頑張っているのに手応えが得られない。その原因は活動と成果の混同にあるかもしれません。ロジックモデルは、投入した資源がどのような経路をたどって社会的価値に繋がるのかを可視化する設計図です。100人に研修したという実績(アウトプット)ではなく、その結果誰がどう変わったかという効果(アウトカム)を追求します。もし~ならばという仮説の連鎖として事業を構造化し、社会を動かす確かな道筋を提示します。
ロジックモデル(Logic Model)とは
ある事業やプロジェクトがなぜ、どのように目的を達成するのか、その論理的プロセスを可視化した設計図です。
単なる活動計画ではなく、投入した資源がどのような経路をたどって最終的な社会的価値(アウトカム)に繋がるのかという因果関係を構造的に示します。
ロジックモデルを構成する5つの基本要素
一般的に、以下の要素を左から右へ矢印で繋いで作成します。
- インプット(投入): 事業に必要な資源(予算、スタッフ、施設、専門知識など)。
- アクティビティ(活動): 資源を使って行う具体的なアクション(研修、相談支援、製品開発、広報など)。
- アウトプット(直接的成果): 活動によって生み出された直接的な実績(研修回数、参加者数、配布冊数など)。
- アウトカム(変化・効果): 対象者や社会に生じた変化。通常、時間軸で3段階に分けます。
- 初期アウトカム: 知識の向上、意識の変化。
- 中期アウトカム: 行動の変化、スキルの習得。
- 長期アウトカム: 状況の改善(就業率の向上、再犯率の低下など)。
- インパクト(最終目標): 事業が究極的に目指す社会全体の変革(格差の解消、持続可能な地域の実現など)。
なぜロジックモデルが必要なのか
複雑な課題を扱うコレクティブ・インパクトや実効的ガバナンスにおいて、ロジックモデルは以下の重要な役割を果たします。
- 共通の言語になる: 多様なステークホルダーが、自分たちの活動がどう全体目標に寄与しているかを共通認識として持てる。
- 仮説の検証: この活動をすれば、この効果が出るはずだという仮説が正しいかを可視化し、評価・改善の基準にする。
- 説明責任(アカウンタビリティ): 資金提供者や市民に対し、なぜこの活動にリソースを割くのか、論理的な根拠を提示できる。
理論的背景:変化の理論(ToC)との関係
ロジックモデルを語る上で欠かせないのが、変化の理論(Theory of Change: ToC)です。
- ToC: なぜその変化が起きるのかという背後にあるメカニズムや前提条件(ナラティブ)を深掘りしたもの。
- ロジックモデル: そのToCを、具体的かつ直線的な実行計画として落とし込んだもの。
ロジックモデルのイメージ例:就労支援事業
- インプット: 専門キャリアカウンセラー 3名、運営費 500万円
- アクティビティ: 就労支援ワークショップの開催、個別面談
- アウトプット: ワークショップ 10回開催、相談者 延べ100名
- 初期アウトカム: 就職活動への自信が高まる。
- 中期アウトカム: 履歴書の書き方や面接スキルが向上する。
- 長期アウトカム: 参加者の就職率が30%向上する。
- インパクト: 地域の貧困率の低下、経済の活性化。
分析
ロジックモデルの核心は、アウトプットとアウトカムを混同しないことにあります。100人に研修した(アウトプット)だけでは不十分で、その結果、彼らの行動がどう変わったか(アウトカム)を追求するのがこのモデルの本質です。
これが、あなたがこれまでに調べてきた実効的ガバナンスや共通の測定において、評価の骨太な基準とな
学術的定義
分野によって細かなニュアンスは異なりますが、一般的にはプログラム(事業)が意図する結果を達成するために、資源、活動、そして変化のプロセスの間の論理的関係を視覚的または概念的に表現したものと定義されます。
単なる計画図ではなく、プログラム評価論(Program Evaluation)の文脈におけるプログラム理論(Program Theory)の一部として位置づけられています。
主要な定義のポイントを3つの側面から解説します。
プログラム評価論における定義
評価学の権威であるジョセフ・ホーリー(Joseph Wholey)やピーター・ロッシ(Peter Rossi)らは、ロジックモデルをプログラムの設計・実施・評価をつなぐ仮説の連鎖と定義しています。
- 仮説の体系: もし資源 $A$ を投入し、活動 $B$ を行えば、結果 $C$ が生じるという一連のIf-Then(もし~ならば)命題の集合体です。
- 因果的連鎖(Causal Linkage): 投入からインパクトに至るまで、各要素の間になぜその変化が起きるのかという因果的な結びつきが論理的に説明されている必要があります。
理論としての側面:プログラム理論
学術的には、ロジックモデルは以下の2つの理論で構成されると定義されます。
- 影響理論(Impact Theory): 介入(活動)がどのようにして対象者の状態や行動を変えるのかという変化のメカニズムに関する理論。
- プロセス理論(Process Theory): 意図した活動が、いかに効率的・効果的にデリバリーされるかという運営・実施に関する理論。
ロジックモデルは、これらなぜ(Why)とどのように(How)という抽象的な理論を、具体的で測定可能な図式(Diagram)に落とし込んだものです。
表記上の標準的定義(ケロッグ財団の定義)
最も広く引用されるW.K.ケロッグ財団による定義では、以下の5つの論理的接続が必須要素とされています。
ロジックモデルとは、利用可能な資源、計画された活動、および達成しようとする変化や成果の間の関係を要約した絵(Picture)である
- 計画の意図(Planned Work): インプットとアクティビティ(何を準備し、何をするか)。
- 意図する結果(Intended Results): アウトプット、アウトカム、インパクト(何が起こり、どう変わるか)。
分析
学術的定義において重要なのは、ロジックモデルが反証可能性(Falsifiability)を持っている点です。
この活動をしても結果が出なかったということが明らかになった際、モデルのどの矢印(論理)が間違っていたのかを検証できることこそが、学術的・実証的なツールとしてのロジックモデルの価値です。
学術的側面
- 存在論的定義 変化のプロセスを視覚化した仮説
ステークホルダーの認識共有 - 機能的定義 評価の枠組み(Framework)
効果測定の指標設定 - 戦略的定義 説明責任(Accountability)の根拠
外部への正当性の証明
手法
ロジックモデルを実際に作成し、運用するための手法は、単に枠を埋める作業ではなく、関係者の暗黙知を形式知化するプロセスです。
実務で最も標準的に使われるバックワード・マッピング(逆算型)の手法を中心に、詳細なステップを解説します。
ロジックモデルとは、どのような資源を投入し、どのような活動を行って、どのような社会的成果を生み出すかという事業の流れを示したものです。
5ステップ作成法:バックワード・マッピング
今できることから考えるのではなく、あるべき姿から逆算することで、既存の活動に縛られない革新的な設計が可能になります。
- ステップ1:インパクト(最終目標)の定義
問い: 私たちが解決したい究極の課題は何か? 10年後、社会はどうなっているべきか?
