資金はあるが理念が見えない。そんなNPOの苦悩を説明するのが資源依存理論です。行政の委託金への過度な依存は、いつの間にか活動内容が行政の意向に左右されるミッション・ドリフト(目的の漂流)を招きます,。活動継続のための資金確保と、組織の魂である自律性をどう両立させるか。依存先を分散し、独自の価値で相互依存へと転換するためのマネジメントの極意を学びます,。組織の持続可能性を高める第一歩がここから始まります。

【ラジオ】組織を支配する資源依存のパワーゲーム

【スライド】資源依存理論(RDT)

目次

資源依存理論(Resource Dependency Theory)とは

資源依存理論(Resource Dependency Theory: RDT)は、1978年にジェフリー・フェファー(Jeffrey Pfeffer)とジェラルド・サランシック(Gerald Salancik)によって提唱された組織論の主要な理論です。

この理論の核心は、いかなる組織も、生存に必要なすべての資源を自前で調達することはできず、外部環境(他組織)に依存せざるを得ない。その依存関係が組織の行動や権力構造を決定するという点にあります。

理論の基本前提

資源依存理論は、組織を外部環境に対して受動的な存在と見るのではなく、生存のために戦略的に環境へ働きかける能動的な存在として捉えます。

  • 資源の不可欠性: 組織は資金、人材、原材料、情報、正当性(社会的信頼)などの資源を外部から獲得しなければ維持できません。
  • 自律性の追求: 外部への依存は、相手からのコントロールを許すことを意味します。そのため、組織は資源の確保と自律性の維持(依存の回避)の間で常にバランスを取ろうとします。

依存度を決定する3つの要素

ある組織が特定の外部組織にどれほど依存しているかは、以下の3つの要素で決まります。

  • 資源の重要性: その資源が組織の生存や目標達成にどれほど不可欠か。
  • 資源配分の裁量権: 相手側が、その資源を誰に、いつ、どれだけ配分するかを決定する独占的な権利を持っているか。
  • 代替案の有無: 他にその資源を提供してくれる組織があるか。選択肢がなければ依存度は極大化します。

依存を管理するための戦略的行動

組織は依存による不確実性を減らすために、以下のような行動をとります。市民活動や連携の文脈では、これらがなぜ連携するのかの動機になります。

  • バッファリング(緩衝): 資源の在庫を抱える、予備の人材を確保するなど、外部の影響を直接受けないための防壁を作る。
  • 平滑化(スムージング): 需要や供給の波を抑え、安定的な資源流入を計画する。
  • リンケージ(連結): 依存相手と密接な関係を築くことで、不確実性を管理する。
  • 合弁事業・提携: 共通の目的でリソースを出し合う。
  • 役員派遣(インターロッキング): 相手組織の意思決定層に人を送り込み、情報を得る。
  • 買収・合併(M&A): 依存相手そのものを自組織に取り込む(垂直統合)。
  • 環境の変更: ロビー活動などを通じて法律や制度を変え、資源獲得のルールそのものを自分たちに有利にする。

市民活動における資源依存理論の適用

市民活動(NPO/NGO)を例に取ると、この理論は以下のような現象を鮮やかに説明します。

  • 行政への過度な依存: 活動資金の大部分を行政からの委託費に頼るNPOは、本来のミッション(独自の理念)よりも行政の意向を優先せざるを得なくなります。これをミッション・ドリフト(目的の漂流)と呼びます。
  • 連携によるパワーの均衡: 小規模な団体が単独では行政や企業に対抗できなくても、ネットワーク(連盟)を組むことで情報の集約や正当性の確保を行い、依存の非対称性を是正しようとします。

資源依存理論の現代的課題

現代では、単一の資源への依存を避けるための多角化がより複雑化しています。

  • 正当性(Legitimacy)という資源: 現代の組織にとって、資金以上に重要なのが社会からの信頼です。不祥事を起こした企業と提携を解消するのは、正当性という資源を失うリスクを回避するための資源依存的行動といえます。
  • デジタル・プラットフォームへの依存: 自社の活動をSNSやクラウドサービスに依存している場合、プラットフォーム側の規約変更(裁量権の発動)によって活動が根底から揺らぐ新しい依存が生まれています。

