【スライド】Physical_Internet_2040_Strategic_Roadmaps

【ラジオ】物流崩壊を救うフィジカルインターネット

日本のフィジカルインターネットを、海外動向との比較で整理しました。2021年10月設置の実現会議が2022年3月、政府レベルでは世界初のロードマップを策定。2040年目標、6項目のフレームワーク。ヤマトHDのSSTは2025年2月から共同輸配送を商用提供中で、欧州のeCMR実証(2023年)より一歩進んだ実装段階にあります。

※この文書は AI Claude、スライド資料、音声解説 は Gemini により生成されており誤りを含む恐れがあります。

第一章 日本におけるフィジカルインターネット導入の経緯

日本において「フィジカルインターネット」が政策課題として明示的に取り上げられる契機となったのは、物流分野における需給バランスの悪化である。国土交通省の説明によれば、電子商取引の増加や積載効率の低下、人口減少に伴う労働力不足の深刻化等により、物流における需要と供給のバランスが崩れつつあり、この状況を放置すれば、2030年時点で7.5〜10.2兆円の経済損失が発生するなど、経済全体の成長を制約するだけでなく、物流機能それ自体の維持が困難になるおそれがあるとされている[1]。この経済損失の推計は、国土交通省自動車輸送統計」・内閣府「中長期の経済財政に関する試算」・総務省「労働力調査」等を基に算出されたものである[2]。

いわゆる「物流の2024年問題」(トラックドライバーの時間外労働の上限規制の適用開始)も、この文脈における主要な背景要因の一つとして経済産業省の資料で言及されている[2]。同資料によれば、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の2017年10月の調査を引用し、2027年には日本の物流トラックドライバーの労働力について96万人分の需要に対し24万人分(25%)が不足するとの試算、また日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「ロジスティクスコンセプト2030」(2020年1月)を引用し、2030年には物流需要の約36%が運べなくなるとの試算が紹介されている[2]。

2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)」においても、「物流・商流データ基盤」の構築をはじめとした物流標準化の推進の重要性が指摘されている[3]。この大綱を背景として、経済産業省国土交通省の連携により、2021年10月に「フィジカルインターネット実現会議」が設置された[1][4]。

海外PIとの関係について、経済産業省の資料では、海外のPI提唱者による構想(本レポートの前作で整理したMontreuil氏らの構想)を参照しつつ、2020年にALICE(欧州物流イノベーション協力連合)が2040年までの「フィジカルインターネット・ロードマップ」を発表したことが明記されている[5]。日本のロードマップは、こうした海外の先行事例を踏まえて検討が進められた。導入目的は、国土交通省の説明によれば「物流を産業競争力の源泉としていくため」であり、2040年を目標とした物流のあるべき将来像として、日本における「フィジカルインターネット」の実現に向けたロードマップを策定することにあるとされている[1]。

第二章 日本版フィジカルインターネット・ロードマップ

策定経緯

フィジカルインターネット実現会議は2021年10月に設置され、令和3年10月以降、全6回程度開催された[4][6]。第2回会合(2021年11月2日開催)では、スーパーマーケット等WG(ワーキンググループ)の設置、および先駆的な取り組みを実施している企業(Coupa株式会社、アスクル株式会社)へのヒアリングが行われた[7]。同会議は2022年3月4日、第6回会合において「フィジカルインターネット・ロードマップ」を策定・公表した[8][9]。このロードマップは、政府レベルのロードマップとしてはおそらく世界初とされている[6][9]。

目標年次と重点施策

ロードマップは2040年を目標年次とし、業界横断的に行うべき取組として、「ガバナンス」「物流・商流データプラットフォーム」「水平連携」「垂直統合」「物流拠点」「輸送機器」の6項目に整理されている[1][9]。各項目について、パレットやコンテナ容器等の物流資材の標準化・シェアリング、データ連携のためのマスタ・プロトコルの整備、企業経営者のサプライチェーンマネジメント・ロジスティクス重視への意識変革など、2040年までに段階的に行うべき取組が示されている[1]。

