ベトナムの港湾コンテナ取扱量は2010〜2017年に年平均10.9%成長し、ASEANで第3位に浮上。しかし荷役設備の老朽化と設計容量超過が生産性を蝕む。13港のSFA分析では、取扱量首位のカットライ港が効率でも首位、世界50位のハイフォン港は最低効率という逆説が明らかに。
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ベトナムのコンテナ輸送実態と課題
輸送量の推移・港湾構造・ターミナル運営・荷役設備効率・後背地接続・効率測定手法
目次
第 1 章主な貿易相手国
第 2 章輸送量の推移
世界銀行データによる成長率
世界銀行のデータによれば、ベトナムの港湾を通過するコンテナ取扱量(container throughput)は2010〜2017年の間に年平均成長率(CAGR)10.9%で増加した。この数値は、同期間における世界平均4.3%、東アジア平均4.5%、南アジア平均6.0%をいずれも大幅に上回る。[1]
ASEAN域内における位置づけ
ベトナムは海運業の強い成長率を背景に、ASEAN地域においてシンガポール、マレーシアに次ぐ第3位のコンテナ取扱量を有している。[1]
2023年のシステム規模
2023年時点でベトナムの港湾システムは286港を有し、バース総延長は96kmを超え、インフラ能力として年間2,470万TEUの取扱いに対応している。ハイフォン港およびカットライ港は世界上位50大コンテナ港にランクインしている。[2]
2023年の13港コンテナ取扱量データ
2023年のクロスセクションデータに基づく13の主要コンテナ港・ターミナルのコンテナ取扱量は以下のとおりである。[2]
| # | 港湾・ターミナル名 | 取扱量(TEU) | バース延長(m) | 最大水深(m) | ターミナル面積(m²) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | Cat Lai Port | 5,332,128 | 2,040 | 12.5 | 1,600,000 |
| 2 | Hiep Phuoc Port | 130,477 | 800 | 10.5 | 360,000 |
| 3 | Cai Mep International Terminal (CMIT) | 644,273 | 600 | 16.5 | 460,000 |
| 4 | Dong Nai Port | 570,215 | 1,131 | 12.0 | 817,526 |
| 5 | Binh Duong Port | 491,313 | 150 | 8.0 | 255,000 |
| 6 | Can Tho Port | 1,540,972 | 867 | 12.0 | 320,065 |
| 7 | Cam Ranh Port | 343,000 | 708 | 11.0 | 690,000 |
| 8 | Thuan An Port | 158,910 | 185 | 5.9 | 100,000 |
| 9 | Da Nang Port | 675,254 | 1,713 | 14.3 | 230,000 |
| 10 | Vung Ang Port | 2,829,000 | 1,500 | 11.0 | 1,083,000 |
| 11 | Hai Phong Port | 1,312,397 | 3,550 | 9.7 | 1,103,474 |
| 12 | Nam Dinh Vu Port | 897,224 | 440 | 8.5 | 202,149 |
| 13 | Cam Pha Port | 569,417 | 650 | 10.5 | 200,000 |
第 3 章港湾から後背地への輸送方法
ターミナル運営の連続性における後背地の位置づけ
港湾の効率は、海上・ターミナル・後背地(hinterland)の三つの連続した業務によって構成される。この連鎖の各リンクは相互に依存しており、一つのリンクの非効率は他のリンクに影響を及ぼす。たとえばターミナル業務における問題は、海上および後背地輸送の遅延を引き起こす可能性がある。[1]
後背地輸送の効率はターミナルの港湾パフォーマンス指標として扱われないことが多い。これは、内陸港(inland port)のような港湾顧客へのサービスを提供するすべての輸送・流通活動を含む。[1]
