道路信託基金(Highway Trust Fund HTF)は、ガソリン税やタイヤ税を主財源とする、使途を限定した専用財源(目的税)です。ここには、経済学的に見ても驚くほど強力で、かつ危険な自己増殖メカニズムが組み込まれていました。そのサイクルは以下の通りです。
- 道路を作る: 連邦政府が建設費の90%を負担し、全米にハイウェイを敷く。
- 車が増える: 道路ができると、人々は郊外に住み、車で移動するようになる。
- ガソリン消費が増える: 走行距離が伸び、ガソリン税収が爆発的に増える。
- さらに道路を作る: 増えた税収は法律で道路建設にしか使えないため、さらに新しい道を作る。
この循環により、アメリカの交通予算は自動的に道路へと吸い込まれていきました。鉄道やバスといった公共交通には一切の資金が回らない仕組みが、法的・構造的に固定されたのです。この強固な体制を支えたのが、ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)、石油産業、建設業界、そして道路建設を利権とする政治家たちによる同盟、通称ロード・ギャング(Road Gang)でした。彼らのロビー活動により、HTFの聖域は長らく守られ続けました。
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