STSは科学と社会の関係を批判的に問い直し、レギュラトリーサイエンスは科学的根拠を規制判断へ橋渡しする。対立する学問ではなく、異なる層で政策を動かす補完的な回路。起源(内山充・ワインバーグ・ジャサノフ)から両者の理論構造を比較しました。
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目次
序章 二つの「科学と社会をつなぐ学」
科学技術社会論(Science and Technology Studies, STS)とレギュラトリーサイエンス(Regulatory Science, RS)は、どちらも「科学技術と社会・政策の関係」を扱う学問である。しかし両者が社会を変えようとするときの回路はまったく異なる。STSは、科学技術と社会の関係そのものを批判的に記述し、その関係のあり方を問い直すことを通じて社会を変えようとする。レギュラトリーサイエンスは、科学的知見を規制・行政判断へと橋渡しすることで、既存の意思決定プロセスの内部から社会を変えようとする。
本稿では、まずレギュラトリーサイエンスの定義と起源・系譜を確認したのち、STSとレギュラトリーサイエンスそれぞれの理論構造を整理し、両者を比較する。最後に、両者が交差する地点として、シーラ・ジャサノフの研究を取り上げる。
第一章 レギュラトリーサイエンスとは何か
レギュラトリーサイエンスは、科学的知見と、規制などの行政施策・措置との間を橋渡しする科学として定義される。日本政府の公式な定義は、第4次科学技術基本計画(2011年8月19日閣議決定)にある「科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学」というものである。2014年に制定された健康医療戦略推進法においても、医療分野の研究開発成果の実用化に際し、その品質・有効性・安全性を科学的知見に基づいて適正かつ迅速に予測・評価・判断することに関する科学の振興が、国の方針として掲げられている。
レギュラトリーサイエンスの提唱者である内山充は、この学を「既存科学」と対比させて説明している。既存科学が新規性や有用性に価値を置き、憶測を排して実証を尊ぶのに対し、レギュラトリーサイエンスは評価・判断そのものを目的とし、その評価は予測に基づいて導かれる。つまり既存科学が「何が真であるか」を追求するのに対し、レギュラトリーサイエンスは「この知見をもとに、どう判断し、どう規制すべきか」を追求する。対象領域は医薬品・医療機器・食品安全・化学物質規制など、人の健康や安全に直接関わる分野が中心である。
第二章 レギュラトリーサイエンスの起源と系譜
トランス・サイエンスという前史
レギュラトリーサイエンスの理論的な前史として位置づけられるのが、物理学者アルヴィン・ワインバーグが1972年に発表した「トランス・サイエンス(trans-science)」という概念である。ワインバーグは、原子力政策をめぐる議論の中で、「科学に問うことはできるが、科学だけでは答えることのできない問題群」が存在することを指摘した。低線量被曝の健康影響のように、原理的には科学的な問いの形をしているにもかかわらず、実験や観測によって確定的な答えを得ることが実務上不可能であったり、価値判断が不可避に混入したりする領域である。この「トランス・サイエンス」の概念は、科学的な手続きを踏みながらも、最終的な判断には科学を超えた要素が入り込まざるを得ない、という認識を提供した点で、のちのレギュラトリーサイエンス論の理論的な土台の一つとなっている。
日本における提唱 ― 内山充と「評価科学」
レギュラトリーサイエンスという概念を提唱したのは、当時国立衛生試験所(現・国立医薬品食品衛生研究所)副所長であった内山充である。1981年、内山はこの概念を、科学技術の進歩がもたらす利益と不利益の両面を的確に予測し、社会生活との調和の上で最も望ましい形に調整するための科学として定式化した。内山はレギュラトリーサイエンスを二つの要素に分けて説明している。一つは、科学技術がもたらす成果の良い面・悪い面を的確に予測する「評価科学」であり、もう一つは、その評価に基づいて実際に規制・調整を行う判断の科学である。この提唱は当初、医薬品行政の文脈から出発したが、後に食品安全、化学物質規制、医療機器など、より広い規制領域に適用されるようになった。
米国側の系譜 ― ジャサノフ『The Fifth Branch』
