BSE危機とHPVワクチン問題を、トランスサイエンス論・心理測定的パラダイム・Sandmanの公式・社会的増幅理論で読み解くと、共通の4段階連鎖が見えてくる。価値判断の隠蔽が乖離を生み、誤診断が増幅される。STSの境界画定作業論はこの連鎖の起点そのものに異議を突きつける。
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目次
緒言
これまでの検討(RS01〜RS03)において、レギュラトリーサイエンス(RS)と科学技術社会論(STS)は、いずれも科学と社会のコミュニケーションを「専門家から市民への一方向的な情報伝達」として捉えることを明確に否定し、双方向の対話・相互理解のプロセスとして位置づけている点で一致することを確認しました。本稿ではその先に進み、「なぜ対話は失敗するのか」「コミュニケーション障害はどのようなメカニズムで発生し、STSとRSはそれぞれどのような解決策を示しているか」を検討します。
なお、STSにおけるコミュニケーション障害研究の基礎的な事例である英国カンブリア地方の羊牧場主の事例(Wynne, 1992; 1996)はRS01・RS02で既に取り上げているため、本稿では別の事例群を主軸に据えます[1][2]。
事例整理
BSE危機
牛海綿状脳症(BSE)問題は、1980年代の英国での発生確認を起点とし、1990年代後半に新種クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)症例の報告を契機として国際的な社会問題に発展しました[6]。この危機は、STSにおける「欠如モデル」概念が明確に定式化される歴史的な契機ともなっています。1990年代後半のイギリス・ヨーロッパでは、BSEや遺伝子組み換え作物のリスクへの懸念とともに、科学者・行政への不信が「信頼の危機」として顕在化し、これを受けて科学技術政策が一方向的な「理解増進活動」から双方向コミュニケーション重視へと転換しました[3]。
日本では2001年9月にBSE第1号が確認されましたが、と畜場からの脳サンプル送付から確定診断まで46日を要しており、判定手続きの遅さが混乱の一因となりました[7]。消費者調査では、BSEが社会問題化した最大の理由として「政府の対策が不十分だったから」を挙げた回答が80%に上った一方、「マスコミが大げさに騒ぎ立てたから」は11%、「生産農家が肉骨粉を使ったから」は8%にとどまりました[8]。また、マスメディアによる過熱報道により、日本国内でvCJD感染者が1人も確認されなかったにもかかわらず、BSE発生が報道された畜産農家や検査担当の女性獣医師など5人が自殺するという深刻な帰結も生じました[6]。
HPVワクチン積極的勧奨差し控え問題
日本では2010年度にHPVワクチンの公費助成が開始され、2013年に定期接種化されましたが、定期接種化のわずか2か月後、接種後に多様な症状を訴える患者の報告を受け、厚生労働省健康局長名で積極的勧奨の差し控えが通知されました[9][10]。この状態は2021年11月まで、約8年半にわたり継続しました。同年11月の専門家会議で、安全性について特段の懸念が認められないこと、有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが確認され、差し控えの終了が判断され、2022年4月から個別勧奨が再開されています[9]。
新潟大学の大規模疫学研究(NIIGATA study、The Lancet Regional Health – Western Pacific誌掲載)は、積極的勧奨中止後の世代で、ワクチンの標的型であるHPV16/18型の感染率が、ワクチン導入前の世代と同水準まで再上昇し始めていることを実証しました[10]。勧奨再開後も接種率の回復は課題となっており、2025年度の日本対がん協会調査では、2012年度生まれ以降の世代で相対的に接種率が低いことが確認されています[11]。大阪大学の研究グループも、勧奨再開後の接種率の伸び悩みを指摘しています[12]。
JSSTS学会誌20号特集