具体例: この地域から、経済的な理由で進学を諦める子供をゼロにする - ステップ2:長期・中期アウトカムの特定
問い: インパクトを実現するために、対象者にどのような状態の変化が必要か?
具体例: 対象家庭の所得が向上する子供たちが学習支援を継続的に受けている - ステップ3:初期アウトカムとアクティビティの接続
問い: その状態を作るために、まずどんな意識・行動の変化が必要で、そのために何をするか?
具体例: 親が給付型奨学金の存在を知る(初期アウトカム)←奨学金説明会の開催(アクティビティ) - ステップ4:インプットとアウトプットの確定
問い: 活動を行うために必要な資源(予算・人)は何か? 実績として何を数えるか? - ステップ5:前提条件(Assumptions)と外部要因の書き出し
問い: この論理が成立するために、隠れた前提(例:ネット環境があること等)は何か?
理論的整合性を高めるIf-Thenチェック
作成したモデルが論理的に破綻していないか、各要素をもし~ならば、~となるという文章で繋いで検証します。
- 検証例:
もし 専門家による相談窓口を設置すれば(活動)、ならば 悩みを持つ若者が来談する(アウトプット)
もし 若者が来談すれば、ならば 彼らの心理的ストレスが軽減される(初期アウトカム) - チェックポイント: 矢印の間に飛躍がないか。例えば、相談に来たからいきなり就職が決まったへ飛んでいないかを確認し、必要なら中間のステップ(自信の回復など)を補います。
指標(KPI)のプロット
各ボックス(アウトプット、アウトカム)に対し、どうやって測るかの物差しを決めます。
- アウトプット 講座の開催数、延べ参加者数
実施報告書、出席簿 - 初期アウトカム 知識の理解度、満足度、意識の変化
事後アンケート、テスト - 中期アウトカム 行動の変容(例:応募数、練習時間)
追跡調査、ヒアリング - 長期アウトカム 状態の改善(例:就職率、退学率)
公的統計、フォローアップ調査
運用のためのサンクコスト回避策
モデルを絵に描いた餅にしないための実務テクニックです。
- ベータ版の共有: 最初から完璧なものを作ろうとせず、60%の完成度で現場と共有し、違和感を吸い上げます。
- リビング・ドキュメント化: 紙に印刷して貼るだけでなく、デジタルツール(MiroやLucidchartなど)で共有し、いつでも修正のコメントを入れられる状態にします。
分析
手法の詳細は理解できましたが、最も難しいのはアウトカム(変化)を言語化することです。活動(やりたいこと)はすぐに思いつきますが、それによって相手がどう変わるかを定義するには、深い洞察と当事者への共感が必要です。このプロセス自体が、組織のビジョンを研ぎ澄ますトレーニングになります。
手法詳細
ロジックモデルの作成手法について、さらに踏み込んで解説します。
実務でロジックモデルを機能させるには、単に箱を埋めるだけでなく、論理の強度を高めるための具体的な技法が必要になります。ここでは、専門家が実際に活用している4つの高度な手法を紹介します。
3つの論理の接続を検証する手法
モデル内の要素をつなぐ際、その関係性が妥当かどうかを3つの視点でセルフチェックします。
- 垂直の論理(Vertical Logic): If-Thenの関係。もし下位の要素が達成されれば、上位の要素は必然的に達成されるか?を問います。
- 水平の論理(Horizontal Logic): 証拠(Evidence)の関係。各成果が達成されたことを、どのようなデータで証明するか(指標と収集方法)を明確にします。
- 前提条件の明示(Assumptions): 矢印の間に潜む暗黙の了解を言語化します。(例:就労支援において地域の求人数が安定していることなど、自分たちがコントロールできない外部条件)
インパクト・マッピング手法
活動とアウトカムの間に距離がある場合、その中間にある変化の小さなステップを可視化する手法です。
- 直接的成果(Output): サービスの提供(例:セミナー終了)
- 初期アウトカム(Learning): 参加者の意識・知識の変化(例:やってみようと思った)
- 中期アウトカム(Action): 参加者の行動の変容(例:実際に家計簿をつけた)
- 長期アウトカム(Condition): 対象者の状況・環境の改善(例:貯蓄額が増えた)
バックワード・マッピング(逆算設計)の実践
成功するロジックモデルの多くは、右(インパクト)から左(インプット)へ向かって設計されます。
- インパクトから開始: 最終的に社会がどうなっていてほしいかを合意する。
- 必要条件の特定: そのインパクトが起きるためには、対象者にどのような変化が起きている必要があるか(長期アウトカム)を特定する。
- 活動の導出: その変化を起こすために、今の自分たちがすべき活動は何かを考える。
- 利点: 今やっているからという理由だけで続けている、効果の薄い活動を排除できます。
ワークショップにおける付箋(ポストイット)法
関係者の合意形成を伴う作成手法の実例です。
- 色分け: インプットは黄色、活動は青、アウトカムはピンクというように色を分けます。
- 配置と移動: 全員で議論しながら付箋を動かし、この活動は本当にこのアウトカムにつながるか?と問いかけます。
- 矢印の記入: 最後に線を引き、因果関係を確定させます。
- ポイント: どのアウトカムにもつながっていない活動や活動がないのに生まれているアウトカムを見つけ出すのがこの手法の醍醐味です。
