
教材の説明
- 対象:地⽅公共団体の担当者、都市・教育・商工・医療・福祉など地域交通に関わる可能性がある⽅、交通事業者、コンサルタント
- 公共交通で都市や地域を佳くしようとする視点を啓発するため,普遍的な「概念・理論」の解説を中⼼に据えて解説します。地域交通をリ・デザインするうえで求められる「構想⼒」や「実現⼒」の向上が図られ,地域公共交通の確保・維持に施策を終始させるのではなく,持続可能な地域社会を実現するために公共交通を活かす視点やノウハウを持ち,他主体との「共創」をコーディネートすることが期待されます。
- 2024年度は、講師陣による内容の討議を⾏い,それに対してオンライン等で聴講・コメント可能とするサロンを開催し,教材の試⽤版を作成しました。
- 本事業は、国土交通省の2024年度 「共創・MaaS実証プロジェクト」モビリティ人材育成事業の二次募集で採択を受けた「地域交通をリ・デザインする「構想⼒」「実現⼒」向上サロン」(福島大学 吉田樹教授)により制作されました。
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公共交通で地域を佳くする政策の概念・理論を解説します。また、政策の実践にあたり、要となる協議会の運営について解説します。
全国各地の地域公共交通会議等に委員やアドバイザーとして参画する傍ら、フィールドにおける実証分析と定量的アプローチを含めた理論構築の双方から研究を進めています。公営・民営バスの共同運行を契機としたバス路線網の再構築、運賃低廉化施策(八戸市)、地域組織による移動手段の確保(山形市、佐井村)など多数の取組があります。参加協議会:青森県,八戸市,三沢市,十和田市,大船渡市,湯沢市,山形市,福島市,会津若松市,南相馬市,山形定住自立圏、武蔵野市,飯能市,大田原市,足利市,那須塩原市,那須町,塩谷町,五霞町,小田原市,須坂市,高山村(長野県),那須地域定住自立圏など。主な著書: バスサービスハンドブック 改訂版 (共著) 2024、地域公共交通政策論,23-39 (共著) 2021、福島復興学Ⅱ(共著) 2021 |
公共交通で地域を佳くする際に必要な問題解決の手順、合意形成に必要な共通認識や手順について鉄道経営の実務経験 より解説しています。
参考資料
- SUMP「持続可能な都市モビリティ計画の策定と実施のためのガイドライン」(地域公共交通総合研究所)
- 【書評】持続可能な交通まちづくりー欧州の実戦に学ぶ(地域公共交通総合研究所)
IT業界でマーケティング・販売企画に25年携わり鉄道業に転身。若桜鉄道社長としてSL走行社会実験では沿線人口の7割相当を動員し鉄道を地域の観光軸とし経営改善を進めた。定期船航路の人材確保、近江鉄道の沿線住民など3万8千人を動員した無料デイ・沿線連携イベントを推進。第24回 貨物鉄道論文賞 最優秀賞 著書 希望のレール
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公共交通を都市や地域に実装する際、デザインの思考が問題解決や合意形成・行動変容への推進力となります。使いやすくその地域に相応しいデザインは、利用を促し地域の生活を変え、街づくり全体への意識も高めます。 このデザインの力について、豊富な事例と共に第一線のインダストリアルデザイナーが解説します。
講師 井上 晃良
inoue design代表
1963年東京生まれ、東京造形大学デザイン学科卒業後、本田技術研究所にて汎用製品デザイン勤務(1986 – 1988)、ドイツ・フォルツハイム造形大学トランスポーテーションデザイン学科(上築課程)を卒業(1990 – 1992)、在学中ドイツ連邦鉄道(現ドイツ鉄道)デザインセンターにて実習、ドイツ・PFA GmbH、TriCon Design GmbHにて鉄道車両のエクステリア、インテリアデザインを手掛ける。(1992 – 1997)帰国後、inoue design代表、TRICON DESIGN AG・シニアデザイナー、日本大学藝術学部、東洋大学非常勤講師
1985年東京生まれ。東京造形大学デザイン学科卒業後、株式会社GKインダストリアルデザインに入社。業務用機器、医療機器、鉄道車両等のデザインに従事。現在は株式会社GKグラフィックスにて、日用品、シンボルマークなどのグラフィックデザイン、公共交通のデザイン、ブランディングに従事。東日本旅客鉄道株式会社HB-E300系でInternational Brunel Awards 奨励賞受賞、大山案内サイン統一化プロジェクト、芳賀・宇都宮LRTでGood Design Award 受賞。2017年より学校法人 日本教育財団モード学園にてスペシャルゼミ講師を担当。2018年~2019年 学校法人専門学校 東洋美術学校クリエイティブ概論にて外部講師を担当。 |
受講者からの声
試用版をご覧いただいた方々からは以下のような声を頂きました。
公共交通の外部性、地域交通の制度と協議会への向き合い方
- 公共交通のリ・デザインの意義・必要性について、交通施策担当者だけではなく、事業者、市民、さらには、普段、公共交通に接する機会の少ない行政職員にも同一の教材を用いて共有できる取り組みは、非常に有意義であると思います。(ありがたいです)