ターミナル内におけるヤードへの貨物移送手段
ターミナル内のパフォーマンスとして、コンテナを船舶と保管ヤードの間で往来させる方法がある。多くのコンテナターミナルでは、この業務にトレーラートラクターまたはストラドルキャリアを使用している。[1]
カイメップと後背地の接続性
南部ベトナムのカットライ(ホーチミン)発着フィーダーサービスは大型化が進んでいる一方、カイメップ港ではカンボジア発着を含む南ベトナムのローカルハブとしての機能が強化されている。香港およびシンガポールのシェアはカイメップからの直行サービスの増加に伴い減少傾向にある。政策への示唆として、効率的な輸送実現のためにはカイメップへの機能移転が必須であり、カイメップと後背地との接続性の強化が求められると述べられている。[3]
第 4 章ターミナル運営と情報処理
荷役設備(CHE)の分類
荷役設備(CHE:cargo-handling equipment)はコンテナターミナルの運用能力を決定する専門的な車両・機器の総体であり、ターミナルのフロントラインとリアラインに配置される。CHEは技術的特性と作業条件に応じて以下の4グループに分類される。[1]
(1)岸壁クレーン(QC/Liebherr)グループ、(2)ヤードクレーン(RTG/RMG)グループ、(3)リフトオン・リフトオフ車両(リーチスタッカー・ストラドルキャリア・トップローダー/リフター)グループ、(4)ヤードトラクターグループ。
ターミナル運営の主要パフォーマンス指標
コンテナターミナルのパフォーマンスは、海上・ターミナル・後背地の各業務に対応した指標によって評価される。[1]
海上業務指標:平均投錨待機時間(M1)は、利用可能なバーススロットへの接岸待ちを示す。投錨待機時間の長期化は、特定船種に対応できるバーススロット不足またはターミナル生産性の問題から生じる。平均船舶回転時間(M2)は接岸後の処理に要する時間を示す。
ターミナル業務指標:クレーンパフォーマンス(T1)は1時間あたりのクレーン作業回数を基準とし、ターミナルにおける一般的なボトルネックとなっている。保管ヤードでの平均滞留時間(T2)は入庫・出庫・トランシップ貨物に適用される。トラックの平均回転時間(T3)はトラック会社にとって重大なボトルネックとなる。ゲートの平均待機時間(T4)はゲートが処理能力を超えて稼働する場合に生じるトラック待機列を指す。鉄道設備を有するターミナルでは、鉄道の積降ろしパフォーマンスも重要な指標となる。
荷役設備のOEE測定と情報管理
本研究で採用されたOEE(Overall Equipment Effectiveness:設備総合効率)は、可用性(A)、パフォーマンス(P)、品質(Q)の3指標から構成される。可用性は計画生産時間に対する実際の稼働時間の比率、パフォーマンスは同一時間内の実際産出量と機械が産出可能な量の比較、品質は顧客要件を満たした産出量の総産出量に対する比率をそれぞれ示す。OEEスコア100%は、ダウンタイムがなく、スムーズかつ高速な生産が行われ、品質の損失がない完全なパフォーマンスを意味する。[1]
OEE向上のためには、関連部門・部署・個人が生産プロセスの各段階で生じる問題の解決策を迅速に提示する管理体制が必要とされる。CHEのOEE評価は関連部門と個人の関係性を明示し、CHEの管理機能を適切に遂行することを可能にする。[1]
各CHEグループのOEEは、OEE = A × P × Q ÷ 10⁴という式で算出される。個々の機器のOEE(OEEi)およびグループ全体のOEE(OEEG)は月次・四半期・年次単位で算出される。パフォーマンス指標Piの計算においては、実際の作業工程別スループット(搬入・搬出・シフティング・検査・空コンテナ処理等を含む)に変換係数Kcを乗じた上で理想サイクルタイムとの比率を求める。[1]
ターミナル内のコンテナハンドリング業務の実態
コンテナターミナルにおける荷役作業の実行時間はランダム性を持つ。各車両の作業サイクルは、その車両自体の処理時間だけでなく、車両・設備間の調整待機時間にも依存する。たとえば、岸壁クレーンがコンテナの積込みを完了する前にトレーラーが到着した場合、トレーラーは待機しなければならない。また、クレーンがコンテナを所定位置に移送済みでもトレーラーが未着の場合、クレーンはトレーラー到着まで保持を継続しなければならない。[1]
