電車に乗るだけの場所ではない駅日野駅「なないろ」に集まった人たちが描いた、これからの駅
「おかえり」夕方、学校帰りの高校生が駅に入ってくる。そこにいる大人が声をかけ、高校生も笑って応える。滋賀県日野町、近江鉄道日野駅。ここには、電車を待つためだけではない時間が流れています。

2026年10月29日、この駅にある観光交流施設「なないろ」で、人と環境にやさしい交通まちづくりプラットフォームしが(やさしい交通しが)は「まちづくりと交通の広場しが2026」を開催しました。以下は速報です。

テーマは「日野が好きな人、この駅とーまれ!」。地域で活動する人、行政職員など日野を愛する人たちが集まり、「駅で、もっと何ができるだろう」と語り合いました。

最初に見えてきたのは、「日野の魅力は日常にある」でした。大阪から地域おこし協力隊として移住し、日野で10年暮らしてきた藤田ゆりさんが惹かれたのは、観光商品としてつくられたものではない、人々の日常に息づく食文化や祭りでした。火振り祭、日野祭、伝統料理。そして、それを守っている人たち。藤田さんがたどり着いたのは、「日野の楽しさは、人と出会うと広がる」という実感です。誰かに出会えば、知らなかった日野を教えてもらえる。そして「それなら、こんなこともやってみたら」と次の扉が開く。その入口の一つが日野駅でした。

一般社団法人「ひつじの居場所・羊羊」の奥野ふじみさんの話も、「人が出会う場所」の大切さを感じさせるものでした。奥野さんは、子ども食堂や学習支援、子どもたちの「第3の居場所」などをつくってきました。しかし興味深いのは、「誰でも来てください」と場所を開けただけでは、人はなかなか来なかったという経験です。そこで始めたのが子ども食堂でした。「ご飯を食べに行く」という小さな理由があれば、人は扉を開けやすくなる。そこから会話が生まれ、つながりができ、困りごとにも気づけるようになりました。

考えてみれば、駅にも同じ可能性があります。「電車に乗る」という理由で、年齢も職業も違う人が毎日やって来るからです。

英国では、こうした駅の力を地域づくりに生かす「コミュニティ・レール」という活動が広がっています。山田和昭から、駅を交通だけでなく、教育、福祉、観光、文化、地域経済などをつなぐ場所として活用する英国の事例を紹介しました。実はこれ、すでに「なないろ」で日々行っています。

「なないろ」では、日替わり店長がカフェを開き、高校生が集まり、起業を目指す人が店を試し、高齢者が話をしにやってます。飲み物を注文しなくても、そこにいていい。誰かと話してもいいし、一人で過ごしてもいい。日野駅が9年かけて試行錯誤で作り上げたもの。それは20年前から英国で全国的に広がっていたのです。

「なないろ」と英国との違いは、お金を稼いでいるのではなく、国が社会的効果(SROI)が確かにあると計測し、予算をつけ制度化していること。日本ではボランティアとして個人の頑張りへ依存してしまっているので持続性が弱いのです。そして英国では子育てや健康などより活動が広がっていることです。

では、これから何ができるでしょう。後半は参加者が対話を重ねました。

「夕方、高校生が勉強できる場所にしよう」
「高校生が子ども食堂をやったら?」
「農家と消費者をつなぐ朝市ができそう」
「古民家や空き家を紹介する場所にもできる」
「夜は立ち飲みをやってみたい」
「写真展はどうだろう」
「料理教室もできる」
「鉄道好きが集まるカフェも面白い」

アイデアは次々と出てきました。印象的だったのは、巨大な施設を新しく造ろうという話ではなかったことです。すでにある駅を使う。すでに活動している人をつなぐ。そして、「私にも何かできるかもしれない」という人に、小さな出番をつくる。藤田さんが語った「場所と人をつなぐ人」の存在とも重なります。

会場では、高齢の参加者から「なないろへ来ると心が休まる」という話もありました。一人暮らしの家を出て、ここへ来れば誰かがいる。何気ない会話がある。公共交通の価値を考えるとき、私たちはつい「一日何人乗ったか」「赤字か黒字か」という数字を見ます。けれど、その駅で高校生が安心して電車を待てたこと。一人暮らしのお年寄りが誰かと話せたこと。新しい商売を試す人が最初の一歩を踏み出せたこと。町外から来た人が日野を好きになったこと。そんな価値も、確かに駅から生まれています。

