審議会は「隠れ蓑」なのか。草野厚ら四半世紀にわたる批判と、政治家による官僚統制という対抗理論を、事務局主導説・専門知識調達説・利害調整説とともに五つの競合する説明として整理した。LZ11・LZ12で検証した統治の移植と断絶という論点を、審議会という具体的な制度に即して引き継ぐ、理論・仮説編。実証はLZ14に委ねる。
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はじめに
LZ12までで、日本の統治機構が、大陸型・英米型から、それぞれの要素を、どのように取り入れ、そして、どこで、循環が、途切れたのかを、歴史的な経緯に即して、検証してきた。本稿からは、この、断絶の、より具体的な現れとして、審議会制度を取り上げる。ただし、本稿は、審議会をめぐる、競合するいくつかの説明を、理論・仮説として整理する「理論・仮説編」であり、個々の仮説が、どの程度、実際の審議会運営に当てはまるのかという、実証そのものは、次稿LZ14に委ねる。本稿で並置する仮説群は、いずれも単独では、審議会制度の全体像を、説明し尽くすものではなく、LZ14における、具体的な事例の追跡によって、はじめて、その当否が、確かめられる。
国家行政組織法第8条、審議会の法的根拠
審議会とは、国の行政機関に附属し、合議制の機関をいう。この根拠は、国家行政組織法第8条にある——法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する、調査審議、不服審査、その他、学識経験を有する者等の合議により、処理することが適当な事務を、つかさどらせるための、合議制の機関を、置くことができる、と定める[1]。この根拠条文から、審議会は、しばしば「8条機関」と、呼ばれる。ここで、確認しておく必要があるのは、8条機関の所掌事務が、単に「諮問に応じて意見を述べる」ことに、限られるわけではない、という点である。条文が示す通り、調査審議、不服審査、その他、合議により処理することが適当な事務、という、三つの異なる類型が、含まれており、諮問・答申という形式は、そのうちの一つにすぎない。不服審査の類型は、行政処分を受けた、私人の側からの、不服を、専門的な知見を持つ、合議体が、審査するという機能であり、企画・立法に関わる、諮問・答申の類型とは、異質な、準司法的な性格を、帯びる。この、所掌事務の、多様性そのものが、後述する、審議会の機能をめぐる、諸説明が、なぜ、単一の審議会観に、収束しないのかという問いへの、一つの手がかりとなる。すなわち、不服審査を担う審議会と、基本的な政策の企画に関わる審議会とでは、事務局(所轄の行政機関)が、果たす役割の性質も、おのずと、異なりうる。
審議会の、二つの類型
2001年の、中央省庁等改革に際し、存置することとなった、審議会は、「基本的政策型審議会」(行政の企画・立法過程における、法案作成や、法案作成につながる事項などの、基本的な政策を、審議事項に含む、審議会等)と、「法施行型審議会」(行政の執行過程における、計画や基準の作成、不服審査、行政処分等に係る事項について、法律又は政令により、審議会等が、決定若しくは同意機関とされている場合、又は、審議会等への必要的付議が定められている場合に、当該事項のみを、審議事項とする、審議会等)という、二種類に、整理された。次稿LZ14で検討する、交通政策審議会は、運輸政策の、基本的な方向性を、企画・審議する機能を持つという点で、基本的政策型審議会に、近い性格を持つと、考えられる【推論】。この整理に際し、委員数の標準は20人以下、上限は30人とされた[2]。この、委員数の上限は、1999年の、審議会等の整理合理化に関する、基本的計画において、設定されたものであり、交通政策審議会令が定める、30人以内という、上限も、この、全政府的な、基準に、沿ったものである可能性が高い【推論】。すなわち、交通政策審議会における、30人という数字は、交通政策に、固有の制約ではなく、全ての審議会に、広く適用される、制度設計上の、標準値である可能性がある。この点は、LZ14において、交通政策審議会固有の問題として、委員数の制約を、論じる際に、踏まえておくべき、前提である。
基本的政策型審議会と法施行型審議会の対比