ターミナルスループットと実際の作業工程別スループットは異なる概念である。コンテナの船内・ヤード内配置計画や顧客のニーズにより、コンテナを多段積みする場面が増加し、シフティング回数が増えることで各工程のサイクルタイムに影響を及ぼす。したがって、CHEの作業強度を評価する際は、ターミナルスループットではなく実際の作業工程別スループットを基準にしなければならない。[1]
効率測定に用いるデータの出所
SFA研究([2])では、データはVietnam Seaports Association(VPA)の公式ウェブサイト(www.vpa.org.vn)およびCat Lai JSCの2023年次報告書から取得された。出力変数は年間TEU取扱量、投入変数はバース総延長(m)・最大水深(m)・ターミナル総面積(m²)の3変数が採用された。
SFA分析結果では、13港のガンマ(γ)値が半正規・切断正規両モデルともに0.999と推定された。これはコンテナ港湾生産におけるランダム変動の99%が効率性に起因することを意味する。また、取扱量の多い港湾が必ずしも最高の効率スコアを示すわけではないことが確認された。[2]
第 5 章課題と解決策
外部圧力:大型船・市場競争・取扱量増加
大型コンテナ船の発展、ベトナムにおけるコンテナ取扱量の増加、国際海運市場での競争激化が、ベトナムの港湾システムへの圧力を増大させている。ベトナムのコンテナターミナルは、ターミナル立地・積み替えおよび荷役設備・運営管理という複数の課題を抱えていると記述されている。[1]
旧式CHEと資金不足
資金が限られた政府所有の一部旧式ターミナルでは、多くの旧式CHEが依然として貨物処理に使用されており、CHE運用管理は生産的でない状態が続いている。その結果、CHEの異常損傷の頻度が増加し、緊急保守・修理のための停止時間が長期化している。これはCHEの生産性と運用効率に重大な影響を及ぼし、港湾リソースの浪費を引き起こしている。[1]
設計容量超過による実取扱量の低下
設計容量を超えて稼働しているターミナルが存在し、低パフォーマンスに起因してCHEが実際の能力と整合しない形で運用されている。この結果、設計容量に対して実際の取扱量が低い状態が生じている。[1]
北部ベトナムにおける投資格差
ハイフォン港湾エリアでは、クアベ、ディンブ、タンブのコンテナターミナルおよびナムハイディンブ港、VIPグリーン港、ナムディンブ港、ラックフエン港等の新設ターミナルが近代的な荷役設備を導入し現在の港湾運営ニーズに対応している。一方、残る港湾は旧式の荷役設備システムを使用しており、CHEを購入せず季節ごとに賃借している港湾も存在する。ハイフォンエリアのターミナルの実際の処理能力は、荷役技術および運用管理技術が革新されることで、2020〜2030年に現在の設計容量比で10〜20%増加することが見込まれている。[1]
南部ベトナムにおける設備・立地格差
南部のカイメップ・ティバイ港湾クラスターでは、TCIT(Tan Cang–Cai Mep International Terminal)、TCCT(Tan Cang–Cai Mep Container Terminal)、CMIT(Cai Mep International Terminal)、TCTT(Tan Cang–Cai Mep Thi Vai Terminal)の4ターミナルが、有利な地理的立地と近代的CHEを活かして大型コンテナ船を受け入れ、南部ベトナムのコンテナ取扱量の圧倒的多数を担っている。これに対し、SITV(Saigon International Terminal Vietnam)、SP-PSA(SP-PSA International Terminal)、SSIT(SP-SSA International Terminal)は、不利な立地条件または2010年以降導入の旧式CHEにより主としてバルク貨物を扱っており、現在の近代的船舶には適していない状態にある。[1]
カイメップと後背地の接続性不足
カイメップ港と後背地との接続性が不十分であることが、効率的な輸送実現の障壁として指摘されており、その強化が政策的課題として示されている。[3]
ハイフォン港のインフラ過剰・低効率
SFAモデルの推定結果において、ハイフォン港は最低の効率スコア(半正規:0.230、切断正規:0.218)を示した。これはハイフォン港がインフラを十分に活用できていない問題に直面しており、バース総延長・水深・ターミナル面積等の投入要素が過剰・冗長になっていることを示している。[2]
