300名以上のご視聴をいただき、大変盛況に終了いたしました。京急様の多様で大量な取り組みが素晴らしく、神奈川県様の取り組みも熱意がありました。京急様と神奈川県様が「同じ方向、向いていますね」と確認し合えたのが印象的でした。エリアマネジメントの定量評価(ロジックモデル)、投資回収など、ちょっと難しいお話もお聞きかせいただきました。

山田からはMaaSの起こり(と目的)、日本のMaaSの特異性、京急さんの取り組みの特徴などを簡単にご紹介させていただきました。

ご登壇いただいた佐々木様、辻村様、ありがとうございました。

概要(AI による要約)

【ラジオ】自前主義を捨てた京急の生存戦略京浜急行電鉄株式会社(以下、京急電鉄)と神奈川県が連携して取り組む、三浦半島を中心とした沿線活性化戦略「ニューカル(newcal)プロジェクト」および「MaaSMobility as a Service)」の展開状況をまとめました。

三浦半島は人口減少、産業衰退、観光の「日帰り化」といった深刻な課題に直面している。これに対し、京急電鉄は従来の「都心集中型・大量輸送」モデルから、沿線の各拠点に生活機能とコミュニティを分散させる「多局型街づくり」へと舵を切った。その中核となるのが、地域事業者や住民と緩やかに繋がる「ニューカルファミリー」というネットワークと、移動とサービスを統合するデジタルプラットフォームです。

戦略の特徴:「あえて非効率」と「MaaSレベル4」

山田からは、京急の戦略は以下の点で特異なことを紹介しました。

  • ボトムアップと零細優先: 通常は自社グループや大手から提携を広げるが、京急は地域に根差した多様な零細事業者から連携を始めている。
  • MaaSレベル4からの着手: 情報統合(レベル1)や予約決済(レベル2)から段階を踏むのではなく、最初から「地域全体の統合(レベル4)」という最も難易度の高い段階を目指しています。

特筆すべきは、効率を優先した自社グループ内での囲い込みではなく、あえて地域の中小・零細事業者との連携を優先する「非効率」とも言える戦略を採っている点です。これにより、地域全体の価値を底上げし、最終的に本業である鉄道・不動産事業の持続可能性を確保することを目指していることでした。

背景:三浦半島が直面する危機と戦略の転換

三浦半島地域(鎌倉市、逗子市、葉山町、横須賀市、三浦市)は、都心へのアクセスの良さと豊かな自然を併せ持つ一方、以下の深刻な課題を抱えています。

  • 人口減少と高齢化: 神奈川県全体よりも早い段階から人口減少が始まっており、若者の転出超過が顕著である。
  • 観光の課題: 観光客数は回復傾向にあるものの、約9割が日帰り客であり、宿泊客の少なさが観光消費額の低迷に直面している。
  • 交通のボトルネック: 半島特有の地形で道路が限られており、観光シーズンの激しい交通渋滞が移動の利便性を損なっている。

これに対し、京急電鉄は設立130周年を前に「沿線価値創造戦略」を策定し、自社完結型の開発から、地域と共創するエリアマネジメントへと戦略をシフトしました。

ニューカル(newcal)プロジェクトの全容

「ニューカル」という名称には、New(新しい)、Local(地域)の意味が込められており、京急電鉄は沿線を7つのエリアに分け、各地域の課題に応じた活動を展開しています。

プロジェクトは、以下の4つの柱で構成されてます。

  1.  組織化(コミュニティ・仲間づくり)
    newcalファミリー: 沿線自治体、観光協会、大学、スタートアップなど375団体(2024年時点)が緩やかに連携。義務や負担を最小限にしつつ、相談可能なネットワークを構築。
    Weavee(ウィービー): 子育て世代をターゲットとした応援ネットワーク。50団体と連携し、地域ライターの育成やマルシェの開催を通じてコミュニティを形成。
  2.  地域拠点整備
    地域交流拠点の創設: タイニーハウスを活用した広場(金沢区・富岡など)や、シェアキッチンを運営。
    地域事業とのマッチング: 遊休不動産を活用し、地元の志ある事業者(クラフトビール醸造所、古民家ホテル等)の出店を支援。
  3.  MaaS整備
    デジタルプラットフォーム: 予約・決済基盤を提供。三崎マグロ駅などの「おトクなきっぷ」をデジタル化し、利用者の7割がデジタルへ移行。
    データ活用: 顧客IDを活用し、リピート購入や付帯サービスの利用を促進するLTV型モデルを実現。
  4.  モビリティ整備
    マルチモビリティ: シェアサイクル、電動キックボード、EVカーシェア、水上交通などを一元化。
    ラストワンマイルの解消: 鉄道・バスではカバーしきれない移動需要を補完し、回遊性を向上。

