EV化で石油需要が減る」という通説とは裏腹に、日本のEV新規登録比率はいまだ3%程度にとどまる。実際の需要縮小を主導しているのは、燃費改善と人口減少という、より緩やかな要因だ。一方、石油化学分野ではエチレン稼働率が77%まで落ち込み、中国の供給過剰を背景により急速な構造改革が進む。ENEOSは2050年までに水素・合成燃料の商用化を、出光興産はアンモニアサプライチェーンの実装を目指す。本稿は【IS】【IP】シリーズとの比較も交え、石油業の構造転換を一次資料で検証する【IO05】衰退・構造転換要因・展望編。

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第一章 国内需要縮小の要因分析

EV普及の実態:通説との乖離

石油製品需要縮小の要因として、一般に「EV(電気自動車)化」が強調されることが多いが、日本国内の実態データを確認すると、この通説とはやや異なる様相が浮かび上がる。日本自動車販売協会連合会の統計によれば、2024年の普通乗用車市場におけるEVの新規登録比率は1.35%(約3万4000台)にとどまる。2021年0.88%、2022年1.42%、2023年1.66%と推移しており、決して急速な普及が進んでいるわけではない[380]。別の集計(EV・PHEVを合わせた比率)でも、2024年11月の新車販売台数(乗用車)全体のEV比率は1.4%、EV・PHEVを合わせても約3%程度にとどまるとされる[378][379]。

産業廃棄物処理業者による市場分析(2025年)によれば、2021年から2023年にかけてEV販売台数・シェアは一貫して拡大したが、2024年は台数ベースで約27%減少し、シェアも3.52%から2.76%へ低下した。乗用車全体の販売台数も減少する中、EVの減少幅がより大きくなったことが確認できる[377]。2025年に入ってからは四半期ベースでシェアが徐々に回復しているものの、なお2-3%台の水準にとどまっている[377]。

[推論]このデータは、【IO02】で確認した資源エネルギー庁の中期見通し(2030年度ガソリン需要が2024年度比13%減)における「EV・PHV普及加速」という前提について、少なくとも執筆時点(2024-2025年)の実績ベースでは、その進行速度が必ずしも見通し通りに進んでいない可能性を示唆している。日本のガソリン需要縮小は、EV化そのものよりも、後述するハイブリッド車(HV)の普及・燃費改善、および人口減少という、より緩やかで構造的な要因によって主導されている可能性が高い。

ハイブリッド車の普及と燃費改善

【IO02】第二章で確認した通り、エネルギー情報サイトの分析は、ガソリン需要減少の主因を「車の燃費改善、ハイブリッド車の普及」と位置づけており、EVの普及はむしろ「今後の話」と位置づけていた[309]。この分析は、上記のEV普及率データ(2-3%台での推移)とも整合的である。すなわち、日本における石油製品需要縮小の実態は、純粋な動力源の転換(ガソリン→電気)というより、ガソリンを燃料としながらも燃費効率を大幅に高めるハイブリッド技術の普及という、より漸進的な技術転換によって主導されてきたと考えられる。

人口減少という基底的要因

【IO03】第三章で確認した通り、資源エネルギー庁の資料は、SS運営の厳しさの要因として「人口減少・燃費改善」に加え、電動車普及等の複合的要因を挙げている[353]。【IO02】第二章で確認した経済産業省の需要見通し(2024-2029年度、軽油▲5.0%等)も、トラック輸送の効率化・燃費改善に加え、鉱工業・農業・漁業における就労人口減少等を要因として挙げている[306]。[推論]これらを総合すると、日本の石油製品需要縮小は、(1)人口減少という人口動態要因、(2)燃費改善・HV普及という技術要因、(3)EV化という、現時点では相対的に寄与度の小さい要因、という複数の層が重なった、複合的な現象であるといえる。この構造は、【IP06】で確認した製紙業の需要縮小(デジタル化・人口減少)とも部分的に類似するが、石油業の場合、単一の「デジタル化」のような明確な代替技術ではなく、複数の緩やかな技術改良が積み重なっている点に特徴がある。

第二章 製油所統廃合の実績と地域的影響

製油所数減少の全体像(再掲)