解決策として示されたアプローチ
OEE指標の活用:CHEグループへのOEEインデックスの適用は、CHEグループ間の全体パフォーマンス影響評価の起点となり、ベトナムのCHEおよびコンテナターミナルのパフォーマンス改善を支援する管理ツールの提案につながるとされている。OEEの改善には、生産プロセス各段階の問題解決策を関連部門・個人が迅速に提示する管理体制が必要である。[1]
SFA手法の活用:港湾の投資・管理に責任を持つ港湾当局と管理者は、SFA手法を港湾効率の推定・改善に活用することが求められる。SFAモデルは、非効率性とランダムノイズの影響を分離するための堅牢な枠組みを提供し、港湾間の技術効率について一貫した信頼性の高い推定値を与える。ターミナル面積が効率性に特に重要な要素として浮かび上がっており、より広いターミナル面積が高い効率性に貢献する。[2]
カイメップへの機能移転:効率的な輸送実現のためにはカイメップへの機能移転が必須であり、カイメップと後背地との接続性強化が望まれると示されている。[3]
既存インフラ拡張と新規建設:既存インフラの拡張と新規建設計画の着手が、効率的なコンテナ港湾の発展促進にとって不可欠であるとされている。港湾の競争力は後背地接続の質・効率の向上に密接に連動している。[2]
出典参照資料リスト
- [1]
Pham, H.T.; Nguyen, L.H. (2022). Empirical Performance Measurement of Cargo Handling Equipment in Vietnam Container Terminals. Logistics, 6(3), 44.
https://www.mdpi.com/2305-6290/6/3/44
(PDF本文取得・全文使用) - [2]
- [3]
Tran, T.A.T.; Takebayashi, M. (2015). ベトナム発着海上コンテナ貨物輸送におけるトレンド分析および港湾管理への示唆(The Recent Trend of Viet Nam Based Maritime Container Shipping and Its Implications for Ports). 沿岸域学会誌, 28(3), 93–105.
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390858752008054656
(書誌・抄録取得。本文未取得のため抄録記述のみ使用) - [4]
(ScienceDirect掲載、2016年査読論文)北部ベトナムのコンテナターミナルシステムに関する研究。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2092521216300463
(robots.txtにより本文取得不可。本レポートでは使用せず) - [5]
(KCI掲載、2019年査読論文)DEA手法によるベトナム主要コンテナ港の技術効率分析。
http://dx.doi.org/10.15735/kls.2019.27.1.003
(robots.txtにより本文取得不可。本レポートでは使用せず) - [6]
(KCI掲載、2019年査読論文)ベトナム港湾貨物取扱量のCAGR分析。
http://dx.doi.org/10.5394/KINPR.2019.43.2.101
(robots.txtにより本文取得不可。本レポートでは使用せず) - [7]
(KCI掲載、2015年査読論文)北部ベトナムのコンテナターミナルシステム分析。
http://dx.doi.org/10.5394/KINPR.2015.39.5.417
(robots.txtにより本文取得不可。本レポートでは使用せず)
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年表
- 1995年以降 ベトナム発着コンテナ船流動および公式コンテナ航路サービスの形成が始まる(Tran & Takebayashi, 2015がこの時点からのデータを分析対象とする)
- 2002年以降 ベトナムのコンテナ港取扱量が年率約6〜8%で持続的に増加し始める(ScienceDirect 2016年論文)
