日本のPFI法は、英国モデルをもとにしながら、施設整備費の割賦払いを禁止するどころか、むしろ促進していた。両国のPFI制度が、ほぼ同時期に固まったことで生じた、この理解の隔たりを検証しながら、1999年の制定から2011年のコンセッション方式導入まで、行政契約論の展開を整理する回です。

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はじめに

LZ04では、行政計画論、すなわち計画裁量とその統制を扱った。本稿は、その第四の各論として、行政契約論、すなわち、契約による行政という、現代的な手法を扱う。補助金、PFI、公私協働という、複数の制度を通じて、既刊L04、P3シリーズとの理論的な接続を、より深く掘り下げる。

契約による行政という発想

行政の活動は、伝統的には、LZ02で扱った、行政行為という、一方的な権力行使を、中心的な手法としてきた。しかし、現代の行政は、相手方との合意に基づく、契約という手法を、広範に活用するようになっている。この、契約による行政という手法は、権力的な行政行為に比べ、相手方の協力を得やすく、専門的な知見を有する民間事業者の能力を、柔軟に活用できるという利点を持つ一方、行政の恣意的な運用を、統制する仕組みが、行政行為に比べ、必ずしも十分に整備されていないという課題も、あわせ持つ。

PFI法の制定

1999年、法律の成立

民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、通称PFI法は、1999年7月30日、法律第117号として、公布された[1]。同年12月22日には、法律第160号による改正も行われている[2]。この法律は、国、地方公共団体等が行ってきた、公共施設等の企画、建設、維持管理、運営を、民間に委ねる方式を、導入するものである[1]。所管官庁は、内閣府経済社会システム担当政策統括官の下に置かれる、民間資金等活用事業推進室である[1]。

対象となる施設

PFI法の対象となる、公共施設等は、道路、鉄道、港湾、港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道、庁舎、宿舎、教育文化施設、スポーツ施設、集会施設、情報通信施設、新エネルギー施設、人工衛星等、多岐にわたる[3]。この一覧からも明らかなように、交通・物流分野に直結する、道路、鉄道、港湾、港が、いずれも、PFI法の対象施設として、明示的に、位置づけられている。

基本理念と、実施主体

PFI事業の実施にあたっては、民間事業者の自主性を尊重すること、及び、民間事業者の選定について、公開の競争により選定を行う等、その過程の透明化を図るとともに、民間事業者の創意工夫を尊重することが、基本理念として掲げられている[4]。PFI事業の実施主体は、国、すなわち各省庁の長、又は、地方公共団体の長である[3]。

英国モデルとの、微妙なずれ

日本のPFI法は、英国のPFI手法を、モデルとして、制定された[5]。しかし、英国において、PFI契約の標準化、通称SoPCが公表されたのも、1999年7月であったことから、日本のPFI法の草稿を策定した段階では、英国のPFIの仕組みが、どのようなものであるかが、十分に理解できていなかった可能性が指摘されている[5]。この点は、日本国外のPFIでは、禁止されている、施設整備費の割賦払いを、日本のPFI法が、禁止していないばかりか、むしろ、割賦払いによる施設整備を、促進していることに、現れている[5]。割賦払いの契約を締結すると、公共側には、施設整備費を全額支払う義務が生じ、施設の瑕疵担保リスクを超えた、不具合リスクを、民間に移転することが、できなくなるという、デメリットが生じる[5]。

2011年改正、コンセッション方式の導入

1999年のPFI法制定後、さまざまな公共施設等について、PFI手法の活用がなされ、特に、いわゆる箱物について、サービス購入型を前提とした、建設・運営が、数多く実施されてきた[6]。2011年のPFI法改正により、公共施設等運営権制度、いわゆるコンセッション方式が、導入され、より民間事業者のノウハウを活かせるよう、制度の整備が進められた[6]。

既刊L04との接続

既刊L04で扱った、補助金交付決定の法的性質という論点は、本稿で扱った、契約による行政という、より広い枠組みの中に、位置づけることができる。国の補助金交付決定が、行政処分として構成されるのに対し、地方公共団体の補助金交付は、原則として、契約として構成される。この違いは、本稿で扱った、PFI事業が、契約という形式を採用していることと、共通する側面を持つ。すなわち、いずれも、行政と民間の間の、合意に基づく、関係の形成を、その本質としており、行政行為のような、一方的な権力行使とは、異なる、統制枠組みが、求められることになる。

既刊P3シリーズとの接続

既刊のP3シリーズで扱った、サービス調達契約という制度設計は、本稿で扱った、行政契約論の、具体的な応用例である。P303で検討した、地方自治法上の、競争入札の原則、及び、随意契約による正当化という論点は、本稿で扱った、PFI事業における、民間事業者の選定手続にも、そのまま妥当する。PFI法が、民間事業者の選定について、公開の競争による選定を、基本理念として掲げていることは、まさに、地方自治法が定める、競争入札の原則と、軌を一にするものである。