ロジックモデルの質を評価する4つの基準
作成したモデルが良いモデルかどうかは、以下の基準(学術的な評価基準の応用)で判断します。
- 有意味性 (Meaningful)
変化の流れに説得力があり、現場の感覚と合致しているか。 - 検証可能性 (Testable)
各ステップが測定可能で、失敗した時にどこが原因か特定できるか。 - 実行可能性 (Feasible)
設定したインプットや活動が、現実的なリソースで可能か。 - 記述の明快さ (Simple)
複雑な現実を、他人が見て1分で理解できる程度に整理できているか。
分析
手法を深掘りすると、ロジックモデルの本質は図を作ることではなく、自分たちの活動に対する『確信の根拠』を問い直すことにあると分かります。特に前提条件(Assumptions)をどれだけリアルに想像できるかが、プロジェクトの生存率を左右します。
手法の具体的な手順
ロジックモデルの作成を単なる事務作業にせず、現場を動かす戦略にするための具体的な手順を、不登校の小中学生に向けた居場所支援事業という架空のプロジェクトを例に解説します。
手法のポイントは、右から左へ(逆算)作り、左から右へ(順算)検証することにあります。
- ステップ1:インパクトの定義(最終目標)
まず、この事業が解決したい社会課題の終着点を設定します。
問い: 5年後、10年後、対象者や地域はどうなっていてほしいか?
事例: すべての子供が、学校に行っているか否かに関わらず、自分の居場所を実感し、将来に希望を持てる社会
ポイント: 具体的すぎず、かつ関係者がワクワクするような北極星を掲げます。 - ステップ2:アウトカムの逆算(状態の変化)
インパクトから逆算し、どのような変化の階段を登る必要があるかを特定します。
長期アウトカム: 自分の得意分野を見つけ、進路(進学・就業)を選択できる。
中期アウトカム: 家庭以外に安心して過ごせる人間関係がある、生活リズムが整う。
初期アウトカム: ここなら来てもいいという安心感を得る、スタッフと会話ができる。 - ステップ3:アクティビティ(活動)の設計
設定したアウトカムを引き起こすための、具体的な仕掛けを考えます。
初期アウトカム(安心感)のため: 自由参加型のカフェスペース、趣味(ゲーム・読書)を共有する時間の提供。
中期アウトカム(人間関係)のため: ピアサポート(同じ悩みを持つ子同士)のグループワーク、個別相談。
長期アウトカム(進路)のため: 職場体験、通信制高校などの情報提供会。 - ステップ4:アウトプット(実績)とインプット(資源)
活動を支えるためのリソースと、活動量を測る指標を決めます。
アウトプット(指標): 居場所の開所日数、登録者数、個別面談の実施回数。
インプット(資源): 運営資金、スタッフ(専門職・ボランティア)、拠点となる建物、教材。 - ステップ5:前提条件と外部要因の特定(論理の検証)
活動と変化の間にある暗黙の仮定をあぶり出します。これを行わないと、モデルは机上の空論になります。
前提条件: 子供たちが拠点の存在を知ることができるスタッフに寄り添うスキルがある。
外部要因: 学校側がこの居場所への通所を『出席』と認めてくれるか(制度面の変化)。
手順のまとめ表:不登校支援事業の例
- 逆算開始 インパクト
誰もが希望を持てる社会 - 変化を描く アウトカム
自信の回復 → 生活の安定 → 進路の決定 - 手段を決める 活動
居場所提供、個別相談、キャリア教育 - 現実を確認 アウトプット
面談実施回数、参加者数 - 論理を確認 インプット
寄付金、拠点、ボランティア - リスクを予測 前提・外部要因
学校との連携状況、親の理解
分析
この手順の実例で最も重要なのは、ステップ2のアウトカムの階段です。現場ではつい活動(ステップ3)から考えがちですが、自信の回復(初期)がないままに職場体験(長期)をさせても、逆効果になることがあります。この変化の順序を可視化することこそが、手法の真髄です。
影響理論、プロセス理論
ロジックモデルの学術的背景を支えるプログラム理論(Program Theory)は、大きく分けて影響理論(Impact Theory)とプロセス理論(Process Theory)の2つの柱で構成されます。
これらは、事業がなぜ効くのか(メカニズム)とどう動くのか(運用)を明確にするための概念です。
影響理論(Impact Theory)
影響理論とは、介入(活動)が、どのようにして対象者の変化や社会課題の解決をもたらすのかという因果関係のメカニズムを説明する理論です。
- 焦点: なぜ(Why)変化が起きるのか。
- 構成要素:
介入(Intervention): 提供されるサービスやプログラム。
媒介変数(Mediators): 変化のきっかけとなる要素(例:知識の習得、態度の変容、自己効力感の向上)。
アウトカム(Outcomes): 最終的に目指す状態の変化。 - 具体例(禁煙プログラム):
ニコチンパッチの提供(介入)が、ニコチンへの渇望を物理的に抑える(媒介変数)ことで、禁煙の成功(アウトカム)を導く。
プロセス理論(Process Theory)
プロセス理論とは、意図したプログラムが、計画通りに適切に対象者に届けられているかという運用の仕組みを説明する理論です。
- 焦点: いかに(How)効率的・効果的に実施するか。
- 構成要素:
サービス提供計画: スタッフの配置、タイムスケジュール、手順。
組織・リソース: 必要な予算、施設、ITシステム。