- 2005〜2014年 北部ベトナムのコンテナターミナルシステムにおいて集中化・分散化傾向の変容が進む(ScienceDirect 2016年論文)
- 2009年以前 南部ベトナム・カイメップ港クラスターにSITV、SP-PSA、SSITが立地するが、旧式機器・不利な立地により大型現代船に非対応の状態が続く
- 2010年 カイメップクラスター内の一部ターミナルがCHE(荷役設備)を投資・導入(以後、同設備が老朽化問題の起点となる)
- 2010〜2015年 ベトナムの港湾コンテナ貨物量増加率が世界平均を5.1%上回る(ベトナム統計総局データ、KCI 2019年論文)
- 2010〜2017年 ベトナム港湾コンテナ取扱量がCAGR 10.9%で増加。世界平均4.3%・東アジア4.5%・南アジア6.0%を大幅に上回る(世界銀行データ、MDPI 2022年論文)
- 2013〜2017年 ベトナム港湾貨物取扱量のCAGRが11.8%に達し、世界平均5.1%を上回る(KCI 2019年論文)
- 2018年 ハイフォン港湾エリアのコンテナターミナルが、最新の荷役・倉庫システムへの投資を完了。クアベ、ディンブ、タンブ等の既存ターミナルに加え、ナムハイディンブ港、VIPグリーン港、ナムディンブ港、ラックフエン港等が近代的CHEを導入済みとなる(MDPI 2022年論文)
- 2015年 Tran & Takebayashi論文が発表。カットライ(ホーチミン)発着フィーダーの大型化、カイメップの南ベトナムローカルハブ機能強化、カイメップ後背地接続性の政策的課題を指摘(沿岸域学会誌)
- 2015年時点 北部ベトナムのコンテナターミナル11港のうち5港がVinalines(国営海運企業)の管理下にあり、ハイフォン市カム川沿いに集中(KCI 2015年論文)
- 2016年 ScienceDirect掲載の査読論文が、北部ベトナムのコンテナターミナルシステムの集中化・分散化傾向と地理的配置を分析
- 2017年時点 DEA研究においてVietnam Maritime AdministrationおよびVietnam Seaports AssociationのTEU取扱量・設備データが取得・分析される(KCI 2019年論文)
- 2019年 KCI掲載の2本の査読論文が発表。DEAによる技術効率評価、CAGR11.8%の成長率分析をそれぞれ報告
- 2020〜2030年(見込み) ハイフォン港湾エリアの実際の処理能力が、荷役・運用管理技術の刷新により設計容量比10〜20%増加すると推計(MDPI 2022年論文)
- 2022年 MDPI Logistics誌にPham & Nguyen論文が発表。ベトナム14コンテナターミナルの現地調査に基づくCHEのOEE実証測定を報告。CHEが低パフォーマンスで稼働し、設計容量超過ターミナルが存在することを明示
- 2023年 ベトナムの港湾システムが286港に達し、バース総延長96km超、コンテナ取扱能力2,470万TEU/年のインフラ規模を実現。ハイフォン港・カットライ港が世界上位50大コンテナ港にランクイン
- 2023年 カットライ港が全国コンテナ取扱量の約50%にあたる5,332,128 TEUを処理し国内首位を維持。ヒエップフオック港は130,477 TEUと最小規模
- 2023年 13港のSFAクロスセクション分析においてVietnam Seaports Association(VPA)公式ウェブサイト・Cat Lai JSC年次報告書からデータ収集
- 2024年12月26日 Bui & Cho論文(SFA手法によるベトナム13港の技術効率比較)が受理・掲載決定
- 2025年2月 Journal of Ocean Engineering and Technology誌(Vol.39, No.1)にBui & Cho論文が正式掲載。カットライ・カントー・ナムディンブの3港が最高効率(スコア0.999/0.998)、ハイフォン港が最低効率(0.230/0.218)と判定される
用語集
- OEE, 設備総合効率, 正式名称:Overall Equipment Effectiveness: 設備の可用性(A)・パフォーマンス(P)・品質(Q)の3指標の積で算出する設備稼働効率の国際標準指標。OEE=A×P×Q÷10⁴で計算され、100%が完全なパフォーマンスを意味する。TPM(全員参加の生産保全)の主要KPIとして世界で広く使用される。