レギュラトリーサイエンスをめぐる理論的な蓄積は、日本の行政科学の系譜だけでなく、米国のSTS研究者シーラ・ジャサノフによる分析からも形成されている。ジャサノフは1990年(ペーパーバック版1994年)に著した『The Fifth Branch: Science Advisers as Policymakers(第五の府 ― 政策決定者としての科学顧問)』において、米国の規制機関(FDA、EPAなど)に助言する科学者たちが、単に科学的事実を提供するだけでなく、事実上の政策決定者として機能している実態を詳細に分析した。この研究は、レギュラトリーサイエンスという実務を、STSの手法(科学的知識の社会的構成を分析する視点)によって批判的に記述した、両分野の交差点に位置する画期的な仕事として位置づけられる。
日本における制度化
内山による1981年の提唱以降、レギュラトリーサイエンスは日本の科学技術政策の中に段階的に制度化されていった。2011年の第4次科学技術基本計画で国の公式な定義が示され、2014年の健康医療戦略推進法でその振興が法的に位置づけられた。現在では医薬品医療機器総合機構(PMDA)や農林水産省など、複数の行政機関がレギュラトリーサイエンスに関する研究を推進する事業を展開している。
第三章 STSの理論構造(要約)
比較のための座標軸として、STSの理論構造を改めて整理する。STSの核心にあるのは、科学技術は社会的要素と不可分であり、専門家や専門知も完全に中立・客観ではありえないという立場である。この立場から、科学技術に関する一般人の不安や抵抗を知識の欠如のみに帰する「欠如モデル」が批判されてきた。ブライアン・ウィンによるカンブリアの牧羊農民の研究が示したように、公衆の側にも状況に埋め込まれた固有の知識(ローカルな知)があり、専門知はそれと対話し、時に学ぶべき対象である。
この批判から発展した科学技術コミュニケーションのモデル論は、欠如モデルから文脈モデル、素人の専門性モデルを経て、市民参加モデルへと理論的な到達点を移してきた。ここに一貫しているのは、STSが「科学的知識をどう伝えるか」ではなく「科学的知識と社会的知識の関係そのものをどう構成し直すか」を問う、記述的・批判的な学問であるという性格である。STSは特定の政策判断を下すための道具ではなく、判断のプロセスそのものの社会的妥当性を問い直す視点を提供する。
第四章 レギュラトリーサイエンスの理論構造
レギュラトリーサイエンスの理論構造は、STSとは対照的に、処方的・実務的である。その方法論の核心は、内山の言う「評価科学」――科学技術がもたらす利益とリスクを予測し、評価する手続き――と、その評価に基づいて実際に規制・調整の判断を下す手続きの、二段階から成る。
ここで理論的に重要なのは、レギュラトリーサイエンスがワインバーグの「トランス・サイエンス」の領域を、実務として引き受けているという点である。既存科学であれば「データが不十分だから結論を保留する」という選択が可能だが、規制当局は承認・不承認、規制・非規制のいずれかを、期限内に判断しなければならない。この意味で、レギュラトリーサイエンスは、科学的な不確実性が残存する状況下での意思決定を、正面から引き受ける学として設計されている。予防原則(不確実性がある場合には安全側に立って規制するという考え方)のような規範的な判断枠組みも、この文脈の中に位置づけられる。
レギュラトリーサイエンスはまた、既存の行政・規制の枠組みを前提とし、その枠組みの中でエビデンスの質を高め、判断の精度を上げることを目指す。つまり、意思決定のプロセスや制度そのものを問い直すのではなく、そのプロセスに投入される科学的根拠の質を洗練させることによって、規制・政策を改善しようとする。
第五章 両者の理論構造比較
両者の違いを、目的・認識論・市民参加の位置づけ・社会変革の回路という4つの軸で整理する。
| 比較軸 | STS(科学技術社会論) | レギュラトリーサイエンス(RS) |
|---|---|---|
| 基本的性格 | 記述的・批判的(科学と社会の関係を分析する) | 処方的・実務的(規制判断のための根拠を生成する) |
| 目的 | 科学技術と社会の関係のあり方そのものを問い直す | 科学的知見を用いて、的確な予測・評価・判断を行う |
| 認識論的立場 | 科学的知識は社会的に構成される(専門知も完全に中立ではない) | 科学的知見は評価・判断の材料として利用可能という前提に立つ |
| 不確実性への態度 | 不確実性が社会的・政治的に構成される過程そのものを分析対象とする | 不確実性下でも期限内に判断を下すことが要請される(トランス・サイエンス領域の実務的引き受け) |
| 専門知と現場知の関係 | 専門知とローカルな知を対等な知の体系として並置する(素人の専門性モデル等) | 伝統的には専門家中心。ただしリスクコミュニケーションの観点から市民参加の要素も取り入れられつつある |