分析

資源依存理論を理解することは、連携は単なる善意ではなく、生存のための政治的な選択であると認識することを意味します。自組織がどの資源を誰に握られているかをマッピングし、あえて依存を分散させる設計を行うことが、持続可能な組織運営の第一歩となります。

定義

資源依存理論(Resource Dependency Theory: RDT)の学術的定義は、1978年にジェフリー・フェファーとジェラルド・サランシックによって提唱された組織はその生存に必要な資源を外部環境に依存しており、その依存関係を管理・制御しようとするプロセスが組織の行動を決定するという理論的枠組みを指します。

組織論におけるオープン・システム(開放体系)の視点を極限まで突き詰め、組織を環境に対する政治的・戦略的主体として定義した点に最大の特徴があります。

学術的な定義を構成する3つの核心要素を詳しく解説します。

組織の生存と外部資源の不可欠性

組織は真空中に存在するのではなく、資金、原材料、人材、情報、そして社会的承認(正当性)などの資源を外部から獲得し続けなければ、エントロピーが増大し、消滅します。

  • 定義的性質: 組織は不完全な実体であり、自己完結できません。
  • 依存の発生: 自前で調達できない資源を外部に求める際、その資源をコントロールしている他組織との間に権力の不均衡が生じます。

依存の3要素による定量的定義

ある組織 $A$ が組織 $B$ にどれほど依存しているかは、学術的に以下の3つの変数で決定されると定義されます。

  • 資源の重要性 (Importance): その資源が組織の核心的な機能や生存にどれほど不可欠か。
  • 資源配分の裁量権 (Discretion): 供給側(組織 $B$)が、その資源の配分をどの程度独占的に決定できるか。
  • 代替案の欠如 (Concentration/Alternatives): 供給側以外に、同様の資源を提供できる他組織が存在しない、あるいは極めて少ない状態。

依存管理としての組織行動

RDTにおいて、組織の意思決定や構造変化は効率性の追求ではなく、外部からのコントロールを最小化し、自律性を最大化するための戦略的行動であると定義されます。

  • 対抗戦略: 組織は依存を回避するために、合併(M&A)、提携、役員派遣(インターロッキング)、あるいはロビー活動といった手段を講じます。
  • 権力の力学: 資源を提供する側は支配力を持ち、提供を受ける側は追従を強いられます。組織はこの非対称性を解消するために、あえて依存先を分散させたり、相手を自組織に取り込んだりします。

理論的定義の要約:効率性 vs 生存

従来の組織理論がいかに効率よく生産するか(内部最適化)を説いたのに対し、資源依存理論はいかに外部に生殺与奪の権を握らせないか(外部管理)を組織の最優先課題として定義しました。

比較項目 古典的組織論 資源依存理論 (RDT)
組織の性質 閉鎖システム(機械的) 開放システム(政治的)
最優先目標 効率性の最大化 自律性の確保・生存
環境との関係 環境に適応する(受動的) 環境を操作・管理する(能動的)
行動の原理 経済的合理性 資源を巡るパワーゲーム

分析

学術的定義を理解する上でのポイントは、依存は権力の源泉であるという視点です。

例えば、オープン・イノベーションにおける大企業とスタートアップの連携も、RDTの視点で見れば資金と技術という互いの依存資源を天秤にかけたパワーゲームとして定義されます。この定義を理解することで、組織間の協力がなぜ時として不平等な契約や対立を生むのかを論理的に説明できるようになります。

歴史

資源依存理論(Resource Dependency Theory: RDT)は、1970年代にそれまでの組織論に対するアンチテーゼとして誕生しました。組織が外部環境に翻弄される受動的な存在ではなく、生き残るために環境を操作する能動的な主体であると再定義した歴史的変遷を辿ります。

思想的前史:古典的組織論への疑義(〜1960年代)

RDTが誕生する前、組織論は大きく2つの流れに分かれていました。

  • 閉鎖システムの時代: 組織を機械のように捉え、内部の効率化(科学的管理法など)だけを考えればよいという視点。
  • コンティンジェンシー理論の台頭(1960年代): 環境によって最適な組織構造は異なるという考えが生まれましたが、依然として組織は環境に適応するだけの受動的な存在と見なされていました。