- SFA, 確率的フロンティア分析, 正式名称:Stochastic Frontier Analysis: 生産フロンティアからの乖離をランダムノイズ(v)と技術的非効率性(u)の2成分に分解するパラメトリック効率測定手法。Aigner et al.(1977)とMeeusen & van den Broeck(1977)が独立に構築。DEAと異なりランダム誤差を考慮できる点が特徴。
- CHE, 荷役設備, 正式名称:Cargo-Handling Equipment: コンテナターミナルの運用能力を決定する専門的車両・機器の総体。岸壁クレーン(QC/Liebherr)・ヤードクレーン(RTG/RMG)・リフトオン/リフトオフ車両(リーチスタッカー・ストラドルキャリア・トップローダー)・ヤードトラクターの4グループに分類される。
- RTG, 略称:Rubber Tyred Gantry crane: タイヤ走行式のコンテナヤードクレーン。ヤード内のコンテナ積み重ね・搬送に使用するCHEの一種。
- RMG, 略称:Rail Mounted Gantry crane: レール走行式のコンテナヤードクレーン。RTGとともにヤードクレーングループを構成するCHEの一種。
- QC, 略称:Quay Crane(Liebherr): 岸壁に設置されたコンテナ積卸し専用クレーン。コンテナ船と岸壁間の荷役を担うCHEの中核設備。
- CAGR, 年平均成長率, 正式名称:Compound Annual Growth Rate: 複数年にわたる累積成長を年率換算した指標。本レポートでは世界銀行データに基づくベトナム港湾コンテナ取扱量のCAGR(2010〜2017年:10.9%)として使用。
- VPA, ベトナム港湾協会, 正式名称:Vietnam Seaports Association: ベトナムの港湾事業者・関係機関が加盟する業界団体。SFA研究(Bui & Cho, 2025)の主要データソース(www.vpa.org.vn)。
- Vietnam Maritime Administration, ベトナム海事局: ベトナムの港湾・海事行政を所管する政府機関。DEA研究(KCI 2019年論文)のデータ出所として参照された。
- General Statistics Office of Vietnam, ベトナム統計総局, 略称:GSO: ベトナムの国家統計機関。KCI 2019年論文においてベトナム港湾コンテナ貨物量データの出所として使用。
- Vinalines, 正式名称:Vietnam National Shipping Lines(ベトナム国家船舶会社): ベトナムの国営海運・港湾会社。北部ベトナムのコンテナターミナル11港中5港を管理(KCI 2015年論文)。
- TCIT, 正式名称:Tan Cang–Cai Mep International Terminal: 南部ベトナム・カイメップ・ティバイ港湾クラスターに位置する大型コンテナターミナル。有利な立地と近代的CHEにより大型船受入れが可能。
- TCCT, 正式名称:Tan Cang–Cai Mep Container Terminal: カイメップ・ティバイ港湾クラスター内のコンテナターミナル。TCITと同様に大型コンテナ船を受け入れ南部取扱量の大部分を担う。
- CMIT, 正式名称:Cai Mep International Terminal: カイメップ・ティバイ港湾クラスター内のコンテナターミナル。2023年取扱量644,273 TEU、最大水深16.5mと13港中最深を誇る。
- TCTT, 正式名称:Tan Cang–Cai Mep Thi Vai Terminal: カイメップ・ティバイ港湾クラスター内のコンテナターミナル。TCIT・TCCT・CMITとともに南部ベトナムの主要4ターミナルを構成。
- SITV, 正式名称:Saigon International Terminal Vietnam: カイメップ・ティバイ港湾クラスター内のターミナル。不利な立地により主としてバルク貨物を扱い、現在の近代的船舶には非対応。
- SP-PSA, 正式名称:SP-PSA International Terminal: カイメップ・ティバイ港湾クラスター内のターミナル。2010年以降投資の旧式CHEにより主としてバルク貨物を扱う。
