今まで、流れを掴むために都市設計と自動車依存に関して、個々の記事で概説してきましたが、改めて流れを追って考えます。
年表などはこちらの記事に掲載されています。
[音声概要を聞く] [自動車都市からの見直し、米国と日本で違いが生じた原因は?]
TODから自動車都市に変化
路面電車型郊外住宅地(TOD)
[音声概要を聞く] 1800年代、北米主要都市には5万kmもの路面電車が運行され、TOD(公共交通指向型開発)の元となるコンパクトな混合開発「路面電車型郊外住宅地」が建設されていました。これがその後、電力企業との分離により経営が分離され路面電車の収益性が悪化し、NCLに買収されて次々と廃線になり、住宅街も住宅政策から時代遅れの烙印を押され荒廃していきます。
[歩行者に優しい都市開発のルーツはここ?路面電車型郊外住宅地]
[自動車の社会的影響と消えた「路面電車郊外」]
[Wikipedia記事]
自動車都市
[音声概要を聞く] 自動車都市とは自動車移動を促進・奨励する都市のことです。1900年代初頭にT型フォード量産等による自動車産業の飛躍的拡大、1924年に「古い慣習法は自動車に道を譲るべき」という勧告と共に都市交通インフラが自動車を中心に再構成され、1930年代に自動車対鉄道のロビー活動敵対とNCLによる路面電車廃線、1957年の米国高速道路信託基金設立と高速道路建設。などにより米国は自動車都市化が進みました。
[自動車都市を検証する]
[歩行者に優しい都市開発のルーツはここ?路面電車型郊外住宅地]
[自動車都市からの見直し、米国と日本で違いが生じた原因は?]
[自動車の社会的影響と消えた「路面電車郊外」]
[Wikipedia記事]
道路特定財源の記事も参考になります。
自動車依存
[音声概要を聞く] 自動車依存とは、都市計画インフラにおいて、他の交通手段よりも自動車の利用が優先される現象です。歩行者や公共交通が動きづらくなり、買い物なども自動車でしか移動できない地域も増え、ますます自動車依存が進むようになりました。
[Wikipedia記事]
社会的費用が社会的課題に
自動車の外部性
[音声概要を聞く] 自動車の外部性とは、自動車の所有者が負担する費用とは別に、自動車を所有していない人々に課される測定可能な費用です。自動車が激増するにつれ、混雑・道路や駐車場の都市空間占拠と空洞化・スプロール化・大気汚染・騒音・花粉症など自動車の外部性の課題が大きくなりました。
[交通手段の外部費用分析 音声概要を聞く]
[Wikipedia記事]
誘発需要とタウンズ・トムソンパラドックス
[音声概要を聞く] 誘発需要は、渋滞対策として道路交通容量を増やすことに対する反論にしばしば用いられます。1942年、米国ニューヨークで橋やトンネルを拡張しても渋滞が繰り返される事件が起き確証となりました。混雑対策で道路を拡張すると、誘発需要で車が増えて再び混雑してしまうダウンズ・トムソンのパラドックスも起き、「交通渋滞を解消するために容量を増やすのは、ベルトを緩めて肥満を解消しようとするようなものだ」という格言も生まれました。
[誘発需要 Wikipedia記事]
[ダウンズ・トムソンのパラドックス Wikipedia記事]
ジェイン・ジェイコブス
1961年、米国の高速道路反対運動活動家ジェイン・ジェイコブスは、近代都市計画を批判する著書『アメリカ大都市の死と生』(The Death and Life of Great American Cities)を刊行し、反響を呼び、20世紀後半の都市計画思想を一変させたといわれます。多様性は魅力的で活力のある都市の条件であるが、従来の都市計画ではまったく顧みられなかったとして、ル・コルビュジエの輝く都市など、機能優先の近代都市計画の理念を批判しました。
[Wikipedia記事]
宇沢弘文博士による「自動車の社会的費用」
1974年、経済学者である宇沢弘文博士は、『自動車の社会的費用』を発表し、鉄道や都市インフラの社会的価値を無視した自動車優先政策が、社会全体に負わせるコスト(公害、事故、渋滞など)を定量化し都市開発・環境問題への疑問を提起しました。また、道路、鉄道、医療、教育などのインフラを、市場原理だけでなく社会的価値で評価する的共通資本(Social Common Capital)整備の根拠と必要性が説かれました。また、共有資源はコミュニティや社会が責任を持って管理することが可能であり、最善の道であるとも説き、これが後の研究に繋がります。
[Wikipedia記事]
自動車の社会的影響
[音声概要を聞く] 自動車産業のもたらす雇用など経済的なメリット、ショッピングモールなど流通が自動車向きに変わっていったことなど、功罪両面を紹介しています。特に自動車がもたらした米国の「郊外化」については、ホワイトフライト、レッドライニング、低金利住宅ローンなど住宅政策も大きな影響を与えていたことは驚きです。また、消費者速度(車での総移動距離を、車時間(車に関して費やしたすべての時間。運転やメンテ、購入費のために働く時間も含む)を割る 距離➗時間 =速度)を計算すると、7.6 km/hと小走り程度にしかならず、車のために働いているような状態であることを思い知らされます。
[自動車の社会的影響と消えた「路面電車郊外」]
[Wikipedia記事]
自動車と公共交通のアンバランスの是正政策
渋滞料金
[音声概要を聞く] 増える車には道路拡張以外の手段が必要との認識が広まり、混雑/渋滞課金/ロードプライシングでピーク需要を抑え、自動車の外部費用を利用者負担に転嫁し、収益を公共交通の整備に充てる政策をとる地域も出てきました。
[Wikipedia記事]
無料公共交通
[音声概要を聞く] 公共交通の外部性を最大化するには無料にするという手段もあるということで、世界各地で公共交通を無料にする動きも出ています。
[Wikipedia記事]
市民活動・都市設計思想の変換
カーフリー運動
[音声概要を聞く] カーフリー運動は、自動車が、都市部や郊外などで生活を支配しすぎていると主張する社会運動で、社会活動家、都市計画家、交通工学、環境保護主義者など、広範で非公式な、創発的な個人と組織のネットワークです。1995年、「もし、車が無かったらどんな街になるのだろうか?」と体験する初のカーフリーデーイベントがレイキャビク(アイスランド)、バース(英国)、ラ・ロシェル(フランス)で開催されました。日本でも各地で実施されるようになりました。
[車依存から自由に、カーフリー運動]
[Wikipedia記事]
[カーフリーデー Wikipedia記事]
[ノーカーデー Wikipedia記事]
コンプリート・コミュニティ
[音声概要を聞く] 街の構造そのものも考え直す動きも出てきました。コンプリート・コミュニティは徒歩圏内に職住を近接させ、公共交通の結節点近くに都市を集積し、自動車依存を軽減しようとしました。また、世帯が小さく多様化している社会変化にも対応しようとしています。
[Wikipedia記事]
スマートグロース
[音声概要を聞く] さらに、都市の持続性を高め賢く実現しようとスマートグロースでは、TODで集積を高めると共に、プレイス作りなど地域への愛着も高める工夫もされています。
[Wikipedia記事]
コンプリートストリート
[音声概要を聞く] 米国では、スマートグロースの考えに基づき、自動車以外の歩行者・自転車・公共交通にとっても移動しやすい道路を作ろうというコンプリートストリート政策が推進され、全米1500都市で採択されています。
[道路を安全・便利・快適・環境に良く楽しくするコンプリートストリート]
[Wikipedia記事]