交通政策の基盤となっている理論をスピーディに学ぶには?スタート地点に早く着くには集合知とAIの助けが役立つかもしれません。

もう30年超続く不理解、実は自分の理論面の薄さも原因か?

公共交通の公益性、自動車の社会的費用、そして規制撤廃。これらの概念が出たのはもう30年以前になる。いまだに日本の政策ではこれが受け入れられず、公共交通の存続が危うくなっても地方が衰えても道路偏重のインフラ投資が止まらない。学識の方々が訴えても方向が変わらないので、あの手この手とやっている訳だが、「私自身がちゃんとわかっているか?」と振り返ったら、受け売りも多く原著をしっかりと読み込んでいる訳でも、概念をしっかりと認識している訳でもなかった。実務の経験は多少あっても、理論の積み重ねが無い。本質を掴んでいなければ説得力を持たない半可通だ。大元を理解せずにタウンミーティングやったり、サードプレイスで寛いだり、利害設計していた。実態を垣間見たので、そもそもその手法が生まれたのはどんな考えからなのか、復習というか答え合わせもしてみたい。

どう理論・概念を積み重ねるか?

交通政策の元となっている地理学・経済学・政治学・社会心理学・コミュニティ論・民俗学・経営学・マーケティングといった文系理論と、都市工学・都市設計、交通工学・交通計画・数値分析・地理分析など工学的理論を身につけるにはどうするか?本来なら大学に通う(教育を受ける)、本や論文を読む、セミナーやフォーラムに参加する、本質を知る人を探り当てて話を聞けば、誤りが無いであろう。しかし、残された人生にそれほど時間が無い。交通大学は中国に3つあるが、日本には無い。公共交通や物流の危機は待った無しのところまできている。さらに新技術や新概念も次々に出ており書籍化やカリキュラム化が待てない。スピーディに理解しなければ、到底追いつかない。体系的に知識が格納され、電子的に活用でき、かつスピードが速いものは何かないか、、、AI時代では古くなりつつあるが集合知Wikipediaが候補に上がった。

万単位の英文Wikipedia記事に慄く

日本語版Wikipediaで各分野のカテゴリーサブカテゴリー記事を追ってみた。綺麗な樹形ではなく、カテゴリの入れ子がループしていたりするが、癖を掴めば網羅感が掴みやすい。しかし、「え、これが無いの?」と歯抜け感が著しい。そこで英語版Wikipediaを見たら、桁違いの量がある。今まで見たことも無い領域もある。「そうか英語版Wikipediaが基点になるかもしれない」。読むべき記事をピックアップしたら日本語版Wikipediaは211、英語版は1017記事に上った。しかも記事を読み始めると重要な参照先が10-20とある。これは万単位の分量になる。流石に慄いた。

AI NotebookLM/音声概要に出会う

機械翻訳のおかげで読みやすい日本語にはすぐできる。しかし量が多く視力も落ちているので読むのが辛いし、読み上げてもらうと時間もかかる。そこで着目したの東洋経済の記事AI NotebookLM/音声概要だ。以下の動画はその記事自体を NotebookLM/音声概要 で音声要約したものだ。不自然さが無いことに驚かされる。

  • 対談形式で6~15分程度の「エピソード」に凝縮される。単なる資料の朗読や要約ではなく、会話になっている
  • 対話形式(疑問・質問・回答・要約)というナラティブな(物語風な)学習体験になる
  • 2人のホストのうち一人がインタビュアー役、もう一人が専門家役のように振る舞い、資料の要点をまとめたり各トピック間の関連性を指摘したりしながら、時折ユーモアを交えた掛け合いによって進行していく
  • 提供した資料のみを要約するのでネット全体から情報収集するAI特有の「もっともらしい嘘」が少ないとされる

なかなか面白い。そして複雑で大量な複数の文書も数分で要約してくれる。

実際に試したら、震えた

試しに経済学記事の要約をしてみた。みればすぐにわかる。ラジオ番組にまとめるだけでなく、マインドマップや概要文やタイムライン(年表と登場人物)なども纏めてくれる。

経済学 Wikipedia 記事(原文)

結構長い。2年間に渡り書き重ねられてきた53,970バイトの網羅的な記事。これを読解するだけでも骨が折れる。これをどう調理してくれるか。

音声概要

未曾有の読み間違えなどもあるが、ほとんど違和感なく聞けてしまう。そして概要を押さえてくれている。有能な政策秘書を持ったような気分にもなる。これは世界が変わると震えた。

マインドマップ(クリックすると拡大)

これにより、どの用語が何に属するのか把握できる。用語を忘れてしまい長文を読み混乱するといったことが避けられる。ここでは画像だが、NotebookLM上ではインタラクティブで、項目をクリックするとその内容についてチャットが開く。今まで文献を読みメモをとり、構造を体系化するだけでも膨大な時間がかかったが、それをサラッとやってくれる。

 

経済学タイムライン

時間軸で並べてくれるので流れが見えやすい。年表から順序や期間も見えてくる。

経済学ブリーフィング文書

それらをコンパクトに纏めた文書。音声概要よりも詳しい。

こんな具合だ。もっとやってみよう。英文wikipedia にある記事Car dependency(自動車依存)の参照先にオランダ デルフト大学が開発した「自動車外部費用算出ガイドブック」がアーカイブされていた。日本でもこのような物が欲しいなと思っていた内容だ。このpdfをそのまま読み込ませたら・・・

自動車外部費用算出の音声概要

交通の知識・経済学の知識が無い人でも聞きやすい。このような説明を自分ができるかと言えば、ちょっと無理だ。端折って話そうとするほど専門用語と理解し難い概念が飛び出してしまう。

