公募社長就任1年目に投稿した心意気を加筆しました。私の思いは今も変わりません。
目的
私は「大好きな鉄道が活かされずに消えていくのが切なく、何とかしたい」という思いを実現するために手を挙げてやってきて、皆様と一緒に活動させていただいています。鉄道は人間よりも長生きしますので、やり方・考え方が引き継がれなければ鉄道は残りません。ですから、私より適任の方がいらっしゃれば後を譲りますし、役割が終われば去りますし、私でないと鉄道が存続できないままだったら失敗だと思っています。私自身が評価されるかどうかよりも、鉄道が生き残り、時代に合わせ社会の役に立つ方に進む事が何よりも嬉しいのです。
地域と鉄道を発展させるやり方・考え方
私はいつか死にます。でも、やり方・考え方は残ります。鉄道が残るためには、地域と鉄道が発展し続けるやり方・考え方が出来上がり、定着し、時代の変化に合わせて進化し続ける必要があります。郊外に住宅地を開発し都心に商業施設を作り鉄道を軸に地域を発展させ鉄道も稼ぐ。これは阪急の創設者小林一三翁が完成させた大手私鉄のやり方・考え方で、今も日本の私鉄を支えています。ローカル鉄道にもこの様な地域と鉄道を発展させるやり方・考え方が必要なのです。
鉄道は地域から離れられないので、地域に何があるのか、地域との関わりによって処方箋は変わります。特に地域鉄道の場合は大抵が問題を抱えています。その地域では今までの方法でうまくいかずに問題が起きているのですから、何かを変えないとなりません。それも鉄道の都合だけでなく、地域も良くなる方策が必要です。他の鉄道で成功している方法も沿線や近隣の人口など条件が変わります。成功を収めたやり方・考え方を深く知り本質を掴めば応用が効きますが、それでも同じ条件での前例はなく当地では手探りとならざるを得ません。魔法のような一発解決の手段はまずありませんので、いくつもの手段を組み合わせて体質改善を図るような処置になっていきます。若桜鉄道での考え方は「鉄道は地域の一部、運命共同体」と「17人の零細企業でも、鉄道だからできる事がある」に記しました。
地域活性化って鉄道の仕事?
ローカル線のお客様は高校生が大多数です。高校生の減少は鉄道だけではどうにもできず、地域経済の衰退も鉄道だけでは解決しません。しかし、地域と鉄道がタッグを組み協力し合うと、できることが広がります。高校の生徒を増やすためにもダイヤを工夫する、鉄道を教育活動のフィールドにする。鉄道を活用しベッドタウン化を促進して人口減少を和らげる、鉄道が軸となって地域の観光化や情報発信を推進する。。。。せっかくある鉄道を地域がいろいろな視点で使い倒すことがお互いの幸せなのです。
「手を広げすぎ」と自分でも思ったりします。鉄道が消えそうになるのは地域が元気を失っているからです。それならば、地域も元気にしていくよう頑張るしかありません。そうしなければ鉄道が残らないからです。鉄道が利用促進だけをいくら頑張っても高校生を増やす事はできません。人の流出を止めるには、地域の経済を回して雇用を作る必要があるので、鉄道も地域の経済を回すように頑張るのです。
一人や一社でできなければ、皆と協力してやる
「地域活性化って鉄道の仕事?」と社内外からも疑問に思われます。確かに出過ぎていると私も思います。でも誰かがやらなければならない時、やれる人がやるしかないのです。一人や一社でできなければ、皆と協力してやるしかないのです。人材が東京に吸い取られ、地方は人材不足です。一人が何役もこなさなければなりません。会社も輸送だけにしがみついたら、先細るだけです。新しい領域を開拓しなければなりません。元々地域の発展を願って敷かれた鉄道です。輸送以外でも地域の発展に貢献しつつ稼ぐのは間違いでは無く、それこそが地域のインフラとして鉄道が残された理由だと考えています。
若桜鉄道に来て、八頭町・若桜町の町長と役場の皆様、鳥取県、鳥取市、観光協会、商工会、商工会議所、沿線活性化協議会と各駅の守る会、もりあげ隊、金融機関、郵便局、大丸デパート、JR西日本、智頭急行、日本交通、日ノ丸自動車、、、、書ききれないくらいたくさんの皆様にご協力いただき、さまざまなことを行えました。この谷の皆様は本当に素晴らしい気質を持っていて、損得感情抜きに気持ちよく協力し合えました。大きく打つなら広く繋がり、隙間を狙うなら狭く組む、難しいことはプロや学者先生の知恵と能力を借りる、一緒に行動する中でやり方・考え方も開発したり共有できたりしたと思います。私も多々、学ばせていただきました。
大変?いえ、楽しんでいます!
