人と環境にやさしい交通まちづくりプラットフォーム滋賀(やさしい交通しが)による表記フォーラム、7月13日に予定通り盛況に開催されました。今回は、滋賀県内だけでなく福井・富山からも市民団体・学生・学識の方々が多く参加いただきました。
彦根の変遷を10分解説
彦根駅改札前で受付後、駅の自由通路から彦根の交通と街の変化ついて解説を行いました。駅北側では石田三成が居城した佐和山と井伊家支配への移り変わり、駅東側はセメント工場跡地に自動車都市型の商業施設ができ、商業の中心が移り渋滞が激しくなり中心街の衰退が起き、その後バイパスが開通して今後の動静が注目されること、近江鉄道駅待合室が彦根東高校により彩られていること、そして西口は幕府筆頭家老であった井伊家により東西の要衝であるここが滋賀の中心地であったこと、駅前の平和堂アルプラザ彦根が、かつて屋上遊園地も有し、北陸近畿に店舗網を広げる大躍進の一歩となりました。かつての彦根経済は旺盛だった訳ですが、自動車都市化により旧市街が衰退し、彦根城まで続く通りが飲食店中心となりテナントが住宅街地になり、南側への商店街がシャッター街となっている様子など、交通の変化が街を変えていることをコンパクトに解説しました。
彦根駅からはバスに乗り、5分で銀座商店街に移動しました。車内からはシャッター街と化した旧市街地の商店街の様子が観察できました。
彦根銀座商店街のまちづくり活動
彦根銀座商店街にある平和堂1号店前のバス停からコミュニティカフェ店主の忠田季空さんより銀座商店街の現状やまちづくり活動を紹介いただきました。普段は入れない小島ビルの中を見学。かつては結婚式、バレエのレッスン、ピアノ教室など豊かな文化が花ひらいた舞台でもありました。屋上にも特別に見学させていただき、彦根城・びわ湖が一望できる眺望も楽しめました。この商店街も自動車都市化によりシャッター街化が顕著で、国道沿いの温浴施設ができ銭湯が壊滅したといったお話も出ましたが、滋賀銀行だった建物を滋賀大学と電通とトヨタのコラボで活用したり、えびす講、サマーフェスなどさまざまな活動が行われていることが紹介されました。
銀座商店街の貴重な建造物
滋賀県立大学 濱崎一志元教授 から銀座商店街の防火建築が江戸時代の長屋区割りをそのまま踏襲した、とても複雑な鉄筋コンクリート造りになっていることなどを解説いただきました。かつては画期的な防火建築で、店舗兼住宅は食住接近なので夜間人口も減らず活気ある街だったそうです。現在は自動車都市化などにより人通りが減り、建物の老朽化、耐震化など課題が多く活用の方向性が探られています。会場は、その建物の一角を地元学生が設計施行したカフェ On Your Mark です。高島市・針江の湧水で淹れれたスペシャルティコーヒーをいただきながらの講義でした。また、観光では観光客の滞在が短い「90分問題」が提起され、観光客がこの地域を回遊する仕組みづくりの必要性が解説されました。
参加者の声
- 声彦根城以外にも豊富にある観光資源を有効利用したい
- 彦根市民として交通面でもやもやしていた所をうまく言語化してくれた
- 今ある地域資源を使って少しずつ人が来てくれる場所づくりをしていてすごい
- 屋上からのながめに昭和を感じた。先週テレビに出た店があった。
花しょうぶ通り商店街と生きた古民家
ここからカフェを出て、花しょうぶ通り商店街の古民家を3軒見学させていただきました。ここは伝統的建造物保存地区に指定されており、明治時代の古民家がそのまま残り、使われてもいます。清水家住宅はお住まいの方からかつての絹糸や店舗広告などを見せていただき、当時からの暮らしぶりが伺えました。
彦根市が管理する古民家は名神高速道路の土地買収事務所や平和堂の事務所となった広大なお屋敷に薪炊きのかまどやお風呂がそのまま残されていたり、4つもある蔵の防火方法など、濱崎先生より詳しく解説いただきました。
この後、ひこね芹川駅から桜川駅までは近江鉄道で移動。車内でも対話に花が咲きました。