| 観点 | 基本的政策型審議会 | 法施行型審議会 |
|---|---|---|
| 審議事項 | 法案作成等、基本的な政策の企画 | 計画・基準の作成、不服審査、行政処分等 |
| 性格 | 政策形成の、前段階的・企画的 | 執行過程における、決定・同意・必要的付議 |
| 典型例 | 交通政策審議会、社会保障審議会等 | 個別の、不服審査を担う審議会等 |
| 事務局の役割として、想定されやすい機能 | 政策の方向性に関する、論点・資料の提示 | 個別事案に関する、専門的な審査の、補助 |
私的諮問機関という、法定審議会とは、別の仕組み
行政組織内には、法令に基づかないで、設置される、諮問機関が、置かれることがある。これらは「懇談会」「研究会」等と呼ばれ、審議会等と、似たような機能を果たすが、法令上の、審議会等には、含まれない。この区別は、決して、近年になって、問題化したものではない。既に、1961年4月12日、行政管理庁長官通達「懇談会等行政運営上の会合の開催について」が、懇談会等を、法令に基づかない、「意見の表明又は意見の交換の場」として、法定の審議会等から、明確に、区別していた[3]。この区別は、1999年の、審議会等の整理合理化に関する、基本的計画においても、維持された。同計画に付された、懇談会等の運営に関する、指針は、懇談会等について、法令・訓令等の、設置の根拠を持たないこと、審議会等であるかのような、名称を用いないこと、定足数や、採決の手続を設けないこと、答申、建議等、合議体としての、意思決定を示す、名称を用いないこと、を定めている[2]。政府の立場は、私的諮問機関が「出席者の意見の表明又は意見の交換の場に過ぎない」というものであり、2006年には、当時の、竹中平蔵総務大臣が、参議院の委員会において、私的な懇談会は「行政運営上の意見交換の場」であって「何かを決めたわけではございません」と、答弁している[4]。ただし、実務上は、私的諮問機関も、正式な報告書を、取りまとめる場合があり、両者の、実質的な差異は、必ずしも、明確ではないという、指摘もある[2]。この、法定審議会を厳格に制度化すればするほど、その外側に、懇談会・研究会という、より柔軟な、政策形成の装置が、生まれるという構造は、本シリーズが、後に検討する、事務局主導という論点とも、関わってくる。
法定審議会と私的諮問機関の区別
| 観点 | 法定審議会(8条機関) | 私的諮問機関(懇談会等) |
|---|---|---|
| 設置の根拠 | 法律又は政令 | 閣議決定又は大臣決裁のみ、法令上の根拠なし |
| 名称 | 「審議会」「委員会」等 | 審議会等であるかのような名称の使用は不可 |
| 定足数・採決手続 | 設けられる | 設けないこととされる |
| 意思決定の形式 | 答申・建議等、合議体としての意思決定 | 答申・建議等の名称を用いないこととされる |
| 政府の位置づけ | 合議体として、機関としての意思を決定する機関 | 出席者の意見の表明又は意見の交換の場 |
この、対比表が示す通り、法定審議会と、私的諮問機関とは、制度上、明確に、区別されている。しかし、西川が、指摘する通り、私的諮問機関が、実務上、正式な報告書を取りまとめ、その内容が、政策形成に、実質的な影響を、与える場合があることから、両者の、実質的な機能の差異は、制度上の、位置づけほどには、明確ではない場合がある[2]。この、ずれこそが、隠れ蓑論が、しばしば、法定審議会だけでなく、私的諮問機関にも、向けられてきた、理由の一つであると、考えられる【推論】。
隠れ蓑論という、批判的な学術的系譜
審議会をめぐっては、その実態が、官僚が望む政策を、追認する「隠れ蓑」にすぎないという見方が、根強く残ってきた。この、批判的な検証の系譜は、既に、四半世紀以上前から、蓄積されている。草野厚は、1995年、「徹底検証、審議会は隠れ蓑である」という論考を、発表した[5]。小川一は、1997年、「闇に閉ざされた審議会」という論考を、発表した[6]。前田和敬は、1996年、「官僚機構の政策形成と審議会をめぐる諸問題」という論考を、発表した[7]。こうした、批判的な検証に対し、辻中豊は、1999年、「審議会等の透明化・公開の政治学的意義」という論考において、行政の説明責任という、特集テーマのもとで、審議会の、透明化・公開という、課題の重要性を、論じている[8]。ここで、確認しておくべきことは、隠れ蓑論という、批判が、長年にわたって、存在してきたという、歴史的な事実と、現在の審議会が、実際に、官僚の隠れ蓑として、機能しているという、実証的な命題とは、別の次元に属する、という点である。本稿が、確認できるのは、前者のみであり、後者は、LZ14における、具体的な事例の検討に、委ねられる。