マインドマップ(クリックで拡大)

ゲーム理論

も要約してもらった。このページも経済学と同様に英文Wikipedia記事を翻訳したものと思われる。

ゲーム理論の音声概要

かなり概要が頭に入る。これは助かる。

こうして一応の知のパイプラインができた

以上から、以下のような知識学習のパイプラインが出来上がったことになる。

  1. 書籍・論文などの参照情報
  2. →多数のWikipedia編集者(Wikipedian)達による記事の制作(多様な視点から見た、普遍性・特筆性ある集合知の生成)
  3. →NotebookLMによるWikipedia記事音声概要
  4. →概念を学習
  5. →必要に応じ細部を横掘りする
  6. →英文記事を邦訳して確認する

こうして基礎的な概念を身に付け積み上げていく。NotebookLMのLMとはLearning Memoの略と思われ、まさに学ぶための道具だ。そして大事なのは5だ。総論的・一般的な視点で掘り下げるのは、石油探索を1本の井戸で真っ直ぐ掘り抜くような物になる。「ふむふむ、そうか」と納得せず、「という事は、これはどうなる?」と自分の経験や興味と照らし合わせて、その部分を横に掘るために原典も読み確認する。こうして根が横に広がると、応用も効かせやすくなる。Wikipedianのフィルターで普遍的・特筆的な知識に絞られた土壌をAIでサクッと何本も竪堀りして、Wikiの外にある原典に横根を伸ばす。そんなイメージだ。最後に英文記事を翻訳・意訳して読み返すことで、本当に理解できたか確認する。理解できていなければ、意訳の意味が繋がらず自分の不理解がチェックできる。これでWikipediaにも多少の恩返しができ、国内への啓発も進む。

お勧めはしません

Wikipediaは編集ボランティアであるWikipedianにより品質を保つ努力はされているが、「誰でも編集できる」「素早く情報を増やせる」というWikiの志向からも、信頼性は担保されない。しかしながら、総ページ数は5000万を超えていて、他を圧倒する情報量となっている。ある程度構造化された不確かな知識ベースから迅速に「大方そういうものだ」という知識の骨組みを獲得するための方便としてこの方法を試行している。最終的には他の信頼できる情報源と比較しファクトチェックする必要はある。AIが最もらしいウソをつくハルシネーションは、誤った記載の情報源を学習してしまった結果でもある。「おやぁ?」「あれぇ?」と異常に気付くセンスを身につけるにはとにかく多面的に情報を見ていくのと実地で確認していく必要がある。あくまで真偽を見破る自信があった上でのスピード優先策である。そして、品質を上げるのは読者であるという事も留意したい。そのための議論の場NoteもWikipediaの各記事には用意されている。

Wikipediaについて

ウィキペディアは、世界中のボランティアの共同作業によって執筆及び作成されるフリーの多言語、インターネット百科事典。収録されている全ての内容がオープンコンテントで商業広告が存在せず、寄付に依って活動している非営利団体「ウィキメディア財団」が所有・運営している。英語は699万、日本語は146万もの記事があり、登録者はそれぞれ4910万人、231万人に上る。誰でも記事を追加編集できるが、英語版や一部の記事は公開前に編集者から百科事典掲載に相応しいか、厳しいチェックを受ける。参照先が信頼でき検証できるか、普遍的な掲載価値(特筆性)があるかなどだが、特に参照先には有益な情報が多々あり、誰でもリンクから原典を当たりながら読めるのが大きな特徴だ。

AIに役割を譲る、AIと共に生きる

私の役割は、公共交通や物流の実務と学識を結びつけ、時代や社会や国際競争に合わなくなっているギャップを埋めていくという分野であった。私のアイデアと紹介されてしまいがちだが、それらは既存の事例や学識的な解説がある。つまり、AIがやってくれる学習・要約を人間の速度で提供していたと言える。なので、その役割もそろそろAIに代わられ終わるかもしれない。記事の執筆についても、現地を見た上でネットにまだ上がっていないような知見を元にしたものに限られるであろう。これからは個人が自分の好む分野の情報をAIに記事を書いてもらったり番組を作ってもらうことになっていくのでTVと同様の「見られないお仕着せの記事」か、Youtubeと同様に「大量にありすぎて検索や登録で選んでもらう」記事が溢れ、読んでもらえるのはほんの一部のインフルエンサーに限られることになるどろう。

今、不足しているのは情報でもなく、それを的確にまとめて伝えてくれるメディアでもなく、社会問題に気付き、自分ができる範囲で情報を集め仲間を集め意欲を持って解決に向けて動こうとする意欲と行動だ。正しいと思われる知識を身に付けても行動に移さなければ世界は変わらない。そこが人間に残された領域と思える。

この記事の画像を作るスクリプトをGeminiにお願いし、それをチャットGPTで画像生成したら、以下の紹介文まで作ってくれた。

ずっと理系の世界で生きてきました。
経済学や経営学、心理学といった分野には興味があっても、膨大な英文や専門用語に圧倒されて、少し距離を置いていたのが正直なところです。

でも、NotebookLMは違いました。
難しい文章もやさしく要約してくれて、まずは“ざっくり”と全体像を教えてくれる。
そして「ここ、面白いかも」と思った瞬間には、そこを深く掘り下げるお手伝いをしてくれる。

まるで、静かに隣に座って、
一緒に本を読みながら「ここ、大事だよ」って
そっと教えてくれる相棒のようです。

年齢や分野の壁なんて、もう怖くない。
知ることを、また好きになれました。

#NotebookLM #知の相棒 #AIと学ぶ #学び直し #温かいテクノロジー