理論の確立:1978年『組織の外部統制』

RDTの決定的な出発点は、ジェフリー・フェファーとジェラルド・サランシックが1978年に出版した共著『The External Control of Organizations(組織の外部統制)』です。

  • 歴史的背景: 1970年代のオイルショックやベトナム戦争後の不透明な経済状況下で、企業がいかに不確実な外部資源(石油、資金、政治的支持)を確保し、生き残るかが喫緊の課題となっていました。
  • 理論の転換点: 彼らは、組織の本質的な問題は効率性ではなく生存(サバイバル)であると主張しました。組織が外部への依存を減らし、逆に他者を依存させることで権力(パワー)を獲得しようとするダイナミズムを理論化したのです。

理論の普及と精緻化(1980年代〜1990年代)

RDTは、組織間関係を分析する最も強力なツールの一つとして定着しました。

  • 戦略的選択論との融合: 組織が資源確保のためにあえて特定の相手と組むあえて競合を買収するといった戦略的行動の正当性を説明する理論として、経営戦略論に大きな影響を与えました。
  • 非営利セクターへの波及: NPOが政府の助成金に依存することで、本来のミッションが変質してしまう現象(ミッション・ドリフト)の研究に広く使われるようになりました。

現代:不確実性の増大とネットワーク化(2000年代〜現在)

グローバル化とデジタル化により、RDTは新しい局面を迎えています。

  • 正当性の資源化: 現代では、資金や原材料だけでなく環境配慮社会的責任(CSR)といった正当性が、生存に不可欠な資源として重視されるようになりました。
  • プラットフォーム依存: 2010年代以降、GAFAのような巨大プラットフォームに資源(データや集客)を依存する組織が増え、RDTの枠組みでプラットフォームからの自律をいかに保つかが議論されています。
  • 共創へのシフト: かつては依存を避けることが主眼でしたが、現在は相互依存を前提としたエコシステム(生態系)の中で、いかに有利なポジションを築くかという視点に進化しています。

理論の変遷まとめ

時代 組織の見方 主要なキーワード
1960年代以前 閉鎖システム 内部効率、規律
1970年代 RDTの誕生 依存、権力、生存
1990年代 戦略的パートナーシップ 提携、M&A、多角化
現在 エコシステム・ガバナンス プラットフォーム、正当性、相互依存

分析

RDTの歴史を紐解くと、この理論が組織は善意だけで動くのではなく、必要(資源)に迫られて動くという極めてリアリスティックな視点を提供してきたことが分かります。市民活動においても、なぜあの団体はあのような行動をとるのかという問いに対し、理念ではなく資源の流れから分析する重要性を、この歴史的変遷は教えてくれます。

事例

資源依存理論(RDT)が、実際の組織運営や社会現象をいかに鮮やかに説明するか、具体的な4つの事例を通じて解説します。
これらの事例は、組織が単に仲良く連携しているのではなく、資源を確保し、生存の不確実性を減らすための戦略的選択として動いていることを示しています。

NPOのミッション・ドリフト(目的の漂流)

市民活動において最も頻繁に引用される、RDTの負の側面に関する事例です。

  • 状況: ある地域福祉を担うNPOが、活動資金の80%を行政からの単年度の委託金に依存していました。
  • 資源依存の力学: 行政は資金という不可欠な資源の配分裁量権を握っており、他に代替案(寄付金など)が少ないため、NPOの依存度は極大化します。
  • 結果: NPOは本来やりたかった独自の草の根活動よりも、行政が求める書類作成や定型サービスに注力せざるを得なくなり、設立時の理念(ミッション)から遠ざかってしまいました。

医療法人の垂直統合と多角化

病院がなぜ経営を多角化し、グループ化するのかを説明する事例です。

  • 状況: 急性期病院が、退院後の患者を受け入れる介護施設や訪問看護ステーションを自前で設立したり、買収したりするケース。
  • 資源依存の力学: 病院にとって、病床回転率を上げるための退院先は、経営継続のための重要な資源です。外部の施設に依存しすぎると、受け入れ拒否などのリスクが生じます。
  • 結果: 外部への依存(不確実性)を排除するために、依存相手を自組織のコントロール下に取り込む垂直統合を行い、資源(患者の流れ)の安定確保を図ります。