神奈川県:官民連携による「地域まるごとホテル」の推進

三浦半島においては、神奈川県との強力な連携による「三浦半島魅力最大化プロジェクト」が進行している。

  1. 「地域まるごとホテル」構想
    イタリアの「アルベルゴ・ディフューゾ」をモデルに、町全体を一つのホテルと見なす取り組み。
    仕組み: 点在する空き家を宿泊施設として再生し、食事やアクティビティは既存の地域店舗を利用。
    県と京急の連携: 神奈川県による改修費補助と、京急の「三浦半島まるごと切符」を組み合わせ、宿泊客へのキャッシュバックキャンペーン等を実施。
  2. 観光課題へのアプローチ
    宿泊・滞在の促進: 西海岸は高級リゾート(ふふ城ヶ島等)、東海岸はZ世代向けの地域体験(エリアマネジメント型)と、特性に応じたブランディングを行う。
    海業(うみぎょう)の振興: 三崎港や漁港を活用し、体験型コンテンツや地産品の開発を推進。

エリアマネジメントの評価と将来像

エリアマネジメント活動は、短期的な収益が見えにくいという課題がある。京急電鉄は、国土交通省のガイドラインに基づいた「ロジックモデル」を導入し、活動の定量・定性評価を試みている。

価値創造のロジック

  1. インプット: 人材配置、地域拠点への投資、デジタル基盤の整備。
  2. アウトプット: 連携団体数の増加、デジタルチケット利用数、イベント開催数。
  3. アウトカム: 沿線認知度の向上、流入人口の維持、不動産価値の維持。
  4. インパクト: 本業(鉄道・バス・不動産)の利益向上、地域課題の解決。

将来構想:EaaS(Ensen as a Service)

京急電鉄が目指すのは、沿線全体を一つのサービスとして提供する「沿線 as a Service EaaS」である。

  • 分散型生活圏: 品川や羽田、横浜といった都市機能と、三浦半島のレジャー・居住機能をデジタルで統合する。
  • サブスクリプションの導入: 鉄道移動、ワークスペース、宿泊、食事がパッケージ化された定額制サービスの検討。
  • 地域商社化: Webメディア「なぎさの暮らし」を通じた情報発信や、地域ライターの育成、特産品の開発・販売(なぎさ商店)への展開。

結論

京急電鉄と神奈川県による取り組みは、単なる移動手段の提供や観光振興の枠を超え、人口減少社会における「持続可能な地域経営」のモデルケースとなっている。

成功の鍵は、強固なインフラを持つ鉄道会社と行政が「黒子」に徹し、地域住民や小規模事業者が主役となる住民をデジタルとリアルの両面で整備している点にある。今後は、これらの活動をいかに「本業の利益」へ結びつけるかの証明と、さらなる自分事化(住民・事業者の参画意欲の向上)が重要な課題となる。

「地域と向き合う覚悟を持ち、効率とは真逆の『個』と向き合うことが、結果として沿線の持続可能性につながる」(京急電鉄・佐々木氏)

参考

国土交通省都市局 沿線まちづくり全国会議(令和7年分)
https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_gairo_tk_000036.html
京浜急行佐々木様、横浜市立大学鈴木先生、横浜市様の鉄道沿線まちづくりの全国会議のアーカイブ。