| 市民参加の位置づけ | 理論的な到達点(市民参加モデル)として明確に位置づけられる | 意思決定支援の一部として部分的に組み込まれるが、理論の中心ではない |
| 社会・政策を変える回路 | コミュニケーションのあり方や参加のプロセスそのものを変えることで、間接的に社会を変える | 既存の規制枠組みの中でエビデンスの質と判断プロセスを洗練させることで、直接的に政策を変える |
| 典型的な問い | 「この科学的知識は、誰によって、どのように正当化されているか」 | 「この科学的知見に基づけば、どう規制・判断すべきか」 |
| 代表的な理論・事例 | 欠如モデル批判(ウィン)、カンブリアの牧羊農民事例 | 評価科学(内山)、トランス・サイエンス(ワインバーグ) |
| 時間軸との関係 | 長期的・累積的な社会関係の変化を扱う(信頼の構築など) | 個別の規制判断ごとに、期限内での結論を要請される |
この比較から見えてくるのは、STSが「なぜこの判断は正当化されるのか、されないのか」を問う学問であるのに対し、レギュラトリーサイエンスは「この状況で、どう判断すべきか」に答えようとする学問だという対比である。前者は判断のプロセスを外側から相対化し、後者は判断のプロセスの内側で機能する。どちらか一方が優れているという関係ではなく、異なる層で社会・政策に働きかけていると理解するのが妥当である。
第六章 交差点としてのジャサノフ
両者の理論的な交差点に位置するのが、シーラ・ジャサノフの仕事である。『The Fifth Branch』は、レギュラトリーサイエンスという実務(科学アドバイザーによる規制判断)を、STSの手法(科学的知識の社会的構成を分析する視点)で分析した、両分野をまたぐ先駆的研究である。
この分析の背景にある理論的な道具立てが、社会学者トーマス・ギエリンが1983年に提唱した「バウンダリーワーク(boundary-work)」という概念である。ギエリンは、科学と非科学の境界線は固定されたものではなく、科学者自身が自らの専門的権威や資源を確保するために、状況に応じて引き直し続ける社会的な作業(境界画定作業)であると論じた。ジャサノフはこの視座を規制科学の文脈に応用し、規制機関に助言する科学者たちが「これは科学的判断である」「これは政治的判断である」という境界線を、実務の中でどのように引き、調整しているかを描き出した。
この視点に立てば、レギュラトリーサイエンスにおける「評価科学」と「判断」の区分自体が、固定的な区分ではなく、実務の中で常に境界画定作業を通じて維持・調整されているものだと理解できる。ジャサノフの仕事は、レギュラトリーサイエンスという処方的な学問の内部に、STS的な問い(この境界線は誰によって、なぜそこに引かれているのか)を差し戻す役割を果たしている。
第七章 実務的示唆
政策形成・合意形成の現場では、STS的な回路とRS的な回路がしばしば同じ意思決定の中で綱引きをしている。たとえば交通・都市計画のような分野では、規制科学的なエビデンス形成(交通量調査、安全性評価、費用便益分析といったRS的な作業)と、住民参加や地域固有の生活実感の位置づけ(STS的な作業)が、同じ政策決定プロセスの中に併存する。
ここから引き出せる実務的な含意は次の通りである。
- エビデンスの精緻化だけでは対立が解消しない場面を見分ける。 RS的な回路(より精緻なデータ、より高度な予測モデル)を積み重ねても納得が得られない対立は、実はSTS的な回路(判断プロセスの正当性そのものへの疑義、過去の不信の履歴)に起因している可能性がある。カンブリアの牧羊農民の事例がまさにこれに当たる。
- 逆に、プロセスの正当性だけでは規制判断そのものを進められない場面もある。 市民参加や対話を重ねても、最終的に「この基準値で規制するかどうか」という具体的な判断を下す局面では、RS的な評価科学の手続きが不可欠になる。
- どちらの回路が働いているかを診断すること自体が、対立解消の第一歩になる。 目の前の対立が「エビデンス不足」の問題なのか、「判断プロセスの正当性」の問題なのかを見誤ると、対策そのものが的外れになる。
終章 小結
STSとレギュラトリーサイエンスは、対立する学問というよりも、社会・政策を変えるための異なる層に働きかける、補完的な学問として理解するのが妥当である。レギュラトリーサイエンスは既存の規制枠組みの中で判断の質を担保し、STSはその判断枠組み自体の社会的正当性を問い直す。両者の交差点に位置するジャサノフの仕事が示すように、実務としてのレギュラトリーサイエンスの内部にも、常にSTS的な問い――この境界線は誰が、なぜ引いているのか――を差し戻す余地がある。
年表
- 1972年:アルヴィン・ワインバーグが論文「Science and Trans-Science」を発表。「トランス・サイエンス」概念を提唱
