TJ4が日本商船隊の実態を定量分析したのに対し、本シリーズは国際的な制度・契約という視座から海運を検討します。コンテナと石油、この2品目に絞る理由から、海運経済学という学問領域の位置づけまでを整理する、シリーズの出発点です。
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はじめに

本稿は「TIMシリーズの第一回として、国際海運という分野の学問的な位置づけと全体構成を整理する。既刊のTJ4(外航海運を「輸送装置」として解剖する)との役割分担を明確にした上で、本シリーズがコンテナ輸送と石油輸送という2つの品目に対象を絞る理由を示す。

既刊TJ4との役割分担

TJ4の分析視座

既刊のTJシリーズ(TJ2の貨物鉄道分析等)は、輸送を「輸送システム、ネットワーク、結節点、OD、時間構造、生産性」という工学・物流システムの視座から定量的に分析するという明確な方針を持つ。TJ4はこの方針に基づき、日本商船隊、及び日本の外航海運を、統計・政府資料・学術論文に基づいて実態把握する記事であり、政策提言・独自見解を含まない。

本シリーズの異なる焦点

これに対し本シリーズは、日本の外航海運という一国の実態にとどまらず、国際的な制度・契約・政策という視座から海運を検討する。具体的には、コンテナ輸送における港湾ターミナル・船社・シャーシ提供者の間の契約構造、石油輸送における原油・LPG・ナフサという品目ごとの輸送・受入の仕組みを掘り下げる。TJ4が日本の商船隊という供給側の実態を扱うのに対し、本シリーズは、その供給された輸送サービスが実際にどのような制度的な枠組みのもとで提供されているのかという、より制度論的な問いを扱う。

対象をコンテナと石油に絞る理由

国際海運は、コンテナ船、バルカーばら積み船)、タンカー、LNG船、自動車専用船等、多様な船種に分かれている。本シリーズが、この中からコンテナ輸送と石油輸送に対象を絞るのは、次の理由による。第一に、コンテナ輸送は工業製品・消費財という経済の根幹をなす貨物を扱い、その契約構造の複雑さは、国際物流の制度論を学ぶ上で最も体系的な素材を提供する。第二に、石油輸送は日本のエネルギー安全保障と直結する戦略的な品目であり、既刊のP305等で扱ってきた公共インフラの議論とも接続しうる。

海運経済学という学問領域

海運経済学は、海上輸送における需給関係、運賃の決定メカニズム、船腹量の調整、そして本シリーズが重点的に扱う契約・ガバナンスの構造を対象とする、応用経済学の一分野である。この分野は伝統的に、経済学、法学(海商法)、そして工学(港湾・船舶設計)という複数の学問領域が交差する場として発展してきた。

本シリーズの見通し

次稿TIM02では、コンテナ輸送における発荷主から着荷主までの契約の連鎖——運送契約、ターミナル・サービス契約、シャーシの共同利用、鉄道区間のIPI契約、ターミナル使用料の支払い構造——を具体的に検討する。TIM03では、海運同盟から現代のアライアンス体制への転換を、国際カルテルの経済学として扱う。TIM04では、石油タンカー輸送について、原油・LPG・ナフサという品目ごとの輸送・受入の実態、そして日本においてパイプラインが極端に少ない理由を検討する。TIM05では、国際海事機関IMO)による国際的な規制の枠組みを扱う。

おわりに

本稿は、既刊TJ4との役割分担——TJ4が日本の外航海運の供給側の実態を定量的に把握するのに対し、本シリーズが国際的な制度・契約・政策という視座から検討すること——を明確にした。コンテナと石油という対象の絞り込みの理由、及び海運経済学という学問領域の位置づけもあわせて確認した。次稿TIM02では、コンテナ輸送の契約構造の全体像を扱う。

用語集

  • 海運経済学, Shipping Economics, —, —: 海上輸送における需給関係、運賃決定、契約・ガバナンス構造を対象とする応用経済学の一分野。
  • IPI, Interior Point Intermodal, インテリア・ポイント・インターモーダル, —: 輸入貨物について、港から内陸の目的地までを単一の海上B/Lでカバーする鉄道連携の仕組み。次稿TIM02で詳述する。