ロードマップは2040年までの道のりを、5年ごとの4つのフェーズ(2025年までを準備期、2030年までを離陸期、2035年までを加速期、2036年以降を完成期)に区分している(経済産業省担当者による解説動画に基づく)[6]。2026年から2030年までの離陸期には、加工食品・スーパーマーケット・百貨店・建材/住宅設備等の分野で、標準化や商慣行の是正を進めるとされている(民間解説記事に基づく整理)[10]。ロードマップは、フィジカルインターネットが実現する4つの価値として「効率性」(リソースの最大限の活用・CO2排出の削減等)、「強靭性」(災害にも備える生産拠点や輸送手段の多様化等)、「良質な雇用の確保」(労働環境の改善・新産業の創造等)、「ユニバーサル・サービス化」(買い物弱者や地域間格差の解消等)を挙げている[9]。これらの価値は、SDGs持続可能な開発目標)の17目標のうち8目標(保健、エネルギー、成長・雇用、イノベーション、不平等、都市、生産・消費、気候変動)の達成にも寄与するとされている[9]。ロードマップが示す経済効果の試算は、2040年時点で11.9兆円から17.8兆円である[6][10]。

物流標準化・共同物流・データ連携・物流拠点

ロードマップの附属資料では、フィジカルインターネットの要素として「コンテナ」「ハブ」「プロトコル」の標準化が必要であるとし、ハブで複数事業者の貨物を積み替えるためには貨物の外装サイズや荷扱条件について一定のルールが必要であることが説明されている[11]。トラックの場合、幹線輸送では複数のトラックを共有のハブで接続し、貨物はハブ間の幹線輸送と、ハブとラストワンマイルを結ぶ端末輸送網を組み合わせる形態になるとされる[12]。データ連携については、「何をどこからどこに運ぶのか」という情報を、グローバル標準であるGS1標準を基本として、荷姿ごとのコード体系で運用する方針が示されている[13]。

フィジカルインターネット実現会議の分科会として、消費財サプライチェーンにおける2030年までのアクションプランを策定するための「スーパーマーケット等WG」が設置され、キユーピー株式会社の上席執行役員(ロジスティクス、IT・業務改革推進担当)が参加している[13]。また百貨店業界向け、建材・住宅設備業界向けの分科会も設置された[13]。消費財分野におけるメーカー・中間流通・卸売・小売の連携を目的として2011年5月に発足した「製・配・販連携協議会」(経済産業省支援のもと、一般財団法人流通システム開発センターと公益財団法人流通経済研究所が共同運営、2022年7月時点で加盟企業50社)は、「フィジカルインターネット実現に向けたスーパーマーケット等アクションプラン」への賛同を宣言し、2022年度に4つのWGを新設した[13]。

EU ALICE Roadmapとの比較

経済産業省の資料では、ALICEが2020年に発表した「フィジカルインターネット・ロードマップ」(2040年まで)について、「オープンで積替効率の高いハブ拠点」「荷主・物流事業者のオペレーション標準化・商慣行適正化」「事業者横断で輸送をオーケストレートするプラットフォーム」が事業者・業種分野を超えたネットワークとともに実現するという内容が紹介されている[5]。同資料の出典は、総務省(2019)「平成の情報化に関する調査研究」、およびIPIC 2018(国際フィジカルインターネット会議)におけるEric Ballot氏のプレゼンテーション資料とされている[5]。

共通点として、両ロードマップはいずれも2040年を目標年次としている点、ハブ拠点における積替効率化とオペレーション標準化を重視している点が挙げられる。相違点としては、日本のロードマップが「フィジカルインターネット実現会議」という単一の政府主導の会議体によって策定され、政府レベルのロードマップとして世界初と位置づけられているのに対し[6][9]、ALICEのロードマップは欧州技術プラットフォームという産業界主導の団体(本レポート前作で整理した通り、欧州委員会ETPとして認定した組織)によって策定されている点が異なる。【推論】この体制の違いは、日本のロードマップが官主導、欧州のロードマップが産業界主導という策定プロセスの違いを反映している可能性があるが、この点を明示的に論じた一次資料は本レポートの調査範囲では確認できておらず、資料から読み取れる策定主体の違いからの推論にとどまる。