- 1980年代半ば:STSが大学における学際分野の勃興と連動し、一つの領域として輪郭を持つ
- 1981年:内山充(国立衛生試験所副所長)が「レギュラトリーサイエンス」概念を提唱
- 1983年:トーマス・ギエリンが論文「Boundary-Work and the Demarcation of Science from Non-Science」を発表。「バウンダリーワーク」概念を提唱
- 1986年:チェルノブイリ原発事故。カンブリアの牧羊農民をめぐる欠如モデル批判の事例の舞台となる
- 1990年:シーラ・ジャサノフが『The Fifth Branch: Science Advisers as Policymakers』を刊行(ペーパーバック版は1994年)
- 1992年:ブライアン・ウィンが論文「Misunderstood misunderstanding」を発表し、欠如モデル批判を理論化
- 2011年:日本政府が第4次科学技術基本計画でレギュラトリーサイエンスの公式定義を閣議決定
- 2012年:チェルノブイリ事故から26年を経て、英国内の羊の移動規制が全面解除
- 2014年:健康医療戦略推進法が制定され、レギュラトリーサイエンスの振興が国の方針として法的に位置づけられる
用語集
- Science and Technology Studies(STS/科学技術社会論):科学・技術と社会の境界面に生じる問題を人文・社会科学の方法論で探求する学際領域
- Regulatory Science(RS/レギュラトリーサイエンス):科学的知見と規制などの行政施策・措置との間を橋渡しする科学。内山充による「評価・判断の科学」という定式化が国の公式定義の基礎となっている
- Trans-science(トランス・サイエンス):アルヴィン・ワインバーグが提唱した概念。科学に問うことはできるが、科学だけでは確定的に答えられない問題群を指す
- Evaluation science(評価科学):内山充がレギュラトリーサイエンスの一要素として位置づけた、科学技術の成果の利益・不利益を的確に予測する科学
- Deficit model(欠如モデル):公衆の科学技術への不安・抵抗を知識・理性の欠如によるものとみなす前提。ブライアン・ウィンが命名・批判
- Boundary-work(バウンダリーワーク/境界画定作業):トーマス・ギエリンが1983年に提唱した概念。科学と非科学の境界線を、科学者が専門的権威や資源の確保のために社会的に引き直し続ける作業と捉える
- The Fifth Branch(第五の府):シーラ・ジャサノフの1990年の著作。米国の規制機関に助言する科学者を「事実上の政策決定者」として分析し、STSとレギュラトリーサイエンスを架橋した
- Precautionary principle(予防原則):科学的不確実性が残る場合にも、安全側に立って規制的な判断を行うべきとする規範的な考え方
- Situated knowledge(状況に埋め込まれた知/ローカルな知):特定の場所・状況・実践経験の中でのみ成立する知識。カンブリアの牧羊農民の事例における土地・羊に関する知識が典型例
出典
レギュラトリーサイエンスの定義
- 「レギュラトリーサイエンスについて」独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/outline/0001.html
- 「レギュラトリーサイエンスとは」国立医薬品食品衛生研究所 https://www.nihs.go.jp/dnfi/rs/whats_rs.html
- 「レギュラトリーサイエンスに属する研究」農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/regulatory_science/index.html
- 「Regulatory Science レギュラトリーサイエンス」日本コンピュータ外科学会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscas/18/3/18_171/_pdf/-char/ja
レギュラトリーサイエンスの起源と系譜
- 「AMEDシンポジウム2017開催レポート:招待講演② レギュラトリー・サイエンスに基づくイノベーションの活性化(1)」日本医療研究開発機構 https://www.amed.go.jp/pr/amedsympo2017_06-01.html
- 「レギュラトリー・サイエンス」(ワインバーグのトランス・サイエンス論の紹介を含む) https://navymule9.sakura.ne.jp/16_Regulatory_science.html