科学技術社会論学会の学会誌『科学技術社会論研究』第20号(2022年)は、「新型コロナ・自然災害・原発事故についていかに分かり合うのか―コミュニケーションを再考する―」という特集を組んでいます[4]。収録論文には、城下英行「終わらないコミュニケーションを目指して―特集にあたって」、関谷直也「自然災害のリスク・コミュニケーション―科学と防災の間の乖離」、寿楽浩太「原子力とコミュニケーション―STSが問うべき事柄は何か」、日比野愛子「クライシス状況におけるコミュニケーションの諸相」、およびWHO・国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)・国連人道問題調整事務所(OCHA)による「COVID-19:社会的弱者と周縁化された人々を包摂する―リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント(RCCE)の進め方」が含まれます[4]。
関谷の論文は、近年の防災気象情報がレベル化・メッシュ化・高解像度化によって科学的精度を高めている一方、「災害のリスク・コミュニケーションに関する情報は、科学的に精度よく、精緻に、詳細になればよいということではない」と指摘し、科学的精緻化と社会的理解の間の構造的な乖離を論じています。関谷は別の著書でも、日本の防災対策が陥りやすい枠組みとして「想定主義」「精神主義」「仮説主義」「平等主義」の4つを挙げ、特に「精神主義」は被災を市民の「危機意識の欠如」に帰属させる思考様式として批判的に分析しています。
コミュニケーション障害の発生メカニズム
STSの見解
STSにおける発生メカニズム論の起点は、専門家側が「市民の無理解」と捉える現象そのものが、実は専門家側の誤解であるとする視点です(Wynne, 1992「誤解された誤解」)[1]。この立場は、市民の科学技術への抵抗を知識の欠如に帰属させる「欠如モデル」批判として展開されてきましたが、日本のSTS自身の自己検証によれば、東日本大震災後の分析で、2000年代前半には政策決定過程への市民参加を志向していたはずの科学コミュニケーション実践が、時代が下るにつれて専門家が市民に「講義」する欠如モデル的な「教育啓蒙型」に回帰していったことが指摘されています。
さらに重要なのは、「欠如モデル批判」自体への理論的な再検討です。科学技術社会論研究18号の論文は、BSE・GM作物問題を契機とした「信頼の危機」への対応として、一方向コミュニケーション=欠如モデルという図式のもとで双方向コミュニケーションが無条件に望ましいとされる「欠如と対話の二項対立」的な価値判断が広がったが、この二項対立の図式自体が科学技術政策上の判断を歪めうると批判しています[3]。
これらを踏まえ、STSの発生メカニズム論は次のように整理できます。
- 専門知と素人知の権力関係――専門家が自らの権威によって素人の局所的・経験的知識を周辺化するプロセス
- 「無視」の構造としての社会的弱者の排除――RCCE論が指摘する、リスクコミュニケーションの設計から構造的に取りこぼされる集団の存在[4]
- 科学的精緻化と社会的理解可能性の乖離――関谷直也の指摘
- 原因帰属の誤り――不理解を市民の「心構え」の欠如に帰属させる「精神主義」的な思考様式
RSの見解
RS側の発生メカニズム論は、より心理学・意思決定科学に近い理論群から構成されます。
第一に、トランスサイエンスの概念です。米国の核物理学者アルヴィン・ワインバーグが1972年に提示したこの概念は、「科学に問うことはできるが、科学によって答えることのできない領域」を指します[19]。ある有害物質の毒性を科学が定量的に示せたとしても、どの程度のリスクまで社会が許容するかは科学的には定められず、政策的な価値判断の課題になります[20]。国立国会図書館調査及び立法考査局の報告書は、医薬品・医療機器の承認プロセスを先行事例として、「効果があるかないか、安全であるかないかの『線引き』は科学だけでは不可能である」ため、この手続きを「レギュラトリーサイエンス」として可視化・手順化してきたと整理しています[21]。この観点からは、コミュニケーション障害は、本来価値判断を含むトランスサイエンスの決定が、あたかも純粋に科学的な結論であるかのように提示され、その価値判断の存在が後から露見することで発生すると理論化できます。