375団体が共創。京急「newcal」に学ぶ、持続可能な沿線価値の作り方

「地形が厳しすぎる」沿線に“住んでもらう”には? 京急が進める「かなり泥臭い戦略」の凄み キッカケはマグロ

通行量の呪縛を解け!エリアマネジメントが導く、滞在の質と幸福度を軸とした都市運営

稼ぐ公共空間:電鉄各社のエリアマネジメントとエリア・エコノミクス

日本の民鉄MaaSは「交通統合」から「まちづくり」へ

ロジックモデル:成果への道筋を描く社会変革の設計図

民鉄の知見を社会へ。インフラ投資を「コスト」から「投資」に変える日本型ハックの妄想

開催案内

この度、「地域交通MaaS」というイベントで4月10日(金)のウェビナーに登壇しますのでご案内いたします。

私が最も注目している京急さんのエリアマネジメント newcal の凄さ、ぜひご覧いただければと思っています。

京急と神奈川県、そして375もの「沿線の仲間」が繋がる突出したエリアマネジメント
立ち向かうのは三浦半島を襲う人口減少、産業衰退、起伏が激しい谷戸(やと)地形など数々の課題。
個性が強く文化も多様な「仲間」を繋ぐのは「緩さ」と向き合う「覚悟」。なぜ京急は効率とは真逆の地を這うような対話、
自社に限らず沿線を一つに繋ぐEaaS ( ENSEN as a Service ) を進めるのか。その戦略を解き明かします。

京急と神奈川県が「緩さ」と「覚悟」で三浦半島の課題に挑む

沿線 375の仲間を繋ぐエリアマネジメントと ENSEN as a Service

日時:2026年4月10日(金) 13:00~14:40
主催:まちづくりデザインWEEK
JTBコミュニケーションデザイン/健康まちづくり実行委員会
まちづくり案内人(ナビゲーター):山田 和昭 氏 日本鉄道マーケティング 代表
形式:ZOOMによるオンラインLIVE配信
聴講料:無料

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13:05-13:20 全て真逆、敢えて非効率を選ぶ京急の戦略

山田 和昭 氏
日本鉄道マーケティング 代表

従来の電鉄は効率を重視し、都心の拠点開発、B2B大手との連携、関係者を絞り速度感を持たせ、
自社グループ事業の収益化を進めてきた。ところが京急は、半島の先から零細な事業者との関係構築から始まり、
自社よりも社外の紹介が多い沿線 MaaS を運営し、面の掘り起こしを進め375 もの仲間と関係を構築している。
なぜそこまで手を掛けるのか?そこには私たちが見えていなかった戦略と精緻なロジックモデルがあった。

13:20-14:00 地域とつくるエリアマネジメントとMaaS 京急沿線エリアマネジメント構想 newcalプロジェクト

佐々木 忠弘 氏
京浜急行電鉄 新しい価値共創室 エリアマネジメント推進担当 担当部長

鉄道事業を取り巻く環境が激変する中、京急ではエリアマネジメントを単なる地域貢献ではなく、
持続的な成長に不可欠な最重要の経営課題と位置付けています。
本講演では、京急グループ総合経営計画の柱である「沿線価値共創戦略」に基づくエリアマネジメント構想
newcalプロジェクト」を紹介し、なぜ従来型の効率重視の開発ではなく、時間のかかる地域事業者との
まちづくりを進めるのか、その戦略的背景を解説します。
こうした長期的な共創活動においては、「経営への利益貢献をどう可視化するか」といった特有の課題にも直面しています。
これらの課題にどう向き合いながら、地域事業者とともに沿線をひとつのサービスとして捉える「EaaS
(ENSEN as a Service)」を実現し、地域価値の向上と自社の事業収益を両立させていくのか、
その現在地と今後の展望をお話しします。

14:00-14:40 パネルディスカッション

モデレーター:山田 和昭 氏(日本鉄道マーケティング)
パネリスト:佐々木 忠弘 氏(京浜急行電鉄)
吉田 政義 氏(神奈川県)
(冒頭プレゼン)三浦半島の課題と神奈川県が進める活性化施策

吉田 政義 氏
神奈川県 政策局自治振興部 地域活性化担当課長

三浦半島は、神奈川県内でも早くから人口減少が始まった地域です。
神奈川県では三浦半島が持っている魅力を活かして、三浦半島にヒトを呼び込むため
「三浦半島魅力最大化プロジェクト」を進めています。このプロジェクトの施策の一つとして展開している、
まち全体で観光客をもてなす「地域まるごとホテル@三浦半島」の取組を紹介します。

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本イベントに関する問い合わせ

件名:まちづくりデザインWEEK~健康まちづくり・地域交通MaaSGXDX CITY
日程: 2026年7月16日(木)
会場: 秋葉原UDX
Email: wce@jtbcom.co.jp (展示会事務局宛)
公式HP: https://www.citydesignweek.jp/index.html