【IO04】第四章で確認した通り、国内の製油所数は1983年度の49か所から2022年度末には21か所へと半分以下に減少し、業界内では2040年にはさらに半減、その先には5-6か所にまで減るという見通しも語られている[370]。【IO02】第三章で確認した通り、常圧蒸留装置能力も、過去10年間の最大であった約489万バレル/日から2017年の告示時点で約2割削減され、2025年3月末時点では311万400バレル/日まで縮小している。

個別事例:室蘭・和歌山・山口

The社史の資料(【IO03】で既出)によれば、JXグループは2014年に室蘭製油所で原油処理を停止した[137]。業界解説記事(2023年)によれば、ENEOS和歌山製油所は2023年10月に操業を停止し、跡地にはSAF等次世代エネルギーの供給、GX関連企業の誘致、メガソーラー発電所の操業などが計画されている。出光傘下の西部石油山口製油所も2024年3月をめどに停止することが決まっていた[370]。

[推論]これらの事例に共通するのは、単純な設備廃棄にとどまらず、跡地を次世代エネルギー(SAF、メガソーラー等)の拠点として再活用する計画が伴っている点である。これは、【IP06】で確認した製紙業の工場跡地問題(釧路・名寄、長期間の遊休化)とは対照的な傾向であり、石油業の製油所跡地が、同じエネルギー関連インフラとして転用されやすいという業種特性を反映している可能性がある。ただし、これらの転用計画が実際にどの程度具体化しているかについては、本レポートの調査範囲では確認できておらず、不明とする。

第三章 石油化学産業の構造不況

エチレン稼働率の低迷

【IO03】第二章で確認した通り、2025年12月の国内エチレン製造プラント稼働率は77.1%(速報値)で、好不況の目安とされる90%を下回っている。この背景には内需の低下と中国の増産があるとみられている[148]。この稼働率の低迷が、【IO03】で確認した水島コンビナート(2030年度めどエチレン設備停止・大阪への生産集約)、千葉地区(丸善石油化学2026年、出光興産2027年のエチレン停止)といった、一連の設備再編を直接的に後押ししていると考えられる。

中国の供給過剰という外的要因

【IO02】第六章で確認した通り、中国の石油精製能力は世界最大級(2024年時点約1900万バレル/日)に達しており、石油化学製品についても同様の供給拡大が進んでいるとみられる。東洋経済オンラインの報道(2026年)は、エチレン設備再編の背景として「需要減や中国の供給過剰、脱炭素化の波」を挙げており、日本の石油化学産業の構造不況が、国内要因(内需縮小)と国際要因(中国の供給過剰)の両方によって引き起こされていることを示唆している[349]。

「選択と集中」としての再編

【IO03】で確認した水島から大阪への生産集約(三菱ケミカル・旭化成・三井化学の共同事業体による)、千葉地区での丸善石油化学・京葉エチレンへの集約等の動きは、単なる能力削減にとどまらず、複数企業の設備を特定拠点に集約する「選択と集中」の性格を持つ。【IO03】第二章で確認した通り、国内に12か所あったコンビナートは最終的に8か所に集約され、エチレン生産能力は600万トンから400万トン前後に減る見通しとされる[150]。[推論]この動きは、【第一章】で確認した石油製品需要の緩やかな縮小(EV化ではなく燃費改善・人口減少が主因)とは対照的に、石油化学分野ではより急激かつ集中的な構造改革が進行していることを示している。この差異は、石油製品(ガソリン等)が個人消費・地域インフラと直結し漸進的にしか縮小しないのに対し、石油化学製品(エチレン等)がグローバルな市況・中国等海外の供給動向に、より直接的かつ急速に影響される産業構造上の違いを反映していると考えられる。

第四章 GX・脱炭素による今後の転換

SAF(持続可能な航空燃料)への取り組み

【IO03】第一章、【IO04】第四章で確認した通り、石油元売り各社は既存の製油所インフラ・技術を活用したSAF生産に力を入れている。業界解説記事(2023年)によれば、和歌山製油所跡地にはSAF等次世代エネルギーの供給拠点化が計画されている[370]。【IP07】(製紙業展望編)で確認した通り、SAFは政府が2030年に国内ジェット燃料使用量の10%を置き換える目標を掲げる成長分野であり、製紙業(王子ホールディングス等の木質由来バイオエタノール)とともに、石油業自身も既存設備を活用した参入を進めている。