大学と企業の共同研究・寄附講座

知識と資金の相互依存関係を示す事例です。

  • 状況: 企業が大学に多額の寄付を行い、共同研究講座を設置する。
  • 資源依存の力学: * 大学: 国からの補助金(資源)が減る中、研究継続のために民間の資金に依存せざるを得ない。
  • 企業: 自社単独では開発できない高度な専門知識や、優秀な学生(未来の人材)という資源を大学に依存している。
  • 結果: 両者は提携(リンケージ)を通じて、互いの弱点を補完し、不確実な未来に対する資源のパイプラインを構築します。

地方自治体間の広域連合(ゴミ処理・消防)

小規模な自治体が直面する資源不足を解消する事例です

  • 状況: 小さな町村が単独で高額なゴミ焼却施設や消防体制を維持することが困難になる。
  • 資源依存の力学: 各町村は財政と規模の経済という資源が不足しており、単独での生存(行政サービスの維持)が危うくなります。
  • 結果: 複数の自治体が広域連合というネットワークを形成。資源(予算と人材)を出し合うことで、対等な立場で依存し合い、外部からのコスト圧力をバッファリング(緩和)します。

事例に見る依存管理のパターン比較表

事例 依存の対象 戦略的アクション 狙い
NPO 行政(資金) 適合(ミッション・ドリフト) 生存の維持
病院 介護施設(退院先) 垂直統合(買収・新設) 不確実性の排除
大学・企業 資金 ⇔ 知識・人材 連携(リンケージ) 資源の相互補完
自治体 財政・規模の経済 ネットワーク形成(連盟) コスト削減と持続性

分析

これらの事例から分かるのは、依存を完全に無くすことは不可能だが、依存の『質』は選べるということです。NPOが行政への依存を減らすために企業寄付を募る多角化も、病院が施設を買収する統合も、すべては自律性を守るための権力闘争の一環です。

課題

資源依存理論(RDT)は、組織が生き残るための生存戦略を浮き彫りにしますが、この理論を実際の組織運営や政策に適用する際には、いくつかの深刻なジレンマや副作用に直面します。

これらの課題を理解することで、単なる依存を健全な相互補完に変えるための視点が得られます。

自律性と安定性のトレードオフ

RDTの根幹にある課題です。資源を安定的に確保しようとすればするほど、組織の自由(自律性)が失われるという矛盾です。

  • 外部コントロールの受容: 安定した資金や情報、原材料を確保するために長期的な契約や提携を結ぶと、相手方のルールや価値観に従わざるを得なくなります。
  • 硬直化のリスク: 特定の強力な資源提供者に合わせた組織体制(報告様式や意思決定プロセス)を構築してしまうと、環境が変化した際に対応できない組織の硬直化を招きます。

組織のアイデンティティの喪失(ミッション・ドリフト)

前述の事例でも触れましたが、資源提供者の意向を優先しすぎることで生じる課題です。

  • 手段の目的化: 活動を続けるための資金調達が目的となり、本来の社会課題の解決という理念が二の次になる現象です。
  • ステークホルダー間の信頼低下: 資金提供者に寄り添いすぎると、本来支援すべき対象(市民や受益者)からの信頼を失い、長期的には正当性という別の重要な資源を損なうことになります。

資源獲得コストの増大

資源を確保するための活動(ロビー活動、広報、交渉、複雑な契約管理)そのものが、組織の本来の活動を圧迫するほど重くなることがあります。

  • 調整コストの爆発: 依存を分散させるために多数のパートナーと組むと、そのすべてとコミュニケーションを維持するためのコスト(時間、人材)が膨大になります。
  • 情報の非対称性への対応: 外部資源の状況を常にモニタリングし、目利きをするための専門部隊が必要となり、組織が肥大化しやすくなります。

権力格差の固定化と搾取のリスク

RDTは権力の理論でもあります。資源を持つ側と持たざる側の格差が、連携を通じて固定化される恐れがあります。

  • 非対称な依存: 小規模な組織が大規模な組織のリソース(プラットフォームやブランド)に依存する場合、交渉力が極めて弱くなり、不当な条件を押し付けられたり、成果を吸収されたりするリスクがあります。
  • ロックイン効果: 一度特定のインフラやシステムに深く依存してしまうと、他へ乗り換えるコスト(スイッチング・コスト)が膨大になり、不利な条件でも離れられなくなるロックイン(囲い込み)が発生します。