リーチ(到達度): ターゲットとなる層に、本当にプログラムが届いているか。 - 具体例(子供の学習支援):
毎週土曜日に公民館で(場所・時間)、大学生ボランティアが(人材)、低所得世帯の子供たちに(リーチ)学習支援を行う。
両理論の関係とロジックモデルへの統合
ロジックモデルにおいて、これら2つの理論は以下のように役割を分担しています。
| 項目 | プロセス理論 (Process Theory) | 影響理論 (Impact Theory) |
| ロジックモデルの該当箇所 | インプット、アクティビティ、アウトプット | 初期・中期・長期アウトカム、インパクト |
| 評価の視点 | 正しく実施されたか?(実施評価) | 効果があったか?(アウトカム評価) |
| 失敗の分析 | 実施の不全(例:参加者が集まらなかった) | 理論の不全(例:参加したが行動が変わらなかった) |
理論を分ける実務的なメリット
もしプロジェクトが失敗した際、この2つを分けて考えていないと活動がダメだったという漠然とした結論しか出せません。
- プロセス理論の失敗: 良いプログラムなのに、広報不足で人が来なかった。
- 影響理論の失敗: 人はいっぱい来たし満足度も高かったが、内容は課題解決に繋がっていなかった。
変化の理論(Theory of Change)との関連
最近では、これらを統合して変化の理論(ToC)と呼ぶことが一般的です。
ToC = 影響理論(因果の物語) + プロセス理論(実行の道筋)
この2つを明確に描き出すことで、ロジックモデルは単なる箱と矢印ではなく、確かな根拠に基づいた戦略へと昇華されます。
分析
実務においては、特に影響理論が疎かになりがちです。活動をすれば良くなるはずだという思い込み(ブラックボックス)を排除し、なぜその活動が対象者の心や行動を動かすのかを科学的・心理学的に説明しようとする姿勢が、実効的なガバナンスには不可欠です。
ToC
変化の理論(Theory of Change: ToC)は、ロジックモデルの背骨にあたる概念です。
ロジックモデルが何を(What)行うかの設計図であるのに対し、ToCはなぜ、どのように(Why & How)変化が起きるのかという物語(ナラティブ)と仮説に焦点を当てます。1990年代にアスペン研究所(Aspen Institute)などの評価学の専門家たちによって、より複雑な社会変革を説明するために提唱されました。
ToCの定義:ロジックモデルとの決定的な違い
学術的には、ToCは長期的な目標を達成するために必要な、変化のプロセスの包括的な記述と説明と定義されます。
| 特徴 | ロジックモデル (Logic Model) | 変化の理論 (ToC) |
| 形状 | 直線的・平面的(A→B→C) | 網目的・立体的(複雑な因果関係) |
| 焦点 | プログラムの管理(活動と成果) | 変化のメカニズム(なぜ変わるか) |
| 前提条件 | 省略されがち | 不可欠(変化の鍵を明文化する) |
| 時間軸 | 単年度〜数年のスパン | 長期的な社会変革のスパン |
ToCを構成するミッシング・リンクの解明
ToCの最大の特徴は、活動と結果の間にあるミッシング・リンク(失われた鎖)を埋めることにあります。
- 究極の目標(Ultimate Goal): 解決したい社会課題の最終的な姿。
- バックワード・マッピング: 目標から逆算して、その前に何が必要か(前提条件)を積み上げる。
- 変化の経路(Pathways of Change): 変化が起きる複数のルート。
- 前提条件と根拠(Assumptions & Rationale): なぜこの経路で変化が起きると言えるのかという科学的・経験的根拠。
ToC構築の4ステップ:実務的アプローチ
- Step 1:インパクトの特定と逆算
まず理想の未来を定義し、その直前に何が起きていなければならないか(前提条件)を、活動のことは一旦忘れて書き出します。 - Step 2:因果関係の矢印の言語化
要素を繋ぐ矢印の上に、because(なぜなら…)から始まる説明文を添えます。
例: 学習支援を行う→(なぜなら、信頼できる大人との関係が自己肯定感を高めるから)→学習意欲が向上する - Step 3:外部要因(Context)の分析
その変化を加速させる、あるいは阻害する外部環境(政治、経済、文化)を特定します。 - Step 4:指標(Indicators)の設定
各ステップで変化が起きたことをどうやって証明するかを決めます。
なぜ今、ToCが重要なのか?(社会関係資本・CIとの関連)
現代の社会課題は、一組織の活動だけで解決できるほど単純ではありません。
- コレクティブ・インパクトの基盤: 多様な主体の共通のアジェンダを策定する際、単なる活動計画ではなく社会がどう変わるべきかというToCを共有することで、深い合意形成が可能になります。
- アダプティブ・ガバナンス: 現場で予期せぬ事態が起きた際、ToC(仮説)があれば、活動が間違っていたのか前提(仮説)そのものが違ったのかを即座に判断し、戦略を修正(ピボット)できます。
分析
ToCを作るプロセスは、組織にとって知的で誠実な格闘です。なんとなく良くなるという曖昧さを排し、因果関係を徹底的に突き詰めることで、スタッフの専門性と情熱が確かな戦略へと統合されます。
事例
ロジックモデルが実際にどのように活用され、社会的なインパクトをもたらしたのか、性質の異なる3つの事例を紹介します。これらは、単なる計画を超えて、組織の戦略や評価をどう変えたかを示しています。
