前回まで、中国のインフラ産業覇権について取り上げました。礼賛するつもりではなく、実際さまざまな問題も指摘されています。そこは注意深く観察し、ここでは日本のインフラ投資を考えたいので、海外支援と共にスタディしたく思います。AIに調査させ、参照文献を確認し、補足修正しながら文書作成しています。
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海外支援についてスタディ
従来より各国が協調して行うODAに対して、中国が行う一帯一路が現れ急速に拡大しました。どちらも開発支援を目的とする取り組みですが、ODA(政府開発援助)は、開発途上国の経済社会開発を支援する政府間協力であり、合意形成をしながら日本を含む先進国が実施しています。一方、一帯一路は中国が主導する広域経済圏構想であり、インフラ整備などを通じて経済的な結びつきを強化することを目指しており、二国間競技で急速に事業を拡大しています。
- The Impact of Official Development Assistance – Number Analytics, 2025/6/20閲覧、 https://www.numberanalytics.com/blog/impact-official-development-assistance
- Japan’s Assistance Philosophy – Official Development Assistance …, 6月 20, 2025にアクセス、 https://www.id.emb-japan.go.jp/oda/en/whatisoda_05.htm
- International aid falls in 2024 for first time in six years, says OECD, 6月 20, 2025にアクセス、 https://www.oecd.org/en/about/news/press-releases/2025/04/official-development-assistance-2024-figures.html
- Development Assistance Committee (DAC) – OECD, 2025/6/20閲覧、 https://www.oecd.org/en/about/committees/development-assistance-committee.html
- Belt and Road Initiative – Wikipedia, 2025/6/20閲覧、 https://en.wikipedia.org/wiki/Belt_and_Road_Initiative
- Debt Distress on the Road to “Belt and Road” | Wilson Center, 20256/20閲覧、 https://www.wilsoncenter.org/blog-post/debt-distress-road-belt-and-road
- “Inclusive Globalization: New Philosophy of China’s Belt and Road …, 6月 20, 2025にアクセス、 https://bulletinofcas.researchcommons.org/journal/vol32/iss4/1/
- China Belt and Road Initiative (BRI) Investment Report 2024, 6月 20, 2025にアクセス、 https://greenfdc.org/wp-content/uploads/2025/02/Nedopil-2025_China-Belt-and-Road-Initiative-BRI-Investment-Report-2024-1.pdf
- China’s Massive Belt and Road Initiative | Council on Foreign …, 6月 20, 2025にアクセス、 https://www.cfr.org/backgrounder/chinas-massive-belt-and-road-initiative
各国の拠出規模
ODAが救済・平和構築を主目的にするのに対し、一帯一路は経済圏構築が目的で大きく異なります。中国一国で ODA に近い支出をする一帯一路の規模は凄まじく、その影響力に各国が脅威を覚えるのも無理はありません。また、日本の ODA も累計で5505億ドルとかなり大きいことがわかります。
2024年の政府開発援助(ODA)、開発援助委員会メンバー別(速報値)ODA webより
左のグラフは各国の拠出額と GNI の比率、右は拠出額(10億ドル単位)のランキングです。米国、ドイツ、英国、日本の順に拠出しています。
日本は世界有数のODA拠出国
- 日本の ODA は2024年度で世界4位、167億7千万ドル、GNI の0.39%相当を拠出
- 日本の ODA 実績: 190カ国・地域に対し支援を行っており、累計支出総額は約5,505億ドル(約67兆円)に上る。国際機関への拠出も含まれる。
- 日本の ODA は「人間の安全保障」を指導理念として掲げ、人への投資や共創、包摂性・透明性・公正性に基づく国際ルール・指針の普及と実践を重視。
- 日本の ODA は JAICA を通して実施されている。
海外支援と国内インフラ投資の比較
ODA は GNI 比率1%の拠出が推奨されています。では、JICA が行う ODA 投資や国内インフラ投資は GDP に連動して増減するかと思えばそうでは無いようです。JICA は円借款や無償協力などの援助が組み合わされていますが、ここでは単純合計をしてみます。年によって結構バラツキがあり、GDPが縮小した翌年に大幅増額するなど、相関は無さそうな模様です。
JICA海外開発支援額と国土交通省公共事業関係費総額の比率の推移
年度表記: JICA支援額および日本のインフラ投資は日本の会計年度(FY: 4月〜翌年3月)に基づき、GDPは暦年(CY: 1月〜12月)に基づいています。
- 日本のJICA支援総額: 記載されている金額は、利用可能な資料に基づき、有償資金協力の「承諾額」または「借款契約額」、技術協力や無償資金協力の「実績額」など、計上方法が異なる場合があります。
- 主要支援先GDP: 2023年のGDP額と成長率は、JICAの主要な支援先として言及された国々のデータです。
- 国土交通省の公共事業関係費総額(当初予算)を日本のインフラ投資の目安として記載しています 。
国交省予算が1.9兆円も減額している2023年に、ODAは6300億円増加するなど、財政健全化だけでは説明できない動きをしています。その苦しい時期、インドに1,917億円の円借款で路線長1500kmの貨物専用鉄道 (DFC:Dedicated Freight Corridor) 建設の支援を行い、これを三井物産などが受注した模様です。「日本政府がお金を貸し、日本企業が受注する」という形です。インドは大国でかつ経済発展中です。どうも途上国支援とは違った意味合いがある模様です。
FY2003 JICA相手先 | 支援額:億円 | 支援先GDP :10億¥ |
インド | 1,917 | 3,568 |
バングラデシュ | 287 | 437 |
2025(令和7)年度国土交通省予算額
今度は、国内インフラ投資の状況を知るために、国交省予算の内訳を見てみましょう。
国交省の資料から作成
一見して目につくのは道路整備の大きさです。都市の道路環境整備やその他項目にも道路整備が含まれるので、合わせて 1/3 以上を占めていそうです。市街地整備には、鉄道を高架化する「連続立体交差事業」が含まれていたり、2024年度から社会資本整備を公共交通にも使えるようになりましたが、道路への投資が圧倒多数で、鉄道や空港への投資はほんの僅かで、投資のほとんどは利用者が支払う運賃・料金や地方自治体などの負担で賄われていることがわかります。
考察
以上から何が見えるでしょうか?
- 国内投資とODAはGDPと無関係に動く
- 国内投資が絞られてもODAが増額されることがある
- ODAは大国にも供与されるが、日本企業がプロジェクトを受注している
- 国内投資の 1/3 は道路に行われ、他の交通モードへの投資は僅か
- 海外支援では大規模な鉄道投資も行うが、国内では道路偏重
の模様です。なぜ?が沢山出て来そうですが、まずは現状がこうだとスタディできました。この状況で日本のインフラがどんな形になっていくのか、輸送効率はどうなるのか、輸送効率による国際競争力はどうなるのか気になるところです。冗長性が無い新幹線網、地域公共交通の低いサービスレベル、軸重・車両限界・冗長性が貧弱な貨物鉄道システム、非効率なトラック輸送の改善には時間がかかりそうです。日本の交通インフラこそ ODA が必要なのでは?と思えてしまいます。