四者の、論考を、やや詳しく見ておく。草野の、論考は、雑誌『諸君』という、総合月刊誌に、発表された、ジャーナリスティックな、検証記事であり、学術論文としての、厳密な、実証手続きを、踏んだものではないが、審議会批判が、学術界だけでなく、広く、論壇において、共有されてきたことを、示す、資料的な価値を持つ[5]。小川の、論考も、同様に、法律専門誌『法律時報』に、発表された、実務的な、問題提起である[6]。前田の、論考は、総合研究開発機構(NIRA)という、政策研究機関の、刊行物に、発表されたものであり、官僚機構の、政策形成過程における、審議会の位置づけを、より、制度論的な、観点から、論じている[7]。これに対し、辻中の、論考は、『都市問題研究』誌の、「行政の説明責任」という、特集のもとで、発表されたものであり、審議会批判を、単に、繰り返すのではなく、透明化・公開という、制度改善の方向性を、積極的に、提示する点で、批判的検証の系譜の中に、位置づけつつも、やや、異なる、立場を取っている[8]。
政治家による官僚統制としての審議会
隠れ蓑論に対しては、より複眼的な、理解を示す、政治学的な分析もある。池田峻は、2020年、「官僚制への統制手段としての審議会」という論考を、発表した[9]。この研究は、代議制民主主義において、有権者から選出されていない、官僚を、政治家が、いかに統制しているかという問いに対し、政治家が、審議会への、諮問の強制という手段を用いて、統制を行っている側面があると、主張する[9]。すなわち、政治家が、法令に「特定の審議会に、諮問しなければならない」という、手続的な義務(手続的指示)を、書き込むことによって、官僚の逸脱を、防ごうとする側面が、あることを、示している[9]。池田は、政権党・官僚制・審議会の関係を、ゲーム理論を用いて、定式化し、2002年時点に存在する、全ての審議会を対象とした、計量分析によって、これを検証している[9]。ここで、注意すべきは、この研究が示すのは、官僚が審議会を利用するという、一方向の関係だけでなく、政権党が、審議会を介して、官僚を統制するという、もう一つの経路が、存在するという点であり、「審議会イコール官僚統制装置」という、一般化を、主張しているわけではない。隠れ蓑論と、政治統制論とは、互いに排他的な、対抗理論ではなく、審議会という、一つの制度が、複数の、異なる機能を、同時に担いうることを、示す、競合する仮説として、理解すべきである。
池田の、研究方法について、やや詳しく見ておく。この研究は、2002年時点に、存在していた、全ての審議会を、対象とした、計量分析であり、個々の審議会について、法令上、諮問が、義務づけられているか否かという、制度的な特徴を、変数として、用いている[9]。手続的指示とは、法令において、特定の政策決定に際し、特定の審議会への、諮問を、義務づける規定を指す。池田の、主張は、このような、手続的指示が、与党にとって、官僚の、裁量的な、政策決定からの、逸脱を、事前に、防ぐための、制度的な、コミットメント手段として、機能しうるというものである[9]。これは、官僚が、審議会を、自らの、政策を正当化するための、道具として、利用するという、隠れ蓑論の、発想とは、逆の、因果関係を、想定する点で、重要である。ただし、池田自身の、研究は、手続的指示という、制度的な特徴の、存在と、その、政治学的な、含意を、分析したものであり、個々の審議会における、実際の、委員の発言や、事務局の、資料作成の実態までを、立ち入って、検証したものではない。したがって、池田の、研究は、審議会制度、一般についての、マクロな、制度分析として、重要な、知見を、提供するが、LZ14で行う、ミクロな、事例研究とは、分析の、次元が異なる、という点を、確認しておく必要がある。
事務局主導という、批判・仮説