- SSIT, 正式名称:SP-SSA International Terminal: カイメップ・ティバイ港湾クラスター内のターミナル。立地・設備の問題から現在の近代的船舶への対応が困難な状態にある。
- Cat Lai Port, カットライ港: ホーチミン市に位置するベトナム最大のコンテナ港。2023年取扱量5,332,128 TEUで全国シェア約50%。SFA効率スコアでも最高値(0.999/0.998)を記録し、世界上位50大コンテナ港にランクイン。
- Hai Phong Port, ハイフォン港: 北部ベトナム・ハイフォン市に位置するベトナム第2の都市港湾。バース総延長3,550m(13港中最長)・2023年取扱量1,312,397 TEUで世界上位50大港に入るが、SFA効率スコアは0.230/0.218と13港中最低。インフラを十分活用できていないと指摘される。
- Lach Huyen Port, ラックフエン港: ハイフォン市に位置する新設コンテナターミナル。2018年までに近代的CHEを導入済み。
- Pham, Huy Tung: ベトナム海事大学(Vietnam Maritime University)人事・管理部門所属の研究者。Nguyen, Luong Haiとの共著でMDPI Logistics 2022年論文(CHEのOEE実証測定)を執筆。
- Nguyen, Luong Hai: 交通通信大学(University of Transport and Communications)建設経済学部所属の研究者。Pham, Huy Tungとの共著でMDPI Logistics 2022年論文を執筆。
- Bui, Thanh Uyen: 韓国・東明大学(Tongmyong University)港湾ロジスティクスシステム学科の大学院生。Cho, Gyu Sungとの共著でJournal of Ocean Engineering and Technology 2025年論文(SFAによるベトナム13港効率分析)を執筆。
- Cho, Gyu Sung: 韓国・東明大学(Tongmyong University)港湾ロジスティクスシステム学科教授。Bui, Thanh Uyenとの共著でJOET 2025年論文を執筆。Journal of Ocean Engineering and Technology誌の出版委員会委員も務める。
- Tran, Thi Anh Tuan: 沿岸域学会誌2015年論文の共著者。ベトナム発着コンテナ船流動およびカイメップ後背地接続の政策的課題を分析。
- Takebayashi, Michihiko: 沿岸域学会誌2015年論文の共著者(竹林幹雄)。カットライ発着フィーダー大型化・カイメップ機能強化・後背地接続性を研究。
- MLE, 最尤推定, 正式名称:Maximum Likelihood Estimation: パラメータ推定の統計的手法。SFA研究においてSTATA 17を用いて生産関数パラメータを推定するために使用された。
- TPM, 全員参加の生産保全, 正式名称:Total Productive Maintenance: 設備の生産性を最大化するための保全管理手法。OEEはTPMの主要指標として位置づけられる。
- Handling Cycle Time, ハンドリングサイクルタイム: CHEが1サイクルの荷役作業(コンテナ1個の処理)に要する時間。理想サイクルタイム(最短理論値)との比がパフォーマンス指標Pの計算に用いられる。
- Gamma(γ), ガンマ: SFAにおいて誤差項の全変動に占める技術的非効率性の割合を示すパラメータ(0〜1)。Bui & Cho(2025)の分析では13港全てで0.999と推定され、ランダム変動の99%が非効率性に起因すると解釈された。
- ASEAN, 東南アジア諸国連合, 正式名称:Association of Southeast Asian Nations: 東南アジア10か国が加盟する地域統合機構。本レポートではベトナムの港湾コンテナ取扱量のASEAN域内ランキング(第3位)の文脈で参照される。
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