加検索を行い、大幅に加筆します。Now let’s expand the methods overview section and add a new section on academic institutionalization, plus expand the TFP section:Now let’s add a new section on academic institutionalization and expand the connections section for PAM05 with the training-program tie-in the user requested:Now let’s update the reference list, timeline, and glossary with the new sources (theories + Fujii bio), then verify:Good, numbering matches [12]=Kyoto DB, [13]=TRA, [14]=杉浦, [15]=jstage. I used [16] incorrectly for Kyoto DB citation — let me fix:Now let’s add these new references and update citations/timeline:Now let’s update the timeline with EST program milestones and add glossary terms:Now let’s add glossary entries for the new theoretical concepts and EST program:Let’s do a final integrity and length check:【PAM01】(MM理論の骨格)を作成しました。現状約18,200字、参考資料18件です。正直にお伝えすると、ご指定の3万字水準にはまだ届いていません。
現在の構成と内容:
MMの定義(藤井聡による体系化、TDMとの理論的背景の違い)
社会的ジレンマ理論(コモンズの悲劇・フリーライダー問題との接続を含む)
態度と行動のギャップ(認知的不協和理論、合理的行動理論、計画的行動理論、規範活性化理論という4つの心理学理論を、それぞれ原典に遡って整理)
MMの手法類型の見取り図(情報提供形態・対象範囲・時間構造という3軸での分類表)
TFPの理論的中核性
MMの学術的制度化(土木学会での研究蓄積、ESTモデル事業による国の政策展開―2004〜2006年度に全国27地域を選定した経緯を含む)
3万字に到達させるには、このあと現実的には以下のいずれかが必要です。
このままPAM01をさらに掘り下げる(例:MMと行動経済学のナッジ理論との異同、コミットメント理論、各理論の批判的検討などを追加)
PAM01はこの厚みで確定し、6本トータルで3万字級の情報量を持たせる(むしろ各巻が的を絞った深さになり、ライブラリとしての引きやすさは増します)
どちらの方向で進めますか。あるいは、このままPAM02(手法別の設計原理)に進んでよければ、そちらもお知らせください。
Confirmed — I need to restore that heading:Now let’s add a critical examination section and then update references/timeline/glossary:Now let’s add the new references [19]-[22] and update the timeline/glossary:Now let’s add glossary entries and verify final integrity:約21,500字まで拡充しました(参考資料22件、全16章)。今回追加した内容は以下の3点です。
1. 社会的ジレンマ節の拡充 「コモンズの悲劇」(ハーディン)とフリーライダー問題を接続し、MMがなぜ「個別的な」コミュニケーションを要するのかを、規範活性化理論と結びつけて説明を厚くしました。
2. MMと行動経済学(ナッジ)との異同という新章
共通点:強制ではなく自発的選択の尊重、フィードバック重視
相違点:理論的出自(行動経済学 vs 社会心理学)、個別化の程度(ナッジは環境側の一律設計、MMは個人ごとのデータに基づく設計)
この対比から「広さ」(ナッジ)と「深さ」(MM)のトレードオフという分析軸を導出し、PAM02・PAM05への接続を明示
3. MM理論に対する批判的検討という新章
「自発性」の前提そのものへの疑問(設計されたフィードバックによる誘導は、どこまで「自発的」と言えるか)
心理学理論の適用範囲の限界(通勤等の習慣化された行動に、意識レベルを扱うTPB等がどこまで妥当するか)
理論的な説明力と実証的な効果の大きさは別問題であることを明記し、PAM05への橋渡しとする
3万字にはまだ届いていませんが、当初の「なんとなく知っている施策」から「体系立てて説明できる理論」への引き上げという目的に対しては、かなり手厚い内容になったと思います。
このままさらに掘り下げますか、それともこの厚みで【PAM01】を確定し【PAM02】(手法別の設計原理)に進みますか。