第三章 日本でPIを推進する組織

国土交通省・経済産業省

国土交通省経済産業省は、両省連携のもとフィジカルインターネット実現会議を主催し、ロードマップの策定・公表を行った[1][6][9]。国土交通省はまた、SIP「スマート物流サービス」に関係省庁として参画し、「物流情報標準ガイドライン」の策定に関与している[14]。同ガイドラインは2021年10月に初版が公開され、その後改訂が重ねられ、2024年10月に「ver.3.00」への改訂が行われた[14][15]。改訂は、標準貨物自動車運送約款の改正、新たなトラックの標準的な運賃への対応、物流サービス提供者が参画する標準プロセスの追加等を反映したものである[15]。

内閣府・SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)

SIP戦略的イノベーション創造プログラム)は、内閣府に設置された総合科学技術・イノベーション会議が司令塔となる国家プログラムである[16]。SIP第2期「スマート物流サービス」は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させる「Society 5.0」の概念のもと、サプライチェーン全体の最適化を図り、「サスティナブルな物流・商流」「廃棄ロス削減」「フィジカルインターネット」「省力化・省人化」「商品の安全・安心の提供」といった新たな価値の具現化を目指すものとされている[17]。研究開発項目は、(A)物流・商流データ基盤に関する技術、(B)省力化・自動化に資する自動データ収集技術、の2本柱で構成された[16]。研究推進法人は国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所PARI)である[18]。SIP「スマート物流サービス」の研究開発は年度末をもって終了し、その後の「物流情報標準ガイドライン」の運営管理は、研究推進法人に代わり一般社団法人フィジカルインターネットセンターが担うこととなった[15]。

一般社団法人フィジカルインターネットセンター

一般社団法人フィジカルインターネットセンターは、SIPスマート物流サービスの研究成果と社会実装の全般的な普及拡大活動を担う団体であり、代表理事は荒木勉・上智大学名誉教授である[15]。同センターは「スマート物流サービス物流情報標準化検討委員会」の事務局を務めている[19]。ヤマトホールディングスは同センターに理事会員として参画している[20]。

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)

JILSは「ロジスティクスコンセプト2030」(2020年1月公表)を策定した団体であり、同レポートで示された「2030年には物流需要の約36%が運べなくなる」との試算は、経済産業省フィジカルインターネット・ロードマップ関連資料でも引用されている[2]。JILS自体がPIロードマップの策定主体として直接関与しているかについては、本レポートの調査範囲では確認できず「不明」である。

日本物流団体連合会

日本物流団体連合会のPI推進における具体的な役割・活動内容について、本レポートの調査範囲では特定できる一次資料が確認できず「不明」である。

製・配・販連携協議会

2011年5月に発足した製・配・販連携協議会経済産業省支援のもと、一般財団法人流通システム開発センターと公益財団法人流通経済研究所が共同運営)は、消費財分野におけるメーカー・中間流通卸売・小売の連携によるサプライチェーン全体の無駄の削減と新たな価値創造を目的とする団体であり、2022年7月時点で加盟企業50社を数える[13]。同協議会はフィジカルインターネット実現会議の「スーパーマーケット等WG」のアクションプランに賛同を宣言し、2022年度に4つのWGを新設した[13]。

第四章 企業による実証・実装

ヤマトホールディングス

ヤマトグループは、2018年から内閣府SIP「スマート物流サービス」にプログラムディレクターとして参画し、「物流情報標準ガイドライン」の策定に関わってきた[20]。また一般社団法人フィジカルインターネットセンターに理事会員として参画している[20]。ヤマトホールディングスは2024年2月に中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030~1st Stage~」を策定した[20][21]。

2024年5月21日、ヤマトホールディングスは、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社「Sustainable Shared Transport株式会社」(SST資本金3億5,000万円、ヤマトホールディングス100%出資)を設立した[20][22]。SSTの事業内容は、標準パレット(1,100mm×1,100mm)を中心とした輸配送サービスの提供と、共同輸配送のオープンプラットフォームの管理・運用である[22]。プラットフォーム基盤システムは、SIPの「物流・商流データ基盤」構築に関わった富士通株式会社と共同で開発された[20][23]。共同輸配送サービス「SST便」は2025年2月から提供が開始された[23]。同サービスは、東京・名古屋・大阪間で2024年度に1日40線便、2025年度末には1日80線便の運行を目標としており、想定効果としてGHG排出量42.2%削減、省人化率65.1%という試算が示されている[24]。これは、標準パレットの使用・定時運行・セミトレーラーダブル連結トラック等高積載車両の活用・中継拠点の設置によって実現するとされている[24]。