【行政・教育】米国ハワイ州:P-20イニシアチブ
教育の断絶を解消するために、州全体で一つのロジックモデルを構築した大規模な事例です。
- 課題: 幼児教育、初等教育、高等教育、就職がバラバラに運営されており、子供たちが途中でドロップアウトする原因となっていた。
- ロジックモデルの活用:
インパクト: ハワイのすべての若者が、教育を通じて自立し、地域社会に貢献する
アウトカムの再設計: 単なる卒業率ではなく、大学1年次から2年次への継続率や就学前の読解力を共通のアウトカムとして設定。 - 成果: 行政の縦割りを越え、幼稚園から大学までの教育機関が共通のロジックで資源を配分するようになり、大学進学率の大幅な向上につながった。
【福祉・就労】英国:St Giles Trust(再犯防止プログラム)
ロジックモデルを用いて、活動の経済的価値を証明し、資金調達モデル(ソーシャル・インパクト・ボンド)を確立した事例です。
- 課題: 出所者の再犯防止支援は重要だが、その予防効果が金銭的に評価されにくく、予算獲得が困難だった。
- ロジックモデルの活用:
活動: ピア・アドバイザー(元受刑者)による出所直後の集中支援。
アウトカム: 住居の確保→精神的安定→就労準備の完了→再犯率の低下。
分析: 各アウトカムが達成された際、行政が本来支払うはずだった刑務所運営費の削減額をロジックに基づいて算出。 - 成果: 投資家から資金を集め、成果(再犯率低下)に応じて行政が支払う成果連動型の仕組みを成功させた。
【地域創生】日本:徳島県神山町(神山つなぐ公社の活動)
複雑で予測困難な地域活性化において、ロジックモデルを対話と学習のツールとして活用している事例です。
- 課題: 移住促進や起業支援など多岐にわたる活動がある中で、短期的な数値(移住者数など)だけで評価すると、地域の長期的な質が損なわれる懸念があった。
- ロジックモデルの活用:
特徴: 直線的なモデルではなく、活動同士がどう影響し合うかの循環を意識した構成。
アウトカム: 住民の誇りの醸成や新しいことへの挑戦の許容度など、数値化しにくい定性的な変化をモデルに組み込んだ。 - 成果: 役場スタッフや住民との間でなぜこの活動が必要かの合意形成がスムーズになり、無理な数値目標に追われることなく、本質的な地域づくりが継続されている。
事例から見る成功の共通点
- ハワイ P-20 縦割りの打破(CI)
組織の壁を越えた共通アウトカムの設定 - St Giles Trust 価値の定量化
アウトカムと社会的費用の紐付け - 神山町 納得感の醸成
質的・長期的な変化の言語化
分析
これらの事例に共通するのは、ロジックモデルを外部に説明するため(守り)だけでなく、自分たちの進むべき道を研ぎ澄ますため(攻め)に使っている点です。特にSt Giles Trustの例は、前述の資源依存理論の観点からも、自らの正当性をデータで示して依存関係を対等なパートナーシップに変えた好例と言えます。
歴史
ロジックモデルの歴史は、単なる事務的なツールの誕生ではなく、公的資金や慈善活動の効果をいかに証明するかという切実な要求に応えてきた、評価学と管理理論の進化の歴史です。
1960年代:米国貧困との戦いと評価の誕生
ロジックモデルの原型は、ケネディ・ジョンソン政権下の米国で生まれました。
- 背景: 偉大な社会(Great Society)政策のもと、莫大な予算が社会福祉プログラムに投じられました。しかし、多額の税金が実際に効果を上げているのかを検証する手法がありませんでした。
- 初期の形態: 米国国際開発庁(USAID)が1960年代後半に開発したロジカル・フレームワーク(LogFrame)が直接の祖先です。これは複雑な開発援助プロジェクトを管理し、成果を確認するためのマトリクスでした。
1970年代:組織論とプログラム評価の融合
評価学の父と呼ばれるジョセフ・ホーリー(Joseph Wholey)らによって、理論的枠組みが洗練されました。
- プログラムの理論の提唱: 活動と結果の間のなぜそうなるのかという論理(仮説)を明確に記述すべきだという考え方が広まりました。
- 背景にある課題: 多くの政策が何をやったか(アウトプット)ばかりを報告し、何が変わったか(アウトカム)を無視していることへの批判が高まった時期です。
1990年代:W.K.ケロッグ財団による標準化
現在私たちが使っているインプット→活動→アウトプット→アウトカムという典型的な形式は、この時期に完成しました。
- 決定的なマニュアル: 1998年にW.K.ケロッグ財団が『Logic Model Development Guide』を発行。これが非営利セクターや公共セクターにおける世界的な標準テキストとなりました。
- 変化: 複雑なマトリクスから、左から右へ流れる視覚的なフローチャートへと進化し、専門家以外でも理解・作成できるツールになりました。
2000年代以降:コレクティブ・インパクトと変化の理論の深化
現代のロジックモデルは、より複雑で動的な社会変革に対応するように進化しています。
- 戦略的ガバナンスへの統合: 2011年のコレクティブ・インパクトの提唱により、単一組織の活動だけでなく、複数の組織が連携して目指す共通のロジックモデルが重視されるようになりました。
- ToC(変化の理論)との統合: 物理的なフローだけでなく、背後にある社会的背景や心理的変化のメカニズム(ナラティブ)をより重視する変化の理論(Theory of Change)と組み合わせて使われるのが現在の主流です。