水素サプライチェーンの構築

ENEOS水素事業推進部の資料(2024年11月)によれば、同社はScope1・2の温室効果ガス排出量について2040年度までのネットゼロ実現を目標に掲げ、水素・カーボンニュートラル燃料・再生可能エネルギー等の供給による「エネルギートランジション」を推進している[383]。水素は常温・常圧下で気体の体積が大きく、そのままでは大規模な国際間輸送が困難であるため、利用用途に応じた適切なキャリア(MCH〔有機ハイドライド〕等)に変換した国際サプライチェーンの構築が図られている。同社は2050年までにCO2フリー水素・合成燃料の商用化・本格活用を目指す方針を示している[383]。

経済産業省の資料によれば、政府の水素導入目標に要する「水素サプライチェーン構築」への投資規模は、2030年までに1.0-1.5兆円(水素50万トン/年)、2040年までに数10兆円(水素500-700万トン/年)と想定されている。同資料は、水素サプライチェーン構築の初期段階は事業としての不確実性が大きく、民間だけでの投資判断が困難であるため、初期段階のリスクを軽減する「水素導入事業支援制度」の検討が必要とされている[381]。NEDOの資料(2025年6月)によれば、水素の導入量は現在(約200万トン)から2030年(最大300万トン)、2040年(1200万トン程度)、2050年(2000万トン程度)へと拡大する見通しが示され、コストについても長期的には化石燃料と同等程度の水準(2030年30円/Nm³→2050年20円/Nm³以下)を実現する目標が掲げられている[382]。ENEOSの事業戦略資料によれば、大型水素サプライチェーン構築プロジェクトについて、約9年間の研究開発を経て2031年頃の事業化、2034年頃の投資回収を想定するロードマップが示されている[384]。

アンモニアサプライチェーンの構築(出光興産の事例)

出光興産が経済産業省審議会に提出した資料(2022年10月)によれば、同社は周南コンビナート(山口県)における水素・燃料アンモニア等供給拠点化事業を進めている。同社は千葉事業所・徳山事業所を中心に、コンビナート全体をカーボンニュートラルセンター化する「CNXセンターコンセプト」(CNX: Carbon Neutral Transformation)を掲げ、2022年から2050年までのロードマップにおいて、①原料調達、②製造技術、③輸送/④貯蔵、⑤販売、⑥発電・自社利用という6つの領域で段階的な取り組みを計画している。具体的には、2025-2028年にプロジェクト調査・評価・契約、その後アンモニア輸入の実証・拡大を進め、2026年以降には常温・常圧下でのアンモニア製造技術開発(グリーンイノベーション基金活用)、実証装置建設・実証試験を経て、2030-2040年にかけて実装を目指す計画である[379bis]。

エネルギー安全保障との関係

【IO02】第一章で確認した2026年の中東情勢緊迫化(ホルムズ海峡危機)は、水素・アンモニア等の代替エネルギーへの転換が、単なる脱炭素目的にとどまらず、中東原油への過度な依存を緩和するエネルギー安全保障上の意義も持つことを示唆している。ただし、水素・アンモニアの原料調達自体も、【IO01】で確認したような特定地域への依存構造を再現する可能性があり(例えば、水素キャリアの製造適地が中東・オーストラリア等に偏る可能性)、この点についての詳細な検証は、本レポートの調査範囲では十分に行えておらず、今後の課題としたい。

石油化学分野におけるケミカルリサイクルの展開

【第三章】で確認したエチレン設備の再編・稼働率低迷という守勢的な構造転換に対し、石油化学分野ではケミカルリサイクル(廃プラスチックを化学的に分解し、化学品原料として再生する技術)という、新たな成長領域への展開も進んでいる。

サーキュラーエコノミー専門メディアの報道(2025年)によれば、太陽石油と三井化学は、石油精製業と総合化学メーカーという石油化学コンビナートにおける異なる役割を担う両社の強みを生かし、処理困難な「重質油」をリサイクル原料とする新スキームで連携している。太陽石油は2025年6月以降、四国事業所と本社でサプライチェーン持続可能性を担保する国際認証「ISCC PLUS」を取得し、廃プラスチック分解油の受入設備建設を進めてきた。三井化学は2021年からバイオマス由来のナフサを、2024年3月からは廃プラスチック分解油を大阪工場(大阪府高石市)のナフサクラッカーに投入し、「マスバランス方式」(バイオマス・リサイクル由来原料の投入量に応じて製品にその特性を割り当てる管理手法)により、プラスチック・化学品の製造販売を行っている[386]。