審議会の、実務上の運用については、西川明子が、2007年、国立国会図書館『レファレンス』誌において、次のような、指摘を行っている。審議会等について、行政官庁が、議論の枠組みや、資料を、用意することが、一般的であり、委員が、報告書を、取りまとめる際にも、合意形成の過程で、この枠組みの、影響を免れがたいという、懸念が、指摘されている[2]。また、実務上、実質的な審議は、部会において行われ、本会議(審議会本体)は、その結果を、承認するにとどまることが、多いとも、指摘されている[2]。委員の人選については、一定の資格要件を有する者の中から、所轄の行政機関の長が、任命するという、仕組みが、とられており、1999年の、整理合理化計画では、民間の有識者を、優先し、府省庁の、出身者や、高齢の委員の選任を、抑制する、方針が、示された[2]。これらの指摘は、審議会の運営をめぐって、しばしば示される、批判・仮説として、重要であるが、個々の審議会について、事務局が、どの程度、実質的に、アジェンダと、原案を、支配しているかは、審議会ごとに、議事録・配布資料を、具体的に、追跡しなければ、確認できない、未実証の論点である。本稿では、この点を、確認した事実ではなく、検証されるべき仮説として、位置づける。
西川の、論考は、2007年という、時点において、審議会等と、私的諮問機関の、現状を、包括的に、整理した、国立国会図書館の、調査資料であり、個別の、審議会を、対象とした、実証研究ではない。したがって、同論考が示す、事務局主導という、指摘も、審議会制度、一般について、しばしば、観察される、傾向を、整理したものであり、特定の、審議会について、事務局が、どの程度、実質的に、アジェンダを、支配しているかを、直接に、実証したものではない。この点で、西川の、指摘は、池田の、計量分析とは、異なる、性格を持つ。池田の、研究が、制度的な、特徴(手続的指示の有無)についての、計量分析であるのに対し、西川の、指摘は、審議会の、運営実務についての、記述的な、整理である。いずれも、個別の、審議会における、具体的な、議事の経過を、逐語的に、追跡したものではなく、この、ミクロな、実証こそが、LZ14の、課題となる。
競合する説明の整理
以上から、審議会制度をめぐっては、少なくとも、次のような、競合する説明が、並立していることが、確認できる。第一に、隠れ蓑説——審議会は、官僚が望む政策を、追認するための、形式的な、装置にすぎないという、見方である。第二に、事務局主導説——審議会の、実質的な、アジェンダ設定と、原案の作成は、事務局(所轄の行政機関)が、担っており、委員は、それを、承認する役割に、留まるという、見方である。第三に、政治統制説——池田が示すように、審議会は、官僚ではなく、政権党が、官僚を統制するための、手段として、機能しうるという、見方である。第四に、専門知識調達説——審議会は、行政機関が、持ち得ない、専門的な知見を、学識経験者から、調達するための、制度的な、仕組みであるという、見方である。第五に、利害調整説——審議会は、産業界、労働界、市民団体等、多様な利害関係者の間の、調整を、公的に、行うための、場であるという、見方である。これらの、五つの説明は、相互に、排他的ではなく、一つの審議会が、複数の機能を、同時に、担いうる。本稿が、ここで、強調しておきたいのは、これらの、いずれの説明も、単独では、審議会制度の全体像を、説明し尽くさないという点であり、どの説明が、どの審議会において、どの程度、妥当するかを、見極めるためには、個別の事例に即した、実証的な検討が、不可欠である。この、実証的な検討を、次稿LZ14では、交通政策審議会という、具体的な事例に即して、行う。
審議会制度をめぐる五つの競合する説明
| 説明 | 主張の骨子 | 主な典拠 | LZ14で検証すべき観点 |
|---|---|---|---|
| 隠れ蓑説 | 審議会は、官僚が望む政策を追認する、形式的な装置にすぎない | 草野(1995)、小川(1997)、前田(1996) | 委員の発言が、事務局原案を、実質的に変更しているか |
| 事務局主導説 | 実質的なアジェンダ設定・原案作成は、事務局が担う | 西川(2007) | 部会・小委員会における、配布資料と、議事録の対応関係 |