第二に、リスク認知の心理測定的パラダイムです。Slovic(1987, Science 236:280-285)の研究は、専門家が被害者数・発生確率・重篤度でリスクを捉えるのに対し、一般市民は「恐ろしさ(dread)」と「未知性(unknown)」という異なる軸でリスクを捉えていることを示しています[24]。京都大学・八木絵香氏によるSciREX教材は、このギャップの解釈に、市民の認知をバイアスとして補正すべきとする欠如モデル的立場と、専門家・市民は知識量ではなくリスクの構成要素自体が異なるとする立場の2つがあることを整理しています[23]。Slovicはまた、専門家への信頼が高いほど提供情報への信用も高まる一方、信頼は非対称的――一度失うと回復が極めて困難――であることを指摘しています[24]。
第三に、Sandmanのハザード+アウトレージ論です。米国の実務家Peter Sandmanは、リスクを「Hazard(技術的危険性)」と「Outrage(不信・怒り等の感情的反応)」の和として定式化し、「専門家がどれだけ危険と考えているか」と「一般の人がどれだけupsetであるか」には、ほぼ相関がないと指摘しています[25]。文部科学省の2014年報告書の脚注にも、リスクの定義として「ハザードとアウトレージの和」という記述があり、日本の政策文書にもこの枠組みが取り込まれています[18]。
第四に、社会的増幅の理論です。リスク情報がメディア・社会的ネットワーク・制度を通じて増幅または減衰されるプロセスを扱うこの理論は、日本の学術書『リスクコミュニケーション標準マニュアル』でも主要アプローチの一つとして整理されています[26]。日本学術会議の2017年報告は、従来の環境リスクに関するリスクコミュニケーションの枠組みではマスメディア・ソーシャルメディアの影響力が明確に位置づけられていないという課題を指摘しており、社会的増幅理論はこの空白を埋める理論的資源として位置づけられます[17]。
解決策の比較
STSが提示する解決策
STSの立場からは、欠如モデルに代わる参加型の科学コミュニケーション手法として、コンセンサス会議(市民パネルが専門家から情報提供を受けた上で討議し政策的見解をまとめる)、世界市民会議(World Wide Views)、討論型世論調査(DP)、サイエンスカフェといった具体的な制度・手法が提案・実践されてきました。JSSTS学会誌20号特集の企画趣旨である「終わらないコミュニケーションを目指して」(城下英行)というタイトルは、コミュニケーションを一度限りの完結した行為としてではなく、継続的なプロセスとして捉える視座を示しています[4]。
ただし、これらの参加型手法自体にも限界が指摘されており、STS自身の自己検証によれば、参加型コミュニケーションを志向していたはずの実践が「教育啓蒙型」に回帰する逆説も確認されています。
RSが提示する解決策
RS側の解決策は、状況・受け手の心理的類型に応じた対応の最適化に重心があります。
Sandmanは、ハザードとアウトレージの組み合わせに応じて、リスクコミュニケーションを3つの型に分けています[25]。アウトレージが高くハザードが低い状況(市民は怖がっているが実際の危険性は小さい)では冷静化・安心の提供を目的とする「Outrage Management」、アウトレージが低くハザードが高い状況(市民は無関心だが実際の危険性は大きい)では警告・注意喚起を目的とする「Precaution Advocacy」、両者が高い状況では危機対応型の「Crisis Communication」が必要とされます。一つの事象について警告と安心を同時に行うことはほとんどないため、状況診断を誤ると対応そのものが逆効果になり得ます。