内容も、数値根拠や事例(八戸・会津若松)などを踏まえて構成されており、大変分かりやすく、また、公共交通を都市交通と生活支援交通に分類することで施策展開が異なることを明示しており、理解を深める教材としても有効であると思いました。
- 交通政策について、交通単体での採算性確保や移動弱者の支援という文脈で捉える考え方が根強くある一方、様々なデータから公共交通がもつ外部性を説明いただくとともに、具体の事例も交えて説明いただいていることで、理念を理解していただきやすい内容になっていると思います。
二法協議会における個々の法令のカバー範囲、会議の形骸化の防止方策、計画策定にあたってのポイント、さらには、担当者がどのように調整を進めるのかについて的確に説明されており、実務担当者向への解説としては大変貴重な動画であり、交通事業者と市民、財政部局との板挟みとなっている担当者のモチベーションの向上に繋がるものと考えます。
問題解決の手順、合意形成
- 分析の重要性や分析すべきポイントが整理されており、大変参考になりました。
- 問題解決の順序を守らずに、的をはずした対策(対処療法)をやっているケースが、自治体にもよくあると改めて思いました。
- 巨象の例はとても分かりやすいと感じました。
交通に関する具体の例示が追って紹介されている点も、より直感的な理解に繋がると思います。
- 理想の未来像(高い目標)を目指すことで、やり方でもめずに、総論として動き出せるという考え方は、公共交通に限らず、合意形成する考え方として有効的だと思いました。
- SUMPの手法は、弱い立場の意見を聞くなど、日本でも通用するやり方だと思いますので、是非、実務に取り入れながらやれればと思いました。
公共交通におけるデザインの役割
- 豊富な事例で大変参考になりました。単に交通を走らせる・維持するということではなく、周辺の機能と一体となったデザイン(=まちづくり)と理解しました。
移動のストレスをデザインに基づき評価している観点が非常に斬新でおもしろいと感じました。
- 交通のデザインが利用者や地域の愛着・結束力を強める好事例がたくさんあり参考になりました。
また、公共交通利用に車とは異なる価値を見出すことへの取り組みを進めていきたいと思いました。
- インバウンドを念頭に、交通に係る表記について全ての人が理解できる表記・言語・ピクトグラムにすることの大切さがわかりました。一方で、ローカライズが必要な部分もあり、そこが地域の特性となるという相反する概念があることも理解しました。
- 多くの人が共感できるコンセプトを時間をかけて作り上げていくことで、地域に密着した特異性と普遍性(意匠だけではなく、使われ方も含めた)デザインを有する公共交通が生まれていくのだと思います。
- トータルデザインに基づいた公共交通を導入できれば、街づくりとして非常に魅力的であり、インパクトがあると思いました。来訪者を呼び込むことにもつながると思います。市民アンケートなど市民と一緒に形作る大切さも理解しました。
- 複数交通モードの連携・シームレスな乗換えの実現というトピックは、最近注目されているMaaSの実装にも繋がるエッセンスがあると感じました。
MaaSに関しては、アプリやデジタルチケットの導入に議論が終始しやすい中、そもそもの乗継ぎ環境や(待合環境のようなハード面や、情報発信のようなソフト面)、運行ダイヤの接続(鉄道ーバス、バス-バス)、結節点からのタクシー利用の円滑性などといった、基礎的な部分もしっかり対応することが重要になってくると思います(が、軽視されやすい傾向があると感じています)。
全体を通して
- 交通施策担当者だけではなく、事業者、普段、公共交通に接する機会の少ない行政職員にも同一の教材を用いて意識を共有できる取り組みは、非常に有意義であると思います。
全体を通して感じたのは、地域交通の外部性の理解(自治体、住民)が自分ごととして交通を考え、共創していくための最初の一歩になるということであった。
- YouTubeでの提供されるという形式が好きな時にみることができるので、非常に優れていると感じました。今回も気になるところを何度も繰り返し見ることができました。私のような公共交通の初心者にとって間違いなく有用な内容となっています。可能でれば、本県の自治体(市町村を含む)の研修等に当該動画を活用させていただき、公共交通に関わる職員のレベルアップにつなげていきたいと思いました。大変勉強になりました。ありがとうございました。
- 交通が生み出す効果は交通分野に閉じないことから、交通政策の検討プロセスにおいて、自治体の交通部局に限らず、まちづくり政策や移住政策、福祉・子ども関連政策など、他部局の実質的参画を促すことが重要と感じています。
この点、こうした他部局にも、今回の動画教材を効果的に届けることで、自治体の複数部局間の連携にも繋げられると良いと思います。その他、自治体と事業者間の連携や、民間の他分野の関係者や地域住民の参画にも繋がればと思います。
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