交通・物流分野への接続

PFI法の対象施設に、道路、鉄道、港湾、港が、明示的に含まれていることは、本シリーズが、繰り返し扱ってきた、交通インフラの整備・運営という論点との、直接的な接続を示している。三セク鉄道会社が、P3シリーズで検討した、地域KPI経営という手法を、実際に導入する際には、本稿で扱った、PFI法の枠組み、特に、コンセッション方式が、一つの、具体的な制度的選択肢となりうる。もっとも、日本のPFI法が抱える、施設整備費の割賦払いをめぐる、財政上の課題は、交通インフラへの、PFI手法の適用を検討する際にも、あわせて考慮されるべき、重要な留意点である。

関連法令例

本稿の内容に、直接関連する法令として、PFI法、地方自治法における契約締結の規定、道路運送法における運行委託の規定が挙げられる。

おわりに

本稿は、契約による行政という発想を整理した上で、PFI法の制定経緯(1999年の制定、対象施設、基本理念)、英国モデルとの微妙なずれ、そして、2011年改正によるコンセッション方式の導入を検討した。既刊L04、P3シリーズとの理論的な接続、及び、交通・物流分野への接続もあわせて確認した。次稿LZ06では、行政上の義務履行確保、すなわち強制執行と制裁の理論を扱う。

主要先行研究

PFI法(1999年法律第117号)[1][3]。

年表

  • 1999年7月30日 PFI法公布
  • 1999年12月22日 PFI法改正(法律第160号)
  • 2011年 PFI法改正、公共施設等運営権制度コンセッション方式)の導入
  • 2018年10月23日 民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針、閣議決定

参考資料一覧

  1. 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」日本語版ウィキペディア。1999年7月30日法律第117号としての公布、法律の目的について。
  2. 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」内閣府PFI協会。1999年12月22日法律第160号による改正について。
  3. PFIの基本的な仕組みと近時の法改正等」Business & Law。PFI法の対象施設一覧、実施主体について。
  4. 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」内閣府PFI協会。基本理念(民間事業者の自主性尊重、公開の競争による選定)について。
  5. PFI」日本語版ウィキペディア。英国PFI手法との関係、SoPC、施設整備費割賦払いをめぐる課題について。
  6. PFIの基本的な仕組みと近時の法改正等」Business & Law。2011年改正によるコンセッション方式の導入について。

用語集

  • PFI法。1999年制定の、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の通称。
  • コンセッション方式。公共施設等運営権制度。2011年のPFI法改正により導入された。
  • 行政契約。行政主体が、相手方との合意に基づいて締結する契約。

Claudeログ

LZ05を執筆する。PFI法の制定経緯と、行政契約論の理論的基盤について、正確な典拠を確認する。十分な典拠が揃った。LZ05を執筆する。整合性を確認する。引用番号[1]〜[6]の連番、参考資料一覧6項目との対応、和暦・**の不使用、全HTMLタグの対応、いずれも確認できた。LZ05を執筆した。

主な内容

  • 契約による行政という発想の意義と課題を整理した
  • PFI法の制定経緯として、1999年7月30日の公布(法律第117号)、同年12月22日の改正(法律第160号)を確認した
  • PFI法の対象施設に、道路、鉄道、港湾、港が明示的に含まれていることを確認し、交通・物流分野との直接的な接続を示した
  • 英国モデルとの微妙なずれとして、英国でPFI契約の標準化が公表されたのも同じ1999年7月であったため、日本のPFI法草稿の策定段階では、英国の仕組みが十分に理解されていなかった可能性があるという指摘を紹介した。日本のPFI法が、施設整備費の割賦払いを禁止しないばかりか、むしろ促進しており、財政悪化のリスクを抱えているという批判的な指摘もあわせて記載した
  • 2011年改正によるコンセッション方式の導入を確認した
  • 既刊L04(補助金交付決定の法的性質)との接続として、国の行政処分と地方の契約という違いが、本稿の契約による行政という枠組みとどう関わるかを検討した
  • 既刊P3シリーズ(サービス調達契約)との接続として、PFI法の競争選定という基本理念が、地方自治法上の競争入札原則と軌を一にすることを確認した
  • 交通・物流分野への接続として、三セク鉄道会社への地域KPI経営の導入における、コンセッション方式という具体的な選択肢を検討した

引用[1]から[6]、参考資料一覧6件、年表4項目(すべて西暦)、用語集3項目を確認済み。

SNSリード文

日本のPFI法は、英国モデルをもとにしながら、施設整備費の割賦払いを禁止するどころか、むしろ促進していた。両国のPFI制度が、ほぼ同時期に固まったことで生じた、この理解の隔たりを検証しながら、1999年の制定から2011年のコンセッション方式導入まで、行政契約論の展開を整理する回です。

タイトル案

  1. 同じ1999年7月、すれ違った日英のPFI
  2. 割賦払いが開けた、財政悪化への歯止め
  3. 契約による行政、その利点と統制の課題