参加者の声
- 説明や案内をうけることでより深く知れておもしろかった(歴史資源)
- 建物の中に入る経験がなかったので新たな学びになりました。外国の方などで好きな人が多いと思うので、活用次第では人を呼べそう。
- 格安の家賃で学生やスタートアップを呼び込む
- 銀座ビルは負の遺産としてしか思ってなかったので活用の可能性は新鮮だった
桜川 小房
桜川に移動。さくらがわ夢の館でショッパー桜川の海鮮丼をいただき、櫻川駅保存活用プロジェクトチームの西田善美さんから、小学生への地元の歴史を伝える活動が紹介されました。
500年前から地域に伝わる冠句(575の上の句だけ定め、詠み合う)、江戸時代から天秤棒を担いで近江商人は埼玉県や栃木県経由で江戸と往復する間に仕入れて売り続ける「のこぎり商法」を行っており、これが桜川と東京日本橋との繋がりになっています。御代参街道沿いに建設される予定だった近江鉄道を先人の努力で桜川に誘致し、街に商店街ができ発展しこれが自動車都市化で消えたことなど、街の生い立ちを伝えることは、巣立った子供たちが自分の故郷をしっかりと認識して語れるアイデンティティをつくる未来への活動です。
また、西田さんは「勝手駅長」として桜川駅の歴史を子ども達に伝えるかたわら、地域の方が花を活け、2020年には乗降客が楽しくなるように地域の人を誘って大勢のボランティアを集めペンキを塗ったりと整備が進みました。地域の方々が次々と楽しみにながら活動に加わっていったことが伝わりました。夢の館から桜川駅に戻る間、かつて鉄道開業で賑わっていた商店街の様子をお聞きし、、駅で掃除やペンキ塗りの活動と子ども達の反応などを現地現物でお話しいただきました。

日野に移動
また、驚きだったのはかつての集団就職の話で、米原から夜行列車で品川に着いた子供達はプリンスホテルに招かれ朝食をいただき、そこで就職相談会が行われたそうです。近江商人の繋がりで、日本橋(商業施設)、馬喰町(繊維)、醸造に就職する人が多かったとのこと。戦後も近江商人が東京と滋賀を結んでいたことが見えるエピソードでした。
参加者の声
- 西田さんの地元の子どもに対する気持ちや取組がすてきだと思いました。
- 先人の想いなどを知る機会をまちで作っている。地域の方が協力して駅を守っているのが興味深い。
- 私たちの駅を手づくりで盛り上げるチームワークのすばらしさ!!
ここから日野駅までは、西田さんらも一緒に近江鉄道で移動。
周囲を巻き込み、拡大し続ける日野の活動

こうけん舎西塚さんの説明
一般社団法人こうけん舎 西塚和彦さんより、日野駅舎再生の経緯の紹介がありました。近江鉄道が開業した時は貧弱な駅だったものを地域の方々がお金を出し合い駅舎ができたのですが、以後120年その駅舎は放置され、取り壊して簡易な屋根だけにする計画がわかり、地元民が駅舎保存の運動を開始。総経費1億3,700万円 のうち85,620,870円は住民をはじめ全国700名からの寄付で、「じいちゃんの駅を壊されてたまるか」という思いもあったはず。ただ、駅舎が綺麗になっても放置されてはいけないので、観光職員の常駐とカフェ機能を持たせた。平均乗降客500人では採算が合わないので、やりたい人がやれる日替わり店長方式を考案し、カフェ営業が続いています。また、毎年10月にはイベントを大規模に開催し、今年はガチャフェスで「日野が好きだ」をテーマに規模を拡大されます。交通結節とコミュニティ結節を強め続ける活動が主に動画で紹介されました。商店街、高校、行政と次々に関係者を巻き込み共に楽しみながら発展していく様子には参加者からも「凄い」という感想が聞かれました。
参加者の声
- 日野は貴生川から近いけどはじめて下車した。駅舎はすてきだ。
- なないろの活用、運営方法が参考になった。無理なく続けられる。
- 高校生とのかかわり方がうまい
- 多くの人が関わるなないろはすごいと思いました。
- ガチャフェスは今年は参加したい。もちろん一市民で!