| 政治統制説 | 政権党が、手続的指示を通じて、官僚を統制する手段として機能する | 池田(2020) | 当該審議会への諮問が、法令上、義務づけられているか |
| 専門知識調達説 | 行政機関が持ち得ない専門的知見を、学識経験者から調達する | 本稿の整理による【推論】 | 委員・臨時委員の専門分野の多様性 |
| 利害調整説 | 産業界・労働界・市民団体等、多様な利害関係者の調整の場となる | 本稿の整理による【推論】 | オブザーバー・委員の所属団体の多様性 |
この表が示す通り、隠れ蓑説・事務局主導説・政治統制説には、既に、学術的な、典拠が存在する一方、専門知識調達説・利害調整説は、本稿が、既存の、審議会研究における、一般的な、理解を、整理したものであり、特定の、論者による、個別の、実証研究を、直接の、典拠とするものではない【推論】。この、違いも、LZ14における、検証の、組み立て方に、影響する。
既刊Q06との接続
既刊Q06で扱った、公聴会・審議会制度の、日米比較は、本稿で扱った、審議会制度と、接続するが、比較の対象には、注意が必要である。米国の、ノーティス・アンド・コメント手続と、日本の審議会とは、同じ、制度的な対応関係には、立たない。制度的に対応するのは、むしろ、米国のノーティス・アンド・コメント手続と、日本の、行政手続法上の意見公募手続である。一方、日本の審議会に、制度的に対応するのは、米国のadvisory committeesである。両者を、政策参加の開放性という、機能面において、比較することは、可能であるが、その場合には、制度そのものを、比較しているのではなく、政策形成への、参加機会という、機能を、比較しているという点を、明示する必要がある。この、区別を踏まえた上で、改めて、機能面の対比を、行えば、次のことが言える。米国のノーティス・アンド・コメント手続は、規則案の公示から、意見提出まで、手続上、不特定多数の、利害関係者に、開かれている。これに対し、日本の審議会は、委員の人選そのものが、所轄の行政機関の、裁量に、委ねられており、参加の、入口の段階において、既に、開放性という点で、異なる性格を持つ。もっとも、この、対比を、過度に、単純化することには、注意が必要である。日本の、行政手続法上の、意見公募手続(パブリックコメント)は、米国の、ノーティス・アンド・コメント手続と、より直接に、対応する制度であり、この、制度的対応物を、無視して、審議会と、ノーティス・アンド・コメントとを、直接、比較することは、既刊Q06の、議論を、やや、単純化して、引き継ぐ、危険を伴う。既刊Q06を、再読する際には、この、制度的対応関係の、精緻化を、踏まえた上で、参照する必要がある。
LZ11で確認した、断絶点との、理論的な接続
本稿で確認した、審議会をめぐる、競合する諸説明は、LZ11で検証した、大陸型・英米型の、循環構造の、断絶点と、関わる可能性がある。ただし、ここでは、慎重な、留保が必要である。戦後日本の、独立行政委員会が、米国型の、行政委員会の影響を、強く受けたという、議論と、日本の「審議会制度」一般が、英米から、輸入されたという、歴史命題とは、別のものであり、両者を、同じ「英米型ガバナンス・エコシステム」として、一括することは、比較行政史としては、相当な、立証負担を、伴う。この論点は、本稿、単体で、決着をつけられるものではなく、LZ09からLZ12までの、検討を、踏まえた、要再検証の、論点として、留めておく。
この、慎重さが、必要となる、理由を、もう少し、具体的に、述べておく。第一に、米国と、英国とを、一括して「英米型」と、呼ぶこと自体にも、注意が必要である。米国の、連邦行政機関における、独立行政委員会(例えば、連邦取引委員会のような、合議制の、規制機関)と、英国における、advisory bodiesとは、政治体制も、法的な位置づけも、大きく異なる。第二に、審議会制度と、独立行政委員会制度とを、同じ「輸入された制度」として、一括することにも、注意が必要である。戦後日本における、独立行政委員会(例えば、公正取引委員会のような、合議制の、規制機関)が、占領期に、米国型の、行政委員会の、制度設計から、影響を受けたという、議論と、日本の「審議会制度」一般が、英米から、輸入されたという、歴史命題とは、立証の、水準が、異なる。独立行政委員会は、個別の、法律によって、その、独立性と、権限とが、明確に、規定された、少数の、合議制機関であるのに対し、審議会は、国家行政組織法第8条という、一般的な、根拠規定の下に、数多く、設置されてきた、制度であり、両者を、同一の、歴史的な、系譜に、位置づけるには、より、立ち入った、比較制度史的な、検証が、必要である。この、検証は、LZ09・LZ10で検証した、英米型・大陸型、それぞれの、ガバナンス・エコシステムの、形成過程に、立ち返って、行われるべきものであり、本稿では、この論点を、未決着のまま、留保する。
