近江鉄道線の再構築は特殊な事例だが、再構築が実現した背景には、関係各位の献身的な努力と工夫があり、その学びは他の路線にも参考となると思える。鉄道路線の特質には地域風土が大きく影響し、問題が起きたときにはそれを紐解くために地域と歴史を読み込む必要がある。特殊な背景を説明するには設立前の歴史にも触れる必要があるが、近江鉄道株式会社は131年の歴史がありながら公式な社史がなく、資料が限られ再構築に至るまでの経緯はかなり広範な記述となってしまう。ただ。このようにまとまって紹介できる機会は他に無いため、敢えて幅広く紹介することとした。一律的なスキームや手法だけでは解決できないことをご理解いただけると幸いである。

以下は、項目のタイトルです。

1.近江鉄道株式会社の概要

(1)近江鉄道の特質

(2)近江鉄道をとりまく歴史的背景

2.近江鉄道の近年のあゆみ

(1)次々と繰り出す生き残り策

(2)協議会設置を要請

3.法定協議会の開始と全線存続への合意

(1)地域公共交通ネットワークあり方検討調査

(2)沿線住民・利用者等アンケート調査

(3)クロスセクター効果分析調査

(4)近江鉄道存続への合意

4.将来の近江鉄道線のあり方について

(1)存続形態について

(2)運営改善期間の取り組み

(3)自治体の費用負

(4)活性化分科会、近江鉄道による取り組み

(5)沿線市民や周辺の活動

むすび(他の路線でも適用できると思われる事項を紹介、また地域と鉄道の歴史年表)

(1)内部移転により支えられている鉄道路線は、衰退や持続困難となるリスクがある

(2)鉄道の外部性の定量的説明は1事業者/地域の手に負えない。算定理論/手法の確立が必要

(3)鉄道に関わる自治体担当部局は人材も限られるため、議論を始める前に丁寧に時間をかけた認識合わせが必要

(4)鉄道には河川や道路のような自治体を跨る社会インフラとしての役割分担・スキームが存在せず、費用負担などを都度話し合いで構築するため調整に困難を伴う

(5)定期客(学校、企業)が大半の路線では利用障壁の特定と解決が重要

(6)民鉄が経営改善を自社努力だけで進めると、地域の衰退と不信を招くリスクがある

(7)収益事業から公益事業に転換する際には、事業者社員、自治体、住民の認識変革も求められる

(8)住民の関心・支持・参画が重要だが、自動車中心の地域だと関心を持っていただくだけでも相当な工夫が必要になる

近江の歴史と近江鉄道年表

入手方法

「地域交通を考える」は、 一般社団法人交通環境整備ネットワークの会誌で、一般領布もあります。

詳しくはECOTRANのページをご参照ください。