この動きは【IO03】で確認した大阪石油化学(OPC、三井化学が大阪府高石市に持つ拠点)が、水島からのエチレン生産集約先であると同時に、廃プラスチック由来原料の受け入れ拠点としても機能していることを示しており、設備再編と資源循環への対応が同じ拠点で同時並行的に進められている実態がうかがえる。

中国由来のナフサクラッカー供給過剰という構造的圧力

石油化学工業協会が経済産業省の検討ワーキンググループに提出した資料(2025年7月)によれば、石油化学産業はサプライチェーン上流に位置しているため、供給上の支障が生じた場合、国内他産業への波及効果が大きいとされる。同資料は、基礎化学品の製造装置であるナフサクラッカー等について、中国を中心にアジアで日本の生産能力(620万トン/年)を上回る能力が毎年拡大しているため、供給過剰が懸念されると指摘している[387]。同資料はまた、石油化学各社がグリーンケミカル製品の市場創出に向け、複数のカテゴリーに分けた多面的アプローチを展開しようとしているが、現行の排出量取引制度Scope1のみを対象としており、燃料転換促進が主眼となっている点を課題として挙げている[387]。

[推論]この資料が示す「日本の総ナフサクラッカー能力620万トン/年」という数値は、【IO03】で確認した「エチレン生産能力600万トンから400万トン前後への削減見通し」とほぼ整合的であり、日本の石油化学産業全体が、単一の統一的な生産能力として把握・議論されていることがわかる。中国等アジア地域における供給能力拡大が「日本の総生産能力を上回る規模で毎年拡大している」という事実は、【IO02】第六章で確認した中国の精製・輸出攻勢と同様の構造が、石油化学(ナフサクラッカー)の分野でも進行していることを示しており、日本の石油化学産業が、精製部門・化学部門の両面で、中国発の供給過剰圧力に直面していることが確認できる。

第五章 要因間の総括的整理

以上の検証を踏まえ、日本の石油業が直面する構造転換要因を整理すると、以下の通りとなる。

第一に、国内石油製品需要の縮小は、通説的に語られる「EV化」よりも、燃費改善・HV普及・人口減少という、より緩やかで複合的な要因によって主導されている(【第一章】)。第二に、製油所の統廃合は、需要縮小に対応する形で1983年度以降一貫して進行しており、今後もさらなる集約が見込まれる(【第二章】)。第三に、石油化学(エチレン)分野の構造不況は、国内需要縮小に加え、中国の供給過剰という国際要因がより強く作用しており、石油製品分野より急速な設備再編を招いている(【第三章】)。第四に、GX・脱炭素への対応として、SAF・水素・アンモニアという新分野への展開が進められており、既存の製油所・コンビナートインフラの転用という形で、事業ポートフォリオの転換が図られている(【第四章】)。

[推論]このように、日本の石油業の構造転換は、単一の要因(例えば「脱炭素」)に帰着させることのできない、複数の異なる時間軸・要因が重なり合う複合的なプロセスである。国内需要の縮小は緩やかだが趨勢的であり、石油化学分野の再編はより急速かつ国際要因に敏感である。そして将来に向けた新エネルギー(水素・アンモニア・SAF)への投資は、2030年代・2040年代という長期の時間軸で計画されている。この時間軸の違いを踏まえずに「石油業の衰退」を一様に論じることは、実態を見誤る可能性がある。

【IS】シリーズ(鉄鋼業)・【IP】シリーズ(製紙業)との比較においても、石油業の構造転換は独自の特徴を持つ。鉄鋼業の技術移転(【IS06】)、製紙業の樺太喪失(【IP01】)のような、単一の歴史的事件に起因する構造変化とは異なり、石油業の場合、【IO01】で確認した戦前・戦後を通じた原料(原油)の完全輸入依存という構造が一貫しており、国内資源基盤の喪失という物語自体が成立しない。この点で、石油業の構造転換要因は、内需縮小・国際競争・技術転換という、より現代的・グローバルな要因に純化された形で現れているといえる。

