企業活動や学術活動では、知的財産や研究実績を守るため、機密を守る必要があります。では、なぜ広報が必要なのでしょうか?「出さなければ安全」は確かです。では、「ガラス張りにする」メリットとは何でしょうか?

出資者への透明性を高める必要

企業であれば株主、学識や市民活動では飢饉や寄付者など資金提供者に対して、受け取ったお金がどのように使われどのように活かされたのかは大事な報告となります。いわゆる「透明性」です。この透明性が担保されないと出資者からの信頼が得られず、資金を確保できなくなる恐れがあります。

例えば、米国の市民団体スマートグロースアメリカは年間7億円ほどの資金を使用し、全米1700都市での政策決議に成功するなど大きな成果も上げていますが、資金の使途や活動などは開示され、透明性を担保しています。

世論の賛同を得るための「主張」と「根拠」

何の目的なのか、意図が見えない活動は不気味に感じます。また活動の状況や苦労を知っていただくことで、賛同を得られると共に、憶測・邪推による批判も抑えることができます。活動の目的・内容などを見せることにより、疑念を晴らし賛同を得られやすい環境を作ることにつながります。

活動を活性化する「刺激」

お互いの活動が見えることにより、刺激が生まれ、これがモチベーションに繋がることがあります。「あいつ頑張っているな、俺も頑張らないと」「彼らはそこまで行ったか。ならばこちらももっと進めなければ」などです。

これが視覚的にわかりやすい例が2つあります。

はこだて未来大学のキャンパス

はこだて未来大学キャンパス

教室、研究室、学生フリースペース 全てがお互いに見えるように壁のないオープン空間やガラス張りになっています。学ぶ・研究するには必ず他者がいる必要がある、生身の人間がそこにいることが相手に伝わって初めて重要な情報が伝わると考え作られています。1999年に完成し建築設計の山本理顕氏は建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞しました。

近畿大学 アカデミックシアター

近畿大学 アカデミックシアター (編集工学研究所より)

本との出会いを楽しむアクティブ空間と位置付け、松岡正剛氏の編集工学研究所「近大インデックス」分類により本との偶然の出会いで知的好奇心を掻き立てる仕組みが作られています。ラーニングコモンズは全面ガラス張りなので。ほかの学生が自習している姿を間近に見ることで、「自分もやらなきゃ」とやる気を起こさせるきっかけになっています。はこだて未来大学では、教室や研究室などはまっすぐ並んでいますが、このアカデミックシアターでは部屋の配置をちょっとずつずらして曲げることで、外の人の視線が気になり気が散りすぎない配慮がされています。

スターバックスのサードプレイス

スターバックスの「サードプレイス」は、家庭(第一の場所)でも職場(第二の場所)でもない、顧客がリラックスし、コミュニティと繋がれる「第三の場所」を提供するという明確なビジョンに基づいていました。ここでも人との関わりが鍵となります。実際に作業などをしてみるとわかるのですが、「見られている」という緊張感が身だしなみや仕事ぶりに影響を与えるように感じられます。

公共交通の公共空間

また、高校生などは「人目がある」ことで安心感を得られるそうです。密室だと怪しい人が入ってきても誰も助けてくれないといった怖さを感じるそうです。公共交通は乗り合いですし、駅の待合室も共有空間です。つまり元々壁がありません。子供の頃から個室を与えられ、人目があると集中できない人にとっては難しい空間かもしれません。しかし、お互いの気配を感じ緊張感を持ちつつ刺激し合うという時には、面白い効果を生むかもしれません。