社会的増幅理論への対応としては、メディア・SNSを通じた増幅過程そのものを制度設計の対象とすることが考えられ、これは学術会議2017年報告が指摘した課題(メディアの制度上の位置づけの欠如)を埋める方向性です[17][26]。また、信頼の非対称性(一度失った信頼の回復には時間がかかる)を前提に、事後対応ではなく事前の信頼蓄積を重視する設計も提案されます[24]。
『リスクコミュニケーション標準マニュアル』は、受け手側から生じる制約として、敵意と怒り、パニックと拒絶、無関心、リスクアセスメントへの不信、受容可能なリスクの程度に関する意見の相違、科学や組織に対する信頼の欠如、学習困難を、双方に対する制約としてスティグマや知識基盤の安定性を類型化しており、これらの「型」に応じた対応の使い分けもRS側の解決策の一部を構成します[26]。
考察
連鎖モデルの提示
以上の理論と事例の照合から、コミュニケーション障害は単一の原因ではなく、次の4段階の連鎖として進行するという仮説が立てられます。
第一段階は、トランスサイエンスの不可視化です。本来価値判断を含む決定が、科学的・手続き的な判断であるかのように提示されます。第二段階は、心理的乖離の発生です。専門家の確率的評価と、市民の抱く恐ろしさ・未知性という異なる軸のリスク認知との間に乖離が生じます。第三段階は、対応類型の誤診断です。本来Outrage Managementが必要な局面でPrecaution Advocacyを行う、あるいはその逆といった、状況とは異なる対応が取られます。第四段階は、社会的増幅による長期化・固定化です。メディア・SNSを介して、しかも社会集団によって不均等な形で、問題が伝播・固定化していきます。
この順序は一方向的な因果関係というより、第一段階が発生条件、第二段階以降が悪化の経路という位置づけです。第一段階が起きなければ以降の段階は発生しにくく、第二段階が起きても第三段階で適切な診断ができれば第四段階まで進まずに収束すると考えられます。
各事例への対応を整理すると、BSE事例では、不確実性下の安全宣言(第一段階)、dread・unknownの高さによる乖離(第二段階)、アウトレージ管理の失敗と報道加熱(第三段階)、経済的・制度的リプル効果と自殺という実害への拡大(第四段階)という経過をたどりました。HPVワクチン事例では、症例報告を理由とした差し控えという体裁のトレードオフ判断(第一段階)、鮮明な副反応症例と抽象的な将来便益の非対称性(第二段階)、ハザードよりアウトレージに基づいた政策判断(第三段階)、10年近い接種率低迷という増幅の長期残存(第四段階)という経過をたどっています。JSSTS特集が扱う事例群では、情報の精緻化への逃避(第一段階)、原子力事故における破局性・非自発性によるdread・unknownの最大化(第二段階)、COVID-19における時期による対応類型の反転(第三段階)、RCCE論が指摘する増幅経路そのものの不均等性(第四段階)という特徴が確認できます。
STSとの接続点
RSの段階一(不可視化)は、暗黙のうちに「科学と価値判断の境界線はどこかに実在しており、それを可視化しさえすればよい」という前提に立っています。この前提には、STSから重要な異議が可能です。
Gieryn(1983)の境界画定作業(boundary-work)論は、「科学」と「非科学(政治・価値判断)」の境界線そのものが、あらかじめ実在するものではなく、科学者・専門機関が自らの権威を主張・防衛するために、その都度、修辞的・戦略的に引き直す境界線であると論じます[27]。この視点をBSE事例に当てはめると、「安全宣言」は不確実性下の価値判断を誤って科学的事実として提示したという手続き上の不備ではなく、専門機関が権威を維持するために境界線を意図的に「科学」寄りに引いたという能動的な戦略として読み直せます。RSの診断(不可視化=過失・不備)に対し、STSは境界画定=戦略的行為という、原因の性質そのものについて異なる説明を与えます。