年表

  1. 1983年度 – 国内製油所数49か所(【IO04】参照)
  2. 2008年 – 王子HD(製紙業)がSAF向けバイオエタノール実証事業開始(【IP07】参照、業界横断比較のため記載)
  3. 2014年 – JXグループが室蘭製油所で原油処理を停止(【IO03】参照)
  4. 2021年 – EV新規登録比率0.88%[380]
  5. 2022年 – EV新規登録比率1.42%[380]
  6. 2022年3月末 – 出光興産、周南コンビナートでの水素・燃料アンモニア供給拠点化事業を経産省審議会に報告[379bis]
  7. 2022年度末 – 国内製油所数21か所[370]
  8. 2023年 – EV新規登録比率1.66%[380]
  9. 2023年10月 – ENEOS和歌山製油所が操業停止[370]
  10. 2024年 – EV新規登録比率1.35%(約3万4000台)、EV・PHEV合計約3%程度[377][378][380]
  11. 2024年 – EV販売台数が前年比約27%減少、シェアも3.52%→2.76%へ低下[377]
  12. 2024年3月(予定) – 出光傘下・西部石油山口製油所停止予定[370]
  13. 2024年11月 – ENEOS水素事業推進部が2040年度Scope1・2ネットゼロ目標等を発表[383]
  14. 2025年 – EVシェアが四半期ベースで徐々に回復(2023年水準に接近)[377]
  15. 2025年12月 – 国内エチレン製造プラント稼働率77.1%(速報値、90%を下回る)[148]
  16. 2025年3月末 – 常圧蒸留装置能力311万400バレル/日(【IO02】参照)
  17. 2026年(予定) – 丸善石油化学が千葉地区でエチレン生産停止予定(【IO03】参照)
  18. 2026年(見通し) – 水素導入量が現在の約200万トンから最大300万トンへ拡大見通し(2030年時点)[382]
  19. 2027年(予定) – 出光興産が千葉地区でエチレン生産停止予定(【IO03】参照)
  20. 2028年(予定) – 出光興産のアンモニアサプライチェーンでプロジェクト調査・評価・契約段階完了予定[379bis]
  21. 2030年 – 政府目標:国内ジェット燃料使用量の10%をSAFに置き換え(【IP07】参照、業界横断)
  22. 2030年 – 水素サプライチェーン構築投資規模想定1.0-1.5兆円(水素50万トン/年)[381]
  23. 2030年 – 水素コスト目標30円/Nm³(船上引き渡しコスト)[382][384]
  24. 2030年度(予定) – 水島コンビナートのエチレン設備停止、大阪石油化学への生産集約予定(【IO03】参照)
  25. 2031年頃(想定) – ENEOS大型水素サプライチェーンの事業化想定時期[384]
  26. 2034年頃(想定) – ENEOS水素サプライチェーン事業の投資回収想定時期[384]
  27. 2040年(見通し) – 国内製油所数がさらに半減する見通し[370]
  28. 2040年 – 水素サプライチェーン構築投資規模想定数十兆円(水素500-700万トン/年)[381]
  29. 2040年 – 水素導入量1200万トン程度の見通し[382]
  30. 2040年度 – ENEOSのScope1・2温室効果ガス排出量ネットゼロ目標[383]
  31. 2050年 – ENEOSのCO2フリー水素・合成燃料の商用化・本格活用目標[383]
  32. 2050年 – 出光興産のアンモニアサプライチェーン実装目標[379bis]
  33. 2050年 – 水素導入量2000万トン程度、コスト20円/Nm³以下の見通し[382]
  34. 将来見通し – 国内製油所数5-6か所への集約が業界内で語られる(【IO04】参照)

補遺:石油化学リサイクル関連の年表

  1. 2021年 – 三井化学が大阪工場ナフサクラッカーへのバイオマス由来ナフサ投入を開始[386]
  2. 2022年 – 三井化学が「BePLAYER」「RePLAYER」ブランドを立ち上げ[204]
  3. 2024年3月 – 三井化学が大阪工場ナフサクラッカーへの廃プラスチック分解油投入を開始[386]
  4. 2025年3月 – 世界の廃プラスチック発生量が年間3億6000万トンと推計[203]
  5. 2025年6月 – 太陽石油が四国事業所・本社でISCC PLUS認証を取得[386]
  6. 2025年7月 – 石油化学工業協会が経産省WGにナフサクラッカー供給過剰懸念(国内能力620万トン/年)を報告[387]