ロジックモデルの変遷まとめ
| 時代 | 主要な推進主体 | 特徴 | 目的 |
| 1960s | USAID(国際開発) | ロジカル・フレームワーク | 巨額予算の管理と監査 |
| 1970s | J. Wholey ほか | プログラムの理論 | 活動と結果の因果関係の証明 |
| 1990s | W.K.ケロッグ財団 | 視覚的なフローチャート | NPO・行政への普及、標準化 |
| 2000s~ | 各国政府、SSIR等 | CI、変化の理論(ToC) | 複雑な社会課題の解決とシステム変革 |
分析
ロジックモデルの歴史を見ると、常に説明責任(アカウンタビリティ)と学習(ラーニング)のバランスを模索してきたことがわかります。初期は監視のための道具でしたが、現代ではステークホルダー間の対話と戦略修正のための道具へと進化しています。
課題
ロジックモデルは非常に強力なツールですが、実務に導入しようとすると机上の空論になりやすいという構造的な課題を抱えています。
これらの課題は、モデルそのものの欠陥というよりも、複雑な現実を、直線の図に押し込もうとすることから生じます。
因果関係の過度な単純化
ロジックモデルはAをすればBが起きるという直線的な論理に基づきますが、社会課題の現場はそれほど単純ではありません。
- 外部要因の無視: プロジェクトの外で起きている経済状況の変化や、対象者の個人的な事情などが結果に大きく影響しますが、モデル上ではそれらが前提条件として端に追いやられがちです。
- 非線形な変化: 現実は一歩進んで二歩下がるような螺旋状の変化をたどりますが、モデルは右肩上がりの成長を前提とするため、現場の感覚と乖離(かいり)が生じます。
アウトプットへの執着(数値の罠)
測定のしやすさから、本来目指すべきアウトカム(変化)よりもアウトプット(実績)が優先されてしまう現象です。
- 手段の目的化: 研修を20回開催するというアウトプット目標を達成することに全力が注がれ、参加者の生活が実際に改善したかというアウトカムが二の次になるケースです。
- 報告のためのモデル: 資金提供者(ドナー)への報告を意識しすぎるあまり、達成可能な低い目標ばかりが設定される守りのロジックモデルになりがちです。
硬直化と学習の停止
一度モデルを確定させると、それが絶対の計画になってしまい、柔軟な軌道修正を妨げることがあります。
- ピボット(方向転換)の難しさ: 現場でこのアプローチは間違っていると気づいても、予算や合意形成がロジックモデルに基づいて固定されているため、変更に多大なコストがかかります。
- 失敗の許容度の低さ: 矢印の通りに結果が出ないことをモデルの失敗=事業の失敗と捉えてしまい、試行錯誤から学ぶ文化が損なわれます。
作成プロセスにおける独占
専門家や事務局だけで作成してしまい、現場スタッフや当事者の視点が欠落する課題です。
- 納得感の欠如: 現場の人間が自分たちの仕事の実態を反映していないと感じると、モデルはただの壁紙になり、組織の行動原理として機能しません。
- パワーバランスの反映: 資源依存理論で学んだように、資金力のある組織の論理がモデルに強く反映され、小さな組織や当事者の声が消されてしまうことがあります。
ロジックモデル運用上の不全チェックリスト
| 兆候 | 発生している課題 | リスク |
| アウトカムの欄に満足度しか書かれていない | 変化の捉え方が浅い | 社会的なインパクトが証明できない |
| 数年前のモデルを一度も更新していない | 適応性の欠如 | 時代遅れの活動を繰り返す |
| 現場スタッフがモデルを知らないと言っている | 参画プロセスの不備 | 実効性のない絵に描いた餅化 |
| 矢印の通りにいかないことを隠そうとする | 学習文化の不在 | 組織としての成長が止まる |
分析
これらの課題の本質は、ロジックモデルを正解が書かれた地図だと勘違いしてしまうことにあります。本来ロジックモデルは、航海をしながら常に書き換えていく仮説の束であるべきです。
課題の解決
ロジックモデルの硬直化や単純化という課題を解決するためには、モデルを固定された計画図から、対話と修正を前提とした動的な学習装置へと進化させる必要があります。
実務上の課題を乗り越えるための4つの主要な解決策を提示します。
アダプティブ(適応的)ロジックモデルへの転換
一度作ったら終わりという考えを捨て、環境変化に合わせてモデルを更新し続ける手法です。
- 定期的なリフレクション(振り返り): 四半期に一度、現場スタッフが集まり矢印(因果関係)は本当に機能しているか?を検証する時間を設けます。
- 仮説の明文化: 矢印のそばになぜそうなるのかという前提条件(Assumptions)を書き込みます。結果が出ないとき、活動が悪いのか、前提条件が崩れたのかを切り分けて分析できるようにします。
変化の理論(ToC)との二段構え
直線的なロジックモデルの弱点を、より深い洞察を伴う変化の理論で補完します。
- ナラティブ(物語)の共有: 図に収まりきらない対象者の心理的変化や地域の歴史的背景を文章化します。
- バックワード・マッピング: 活動から結果を考えるのではなく、まず理想の未来(インパクト)を描き、そこから逆算して必要なステップを積み上げます。これにより、手段の目的化を防ぎます。
ステークホルダー・コ・デザイン(共同設計)
パワーバランスの偏りを防ぎ、現場の納得感を高めるプロセスを導入します。