Jasanoff(1987; 1990)の共同生産(co-production)論は、さらに踏み込んで、RSの4段階モデルが暗黙に前提とする「まず科学的事実が確定し、その後に社会が価値判断を上乗せする」という順序そのものを覆します[28]。科学的知識と社会秩序は同時に、絡み合いながら生産されるのであり、「まず事実、後から価値」という段階的な構造そのものが虚構だと論じます。HPVワクチン事例に当てはめると、「因果関係を否定できない症例が一定数報告された」という一見事実に見える記述自体が、どの程度の頻度・重篤度を看過できないと扱うかという価値判断をすでに内包した形で構成されていることになります。共同生産論は、段階一の記述を「時間的な後出し」から「構造的な一体性」へと書き換えます。
一方、対立点だけでなく生産的な接続点もあります。Guston(1999)の境界組織(boundary organizations)論は、科学と政治の境界がその都度引き直される流動的なものであることを認めつつ、その境界を安定的に管理する制度が実際に機能しうると論じます[29]。この枠組みは、PMDAや食品安全委員会のようなRSの実施主体を、境界画定の政治性を完全には消せないが、それを一定程度制度的に飼いならす試みとして読み替えることを可能にします。RSが標榜する「可視化・手順化」は、STSの視点からは境界の政治性を否定するものではなく、それを認めた上でなお制度的に管理しようとする試みとして、部分的に正当化される機能として位置づけ直せます。
段階四(社会的増幅の不均等性)とSTSの指摘(RCCE論が示す社会的弱者・周縁化された人々の構造的排除)は、比較的親和性が高く、同一現象を異なる語彙で記述している関係にあると考えられます。これに対し段階一(不可視化)は、原因の性質と時系列の前提という2点でSTSから緊張関係を含む異議を受けます。この非対称性――段階四は親和的接続、段階一は緊張を含む接続――自体が、本稿における重要な知見です。
モデルの限界
3事例とも4段階が順に進行したように整理できますが、COVID-19事例は段階三(誤診断の型)が時期によって反転する動的なケースであり、静的な4段階モデルでは捉えきれない時間的推移が残ります。また、本モデルは事後的な整理であり、実際の政策決定の渦中で「今どの段階にあるか」をリアルタイムに診断できるかは別の検討課題です。事例数も3件(および関連事例)にとどまっており、モデルの一般化可能性は限定的です。
まとめ・今後の課題
RS系の4理論(トランスサイエンス、心理測定的パラダイム、Sandmanのハザード+アウトレージ、社会的増幅)は、単独では説明力が限定的ですが、連鎖として統合すると、小さな不確実性の隠蔽がなぜ長期にわたる社会的不信にまで拡大するのかという経路を一貫して説明できます。この連鎖モデルは、RS側の解決策(状況診断に基づく戦略の使い分け、信頼の非対称性を前提とした事前設計等)がどの段階に介入するものかを位置づける枠組みとしても機能します。
STSとの接続点を検討した結果、RSとSTSの関係は一様な補完関係ではなく、モデルの段階によって親和性の高い部分(第四段階)と、理論的な緊張を含む部分(第一段階)が併存することが明らかになりました。今後の課題としては、①事例数を増やした連鎖モデルの検証、②動的な状況変化(COVID-19事例に見られる対応類型の反転)を捉えられるモデルへの拡張、③境界組織論を手がかりとした、日本のRS実施主体(PMDA、食品安全委員会等)の実証的な検討が挙げられます。
参考文献
- [1] Wynne, B. (1992). Misunderstood misunderstanding: Social identities and the public uptake of science. Public Understanding of Science 1(3):281-304.
- [2] Wynne, B. (1996). May the Sheep Safely Graze? A Reflexive View of the Expert-Lay Knowledge Divide. In S. Lash, B. Szerszynski, B. Wynne (Eds.), Risk, Environment and Modernity. Sage, 44-83.