資源の質の過小評価

RDTは量的な資源(金、人、物)に注目しがちですが、数値化しにくい資源の重要性を見落とす可能性があります。

  • 心理的資本・文化の軽視: 効率的に資源を回そうとするあまり、組織内の士気や固有の文化といった、目に見えないが代替不可能な資源を破壊してしまうことがあります。
  • 短期的視点への陥り: 今すぐ必要な資源に目を奪われ、数十年単位で蓄積すべき信頼(社会関係資本)を切り崩して目先の資源を得るような選択をしてしまうリスクがあります。

資源依存理論における課題解決のヒント

  • 自律性の低下 資源提供者の多角化(依存先の分散)によるパワーの均衡
  • ミッション・ドリフト 組織の憲法(理念)を明文化し、資源提供者と共有する
  • 高コスト デジタルツールの活用による調整業務の自動化・効率化
  • 権力格差 同じ立場にある組織同士で連盟を組み、集団交渉力を高める

分析

資源依存理論の課題は、生存に執着するあまり存在意義を忘れることに集約されます。これを防ぐためには、自組織が何を資源として求めているかだけでなく、自組織が相手に提供できる独自の資源(代替不可能な価値)は何かを常に磨き続け、依存を相互依存へと昇華させる戦略が必要です。

課題の解決

資源依存理論(RDT)における最大の課題である依存によるコントロール(不自由さ)とミッションの変質を克服するための解決策は、組織が外部に対していかに影響力を持ち、自律的な余地を確保するかという戦略的マネジメントに集約されます。

学術的・実務的な視点から、4つの主要な解決アプローチを提案します。

資源獲得源の多角化(Portfolio Diversification)

特定の組織への依存度を下げる最も基本的かつ強力な解決策です。

  • 依存の分散: 1つの大きな財源(例:行政の委託金)に頼るのではなく、寄付金、自主事業収益、企業スポンサーなど、複数のソースから資源を得るように設計します。
  • 代替案の確保: A社から供給が止まってもB社から調達できる状態を維持することで、特定の提供者からの無理な要求を断る拒否権を持つことができます。

相互依存(Mutual Dependency)の構築

一方的な依存を、双方がなくてはならない相互依存へと昇華させる戦略です。

  • 独自の価値(資源)の提供: 相手が喉から手が出るほど欲しい資源(例:現場の生の声、特定のコミュニティへのアクセス、高度な専門ノウハウ)を自組織が独占的に持つことで、パワーバランスを均衡させます。
  • スイッチング・コストの増大: 相手にとってこの組織との連携を解消すると、自社の活動にも大きなダメージが出ると思わせるほど深く、独自の価値を組み込みます。

連合・ネットワーク形成(Cooperative Strategies)

個別の組織では弱くても、複数の組織が結集することで外部環境への対抗力を高める方法です。

  • 集団交渉(Collective Bargaining): 小規模なNPOや企業が集まり連盟を作ることで、政府や巨大企業に対して対等な立場で交渉を行います。
  • ジョイント・ベンチャーの設立: 資源を出し合って中立的な別組織を作ることで、特定の組織に主導権を握らせず、リスクと成果を共有します。
  • インターロッキング(役員派遣): 相手組織の意思決定機関にメンバーを送り込み(あるいは招き入れ)、情報を共有することで、外部からの不確実性を内側からコントロールします。

ガバナンスとアイデンティティの防衛

組織の魂である理念を資源依存から守るための内部制度を整えます。

  • ミッション・ステートメントの厳格な運用: 資源提供を受ける前に、この資源を受け入れることで、私たちの理念が損なわれないかを検証する倫理審査プロセスを設けます。
  • 正当性(Legitimacy)の強化: 社会的信頼を非物質的な資源として蓄積します。一般市民やユーザーからの圧倒的な支持があれば、特定の資金提供者が離れても、別の支援者がすぐに現れるセーフティネットになります。