- ボトムアップの作成: 事務局が案を作る前に、現場スタッフや受益者(当事者)を交えたワークショップを行い、彼らが感じる変化の兆しをモデルに反映させます。
- 共通指標の重層化: 資金提供者が求める数値指標だけでなく、現場が大切にしているエピソード(定性データ)もアウトカムとして正式に位置づけます。
コンテクスト(外部要因)の可視化
モデルの外にある要因を無視せず、リスク管理として組み込みます。
- 影響要因のレイヤー化: 組織が直接コントロールできる範囲(活動・アウトプット)と、影響は及ぼせるが制御はできない範囲(アウトカム)、全く制御できない範囲(外部環境)を色分けして可視化します。
- もしも(What-if)の検討: もし景気が悪化したら?もし協力団体が離脱したら?というリスクを想定し、その際のアクティビティの修正案をあらかじめ議論しておきます。
課題解決のためのロジックモデル・アップデート比較
| 項目 | 従来のロジックモデル | 解決後のロジックモデル(3.0) |
| 位置づけ | 資金調達のための証明書 | 現場が進化するための学習ツール |
| 構造 | 単純な直線(一方通行) | 循環するフィードバックループ |
| 視点 | 専門家によるトップダウン | 当事者を含めた共創(Co-design) |
| 扱い | 完成したら変更しない | 状況に応じてピボット(転換)する |
分析
ロジックモデルの課題解決で最も重要なのは、失敗をデータの宝庫と捉える文化です。モデルの矢印通りに物事が進まなかったとき、それを計画の失敗と断じるのではなく、新しい発見があったと捉えてモデルを書き換える。この知的誠実さこそが、実効的ガバナンスにおける中間支援組織の真の役割となります。
変化の理論(Theory of Change: ToC)出典・参考文献
ToCは、1990年代に米国のアスペン研究所(Aspen Institute)で議論された複雑なコミュニティ・イニシアチブ(Comprehensive Community Initiatives)の評価手法から発展したため、実務的なガイドラインと学術的な評価論の双方に重要な文献が存在します。
概念の提唱と基礎理論(バイブル)
ToCの考え方を世に広めた、最も基本的かつ歴史的な文献です。
- Weiss, C. H. (1995). “Nothing as Practical as a Good Theory: Exploring Theory-Based Evaluation for Comprehensive Community Initiatives for Children and Families.”
解説: 評価学の大家キャロル・ワイスが、複雑な社会プログラムの評価には、その背後にある変化のメカニズム(理論)を解明することが不可欠だと説いた記念碑的論文です。 - Connell, J. P., & Kubisch, A. C. (1998). “Applying a Theory of Change Approach to the Evaluation of Comprehensive Community Initiatives.”
解説: アスペン研究所の報告書。ToCを構築するための具体的なステップ(逆算、前提条件の特定など)を初めて体系化しました。
実務ガイド・マニュアル(スタンダード)
現在、世界中のNPOや財団が標準として採用しているガイドラインです。
- Taplin, D. H., & Clark, H. (2012). Theory of Change Basics: A Primer on Theory of Change. ActKnowledge.
解説: ToCの専門機関であるActKnowledgeによる入門書。バックワード・マッピングの具体的な手法が分かりやすく解説されています。 - Stein, D., & Valters, C. (2012). “Understanding Theory of Change in International Development.” LSE Justice and Security Research Programme.
解説: ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)による報告書。国際開発の文脈でToCがどのように使われ、どのような課題があるかを批判的に分析しています。
日本における主要な文献
日本の行政や非営利セクターの文脈でToCを理解するための文献です。
- 今田忠 (編著) (2015). 『社会評価:プログラム理論と社会的インパクト評価』 勁草書房.
解説: 日本におけるプログラム理論評価の第一人者による著書。影響理論とプロセス理論をいかに設計し、評価に繋げるかを詳しく論じています。 - 社会的インパクト評価イニシアチブ (2017). 『社会的インパクト評価ガイドセット』
解説: 日本国内の休眠預金活用事業などで標準的に参照されているガイド。ロジックモデルとToCの違いや、作成のステップが実務者向けにまとめられています。
理論の進化と批判的考察
ToCを単なるツールではなく、戦略的思考として深めるための文献です。
- Vogel, I. (2012). “Review of the use of ‘Theory of Change’ in international development.” UK Department for International Development (DFID).