交通・物流分野への接続
本稿で整理した、競合する諸説明——隠れ蓑説、事務局主導説、政治統制説、専門知識調達説、利害調整説——のうち、どれが、交通政策審議会に、最も当てはまるのかは、次稿LZ14で、具体的な事例に即して、検討する。
おわりに
本稿は、審議会の法的根拠(国家行政組織法第8条)、基本的政策型・法施行型という、二つの類型、私的諮問機関という、別の仕組み(1961年通達、1999年整理合理化計画)を整理した上で、隠れ蓑論という、批判的な学術的系譜(草野厚1995年、小川一1997年、前田和敬1996年、辻中豊1999年)と、政治家による官僚統制としての審議会(池田峻2020年)、事務局主導という、批判・仮説(西川明子2007年)を検討した。これらを、隠れ蓑説・事務局主導説・政治統制説・専門知識調達説・利害調整説という、五つの、競合する説明として整理し、各説の典拠・検証すべき観点を、表によって、対比した。既刊Q06との接続については、米国のノーティス・アンド・コメント手続と、日本の意見公募手続、及び、日本の審議会と、米国のadvisory committeesという、制度的な対応関係を、整理し直した。LZ11との接続については、審議会制度と、独立行政委員会制度とを、同一の「英米輸入」として、一括することの、立証上の、困難を、確認した。いずれの、競合する説明も、単独では、審議会制度の全体像を説明しないことを確認した上で、次稿LZ14では、LZシリーズの最終回として、交通政策審議会を、具体的な事例として、これらの仮説を実証的に検討する。
主要先行研究
草野厚(1995年)、小川一(1997年)、前田和敬(1996年)、辻中豊(1999年)、池田峻(2020年)、西川明子(2007年)。
年表
- 1961年 行政管理庁長官通達「懇談会等行政運営上の会合の開催について」
- 1995年 草野厚「徹底検証、審議会は隠れ蓑である」発表
- 1996年 前田和敬「官僚機構の政策形成と審議会をめぐる諸問題」発表
- 1997年 小川一「闇に閉ざされた審議会」発表
- 1999年 辻中豊「審議会等の透明化・公開の政治学的意義」発表、審議会等の整理合理化に関する基本的計画(閣議決定)
- 2001年 中央省庁等改革、審議会の類型整理
- 2002年 審議会と官僚統制についての、計量分析の対象年
- 2006年 竹中平蔵総務大臣、私的懇談会に関する参議院答弁
- 2007年 西川明子「審議会等・私的諮問機関の現状と論点」発表
- 2020年 池田峻「官僚制への統制手段としての審議会」発表
参考資料一覧
- 「国家行政組織法」第8条、e-Gov法令検索。
- 西川明子(2007年)「審議会等・私的諮問機関の現状と論点」『レファレンス』2007年5月号、59〜73頁、国立国会図書館調査及び立法考査局。
- 「懇談会等行政運営上の会合の開催について」行政管理庁長官通達、1961年4月12日。
- 竹中平蔵総務大臣、参議院委員会答弁、2006年。
- 草野厚(1995年)「徹底検証、審議会は隠れ蓑である」『諸君』27巻7号、98〜110頁。
- 小川一(1997年)「闇に閉ざされた審議会」『法律時報』69巻1号、54〜55頁。
- 前田和敬(1996年)「官僚機構の政策形成と審議会をめぐる諸問題」『NIRA政策研究』9巻8号、32〜35頁。
- 辻中豊(1999年)「審議会等の透明化・公開の政治学的意義」『都市問題研究』51巻11号、57〜69頁。
- 池田峻(2020年)「官僚制への統制手段としての審議会」『年報政治学』71巻1号、316〜340頁。
用語集
- 投稿タグ
- 構造:手続きと実体のズレ