用語集

  • CNXセンターコンセプト: 出光興産が掲げる、コンビナート全体をカーボンニュートラル化する構想(CNX: Carbon Neutral Transformation)。
  • 水素キャリア: 水素を輸送・貯蔵しやすい形態に変換した物質。MCH(有機ハイドライド)、アンモニア等が用いられる。
  • MCH(有機ハイドライド、メチルシクロヘキサン): 水素を液体の形で輸送・貯蔵するための水素キャリアの一種。
  • Willingness to pay: 水素等の新エネルギーに対し需要家が支払う意欲。水素社会実現における重要な課題とされる。
  • Scope1・2: 温室効果ガス排出量の算定区分。Scope1は事業者自らの直接排出、Scope2はエネルギー使用に伴う間接排出を指す。
  • グリーンイノベーション基金: 経済産業省・NEDOが運営する、脱炭素技術開発を支援する基金。
  • エネルギートランジション: 化石燃料中心のエネルギー構造から、水素・再生可能エネルギー等を含む多様なエネルギー構造への移行。
  • ケミカルリサイクル: 廃プラスチックを化学的に分解し、化学品原料(油・単量体等)として再生する技術。マテリアルリサイクル(物理的な再成形)とは異なる手法。
  • マスバランス方式: バイオマス由来原料やリサイクル由来原料が石油由来原料と混合される場合、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部にその特性の割り当てを行う管理・認証手法。
  • ISCC PLUS: バイオマス・リサイクル由来原料のサプライチェーンにおける持続可能性を認証する国際認証制度
  • ナフサクラッカー: ナフサを熱分解してエチレン・プロピレン等の基礎化学品を製造する設備。エチレンセンターの中核設備。
  • 大阪石油化学(OPC): 三井化学が大阪府高石市に持つ石油化学拠点。水島からのエチレン生産集約先であると同時に、廃プラスチック由来原料の受け入れ拠点としても機能(【IO03】参照)。

参考文献

  • [148] Yahoo!ニュース(OHK岡山放送)「水島コンビナートのエチレン生産設備30年度めどに停止」(既出、【IO03】参照)
  • [149] 東洋経済オンライン「〈石油化学業界〉水島停止・大阪集約でエチレンは国内8基体制へ」(既出、【IO03】参照)
  • [150] research.nicoxz.com「水島エチレン停止で石化再編が本格化」(既出、【IO03】参照)
  • [306] 経済産業省 石油製品需要想定検討会「2025~2029年度石油製品需要見通し 燃料油編」(既出、【IO02】参照)
  • [309] エネルギー情報サイト「日本の原油・燃料油消費量の推移」(既出、【IO02】参照)
  • [349] 東洋経済オンライン「〈石油化学業界〉水島停止・大阪集約でエチレンは国内8基体制へ」(既出[149]と同一)
  • [353] 資源エネルギー庁「SS過疎地対策ハンドブック」2025年5月21日版(既出、【IO03】参照)
  • [370] 朝日学情ナビ「石油にこだわらず、新エネルギー関連企業を目指す石油元売り業界」(既出、【IO04】参照)
  • [377] 株式会社アール・イー・ハヤシ「日本の電気自動車販売シェア最新動向|2025年10月はEVシェア2.7%に回復」 https://www.r-e-hayashi.co.jp/news/2882/
  • [378] SMART ENERGY WEEK「EV市場の動向は?日本と世界の普及率や取り組みを解説」 https://www.wsew.jp/hub/ja-jp/blog/article_101.html
  • [379] EV充電エネチェンジ「【2025年最新】都道府県別の電気自動車EV)普及状況」 https://ev-charge-enechange.jp/articles/006/
  • [379bis] 出光興産株式会社「アンモニアサプライチェーン構築に向けた当社の取組みについて~周南コンビナートにおける水素・燃料アンモニア等供給拠点化事業~」2022年10月7日、経済産業省審議会提出資料 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/005_02_00.pdf
  • [380] NTT-EV「【2025年最新】EVの普及率は?日本と世界の取り組みも解説」 https://www.nttev.com/column/ev_initiatives_japan_world/
  • [381] 経済産業省「水素サプライチェーン構築に向けた取組み」 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/001_06_00.pdf
  • [382] NEDO「制度の説明(公開版)水素・アンモニア部『競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業』(中間評価)」2025年6月26日 https://www.nedo.go.jp/content/800029213.pdf
  • [383] ENEOS株式会社 水素事業推進部「ENEOSの水素社会実現に向けた取り組み」2024年11月9日、日中省エネルギー・環境総合フォーラム https://jcpage.jp/jcevent/file/event/upload/file/383/03_hydro_05_eneos_hiki_jp.pdf
  • [384] ENEOS株式会社「事業戦略ビジョン 実施プロジェクト名:大型水素サプライチェーンの構築プロジェクト」NEDOグリーンイノベーション基金 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/hydorogen-supply-chain/item-001/vision-eneos-supply-002.pdf
  • [386] Circular Economy Hub「処理困難な『重質油』もリサイクル原料に。太陽石油と三井化学が製油所と化学プラントの連携で新スキーム」 https://cehub.jp/news/taiyo-oil-mitsui-chemicals-chemical-recycling-collaboration/
  • [387] 石油化学工業協会「第1回製造業ベンチマーク検討WG 石油化学工業協会説明資料」2025年7月24日 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/emissions_trading/benchmark_wg/pdf/001_05_00.pdf
  • [203] 一般財団法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構関連団体資料「国内外におけるプラスチックケミカルリサイクルプラントの状況と計画」2026年度JPECフォーラム、2026年5月12日 https://www.pecj.or.jp/wp-content/uploads/2026/05/JPECForum_2026_program_026.pdf
  • [204] 三井化学株式会社「三井化学がケミカルリサイクルを事業化。花王と共に創造力で廃棄を減らす『リサイクリエーション』が鍵に」 https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/archive/column/recycle/2024-0419-01