解説: 英国国際開発省によるレビュー。ToCを単なる箱と矢印の図にしてしまう罠を警告し、プロセスとしてのToCの重要性を強調しています。 - Mayne, J. (2015). “Useful Theory of Change Models.” Canadian Journal of Program Evaluation.
解説: 複雑な因果関係をどうモデル化し、貢献分析(Contribution Analysis)に繋げるかという高度な議論を展開しています。
文献を読み解くための理論的マトリクス
| 文献(主著者) | 強調されている点 | 役割 |
| C. Weiss (1995) | なぜ変化が起きるのかの理論 | 概念の確立 |
| Connell & Kubisch (1998) | インパクトからの逆算(バックワード) | 実装手法の確立 |
| I. Vogel (2012) | 対話と学習のプロセス | 運用の質の向上 |
| 今田忠 (2015) | 評価指標との整合性 | 測定可能性の担保 |
アドバイス
ToCを深く理解したいのであれば、まずは Weiss (1995) でなぜ理論が必要なのかという哲学を学び、次に Taplin & Clark (2012) でどう描くかという技法を習得するのが王道です。
実務においては、単に図を作るだけでなく、Vogel (2012) が指摘するように、ステークホルダー間で仮説をぶつけ合うプロセスそのものに価値があることを忘れないでください。
出典・参考文献
ロジックモデルの出典や参考文献は、1970年代の評価学(Evaluation)の誕生から、1990年代の非営利セクターへの普及という流れの中で形作られてきました。
ロジックモデルの原典と文献
ロジックモデルという言葉を定着させ、世界標準のフォーマットを作った文献です。
- Wholey, J. S. (1979). Evaluation: Promise and Performance. Urban Institute Press.
解説: ロジックモデルという用語が最初に使用された、歴史的に最も重要な文献の一つです。著者のジョセフ・ホーリーは、プログラムの構造が評価に耐えうるものかを判断する評価可能性アセスメント(Evaluability Assessment)の枠組みの中でこの概念を提唱しました。 - W.K. Kellogg Foundation (2004). Logic Model Development Guide.
解説: 現在私たちが目にするインプット→活動→アウトプット→アウトカム→インパクトという5要素の視覚的フォーマットを決定づけたガイドです。非営利組織向けに書かれており、世界で最も引用・参照されている実務マニュアルです。 - United Way of America (1996). Measuring Program Outcomes: A Practical Approach.
解説: 全米最大の非営利団体United Wayが発行したこの冊子は、助成金の世界にアウトカム(成果)という概念を浸透させ、ロジックモデルを必須のツールにする大きな契機となりました。
プログラム理論(学術的背景)
ロジックモデルの背後にあるなぜ効くのかという理論的側面を深掘りするための文献です。
- Rossi, P. H., Lipsey, M. W., & Freeman, H. E. (2004). Evaluation: A Systematic Approach. (邦訳:『社会的プログラム評価法』勁草書房)
解説: 社会プログラム評価のバイブル的な教科書です。プログラム理論(Program Theory)を影響理論とプロセス理論に分けて詳述しており、ロジックモデルを学術的に構築するための最良の資料です。 - Bickman, L. (1987). “The Functions of Program Theory.” New Directions for Program Evaluation.
解説: プログラム理論が評価においてどのような役割を果たすかを整理した論文。因果関係をブラックボックス化せず、透明にすることの重要性を説いています。 - Weiss, C. H. (1972). Evaluation Research: Methods for Assessing Program Effectiveness.
解説: プログラム評価の先駆者キャロル・ワイスによる初期の著作。後に変化の理論(ToC)へと繋がる、プログラムの論理構造を解明する視点を提供しています。
日本における主要文献
日本独自の文脈や、国内での導入事例を学ぶためのリソースです。
- 今田忠 (2015). 『社会評価:プログラム理論と社会的インパクト評価』 勁草書房.
解説: 日本におけるロジックモデル研究の第一人者による著書。Rossiらの理論を日本の文脈に適合させ、実例を交えて解説しています。 - 源由理子 (2011). 『評価学の現在―社会の変革を支える実践的な知』 晃洋書房.
解説: 評価の理論的な系譜から、ロジックモデルがどのように位置づけられるかを整理しています。
出典・文献の系統図
| 文献のタイプ | 代表的な著者・団体 | 役割 |
| 用語の起源 | Joseph Wholey (1979) | Logic Modelの命名と概念化 |
| 評価の教科書 | Rossi, Lipsey & Freeman | プログラム理論の体系化 |
| 実務の標準化 | W.K. Kellogg Foundation | 現在のビジュアルフォーマットの普及 |
| 日本の標準 | 今田忠 / 源由理子 | 日本の公共・NPOセクターへの導入 |
分析
これまでに調べてきたコレクティブ・インパクトや変化の理論(ToC)の文献と合わせると、ロジックモデルは1970年代の公的プログラムの監査から始まり、1990年代の非営利組織の戦略ツールを経て、現在は社会変革のための共創プラットフォームへと進化してきたことがわかります。
注意
以上の文書はAI Geminiが生成したものを加筆修正しており、誤りが含まれる場合があります。
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