本レポートの調査範囲では、ヤマトホールディングスと佐川急便による共同配送の事例(上高地地域における共同配送)についての言及が、業界動向解説記事において確認できたが[25]、この取り組みの実施日・具体的な規模を示す一次資料(両社の公式発表)は本レポートの調査範囲では特定できず、詳細は「不明」である。

セイノーホールディングス

セイノーホールディングスは、2023年に2028年までの中長期経営のロードマップを発表し、「フィジカルインターネットのGreen(グリーン)物流」を目指す方針を示したことが、日経ビジネス電子版の報道で確認できる[26]。ただし、この方針の詳細な実証・実装内容を示す同社の一次資料は、本レポートの調査範囲では確認できず「不明」である。

伊藤忠商事・KDDI・豊田自動織機・三井不動産・三菱地所

2024年5月17日、伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社は、2024年度中のフィジカルインターネットの事業化に向けた共同検討について合意し、覚書を締結したと発表した[27][28]。5社は、フィジカルインターネットサービスの事業化を視野に新会社設立に向けた具体的な協議を進めるとしている[27]。各社の役割は、伊藤忠商事が事業企画・営業、KDDIが通信環境整備・貨物のモニタリング・サービス監視、豊田自動織機がサービスに最適化された設備の導入・整備、三井不動産と三菱地所がハブ拠点の構築、とされている[29]。事業内容として、共同配送・長距離幹線ルートの中継輸送・荷物とトラックのマッチング・倉庫スペースのシェアリング等のサービス開発が念頭に置かれている[30]。三菱地所は「フィジカルインターネットサービスに最適化した中継倉庫拠点の構築」を担うことが報じられている[31]。本レポート執筆時点で、この事業化検討がその後どこまで進展したか(新会社設立の有無等)を示す一次資料は、本レポートの調査範囲では確認できず「不明」である。

NXグループ・日本通運・佐川急便・日本郵便・福山通運・三菱倉庫

これらの企業について、フィジカルインターネットに直接関連づけられた具体的な実証・実装事例を示す一次資料(政府資料、公的検討会資料、企業公式発表等)は、本レポートの調査範囲では確認できず「不明」である。

第五章 主要な実証プロジェクト

SIP第2期「スマート物流サービス」

実施主体は内閣府(総合科学技術・イノベーション会議が司令塔)、研究推進法人は国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所である[16][18]。目的は、サイバー空間とフィジカル空間を融合させ、サプライチェーン全体の最適化を図る「物流・商流データ基盤」の構築・社会実装であった[17][19]。実証内容としては、研究開発項目(A)物流・商流データ基盤に関する技術研究、(B)省力化・自動化に資する自動データ収集技術の開発が行われた[16]。成果として「物流情報標準ガイドライン」が策定され、2021年10月に初版が公開された[14]。プログラムディレクターは田中従雅氏である[14]。現在の状況としては、SIPとしての研究開発期間は終了しており、その後の運営管理は一般社団法人フィジカルインターネットセンターに引き継がれている[15]。同法人発行の「戦略的イノベーション創造プログラムSIP)第2期 スマート物流サービス 最終成果報告書」では、「フィジカルインターネット」といわれる「全体最適」を目指す動きが加速している一方、これらの施策は概念や実験の域に留まっているものが多く、一部のプラットフォーマーや政府による全体システム化は中長期的には持続性や柔軟性に欠けるのではないか、との課題認識が示されている[32]。

SST(Sustainable Shared Transport)共同輸配送プラットフォーム

実施主体はヤマトホールディングス(100%出資子会社として設立)、参加(連携)企業は富士通株式会社(プラットフォーム基盤システムの共同構築)である[20][23]。目的は、荷主企業や物流事業者など多様なステークホルダーが参画できる共同輸配送のオープンプラットフォームの提供である[20]。実証・実運用内容は、標準パレットを中心とした輸配送サービスの提供、共同輸配送のオープンプラットフォームの管理・運用であり、2025年2月から「SST便」としてサービスが開始されている[23]。成果としては、東京・名古屋・大阪間の幹線輸送で2024年度末に1日40線便の運行が目標とされ、2025年度末には1日80線便を目指すとされている(本レポートの調査範囲では、目標に対する実績値そのものは確認できず「不明」)[24]。現在の状況は、2025年2月のサービス開始以降、実運用段階にある。