- 「トランス・サイエンス」(ジャサノフ、内山充の文献を含む解説) http://tanemura.la.coocan.jp/re3_index/4T/to_trans_science.html
- 内山充「レギュラトリーサイエンス(評価科学)――提唱の道のりと近代化社会での役割」日本学術会議 http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/kiroku/shoku/2-0930i.pdf
- Weinberg, A. M. (1972). “Science and Trans-Science.” Minerva, 10, 209-222.
- Jasanoff, S. (1990/1994). The Fifth Branch: Science Advisers as Policymakers. Harvard University Press.
バウンダリーワーク
- Gieryn, T. F. (1983). “Boundary-Work and the Demarcation of Science from Non-Science: Strains and Interests in Professional Ideologies of Scientists.” American Sociological Review, 48(6), 781-795. https://www.hv.se/globalassets/dokument/forska/lina/gieryn-boundaryworkdemarcationscience-1983.pdf
- “Boundary-work” Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Boundary-work
- “135: Boundary Work in Science – Thomas Gieryn” Talking About Organizations Podcast https://www.talkingaboutorganizations.com/135-boundary-work-in-science-thomas-gieryn/
STSの理論構造(前回レポートと共通の出典)
- 「科学技術社会論とは何か」UTokyo BiblioPlaza https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/F_00148.html
- 「『欠如モデル』と『欠如モデル批判』についての覚書」r_shinehaの日記 https://r-shineha.hatenadiary.org/entry/20111121/1321856897
- Wynne, B. (1992). “Misunderstood misunderstanding: social identities and public uptake of science.” Public Understanding of Science, 1, 281-304. https://journals.sagepub.com/doi/10.1088/0963-6625/1/3/004
Claude ログ
構成案に沿って全七章+比較表・年表・用語集を作成しました。
調査で押さえた主な事実関係
- レギュラトリーサイエンスは1981年、内山充(当時・国立衛生試験所副所長)が提唱。「既存科学=実証を尊ぶ」のに対し「RS=評価・判断を目的とする」という対比で定式化されている
- その理論的前史として、ワインバーグの「トランス・サイエンス」(1972年)― 科学に問えるが科学だけでは答えられない問題群という概念がある
- 米国側では、ジャサノフの『The Fifth Branch』(1990年)が、規制科学の実務をSTSの手法で分析した、両分野の交差点にあたる仕事であることを確認
- 「バウンダリーワーク」はジャサノフではなくギエリン(1983年)の概念であり、ジャサノフはこれを規制科学の文脈に応用した、という帰属関係を正確に整理
**比較表(第五章)**では、基本的性格・目的・認識論・不確実性への態度・専門知と現場知の関係・市民参加の位置づけ・社会変革の回路・典型的な問い・代表的理論・時間軸との関係の10軸で対比しています。
第七章の実務的示唆では、「エビデンスを精緻化しても解決しない対立はSTS的な問題(プロセスの正当性)である可能性があり、逆にプロセスの対話だけでは規制判断そのものには進めない」という、両者の使い分けの視点を提示しました。