- [3] 欠如モデル・一方向コミュニケーション・双方向コミュニケーション.科学技術社会論研究18号,208頁.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnlsts/18/0/18_208/_article/-char/ja/
- [4] 『科学技術社会論研究』第20号 特集=新型コロナ・自然災害・原発事故についていかに分かり合うのか―コミュニケーションを再考する―.科学技術社会論学会.https://jssts.jp/event-news/1283
- [5] 「科学技術コミュニケーションのモデル」内田麻理香先生.東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 科学技術コミュニケーション部門.https://scicom.c.u-tokyo.ac.jp/activity/415
- [6] BSE問題.Wikipedia.https://ja.wikipedia.org/wiki/BSE問題
- [7] BSE問題に関する調査検討委員会報告.平成14年4月2日.BSE問題に関する調査検討委員会.https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/bse/b_iinkai/pdf/houkoku.pdf
- [8] 報告書 2001年BSE(狂牛病)の社会的影響と対策.東京大学大学院情報学環.https://cidir.iii.u-tokyo.ac.jp/hiroi-researchreport/contents/56/
- [9] HPVワクチンに関するQ&A.厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html
- [10] 新潟大学プレスリリース.HPVワクチン接種率とHPV感染率に関する研究成果(NIIGATA study).2022年4月1日.https://www.niigata-u.ac.jp/wp-content/uploads/2022/04/220401rs.pdf
- [11] HPVワクチンに関する調査報告(2025年度).公益財団法人日本対がん協会.https://www.jcancer.jp/release/18403/
- [12] 積極的勧奨再開も効果薄? 伸び悩むHPVワクチン接種率.大阪大学ResOU.2024年7月17日.https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240717_1
- [13] 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA).レギュラトリーサイエンスについて.https://www.pmda.go.jp/rs-std-jp/outline/0001.html
- [14] レギュラトリーサイエンス(統治科学/規制科学).imidas時事用語事典.https://imidas.jp/genre/detail/K-126-0009.html
- [15] 農林水産省.レギュラトリーサイエンスとは.https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/regulatory_science/rs_keikaku.html
- [16] 日本学術会議日本の展望委員会.提言「リスクに対応できる社会を目指して」.平成22年4月5日.https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-tsoukai-10.pdf
- [17] 日本学術会議.報告「環境政策における意思決定のためのレギュラトリーサイエンスのありかたについて」.平成29年9月27日.https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h170927-2.pdf
- [18] 文部科学省 安全・安心科学技術及び社会連携委員会.リスクコミュニケーションの推進方策.平成26年3月27日.https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/064/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2014/04/25/1347292_1.pdf
- [19] Weinberg, A.M. (1972). Science and trans-science. Minerva 10(2):209-222.
- [20] トランス・サイエンス.imidas時事用語事典.https://imidas.jp/genre/detail/K-126-0026.html
- [21] 国立国会図書館調査及び立法考査局.レギュラトリーサイエンスとトランスサイエンスに関する調査報告書.https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info:ndljp/pid/12767458
- [22] 第66回「トランスサイエンス、コロナ対応に有用」.科学技術の潮流.研究開発戦略センター(CRDS).https://www.jst.go.jp/crds/column/choryu/066.html
- [23] 八木絵香.3.2.3 リスクコミュニケーション:マイナスな側面をどう共有してどう乗り越えるか.SciREXコアカリキュラム.https://scirex-core.grips.ac.jp/3/3.2.3/main.pdf
- [24] Slovic, P. (1987). Perception of risk. Science 236:280-285.
- [25] Peter Sandman先生のRisk Communication論:Risk = Hazard + Outrage.福島県立医科大学.https://www.fmu.ac.jp/home/risk/index.php/ps-index/risk-com-ps/
- [26] リスクコミュニケーション標準マニュアル.福村出版.https://www.fukumura.co.jp/book/b592858.html
- [27] Gieryn, T.F. (1983). Boundary-work and the demarcation of science from non-science: strains and interests in professional ideologies of scientists. American Sociological Review 48(6):781-795.
- [28] Jasanoff, S. (1987). Contested boundaries in policy-relevant science. Social Studies of Science 17(2):195-230. / Jasanoff, S. (1990). The Fifth Branch: Science Advisers as Policy Makers. Harvard University Press.
- [29] Guston, D.H. (1999). Stabilizing the boundary between US politics and science. Social Studies of Science 29(1):87-111.