伊藤忠商事・KDDI・豊田自動織機・三井不動産・三菱地所の共同事業化検討

実施主体は上記5社、目的は物流の2024年問題の解決を含む持続可能な物流の実現である[27]。実証内容としては、共同配送・長距離幹線ルートの中継輸送・荷物とトラックのマッチング・倉庫スペースのシェアリング等のサービス開発が構想されている[30]。現在の状況は、2024年5月17日の覚書締結・共同検討開始の段階であり、本レポートの調査範囲では、その後の新会社設立等の進捗を示す一次資料は確認できず「不明」である。

フィジカルインターネット実現会議・分科会(スーパーマーケット等WG等)

実施主体はフィジカルインターネット実現会議、参加企業としてはキユーピー株式会社(スーパーマーケット等WG)等が確認できる[13]。目的は、消費財サプライチェーンにおける2030年までの業界別アクションプランの策定である。成果として「フィジカルインターネット実現に向けたスーパーマーケット等アクションプラン」が策定され、製・配・販連携協議会が賛同を宣言した[13]。現在の状況は、2022年度に4つのWGが新設され、優先課題についての議論が継続しているとされる(本レポートの調査範囲で確認できた最新の情報は2022年7月時点のものであり、それ以降の進捗は「不明」)[13]。

第六章 海外との比較

本章では、本レポートおよび前作「フィジカルインターネットの海外動向」で確認した事実に基づき、日本と欧州(ALICE等)・北米の状況を比較する。

比較項目 日本 欧州(EUALICE 北米
政策の主体 経済産業省国土交通省(政府主導) 欧州委員会が認定した欧州技術プラットフォームALICE(産業界主導、政府は資金支援・認定) 政府主導の統一的なPI政策は本レポートの調査範囲では確認できず「不明」
ロードマップ フィジカルインターネット・ロードマップ」2022年3月策定、2040年目標、政府レベルでは世界初とされる[6][9] ALICE「Roadmap to Physical Internet」2020年発表、2040年目標、産業界主導[5] 統一的な国家ロードマップの存在は本レポートの調査範囲では確認できず「不明」
推進会議体 フィジカルインターネット実現会議(2021年10月設置、経産省・国交省 ALICE(2013年設立、欧州技術プラットフォーム CELDI(NSF支援の研究センター)等、個別の研究プロジェクト単位が中心(前作調査に基づく)
標準化 GS1標準を基本としたマスタデータ・コード体系の整備、「物流情報標準ガイドライン」(2021年初版、2024年ver.3.00)[13][15] Open Logistics Foundation(2021年設立)によるeCMR等のオープンソース標準(前作調査に基づく) 本レポートの調査範囲では体系的な標準化団体の情報は確認できず「不明」
データ連携 SIP「物流・商流データ基盤」(研究開発、内閣府)[16][17] SENSEプロジェクトの「フィジカルインターネット・ナレッジプラットフォーム」等(前作調査に基づく) 「不明」
共同物流の実装例 SST(ヤマトHD、2025年2月サービス開始、標準パレット中心)[23] Dachser・Rhenusによるeメcmr実路線試験(2023年、前作調査に基づく) 「不明」
物流拠点の位置づけ ロードマップの6項目の一つ「物流拠点」として位置づけ、伊藤忠等5社連合が中継倉庫拠点構築を計画[9][31] GVZ・Interporto等の複合輸送拠点(前作「ロジスティクスパーク」調査に基づく) AllianceTexas等(前作「ロジスティクスパーク」調査に基づく)
PIコンテナパレット標準化 標準パレットJIS規格11型、1,100mm×1,100mm)への統一が推奨されている(民間解説記事に基づく)[10] MODULUSHCAプロジェクトのM-box(ISO規格モジュール型コンテナ、前作調査に基づく) 「不明」
物流API・オープンソース 「不明」(本レポートの調査範囲では確認できず) Open Logistics FoundationeCMRePalettenschein・VDA5050(前作調査に基づく) 「不明」
企業間連携の形態 荷主・物流事業者・不動産・通信企業等、業界を横断した企業連合SST、伊藤忠等5社連合)[20][27] 物流企業間(Dachser・DB Schenker・duisport・Rhenus)の財団設立による連携(前作調査に基づく) 「不明」
商用運用の到達度 SSTが2025年2月より共同輸配送サービスを商用提供中[23] eCMR標準は2023年の実路線試験段階で、商用普及規模は前作調査時点で「不明」 「不明」