後半はMLGsの視点を入れて今日の学びをふりかえるワークショップ。
MLGsとはびわ湖版のSDGsです。交通はMLGsのゴール7「びわ湖のためにも温室効果ガスの排出を減らそう」に関わること、滋賀県下から排出される温室効果ガスのうち2割が自動車由来であること、近江鉄道を活用するなどしてマイカー利用を控えることでMLGsの達成に寄与できることが紹介されました。そして、南村多津恵さんの進行で、今日見てきたことについて、参加者それぞれの視点から感想が共有されました。
今日の会は沿線をどこでも学びの場とする「コミュニティ・モバイル・カレッジ」として行われ、MLGsのゴール10「地元も流域も学びの場に」、ゴール13「つながりあって目標を達成しよう」とも関連することが紹介されました。
最後に山田から自動車都市で寂れてしまった中心街が歩く街と公共交通の組み合わせで再生している潮流が世界では起きており、インテリジェントアーバニズム(PIU)などの考えや、出雲市や欧州の事例を挙げて簡単に解説しました。交通の変化が街を変えてしまったのなら、街の活気は交通で取り戻せる可能性が伝われば幸いです。
あとは、有志による懇親会となり、やさしい交通しが代表の宇都宮浄人さんも加わり初対面の参加者も含め今日見てきたこと、これからの交通まちづくりについて、さまざま話が広がりました。現地に出向き、現物を見て、そこで活動する人から話を聞く。ただそれだけで、知らなかったこと、考えてもみなかったことが見えてきました。さぁ、8月からフォーラムやフィールドワークも開催されます。ぜひご参加ください!

懇親会
募集告知
さあ、今年も始まります、まちづくりと交通の広場しが2025。第1弾は、近江鉄道沿線で活動する団体の交流会です。
近江鉄道に乗り込んで、みんなでワイワイ楽しくお出かけしましょう!
近江鉄道線を活かしたまちづくりフォーラム沿線を電車でめぐってつながる MLGs交流ワークショップ
2025年7月13日(日)@彦根→桜川→日野
■申込み:7月9日(水)まで
https://forms.gle/c71vm71jb1BfbLaj9
近江鉄道を活かしたまちづくり活動って、どこで何やってるの?
みんなで電車に乗って、おとなの社会見学へ行こう♪
見て回って、話を聞いて、活動発表して、つながろう!
近江鉄道沿線にはまちづくりに熱心な団体がたくさんあります。
毎年10月の「ガチャフェス」の日には沿線で一斉にイベントを開催して、みんなで地域を盛り上げています。
一年に一度、共同のイベントに参加する仲間ですが、お互いに何をやっているかは実はあまり知らないのでは?
それぞれ何のためにどんな活動をしているの? それによって地域にはどんないいことが起こっているの?
地域のシンボル、近江鉄道と一緒に取り組むことで、この地域に起こっている良い効果って何でしょう。
みんなで近江鉄道に乗り込み、交流しながら、他の団体の活動の現場を見に行ってお話を聞き、普段はあまり意識していないことにも目を向けてみませんか。
そして、いろんな団体の人たちと情報交換しあいましょう。
近江の自然や、環境や、交通、コミュニティを、交通まちづくりやMLGs(マザーレイクゴールズ)という新たな視点で見つめて、これまで気づかなかった自分たちの活動の価値を探してみます。
あなたが知らなかったまちづくりのヒントが見つかるかも!?
■申込み:7月9日(水)まで
https://forms.gle/c71vm71jb1BfbLaj9
■日時 :2025年7月13日(日)9:30-16:50
(終了後に懇親会を行います)
■集合 :JR彦根駅改札前 受付9:15ー9:25
(解散:近江鉄道日野駅)
■場所 :彦根銀座商店街、近江鉄道桜川駅、日野駅舎なないろ
■参加費:無料(近江鉄道ワンデイスマイルチケット900円、
弁当代650円、ワンドリンク代、懇親会費は別途)
■持ち物:水筒(熱中症対策)、ご自身の活動のPRグッズ、
近江鉄道ワンデイスマイルきっぷ
(集合前に近江鉄道の駅で購入してください)
■対象 :近江鉄道沿線で活動している方、
まちづくりやMLGsに関心のある方、どなたでも
■定員 :25人(先着順)
■プログラム(予定):
9:30 JR彦根駅改札集合
→ 徒歩移動1.5km
10:20 彦根銀座商店街を訪問 濱崎一志さんとまちあるき
11:30 On Your Mark2号店 出立
→ 徒歩移動1.2km
11:55 ひこね芹川駅発
12:38 桜川駅着
→ 徒歩移動 ショッパー桜川 昼食休憩
13:30 桜川まちづくり団体を訪問 西田善美さんのお話
14:38 桜川駅発
14:49 日野駅着
15:00 日野駅舎なないろを訪問 西塚和彦さんのお話
全員で交流
16:00 全員で交流
16:50 終了、希望者は懇親会へ
■申込み:7月9日(水)まで
https://forms.gle/c71vm71jb1BfbLaj9
■主催 :人と環境にやさしい交通まちづくりプラットフォーム滋賀
(やさしい交通しが)
マザーレイクゴールズ推進委員会
■協力 :近江鉄道株式会社(予定)、一般社団法人こうけん舎
- 投稿タグ
- #Citizen, #Shiga, #Urban design
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