年表
- 1972年:ワインバーグが「トランスサイエンス」概念を提示(Minerva 10(2))
- 1983年:Gierynが「境界画定作業(boundary-work)」論を発表(American Sociological Review)
- 1986年:英国でBSE初確認
- 1987年:Slovicがリスク認知の心理測定的パラダイムを提示(Science 236)/Jasanoffが「政策関連科学における係争的境界」を発表
- 1990年:Jasanoff『The Fifth Branch』刊行
- 1992年:Wynne「誤解された誤解」発表(カンブリア牧場主研究、RS01/RS02既出)
- 1996年:Wynne「May the Sheep Safely Graze?」発表
- 1990年代後半:英国・欧州でBSE・GM作物問題を契機に「信頼の危機」、科学技術政策が理解増進から双方向コミュニケーション重視へ転換
- 1999年:Gustonが「境界組織(boundary organizations)」論を発表
- 2001年9月:日本でBSE第1号確認。確定診断まで46日を要する
- 2010年度:日本でHPVワクチン公費助成開始
- 2010年4月5日:日本学術会議「リスクに対応できる社会を目指して」提言。「信頼を得るための対話」としてリスクコミュニケーションを定義
- 2013年:HPVワクチン定期接種化。同年6月、積極的勧奨差し控え開始
- 2014年3月27日:文科省「リスクコミュニケーションの推進方策」。ハザード+アウトレージの定義を脚注に記載
- 2017年9月27日:日本学術会議「環境政策における意思決定のためのレギュラトリーサイエンスのありかたについて」。メディアの位置づけの欠如を指摘
- 2021年11月:専門家会議でHPVワクチン積極的勧奨差し控えの終了を判断
- 2022年4月:HPVワクチン積極的勧奨再開
- 2022年:科学技術社会論研究20号「コミュニケーションを再考する」特集刊行
用語集
- トランスサイエンス:科学に問うことはできるが科学では答えられない領域(Weinberg 1972)。RSではこの領域の可視化・手順化が中心的機能とされる
- 心理測定的パラダイム:専門家は被害者数・確率・重篤度で、市民は「恐ろしさ」「未知性」でリスクを捉えるという、両者のリスク認知構造の違いを説明する理論(Slovic 1987)
- Risk = Hazard + Outrage:リスクを技術的危険性(Hazard)と感情的反応(Outrage)の和として定式化するSandmanの実務公式
- Outrage Management/Precaution Advocacy/Crisis Communication:Sandmanによる3類型。アウトレージ高・ハザード低では冷静化、アウトレージ低・ハザード高では警告、両者高では危機対応が必要とされる
- 社会的増幅(SARF):リスク情報がメディア・社会的ネットワーク・制度を通じて増幅または減衰するプロセスを説明する理論(Kasperson等)
- 境界画定作業(boundary-work):「科学」と「非科学(政治・価値判断)」の境界線は実在するのではなく、専門家が権威維持のためその都度戦略的に引き直すとする理論(Gieryn 1983)
- 共同生産(co-production):科学的知識と社会秩序は同時に絡み合いながら生産されるとし、「事実が先、価値が後」という順序前提を覆す理論(Jasanoff)
- 境界組織(boundary organizations):科学と政治の境界の流動性を認めつつ、それを安定的に管理する制度が機能しうるとする理論(Guston 1999)
- RCCE:Risk Communication and Community Engagement。社会的弱者・周縁化された人々を包摂するリスクコミュニケーション設計の枠組み(WHO/IFRC/OCHA)
- 精神主義:被災・不理解を市民の「危機意識の欠如」に帰属させる、日本の防災対策に見られる思考様式への批判概念(関谷直也)
- 連鎖モデル(4段階):本稿が提示する、①トランスサイエンスの不可視化→②心理的乖離→③対応類型の誤診断→④社会的増幅による固定化、というコミュニケーション障害の進行仮説
Claude ログ
RS04を執筆しました。これまで確定した構成(緒言/事例整理/メカニズム論/解決策の比較/考察/まとめ)と5.3節の内容をそのまま反映し、見出しには番号を付けていません。
BSE危機・HPVワクチン問題・JSSTS学会誌20号特集の3事例に、STS側の理論(欠如モデル批判、精神主義批判、RCCE論)とRS側の理論(トランスサイエンス、心理測定的パラダイム、Sandmanのハザード+アウトレージ、社会的増幅)を当てはめ、4段階の連鎖モデルとして統合しています。考察では、Gieryn・Jasanoff・Gustonの理論を用いてRSとSTSの接続点(第四段階は親和的、第一段階は緊張を含む、という非対称性)を明示し、モデルの限界も明記しました。参考文献は29件を番号付きで巻末に整理しています。