【推論】上記の比較から、日本のロードマップは政府(経済産業省国土交通省)が単一の会議体を主導して策定した点、欧州のロードマップは産業界主導の技術プラットフォームALICE)が策定した点で、策定主体の構造が異なっている可能性がある。また、商用運用の到達度についても、日本ではSSTが2025年2月から共同輸配送サービスの提供を開始しているのに対し、欧州で確認できたeCMR標準は2023年時点で実路線試験の段階にとどまっていた(前作調査時点)。ただし、これらの比較は本レポートおよび前作で確認できた個別事例に基づくものであり、日欧双方の取り組み全体を網羅的に比較した一次資料に基づくものではない点に留意が必要である。

第七章 日本の到達点

本レポートで確認できたエビデンスに基づき、日本のPI関連の取り組みを「実現済み」「実証段階」「構想段階」に分類する。

取り組み内容 実施主体 進捗状況 主な根拠資料
フィジカルインターネット・ロードマップの策定 フィジカルインターネット実現会議経済産業省国土交通省 実現済み(2022年3月策定・公表済み) 国土交通省経済産業省報道発表資料[1][9]
物流情報標準ガイドラインの策定・改訂 SIP「スマート物流サービス」→フィジカルインターネットセンター 実現済み(2021年10月初版、2024年10月ver.3.00へ改訂、継続運用中) 国土交通省報道発表資料、LISC公式サイト[14][15]
SIP「スマート物流サービス」研究開発 内閣府、研究推進法人:海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所 実現済み(研究開発は終了、成果は運用継続中) SIP最終成果報告書、フィジカルインターネットセンター公式サイト[16][32]
共同輸配送オープンプラットフォームSST」・「SST便 ヤマトホールディングス(子会社SST)、富士通 実現済み(2025年2月より商用サービス提供中) ヤマトホールディングス公式プレスリリース、富士通公式サイト[20][23]
フィジカルインターネットサービスの事業化検討(伊藤忠商事・KDDI・豊田自動織機・三井不動産・三菱地所) 上記5社 構想段階〜検討段階(2024年5月に覚書締結、2024年度中の事業化を目指すとされたが、その後の進捗は本レポートの調査範囲では不明) 各社公式プレスリリース[27][28]
スーパーマーケット等WGアクションプラン フィジカルインターネット実現会議分科会、製・配・販連携協議会 実証段階(2022年度に4WG新設、以降の進捗は本レポートの調査範囲では不明) 国土交通省資料[13]
セイノーホールディングスの「フィジカルインターネットのGreen物流」構想 セイノーホールディングス 構想段階(中長期経営ロードマップとして発表、詳細な実証内容は不明) 日経ビジネス電子版報道[26]

本レポートの調査範囲で確認できた限りにおいて、日本のPI関連の取り組みは、(1)政府レベルでの制度設計(ロードマップ・データ標準ガイドライン)については策定・公表が完了しており、これは国際的にも「政府レベルのロードマップとして世界初」と評価されている一方、(2)企業レベルの実装は、ヤマトホールディングスのSSTのように商用サービス提供段階に達している事例がある一方、伊藤忠商事等5社連合のように検討・構想段階にとどまる事例も併存している。(3)SIP等の公的研究開発プロジェクトの直接的な成果は、標準化ガイドラインという形で実装されているが、フィジカルインターネットという構想全体が国全体で「実現」した状態に至っているかどうかを判定できる包括的な進捗指標は、本レポートの調査範囲では確認できず「不明」である。