「大変ですね」とよく声をかけていただきます。たしかに忙しいし手助けも欲しいです。でも、好きでやっている事ですから、楽しませていただいています。好きな事をやって給料を頂いて地域のお役に立って皆から喜ばれるなんて、最高ですよね?不謹慎でしょうか?自分が楽しみ社会に貢献できるなら、自分も周囲も幸せになる訳で、楽しみ幸せになるのは悪くないと思うのです。楽しいからこそあれこれ頑張れますし、人間は楽しい時が一番能力を発揮しますし長続きします。ですから、一緒に動いていただく皆様にも「楽しくやってくださいね」とお声がけしますし、無理して苦しくならないように気を配っています。私が疲れを感じるのは仕事が多い時よりも、仕事が進まない時です。
目標と期限
「任期を気にしすぎだ」「再任されるから」と助言もいただきます。若桜鉄道の株主は自治体なので、町長さんや沿線の方々にとって、再任するなら「山田に任せればこの先、若桜鉄道は良くなる」という確信が必要です。そのためには「こいつのやり方・考え方なら大丈夫だ」と納得する結果が必要になります。任期はそのための区切りです。ですから、まずは任期中に結果を出す事が必要なのです。納期を意識しなければ結果はいつまで経っても出ないのです。その際、私自身の評価ではなく、私のやり方・考え方を評価する。ここが大事です。2年おきに成果が出ているか出せそうかをチェックして進化させる。そのためにも任期を意識する必要があります。目標を設定したら納期を決めないと達成できないのです。「◯月×日までにやる」と「いつかやりたい」には大きな開きがあります。やると決める、納期を決める、自ら考え行動する。結果を出すためにはこの3つが絶対に必要です。そのためにも任期を意識するのです。
若桜鉄道には時間が残されていません。人口減少が進むと鉄道の収支も悪化しますし、鉄道を支えていただいている町の財政も厳しくなり、打てる手が限られてきますし、一緒に動いていただける住民も事業者も減っていきます。「これが最後」と言われる5年間の地方創生も2015年から始まりました。改善策は待ったなしなのです。ただ、急ぎすぎるとスタッフや周囲の気持ちが追いつかなくなることがあります。若桜鉄道では、開業以来86年間にわたり「鉄道は運輸業」という位置付けのみで見られてきました。鉄道を地域活性化装置にしようという考え方は、大胆な転換のため、次々に打つ施策が歓迎されることもありますし、「大きなお世話」と敬遠されることもあります。鉄道の位置付けが変わっても、仕事の内容は大きく変わらず、今まで通りかそれ以上の収入を得られるようにしていくことを常日頃からお伝えしジワジワと浸透させていく必要があります。
マスコミ
「テレビや新聞に出てすごいですね」と言われます。私がすごいのではなくて、日本では鉄道への信頼が高く、公共性もあるので工夫すればニュースになりやすいだけなのです。私は鉄道と地域のチンドン屋になりきって、広く名前を知っていただけるようにマスコミに働きかけています。若桜鉄道の名前くらいは知ってもらわない事には、行きたいとは思ってもらえません。名前を知らないところから営業に来られても不審に思われますよね?名前が知られると営業も楽になります。ですから、私自身が有名になるよりも、若桜や八頭や鳥取と若桜鉄道が知られるように頑張っています。私は宣伝の仕事をしていたので、多少お役に立ったようです。
マスコミに取り上げていただくのは、マスコミがニュースとして取り上げたくなる材料を揃えれば良いのです。「すしはどこさ の法則」で検索してみてください。鉄道は信頼性と公共性は持っているので、あとの項目をどう埋めるかを考えるだけです。
稼ぐ
「稼がなきゃ」「金ないもん」とよく口にしますが、私腹を肥やしたい訳ではありません。私服を肥やしたいなら東京で稼げば良いのです。毎日人件費や光熱費で会社からお金が出て行きます。若桜線は30年前に採算が取れず利用者も少ないので「バス転換が妥当」と国に判断され、JRに入れず切り落とされた路線です。その当時からさらにお客様は半減しました。切符代だけでは黒字にはなりません。切符以外にも多くのお金が入らなければ会社は続かないのです。支えていただいている町の負担もこれ以上増やせません。また、地域の経済を回すなら鉄道自身も稼げるようになる必要もあります。稼ぐ事は生きるため、発展するためですからとても大事です。
問題は「悪い人」でなく「まずいやり方・考え方」
「あいつが悪い」という話を聞くと、困ってしまいます。悪いのは人ではなく、やり方・考え方です。当の本人はそれで良いと思っている訳ですから、一言二言で簡単に変わる事はありません。また、得手不得手もありますから、分野によって信頼できるかどうかは変わります。「そっちにいくと成功しないよ」と気づいてもらうように間接的にお話したり、別のやり方をやって見せたりしますが悩む事が多いです。特に男社会は意地やプライドが事実や道理を曲げてしまいますので、相手を傷つけないように気づいてもらうのが難しい。何度か触れましたが「あいつは分かっていない」と言ったらマーケターは負けです。わかるように伝えるのが仕事ですから。でも、人の話を聞く気が無い人・学ぶ気が無い人には私も匙を投げざるを得ません。残念ですが時間は限られているので、私からではダメだと思ったら他を当たります。
若桜鉄道の社員
若桜鉄道の社員は、純粋でひたむきです。また、国鉄出身者は営業やマーケティングの経験がほとんどありません。民間企業であれば当たり前の「売る」「お願いする」といった曖昧なやり取りが苦手です。無愛想で不器用な人もいますが、鉄道を守ろうと歯を食いしばって頑張っています。鉄道は環境が厳しい屋外作業が多く、安全を厳しく守り命を預け合う職場です。軍隊式の厳格な指揮命令系を守らないと事故が起きかねません。無骨でストイックになりがちです。安全確認をしている間などは、目つきも鋭くなり絶対に間違えずに確実に任務を全うしようとしています。話しかけてもすぐにはお応えできない場合もままありますので、「挨拶がない」などとどうか誤解せずに、暖かい目で余裕をもって接していただければとお願いいたします。こういった人たちのおかげで今日も安全に列車は走り続けています。
行動してくれてありがとう
行動しない人を責めていると思われるかもしれません。結果を出すためには行動が必要です。動くのは大変ですが、世界は変わりますし、感情もイキイキします。でも、動く動かないはその人の事情や考え方次第です。ですから行動しない人を責めたりはしません。「行動した方が楽しくなるんだよ」「行動してくれてありがとう」という位は言いふらしても良いですよね?「同じ阿呆なら踊らにゃ損損」ですから。ただ、役割を与えられながら果たしていない場合はちょっと困りますので、ガンガン言います。それ位は許してくれますよね?
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