データ制約に関する注記: 本レポートの第一章(EV普及率)は、日本自動車販売協会連合会の統計を出典とする複数の業界解説サイトの集計に基づいており、政府一次統計(自動車検査登録情報協会等)への直接アクセスは本レポートの範囲では行っていない。第四章(水素・アンモニア、ケミカルリサイクル)は、ENEOS・出光興産・三井化学・太陽石油・石油化学工業協会が経済産業省・NEDOの審議会等に提出した公式資料に基づいており、比較的信頼性の高い一次資料といえるが、これらはいずれも「計画」「見通し」の段階であり、実際の事業化・投資回収が計画通りに進むかどうかは、本レポートの範囲では検証できない将来事象である。製油所跡地(和歌山等)のSAF拠点化計画の具体的な進捗、およびケミカルリサイクル由来原料が石油化学製品全体の生産量に占める比率についても、本レポートの調査範囲では確認できておらず、不明とする。以上をもって、本【IO】シリーズ(石油業)の全5巻を終える。【IS】(鉄鋼業)・【IP】(製紙業)との横断的な比較、および次期シリーズで予定される「臨海工業地帯」の分析については、別途の調査を要する。

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3.3万字となり、目標を達成した。中断していた【IO05】石油業衰退・構造転換要因・展望編を完成させた(約3.3万字)。これで【IO01】~【IO05】の石油業シリーズ全5巻が完成した。

【IO05】の内容の要点

  • 第一章(重要な発見): 通説の「EV化による石油需要減少」を検証したところ、日本のEV新規登録比率は2024年時点でわずか1.35%、EV・PHEV合計でも約3%程度にとどまり、2024年はむしろ前年比27%減という後退局面にあったことが判明。実際の需要縮小はEV化よりも燃費改善・HV普及・人口減少という緩やかな要因が主導している旨を具体的データで示した

  • 第二章: 製油所統廃合(1983年度49→2022年度21→将来5-6カ所)を再整理し、和歌山・室蘭・山口の個別事例と跡地転用計画(SAF拠点化等)を検証

  • 第三章: エチレン稼働率77.1%という構造不況の実態と、中国の供給過剰という国際要因を分析

  • 第四章: SAF・水素(ENEOS、2040年度ネットゼロ目標、2050年商用化目標)・アンモニア(出光興産のCNXセンターコンセプト、周南コンビナート)という脱炭素シナリオを政府審議会提出資料ベースで詳述。追加調査で補強したケミカルリサイクル(太陽石油×三井化学の重質油リサイクル連携、マスバランス方式、ISCC PLUS認証)と、国内ナフサクラッカー総能力620万トン/年が中国等の供給拡大により圧迫される構造を新たに追加

  • 第五章: 【IS】【IP】シリーズとの比較を通じ、石油業の構造転換が「単一の歴史的事件」ではなく「内需縮小・国際競争・技術転換」という複合的でグローバルな要因に純化されている点を総括

これで石油業シリーズ全5巻(【IO01】~【IO05】)が完成した。次の「日本の臨海工業地帯」シリーズに進む際は、あらためて構成案から検討したい。