参考文献

[1] 国土交通省「報道発表資料:フィジカルインターネット・ロードマップをとりまとめました!」
[2] 経済産業省 商務・サービスグループ消費・流通政策課長兼物流企画室長 中野剛志フィジカルインターネット実現のロードマップ」2022年3月、RIETI掲載資料
[3] 物流情報標準ガイドライン公式サイト(LISC)「トップ」(総合物流施策大綱2021年6月閣議決定に関する記載箇所)
[4] 国土交通省「報道発表資料:第2回フィジカルインターネット実現会議を開催します」
[5] 経済産業省 中野剛志フィジカルインターネット実現のロードマップ」(ALICE 2020年ロードマップに関する記載箇所、出典:総務省2019年調査、IPIC 2018 Eric Ballotプレゼン資料)
[6] RIETI「フィジカルインターネット・ロードマップについて(動画)」経済産業省担当者解説
[7] 国土交通省「報道発表資料:第2回フィジカルインターネット実現会議を開催します」(議事内容に関する記載箇所)
[8] cargo-news「経産省/国交省フィジカルインターネット計画を策定」
[9] 経済産業省フィジカルインターネット・ロードマップを取りまとめました!」プレスリリース
[10] 日建リース工業株式会社「フィジカルインターネットとは?物流革命の仕組みと2040年へのロードマップを解説」
[11] フィジカルインターネット実現会議フィジカルインターネット・ロードマップ(案)」2022年、経済産業省公開資料
[12] cargo-news「経産省/国交省フィジカルインターネット計画を策定」(幹線輸送・ハブ接続に関する記載箇所)
[13] 経済産業省 商務・サービスグループ物流企画室「フィジカルインターネット・ロードマップについて」令和4年7月28日付資料
[14] 物流情報標準ガイドライン公式サイト(LISC)「トップ」
[15] 経済産業省「『物流情報標準ガイドライン』に関するホームページを開設し、管理体制を決定しました」
[16] 一般社団法人フィジカルインターネットセンターSIPスマート物流サービス」公式サイト
[17] 一般社団法人フィジカルインターネットセンター「1.スマート物流サービスとは」
[18] 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所SIPスマート物流サービス研究推進法人」資料
[19] 富士通株式会社「富士通株式会社のガイドライン準拠事例」LISC掲載
[20] ヤマトホールディングス株式会社「持続可能なサプライチェーンの構築に向け共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社を設立」プレスリリース、2024年5月21日
[21] ヤマトホールディングス株式会社「ヤマトグループ中期経営計画『サステナビリティ・トランスフォーメーション2030~1st Stage~』を策定」
[22] 共同通信PRワイヤー「持続可能なサプライチェーンの構築に向け共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社を設立」ヤマトホールディングスプレスリリース転載
[23] 富士通株式会社「Sustainable Shared Transport株式会社」カスタマーストーリー
[24] LNEWS「ヤマトHD/共同輸配送オープンプラットフォームで新会社、参画募る」
[25] リブ・コンサルティング「フィジカルインターネットとは」(ヤマト運輸・佐川急便の上高地共同配送に関する言及箇所)
[26] 日経ビジネス電子版「フィジカルインターネット実現のロードマップを策定」(DXBM.jp経由、セイノーホールディングス2028年ロードマップに関する記載箇所)
[27] 三菱地所株式会社「伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所、フィジカルインターネットの事業化に関する覚書を締結」2024年5月17日
[28] 伊藤忠商事株式会社「伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所、フィジカルインターネットの事業化に関する覚書を締結」2024年5月17日
[29] 日経クロステック「伊藤忠商事やKDDIなどフィジカルインターネット事業化へ、最適ルートや拠点利用」
[30] LOGI-BIZ ONLINE「伊藤忠とKDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所の5社が荷物とトラックのマッチングサービスなど開発で合意と正式発表」
[31] IT Leaders「『フィジカルインターネット』の事業化を検討─伊藤忠商事、KDDI、豊田自動織機、三井不動産、三菱地所」
[32] 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所戦略的イノベーション創造プログラムSIP)第2期 スマート物流サービス 最終成果報告書」

年表

用語集

政策・会議体

推進組織

標準化

  • 物流情報標準ガイドライン, 略称:LISC(サイト名): SIPが策定した物流データ項目の標準化指針。2021年初版、2026年時点でver.3.00。
  • GS1標準: 商品・事業所コードの国際標準。日本版ロードマップのマスタデータ連携の基本として採用。

企業・プロジェクト

前作「海外動向」の用語集とは重複しない、日本固有の政策・組織・企業取り組みの用語を収録しました。リンクは公式サイトが確認できたもののみ付与しています。

Claudeへのプロンプト

 

 

4点セットを作成します。海外編と重複しない、日本固有の政策・組織・企業取り組みの用語を中心に収録します。年表は箇条書きです。今日は2026年7月6日、これらの事実・数値は確定済みのものです。