フォーラムが終わる頃、日野駅には夕日が差し込んでいました。「駅は、人が集まり、出会いが生まれるロマンチックな場所だ」参加した方から、そんな言葉も聞かれました。人口が減る時代だからこそ、駅を「電車に乗るだけの場所」にしてしまうのは、少しもったいないのかもしれません。

人が来る。誰かと出会う。何かを始める。そして、その人がまた別の誰かを連れてくる。日野駅の小さな待合室から始まっているのは、そんな循環です。次に日野駅を訪れたら、電車が来るまで「なないろ」をのぞいてみてください。そこには、時刻表には載っていない「駅の役割」があるかもしれません。

[詳細 XCR コミュニティ・レール 市民が駅を活用し、地域を活性化する]

以下、ご案内内容

たくさんのひとびとが毎日行き交う日野駅では、高校生からお年寄りまで様々な方々が活躍しています。10月11日のガチャフェスにあわせて開催された駅前イベント「やっぱり日野が好き!」には4467人が集まりました。元気な人々と日野駅がもっとつながると、地域をもっと元気に暮らしやすくできます。「私にも何かできるかな」「やりたいことがあるんだけど駅って使えるの?」「駅でこんなことやってみたい!」と思っている方、ティータイムを楽しみながら、わいわいアイディア交換をしましょう。途中参加、退出もOK、お気軽に遊びに来てください。

あなたの「やってみたい」が、日野駅の未来につながる。

  • 日時 10月29日(木) 13:30-16:30
  • 会場 観光交流施設なないろ (近江鉄道日野駅駅舎内)
  • 参加無料、定員20名
  • おいしいお茶とお菓子つき
  • 子連れ参加歓迎(託児はありません)

申し込み(google form)

テーマ 「日野に来て楽しむ!」 藤田 ゆりさん

一般社団法人アワセルフウド 代表理事 / 地域おこし協力隊として日野町に移住し、現在10年目。伝統料理の継承や地域資源を活かしたイベントの企画運営、地域づくり支援などに取り組んでいます。移住者として感じる日野町の魅力や、人とのつながりから広がる地域の楽しさをお伝えします。

テーマ 「日野で子どもと楽しむ!」 奥野 ふじみさん

一般社団法人ひつじの居場所羊羊、ぱれっとしが 代表 / 大人の一生懸命を子どもに感じてもらい。滋賀の良いもの・いいとこ滋賀をみんなに感じてもらいたいと、日野町を中心に活動中。いつか、駅前で子どもイベントやりたいなあ。

テーマ 「日野で駅をいかしてまちを元気に!」 山田和昭

日本鉄道マーケティング 代表、やさしい交通しがメンバー、元近江鉄道社員 / 英国ではコミュニティレールという仕組みがあり、住民主体で駅を使って地域を元気にしています。でも日野駅の活動はそれよりすごいかも。足りないのは支える仕組みだけ。続けられる形をつくりましょう。

テーマ 「日野で私はこうしたい!」

集まった皆さんで、くらしやすい日野をつくるために、自分がやりたいこと、できること、みんなとつながって実現したいことを語り合いましょう!(おいしいお茶とCASHIDUKさんのお菓子つき)

印刷用チラシ

[主催] 人と環境にやさしい交通まちづくりプラットフォームしが(やさしい交通しが)

[協力] 一般社団法人こうけん舎

※ 国土交通省令和8年度「交通空白」解消等リ・デザイン全面展開プロジェクト モビリティ人材・組織育成タイプ採択事業

■人と環境にやさしい交通まちづくりプラットフォームしが(やさしい交通しが)

滋賀県大津市大萱二丁目8番3号 502室 [電話] 080-6717-0448 (山田)

[Email] yasashii.kotsu.shiga@gmail.com https://yasashiikotsushiga.wixsite.com/machizukuri

「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会2021 in 滋賀」をきっかけに専門家や実践家が集まって2023年6月に設立。毎年「まちづくりと交通の広場しが」を開催し、まちづくりに交通を活用する人材を育成することで、持続可能なまちと交通をめざしています。2023年「近江鉄道線を活かした交通まちづくりフォーラム」、2025年「まちと交通の未来づくりフォーラム」を実施。代表: 宇都宮 浄人(関西大学経済学部教授)