課題解決への戦略マトリクス

解決アプローチ 具体的なアクション 狙い
分散戦略 財源・仕入先の多角化 特定の相手のパワーを削ぐ
付加価値戦略 独自の専門性やネットワークの強化 相手を自分たちに依存させる
政治戦略 業界団体への加入、ロビー活動 ルール自体を自分たちに有利にする
防衛戦略 理念の明文化、広報によるファン作り 正当性を盾に不当な介入を防ぐ

アドバイス

資源依存理論の課題を解決する極意は、依存を悪と考えず、依存をマネジメントの対象と考えることです。

完全に自立した組織など存在しません。大切なのは、あえて依存する先を自分たちで選んでいるという主体性を持つことです。戦略的に依存先をパッチワークのように組み合わせることで、結果としてどの一箇所が欠けても崩れない、強靭な自律的組織を構築することが可能になります。

出典・文献

資源依存理論(RDT)は、1970年代に組織論のパラダイムを効率性の追求から外部環境の管理へと劇的に転換させました。この理論を深く理解し、実務に活用するための主要な出典と文献を、その役割別に整理します。

理論の原典(バイブル)

資源依存理論を体系化した最も重要な文献です。

  • Pfeffer, J., & Salancik, G. R. (1978). The External Control of Organizations: A Resource Dependence Perspective. Harper & Row.
    解説: RDTの聖典です。組織を単独の主体ではなく、外部資源(資金、情報、合法性)に依存するオープン・システムとして定義。依存がもたらす不自由を回避するための戦略(合併、役員派遣、政治活動)を網羅的に論じています。2003年に再版(Stanford University Press)され、その際の序文で理論のその後の展開が総括されています。

理論の進化とレビュー文献

原典以降、理論がどのように拡張・検証されてきたかを知るための文献です。

  • Hillman, A. J., Withers, M. C., & Collins, B. J. (2009). “Resource Dependence Theory: A Review.” Journal of Management, 35(6), 1404–1427.
    解説: 提唱から30年間の研究を総括した決定版のレビュー論文です。取締役会の構成、M&A、ジョイントベンチャーといった戦略が、実際に資源依存の軽減に寄与しているかを膨大なデータから検証しています。
  • Pfeffer, J. (1981). Power in Organizations. Pitman.
    解説: RDTの核心にあるパワー(権力)に焦点を当てた著作。組織内の意思決定がいかに政治的プロセスによって左右されるかを論じています。

日本における主要な解説・応用文献

日本の組織文化や経営文脈に即してRDTを読み解くための文献です。

  • 桑田耕太郎・田尾雅夫 (2010). 『組織論』 有斐閣アルマ.
    解説: 日本の大学で標準的に使われるテキスト。資源依存モデルを外部適合の視点から非常に分かりやすく解説しており、入門に最適です。
  • 沼上幹 (2004). 『組織戦略の考え方:企業経営の論理』 筑摩書房.
    解説: 経営戦略の文脈で資源依存理論を扱い、日本企業間(ケイレツ等)の相互依存関係を理解するための視点を提供しています。

資源依存理論の重要キーワード・マトリクス

文献を読み解く際に軸となる、RDTの戦略的アクションの分類です。

分類 戦略的アクション 目的(文献内での議論)
境界の連結 (Bridging) 役員派遣、合併、提携 依存先を自組織の一部として取り込み、不確実性を管理する。
緩衝 (Buffering) 在庫の積み増し、財源多角化 外部の変動が組織内部の効率性に影響しないよう保護する。
環境の操作 ロビー活動、業界団体形成 自組織に有利になるよう、法律や社会のルール自体を書き換える。

アドバイス

RDTの文献を読む際は、パワー(権限)の源泉はどこにあるか?という視点を常に持ってください。

現代のコレクティブ・インパクトやエコシステム論においても、結局は誰が決定的な資源(データや資金、正当性)を握っているかというRDT的問いが、実効的ガバナンスの成否を分けています。1978年の原典は、今なお色褪せない戦略の教科書です。

注意

以上の文書はAI Notebook LM が生成したものを加筆修正しており、誤りが含まれる場合があります。

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参考

市民活動の組織間連携・協調

不確実な時代への耐性:オープン・イノベーションとエコシステムが生む共進化

 

信頼がお金やスキルに並ぶ資産になる?見えない財産、社会関係資本の正体

複数組織が協調して取り組むコレクティブ・インパクト(CI)

市民活動

交通理論体系整理の試み